16 / 50
16.
しおりを挟む
公女に一目惚れしたわけではなかった。
そのことを知ることができて嬉しかった。
「殿下、私はあなたを─
「リーゼロッテ!ちょっと待った!!」
バンッ!と勢い良く扉が開き、息を切らせた先輩が飛び込んで来た。
「え、先輩どうして……」
「リーゼロッテ!俺は君が好きだ!!」
何?!どうして先輩が来たの?どうして突然告白してくるの?お父様も殿下もいるのに!!
ふたりの姿が目に入っていないのか、そのまま気にせず話し始める。
「入学式の時、殿下に笑いかける君の笑顔に一目惚れしました!婚約者がいるから泣く泣く諦めようとしたけど諦められなくて!そのうち殿下が君を裏切って公女と浮気してるのを知ってチャンスだと思いました!でも話し掛ける勇気が無くて、こっそり図書室で顔が見える席にさり気なく座って眺めるのが精一杯で!声を掛けられた時、本当は飛び上がるくらい嬉しかった!本好き仲間になれて毎日が楽しくて。殿下に君が傷付けられた時は本当に腹が立った。どうしてもっと早く俺は行動しなかったんだろうって。ムカつくからどさくさに紛れて殿下を殴るくらいしかできなくて、そんな自分が惨めだった。それでも、君は俺の事は怖がらないのが泣きたいくらい嬉しかった。殿下が再婚約を望んでるのを知った時、絶対に嫌だと思った。だから、できるだけ殿下と関わらないように仕向けたし、話し合えば変わるかもしれないのが嫌で、駄犬は無視しろって言った!君の幸せより自分の気持ちを優先して、ずるい助言もしてきた。ビアンカの言う通りだ。ずるくてごめん!でも、リーゼロッテを好きな気持ちは本当だ!好きです!俺と付き合ってください!!」
「……はい?」
怒涛の告白に頭がついていかない。
「オッケーってこと?!」
「違うから。ちょっと待ってください、先輩。今はあなたの番ではありません!周りを見て!」
お父様も殿下も呆然としている。
先輩は殿下が王族だということを忘れているのだろうか。学園では同級生でも、失礼なことをしていいわけではない。
たぶん先輩は執事を無視して走ってきたのだろう。執事も慌てて追いかけて来たが、いきなりの告白劇にこちらも固まっている。
「……先輩を別室に案内して」
「そんな!」
「先輩、ステイ!」
思わずワンちゃんへのコマンドを出してしまう。面白いことに先輩がピタッと止まった。
「私は殿下との話がまだ終わっていません。こちらの話は私自身がするべきことです。だから終わるまでは別室で待っててください。必ず行きますから」
「……分かった」
やっと気持ちが落ち着いたのか、お父様と殿下に謝罪をして退室した。
ふぅ、えっと何を話していたんだっけ。
さっきまでの気持ちが霧散してしまった。いえ、言う内容も気持ちも変える気はまったくないのだけど、感情だだ漏れの告白から、事務報告くらいの差が出そうだ。
「お騒がせして大変申し訳ありません。先程の続きから話させてもらってもよいでしょうか」
なんだか格好がつかないけど仕方がない。
先輩のバカ!
「私は殿下を許しません。あの時、魔法のせいにしないで真摯に謝って下されば許していたかもしれません。でもあなたはすべてを魔法のせいだからと上辺だけの謝罪で終わらせました。あの瞬間、私達の関係は終わったのです。
あなたは確かに被害者だわ。でも加害者でもあったの。どんな理由があったとしてもです。
ですから私は再婚約はいたしません」
「……そうか。魔法に掛かったからではなく、魔法のせいにして逃げたから駄目だったんだね」
「はい」
そのまま殿下を見つめる。
可哀想な人。魔法に掛からなければあのまま穏やかな人でいられたのだろう。だって婚約してから5年間、一度も暴力的な姿など見なかった。
王妃様はなぜ魔法のせいだからと慰めてしまったのだろう。そんな慰めがなければ、また違う未来があったのだろうか。
「先程もいいましたが、殿下は治療が必要だと思います。本当はまだお辛いのでしょう?」
「そうだね、君を失ったんだと思うと余計に駄目かな」
虚ろな目で眺める殿下の手のひらは微かに震えている。でも、ここで私が助けてはいけない。助けるのは私では無く、医師や魔法の研究者だ。
「殿下、私が城までお送りしましょう。たぶん一人にならないほうがいいと思います」
そう父が促すと、殿下はゆっくりと立ち上がる。私を見つめ、そっと手を出してくる。
「最後に」
お別れの握手くらいなら大丈夫よね?
そう思って手を伸ばすと、ぐいっ!と引き寄せられる。
「ちょっ、殿下?!」
いきなり抱き締められた!
「大好きだよ、リーゼ。今までありがとう」
「……私も大好きでした」
伝える言葉は過去形。そっと体を押して離れる。
「君は意外と迂闊だから気をつけたほうがいい」
「……ご忠告感謝いたします」
最後は小憎たらしい笑顔。
さようなら、殿下。
そのことを知ることができて嬉しかった。
「殿下、私はあなたを─
「リーゼロッテ!ちょっと待った!!」
バンッ!と勢い良く扉が開き、息を切らせた先輩が飛び込んで来た。
「え、先輩どうして……」
「リーゼロッテ!俺は君が好きだ!!」
何?!どうして先輩が来たの?どうして突然告白してくるの?お父様も殿下もいるのに!!
ふたりの姿が目に入っていないのか、そのまま気にせず話し始める。
「入学式の時、殿下に笑いかける君の笑顔に一目惚れしました!婚約者がいるから泣く泣く諦めようとしたけど諦められなくて!そのうち殿下が君を裏切って公女と浮気してるのを知ってチャンスだと思いました!でも話し掛ける勇気が無くて、こっそり図書室で顔が見える席にさり気なく座って眺めるのが精一杯で!声を掛けられた時、本当は飛び上がるくらい嬉しかった!本好き仲間になれて毎日が楽しくて。殿下に君が傷付けられた時は本当に腹が立った。どうしてもっと早く俺は行動しなかったんだろうって。ムカつくからどさくさに紛れて殿下を殴るくらいしかできなくて、そんな自分が惨めだった。それでも、君は俺の事は怖がらないのが泣きたいくらい嬉しかった。殿下が再婚約を望んでるのを知った時、絶対に嫌だと思った。だから、できるだけ殿下と関わらないように仕向けたし、話し合えば変わるかもしれないのが嫌で、駄犬は無視しろって言った!君の幸せより自分の気持ちを優先して、ずるい助言もしてきた。ビアンカの言う通りだ。ずるくてごめん!でも、リーゼロッテを好きな気持ちは本当だ!好きです!俺と付き合ってください!!」
「……はい?」
怒涛の告白に頭がついていかない。
「オッケーってこと?!」
「違うから。ちょっと待ってください、先輩。今はあなたの番ではありません!周りを見て!」
お父様も殿下も呆然としている。
先輩は殿下が王族だということを忘れているのだろうか。学園では同級生でも、失礼なことをしていいわけではない。
たぶん先輩は執事を無視して走ってきたのだろう。執事も慌てて追いかけて来たが、いきなりの告白劇にこちらも固まっている。
「……先輩を別室に案内して」
「そんな!」
「先輩、ステイ!」
思わずワンちゃんへのコマンドを出してしまう。面白いことに先輩がピタッと止まった。
「私は殿下との話がまだ終わっていません。こちらの話は私自身がするべきことです。だから終わるまでは別室で待っててください。必ず行きますから」
「……分かった」
やっと気持ちが落ち着いたのか、お父様と殿下に謝罪をして退室した。
ふぅ、えっと何を話していたんだっけ。
さっきまでの気持ちが霧散してしまった。いえ、言う内容も気持ちも変える気はまったくないのだけど、感情だだ漏れの告白から、事務報告くらいの差が出そうだ。
「お騒がせして大変申し訳ありません。先程の続きから話させてもらってもよいでしょうか」
なんだか格好がつかないけど仕方がない。
先輩のバカ!
「私は殿下を許しません。あの時、魔法のせいにしないで真摯に謝って下されば許していたかもしれません。でもあなたはすべてを魔法のせいだからと上辺だけの謝罪で終わらせました。あの瞬間、私達の関係は終わったのです。
あなたは確かに被害者だわ。でも加害者でもあったの。どんな理由があったとしてもです。
ですから私は再婚約はいたしません」
「……そうか。魔法に掛かったからではなく、魔法のせいにして逃げたから駄目だったんだね」
「はい」
そのまま殿下を見つめる。
可哀想な人。魔法に掛からなければあのまま穏やかな人でいられたのだろう。だって婚約してから5年間、一度も暴力的な姿など見なかった。
王妃様はなぜ魔法のせいだからと慰めてしまったのだろう。そんな慰めがなければ、また違う未来があったのだろうか。
「先程もいいましたが、殿下は治療が必要だと思います。本当はまだお辛いのでしょう?」
「そうだね、君を失ったんだと思うと余計に駄目かな」
虚ろな目で眺める殿下の手のひらは微かに震えている。でも、ここで私が助けてはいけない。助けるのは私では無く、医師や魔法の研究者だ。
「殿下、私が城までお送りしましょう。たぶん一人にならないほうがいいと思います」
そう父が促すと、殿下はゆっくりと立ち上がる。私を見つめ、そっと手を出してくる。
「最後に」
お別れの握手くらいなら大丈夫よね?
そう思って手を伸ばすと、ぐいっ!と引き寄せられる。
「ちょっ、殿下?!」
いきなり抱き締められた!
「大好きだよ、リーゼ。今までありがとう」
「……私も大好きでした」
伝える言葉は過去形。そっと体を押して離れる。
「君は意外と迂闊だから気をつけたほうがいい」
「……ご忠告感謝いたします」
最後は小憎たらしい笑顔。
さようなら、殿下。
505
あなたにおすすめの小説
(完結)婚約破棄から始まる真実の愛
青空一夏
恋愛
私は、幼い頃からの婚約者の公爵様から、『つまらない女性なのは罪だ。妹のアリッサ王女と婚約する』と言われた。私は、そんなにつまらない人間なのだろうか?お父様もお母様も、砂糖菓子のようなかわいい雰囲気のアリッサだけをかわいがる。
女王であったお婆さまのお気に入りだった私は、一年前にお婆さまが亡くなってから虐げられる日々をおくっていた。婚約者を奪われ、妹の代わりに隣国の老王に嫁がされる私はどうなってしまうの?
美しく聡明な王女が、両親や妹に酷い仕打ちを受けながらも、結局は一番幸せになっているという内容になる(予定です)
あなたが捨てた花冠と后の愛
小鳥遊 れいら
恋愛
幼き頃から皇后になるために育てられた公爵令嬢のリリィは婚約者であるレオナルド皇太子と相思相愛であった。
順調に愛を育み合った2人は結婚したが、なかなか子宝に恵まれなかった。。。
そんなある日、隣国から王女であるルチア様が側妃として嫁いでくることを相談なしに伝えられる。
リリィは強引に話をしてくるレオナルドに嫌悪感を抱くようになる。追い打ちをかけるような出来事が起き、愛ではなく未来の皇后として国を守っていくことに自分の人生をかけることをしていく。
そのためにリリィが取った行動とは何なのか。
リリィの心が離れてしまったレオナルドはどうしていくのか。
2人の未来はいかに···
白い結婚の行方
宵森みなと
恋愛
「この結婚は、形式だけ。三年経ったら、離縁して養子縁組みをして欲しい。」
そう告げられたのは、まだ十二歳だった。
名門マイラス侯爵家の跡取りと、書面上だけの「夫婦」になるという取り決め。
愛もなく、未来も誓わず、ただ家と家の都合で交わされた契約だが、彼女にも目的はあった。
この白い結婚の意味を誰より彼女は、知っていた。自らの運命をどう選択するのか、彼女自身に委ねられていた。
冷静で、理知的で、どこか人を寄せつけない彼女。
誰もが「大人びている」と評した少女の胸の奥には、小さな祈りが宿っていた。
結婚に興味などなかったはずの青年も、少女との出会いと別れ、後悔を経て、再び運命を掴もうと足掻く。
これは、名ばかりの「夫婦」から始まった二人の物語。
偽りの契りが、やがて確かな絆へと変わるまで。
交差する記憶、巻き戻る時間、二度目の選択――。
真実の愛とは何かを、問いかける静かなる運命の物語。
──三年後、彼女の選択は、彼らは本当に“夫婦”になれるのだろうか?
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
【完結】亡くなった人を愛する貴方を、愛し続ける事はできませんでした
凛蓮月
恋愛
【おかげさまで完全完結致しました。閲覧頂きありがとうございます】
いつか見た、貴方と婚約者の仲睦まじい姿。
婚約者を失い悲しみにくれている貴方と新たに婚約をした私。
貴方は私を愛する事は無いと言ったけれど、私は貴方をお慕いしておりました。
例え貴方が今でも、亡くなった婚約者の女性を愛していても。
私は貴方が生きてさえいれば
それで良いと思っていたのです──。
【早速のホトラン入りありがとうございます!】
※作者の脳内異世界のお話です。
※小説家になろうにも同時掲載しています。
※諸事情により感想欄は閉じています。詳しくは近況ボードをご覧下さい。(追記12/31〜1/2迄受付る事に致しました)
【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに
おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」
結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。
「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」
「え?」
驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。
◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話
◇元サヤではありません
◇全56話完結予定
旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。
アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。
今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。
私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。
これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる