魔法のせいだから許して?

ましろ

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白磁に少し歪な金のラインが入った小振りな器。不思議な美しさがある作品だ。


「東国では割れた陶器を処分するのではなく、丁寧に継いで新しい物に生まれ変わらせる技法があると知った。
不完全な美。これを君にも見せたいと思った。受け取ってもらえると嬉しい」


とても短いメッセージ。どんな意味が込められているのかは一言も書いていない。

でも、きれいね……壊れたものだなんて思えない。傷付いたことを隠すのではなく、それすらも魅力に変えるなんて素敵だわ。

謝罪でもなく、愛を乞うわけでもなく。
どうして……そう、意味を探そうとする私がおかしいのかしら。






「リーゼ、大丈夫かい?」

「お父様……」

「ん?あぁ、美しいね。それは金継ぎという技法だよ。殿下からの贈り物か」

「ご存知なのですね」

「この国にはまだあまり入ってきていないが、印象的で覚えているよ。殿下は何て?」

「それが何も書いていなくて。どういう意図で贈られたのか分からないのです。とても綺麗だけど、受け取っていいのかしら」


もうお別れしたのに。


「殿下は今、国を離れているそうだ。旅先で知ったのかな。ただのお土産かもしれないよ?」


意地悪。お土産だなんて考えが浮かばない私を笑ってるでしょう。


「時として自分の心情にピッタリの作品に出会うことがある。その感動を分かち合いたかったのかもしれないね」


あぁ、確かに。今の私達だからこそ心に響くのかもしれない。
でも国を離れたのね。それなら魔法の効果も弱くなったかしら。先にこちらの話をしないといけないわね。


「お父様、実は私も魔法に掛かっていたかもしれません。聞いていただけますか?」


それから、家族全員に話を聞いてもらった。


「本当に迷惑な話ね」

そうね、ユリアの言う通り。


「学園を辞めるかい?留学でもいいね」

お父様ありがとう。私もそう思うわ。


「いっそのこと結婚しちゃう?」

お母様、相手がいません!

みんな私に甘いなあ。ずっと弱々で泣いてばかりだった情けない娘なのに。


「心配してくれてありがとう。でも、私は逃げたくない。ここまでされて許すほど優しくもないわ」


今、すごく悔しい。ここまで人生を変えられたことに。少しも抗えなかった自分自身にも腹が立つ。
逃げてしまえば楽にはなれる。でも、心のどこがで一人だけ逃げた後ろめたさが一生ついて回ると思う。私はこれ以上負けたくない。
殿下がどういう思いであの器を贈ってくれたのかは分からない。でも、あれを見て私も過去を羨むのではなく、傷や失敗すらも糧にして成長したいと思った。


「マルティナ公女にお会いすることは可能でしょうか。すべての始まりはあの人だわ」


売られた喧嘩は買わないとね?


「すっかり逞しくなったな。そういえばお前はお転婆娘だったのを思い出したよ」

「そうねぇ、王子妃教育ですっかりお淑やかになったと思ったけど、本質は変わらないわよね」

「ね?お姉様は本当は強いから大丈夫だって言ったでしょう?」


みんな好き勝手に言ってくれるわね。


「公女は幽閉中と聞いているし、すぐには難しいかもしれないが……まずは、再調査依頼からだな。前回の調査が不十分だったのが問題なんだ。こちらの要望も聞いていただかないとな?」


フフフッ、と笑うお父様がちょっと怖い。
でもそうね。絶対に調査が足りていないのよ。魔法なんて過去の遺物だから難しいのは分かるけど。
そもそもどうやってあそこまでの大規模な魔法が使えたのか。そこまでの力があるなら、いままでも色々やらかしていそうだけど、そんな話は聞かないし。
恋心はそこまでのパワーを発揮できるの?
恋愛小説みたいね。愛の力で!ってやつかしら。でも、普通は愛の力で王子の呪いを解くとかが王道よね。逆に呪ってるから困ったものだわ。

待ってなさい、マルティナ公女。呪い返しにあったからなんなの?最後まで責任持って解除してもらうから!
あと、謝罪してもらわないと気が済まないわ。許すつもりはないけど、許されないから謝らないなんてらおかしいでしょう。
臭いものに蓋をするように、こっそり母国に帰るなんてどうなの?
だめね、コレも呪いの反動?怒りがおさまらないわね。顔を見た瞬間殴らないように気をつけましょう。




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