王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…

ましろ

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「私が国王陛下と謁見ですか…?」


可哀想に。怯えているじゃないか。
やはり兄上になど会わせないほうがいいかな。


「大丈夫、無理する必要はない。
私から断っておくよ」

「…いえ、お会いします。
国王陛下とのお約束ですもの。破ってはいけないわ。
それに公爵様の大切なお兄様でしょう?」


私を気遣ってくれるなんて、可愛いだけでなく優しい娘だ。でもね?


「呼び方が違うね?」

「あ、アデルバート様…まだ慣れなくて…」


うつむいて恥じらう姿も好ましいが、早くもっとうち解けてほしい。


「ではこれから間違うごとに君から私にキスをしてもらおう」

「!?そんな、無理です!」

「間違わなければいいだけだろう?
まぁ、君から口付けてくれることを楽しみにしておこう」

「二度と間違いません!」







足取り軽く謁見の間に向かう。
腕の中には私のマントで隠された愛しい番が涙目でしがみついている。
恥ずかしいから自分で歩くと言っていたが、その可愛らしい姿をみなに見せるわけがないだろう?
このままおとなしく抱かれて行くか、歩けなくなるくらいキスをしてから抱えていくかと聞いたら諦めてくれた。
そこは「キスして」と言われたかったが。


「兄上来ましたよ。
もう帰っていいですか?」

「おい、良いわけがないだろう。
というか……まさかずっと抱きかかえ来たのか?」

「当たり前でしょう。愛しい番を歩かせるのもみなの視線に晒すのも嫌ですから」

「さすがにもう降ろしてやれ。顔も見えないし可哀想だろう」

「そうですよ、まさかマントで覆ってくるとは思わなかったわ」


兄上はまだしも姉上に言われると逆らえず渋々下ろす。
少し髪型が崩れてしまったか?


「はじめまして、番殿。
浮かれた弟が無理を言って申し訳ない。
今回は王としてではなく家族として会いたかったんだ。
どうか楽にしてくれ」

「…お初にお目にかかり光栄です。
ボネット男爵の娘ラウラと申します」

「まぁ、可愛らしい番様ね。
そんなに緊張なさらないで?これから家族になるのですもの」

「そうだぞ番殿。これからは実の兄姉と思ってくれていい。
慣れない王都で大変だろうが弟のことを頼むよ。
今はようやく番殿が見つかって、タガが外れた迷惑な奴になっているが、普段は仕事のできる有能な男だ。
きっと幸せな家庭を築けるだろう。

公爵夫人としての公務は優秀なものに任せて、番殿はアデルバートの心を満たしてくれればそれだけで大丈夫だ。
心配はいらないよ」

「…はい。私に公爵夫人などなれるような能力はありませんので、助けてくださる方がいるならありがたいです」

「なぜ兄上がそこまで説明するんだ。
だがそうだ。私は公爵夫人が欲しかったのではなく、番であるお前が必要なんだ。
愛しい番よ、ずっとそばにいてくれ」

「アデルバートが気持ち悪いわね。
さて、また帰ると騒ぎ出すといけないからこれからのことを話しましょう」

「これからのこと、ですか?」

「そう。本来ならあなたのデビュタント、番のお披露目、婚約式、それから婚姻式。
それらを順番に行っていく予定だったのよ。1~2年かけてね。
なのに!アデルバートがあなたを人目に晒したくないってわがままを言うから!
本当に申し訳ないけど一回にまとめる事になったわ」

「…えっ?」

「3ヶ月後。あなた達の婚姻式を行います。
その場をデビュタントとお披露目も兼ねる形ね。
準備にかかる費用も人員もすべて公爵家で準備させるわ。男爵家に負担は一切かけないから安心してね。
もちろんご家族をこちらに招く準備などもすべて手配します。すでにアデルバートが水害対策の手配も行っているはずだから、お父様達も安心して王都に来ていただけると思うわ」

「…3ヶ月後…」

「あぁ、準備にはどうしてもそれくらいの日数がかかるらしい。
本当はそんな面倒なことはせずに、必要書類を神殿におくって夫婦になってしまいたかったんだが」

「いいかげんになさい」

「でもドレスもすべてお任せするなんて…」

「ごめんなさいね。人目に晒さないようにしないと式すら挙げない言うから、デザインなどもすべてそういった方向で考えさせてもらったの。
番への執着を甘く見てたわ」

「そう、なのですか…」


誰にも見せたくないのは当たり前だ。
本当なら王都に戻ってすぐ神殿にむかい誓いをたて婚姻を結ぶつもりだった。
そうしてずっと二人きりで蜜月を楽しむつもりだったのに兄上の邪魔が入ってしまった。
式までは純血を守るように釘も刺されてしまったし。
まぁ彼女もまだ王都での生活に慣れていないし、しばらくはゆっくりさせてあげるのもいいだろう。
いまから少しずつ準備をするのも楽しみだ。
3ヶ月後はひと月くらい休みをもらえるよう手配しなくてはな。


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