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番外編
3.
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久しぶりにもどった我が家はとてもきれいになっていた。家も庭も調度品もすべてだ。
まさかすべてアデルバート様が?
「お父様、お兄様ただいま帰りました!」
「「ラウラ!」」
ふたりが優しく抱きしめてくれる。本当に帰ってきたんだ!
「グランディス前公爵閣下、イルマー夫人、わざわざ娘を連れてきてくださり本当にありがとうございます」
「コンラート公爵の情けない顔が見れて楽しかったよ。
君が迎えに行っていたら絶対に彼も付いて来たさ。
私達が向かって正解だった」
「そうね。せっかくの里帰りですもの。邪魔な旦那は置いてこなくちゃ!
今日は家族でゆっくりなさい。
河川工事や領地巡りは明日以降ね。
あと、彼が迎えに来たときにもう一つとびきりの嫌がらせがあるから楽しみにしていなさい」
「先生、これ以上アデルバート様をいじめないで下さいな。慰めるのが大変になります」
「ラウラもなかなか言うなぁ。だが年寄りの楽しみを奪ってはいけないよ。あきらめなさい」
「そうですよ。老い先短い私達への餞だと思って好きにさせてちょうだいね」
「お二人ともこんなにお元気なくせに。
でも私達を気にかけてくださって本当にうれしいです。
ありがとうございます」
この日は夜遅くまでお父様とお兄様と一緒にたくさん話をした。
こんなにのんびりと三人で話をしたのは本当に久しぶりだった。
置いてきぼりのアデルバート様には少し申し訳なかったが、このような時間を作ってくれた先生達には本当に感謝でいっぱいだ。
一週間はあっという間だった。
みんなにたくさんの祝福の言葉をもらった。
久しぶりに会った孤児院の子供達には寂しかったと泣かれてしまった。
河川工事も見学させてもらった。こんな所に来る公爵夫人は珍しいと歓迎された。
本当にとても楽しい一週間だった。
…、でも少し寂しい。
アデルバート様と一緒に見たかったなと思い、ちゃんと彼のことが好きなようだと安心した。
「ラウラ!」
本当に10時ぴったりにノックしたアデルバート様は私を抱きしめて離さない。
「アデルバート様、迎えに来てくれて嬉しいです。
私も寂しかったですわ。お顔が見れないので少し力を緩めてくださいな」
拒絶するとさらに締め付けがきつくなるのが分かっているので、優しく別の理由付けをして自分から離れるように仕向ける。
あらあら、目の下に隈ができている。
本当に一週間が限度だったのね。親方すごいわ。
「眠れなかったのですか?」
「ラウラがいないと眠れない、食欲もわかない、死ぬかと思った」
「まぁ、私を寡婦になさるおつもり?きちんと寝てご飯を食べないと」
「ラウラがいればいい……」
相変わらず熱烈ねぇ。お父様とお兄様がなんとも言えない顔で壁の方を見ている。
「はいはい、コンラート公爵はあちらで支度を。
ラウラはこっちよ。急いで!」
「まだ私とラウラを離すんですか!?」
「大丈夫だ。とても楽しいことの始まりだからね。
さぁ行こうか」
親方がアデルバート様を引きずっていく。
「先生、最後の嫌がらせって何をするんですか?」
「素敵なことよ!さぁ、あなたも支度するわよ。
いらっしゃい」
別室に案内される。
そこには───
ウェディングドレス!!
とても綺麗な純白のドレス。
「素敵でしょう?私達皆からのプレゼントよ。
どうしてもあなたに素敵な結婚式を準備してあけだかったの。
ドレスは男爵家と私と親方様から。
ブーケと髪飾りは領民のご婦人と教会のシスターの手作りよ。そして、はい!孤児院の子供達からメッセージカード」
そこには可愛らしい絵とともに結婚おめでとうと書かれている。
「こんな素敵なプレゼント……本当に、本当に嬉しい!ありがとうございます!」
「まだ泣いちゃだめよ!すっごく綺麗な花嫁姿を見せて悔しがらせなきゃっ」
「っはい!」
ドレスを着せてもらいメイクも直してもらう。
シルエットがすごく素敵。嬉しい。私が着たいと思っていたドレスにすごく近い。
「どうして私の好みが分かったんですか?」
「マリィに聞いたのよ。お嬢様はこういうドレスがいいって言ってました!ってすごく細かく教えてくれたわ。
教会にくる奥様たちも、ラウラちゃんはこれとかこの花が好きよって色々と持ち寄ってブーケや髪飾りを作ってくれたの。
愛されているわね」
「うれしいです」
「さぁ、男爵様に入ってもらってもいいわね。
どうぞお入りになって!」
ノックのあとお父様が入ってくる。
「ラウラ、綺麗だよ。これを君に渡したかったんだ」
「これは、ベール?」
「あぁ、カタリナが私との結婚式の時につけていたものだ」
「お母様の?うれしいです。
でも、思い出の品なのにいいのですか?」
「もちろんだ。カタリナもお前に使ってもらえたら喜ぶよ」
「キレイ……ありがとう、お父様。
お母様も式に参列してくれているみたい。本当に嬉しいわ!」
まさかすべてアデルバート様が?
「お父様、お兄様ただいま帰りました!」
「「ラウラ!」」
ふたりが優しく抱きしめてくれる。本当に帰ってきたんだ!
「グランディス前公爵閣下、イルマー夫人、わざわざ娘を連れてきてくださり本当にありがとうございます」
「コンラート公爵の情けない顔が見れて楽しかったよ。
君が迎えに行っていたら絶対に彼も付いて来たさ。
私達が向かって正解だった」
「そうね。せっかくの里帰りですもの。邪魔な旦那は置いてこなくちゃ!
今日は家族でゆっくりなさい。
河川工事や領地巡りは明日以降ね。
あと、彼が迎えに来たときにもう一つとびきりの嫌がらせがあるから楽しみにしていなさい」
「先生、これ以上アデルバート様をいじめないで下さいな。慰めるのが大変になります」
「ラウラもなかなか言うなぁ。だが年寄りの楽しみを奪ってはいけないよ。あきらめなさい」
「そうですよ。老い先短い私達への餞だと思って好きにさせてちょうだいね」
「お二人ともこんなにお元気なくせに。
でも私達を気にかけてくださって本当にうれしいです。
ありがとうございます」
この日は夜遅くまでお父様とお兄様と一緒にたくさん話をした。
こんなにのんびりと三人で話をしたのは本当に久しぶりだった。
置いてきぼりのアデルバート様には少し申し訳なかったが、このような時間を作ってくれた先生達には本当に感謝でいっぱいだ。
一週間はあっという間だった。
みんなにたくさんの祝福の言葉をもらった。
久しぶりに会った孤児院の子供達には寂しかったと泣かれてしまった。
河川工事も見学させてもらった。こんな所に来る公爵夫人は珍しいと歓迎された。
本当にとても楽しい一週間だった。
…、でも少し寂しい。
アデルバート様と一緒に見たかったなと思い、ちゃんと彼のことが好きなようだと安心した。
「ラウラ!」
本当に10時ぴったりにノックしたアデルバート様は私を抱きしめて離さない。
「アデルバート様、迎えに来てくれて嬉しいです。
私も寂しかったですわ。お顔が見れないので少し力を緩めてくださいな」
拒絶するとさらに締め付けがきつくなるのが分かっているので、優しく別の理由付けをして自分から離れるように仕向ける。
あらあら、目の下に隈ができている。
本当に一週間が限度だったのね。親方すごいわ。
「眠れなかったのですか?」
「ラウラがいないと眠れない、食欲もわかない、死ぬかと思った」
「まぁ、私を寡婦になさるおつもり?きちんと寝てご飯を食べないと」
「ラウラがいればいい……」
相変わらず熱烈ねぇ。お父様とお兄様がなんとも言えない顔で壁の方を見ている。
「はいはい、コンラート公爵はあちらで支度を。
ラウラはこっちよ。急いで!」
「まだ私とラウラを離すんですか!?」
「大丈夫だ。とても楽しいことの始まりだからね。
さぁ行こうか」
親方がアデルバート様を引きずっていく。
「先生、最後の嫌がらせって何をするんですか?」
「素敵なことよ!さぁ、あなたも支度するわよ。
いらっしゃい」
別室に案内される。
そこには───
ウェディングドレス!!
とても綺麗な純白のドレス。
「素敵でしょう?私達皆からのプレゼントよ。
どうしてもあなたに素敵な結婚式を準備してあけだかったの。
ドレスは男爵家と私と親方様から。
ブーケと髪飾りは領民のご婦人と教会のシスターの手作りよ。そして、はい!孤児院の子供達からメッセージカード」
そこには可愛らしい絵とともに結婚おめでとうと書かれている。
「こんな素敵なプレゼント……本当に、本当に嬉しい!ありがとうございます!」
「まだ泣いちゃだめよ!すっごく綺麗な花嫁姿を見せて悔しがらせなきゃっ」
「っはい!」
ドレスを着せてもらいメイクも直してもらう。
シルエットがすごく素敵。嬉しい。私が着たいと思っていたドレスにすごく近い。
「どうして私の好みが分かったんですか?」
「マリィに聞いたのよ。お嬢様はこういうドレスがいいって言ってました!ってすごく細かく教えてくれたわ。
教会にくる奥様たちも、ラウラちゃんはこれとかこの花が好きよって色々と持ち寄ってブーケや髪飾りを作ってくれたの。
愛されているわね」
「うれしいです」
「さぁ、男爵様に入ってもらってもいいわね。
どうぞお入りになって!」
ノックのあとお父様が入ってくる。
「ラウラ、綺麗だよ。これを君に渡したかったんだ」
「これは、ベール?」
「あぁ、カタリナが私との結婚式の時につけていたものだ」
「お母様の?うれしいです。
でも、思い出の品なのにいいのですか?」
「もちろんだ。カタリナもお前に使ってもらえたら喜ぶよ」
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お母様も式に参列してくれているみたい。本当に嬉しいわ!」
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