25 / 50
25.
しおりを挟む
白磁に少し歪な金のラインが入った小振りな器。不思議な美しさがある作品だ。
「東国では割れた陶器を処分するのではなく、丁寧に継いで新しい物に生まれ変わらせる技法があると知った。
不完全な美。これを君にも見せたいと思った。受け取ってもらえると嬉しい」
とても短いメッセージ。どんな意味が込められているのかは一言も書いていない。
でも、きれいね……壊れたものだなんて思えない。傷付いたことを隠すのではなく、それすらも魅力に変えるなんて素敵だわ。
謝罪でもなく、愛を乞うわけでもなく。
どうして……そう、意味を探そうとする私がおかしいのかしら。
「リーゼ、大丈夫かい?」
「お父様……」
「ん?あぁ、美しいね。それは金継ぎという技法だよ。殿下からの贈り物か」
「ご存知なのですね」
「この国にはまだあまり入ってきていないが、印象的で覚えているよ。殿下は何て?」
「それが何も書いていなくて。どういう意図で贈られたのか分からないのです。とても綺麗だけど、受け取っていいのかしら」
もうお別れしたのに。
「殿下は今、国を離れているそうだ。旅先で知ったのかな。ただのお土産かもしれないよ?」
意地悪。お土産だなんて考えが浮かばない私を笑ってるでしょう。
「時として自分の心情にピッタリの作品に出会うことがある。その感動を分かち合いたかったのかもしれないね」
あぁ、確かに。今の私達だからこそ心に響くのかもしれない。
でも国を離れたのね。それなら魔法の効果も弱くなったかしら。先にこちらの話をしないといけないわね。
「お父様、実は私も魔法に掛かっていたかもしれません。聞いていただけますか?」
それから、家族全員に話を聞いてもらった。
「本当に迷惑な話ね」
そうね、ユリアの言う通り。
「学園を辞めるかい?留学でもいいね」
お父様ありがとう。私もそう思うわ。
「いっそのこと結婚しちゃう?」
お母様、相手がいません!
みんな私に甘いなあ。ずっと弱々で泣いてばかりだった情けない娘なのに。
「心配してくれてありがとう。でも、私は逃げたくない。ここまでされて許すほど優しくもないわ」
今、すごく悔しい。ここまで人生を変えられたことに。少しも抗えなかった自分自身にも腹が立つ。
逃げてしまえば楽にはなれる。でも、心のどこがで一人だけ逃げた後ろめたさが一生ついて回ると思う。私はこれ以上負けたくない。
殿下がどういう思いであの器を贈ってくれたのかは分からない。でも、あれを見て私も過去を羨むのではなく、傷や失敗すらも糧にして成長したいと思った。
「マルティナ公女にお会いすることは可能でしょうか。すべての始まりはあの人だわ」
売られた喧嘩は買わないとね?
「すっかり逞しくなったな。そういえばお前はお転婆娘だったのを思い出したよ」
「そうねぇ、王子妃教育ですっかりお淑やかになったと思ったけど、本質は変わらないわよね」
「ね?お姉様は本当は強いから大丈夫だって言ったでしょう?」
みんな好き勝手に言ってくれるわね。
「公女は幽閉中と聞いているし、すぐには難しいかもしれないが……まずは、再調査依頼からだな。前回の調査が不十分だったのが問題なんだ。こちらの要望も聞いていただかないとな?」
フフフッ、と笑うお父様がちょっと怖い。
でもそうね。絶対に調査が足りていないのよ。魔法なんて過去の遺物だから難しいのは分かるけど。
そもそもどうやってあそこまでの大規模な魔法が使えたのか。そこまでの力があるなら、いままでも色々やらかしていそうだけど、そんな話は聞かないし。
恋心はそこまでのパワーを発揮できるの?
恋愛小説みたいね。愛の力で!ってやつかしら。でも、普通は愛の力で王子の呪いを解くとかが王道よね。逆に呪ってるから困ったものだわ。
待ってなさい、マルティナ公女。呪い返しにあったからなんなの?最後まで責任持って解除してもらうから!
あと、謝罪してもらわないと気が済まないわ。許すつもりはないけど、許されないから謝らないなんてらおかしいでしょう。
臭いものに蓋をするように、こっそり母国に帰るなんてどうなの?
だめね、コレも呪いの反動?怒りがおさまらないわね。顔を見た瞬間殴らないように気をつけましょう。
「東国では割れた陶器を処分するのではなく、丁寧に継いで新しい物に生まれ変わらせる技法があると知った。
不完全な美。これを君にも見せたいと思った。受け取ってもらえると嬉しい」
とても短いメッセージ。どんな意味が込められているのかは一言も書いていない。
でも、きれいね……壊れたものだなんて思えない。傷付いたことを隠すのではなく、それすらも魅力に変えるなんて素敵だわ。
謝罪でもなく、愛を乞うわけでもなく。
どうして……そう、意味を探そうとする私がおかしいのかしら。
「リーゼ、大丈夫かい?」
「お父様……」
「ん?あぁ、美しいね。それは金継ぎという技法だよ。殿下からの贈り物か」
「ご存知なのですね」
「この国にはまだあまり入ってきていないが、印象的で覚えているよ。殿下は何て?」
「それが何も書いていなくて。どういう意図で贈られたのか分からないのです。とても綺麗だけど、受け取っていいのかしら」
もうお別れしたのに。
「殿下は今、国を離れているそうだ。旅先で知ったのかな。ただのお土産かもしれないよ?」
意地悪。お土産だなんて考えが浮かばない私を笑ってるでしょう。
「時として自分の心情にピッタリの作品に出会うことがある。その感動を分かち合いたかったのかもしれないね」
あぁ、確かに。今の私達だからこそ心に響くのかもしれない。
でも国を離れたのね。それなら魔法の効果も弱くなったかしら。先にこちらの話をしないといけないわね。
「お父様、実は私も魔法に掛かっていたかもしれません。聞いていただけますか?」
それから、家族全員に話を聞いてもらった。
「本当に迷惑な話ね」
そうね、ユリアの言う通り。
「学園を辞めるかい?留学でもいいね」
お父様ありがとう。私もそう思うわ。
「いっそのこと結婚しちゃう?」
お母様、相手がいません!
みんな私に甘いなあ。ずっと弱々で泣いてばかりだった情けない娘なのに。
「心配してくれてありがとう。でも、私は逃げたくない。ここまでされて許すほど優しくもないわ」
今、すごく悔しい。ここまで人生を変えられたことに。少しも抗えなかった自分自身にも腹が立つ。
逃げてしまえば楽にはなれる。でも、心のどこがで一人だけ逃げた後ろめたさが一生ついて回ると思う。私はこれ以上負けたくない。
殿下がどういう思いであの器を贈ってくれたのかは分からない。でも、あれを見て私も過去を羨むのではなく、傷や失敗すらも糧にして成長したいと思った。
「マルティナ公女にお会いすることは可能でしょうか。すべての始まりはあの人だわ」
売られた喧嘩は買わないとね?
「すっかり逞しくなったな。そういえばお前はお転婆娘だったのを思い出したよ」
「そうねぇ、王子妃教育ですっかりお淑やかになったと思ったけど、本質は変わらないわよね」
「ね?お姉様は本当は強いから大丈夫だって言ったでしょう?」
みんな好き勝手に言ってくれるわね。
「公女は幽閉中と聞いているし、すぐには難しいかもしれないが……まずは、再調査依頼からだな。前回の調査が不十分だったのが問題なんだ。こちらの要望も聞いていただかないとな?」
フフフッ、と笑うお父様がちょっと怖い。
でもそうね。絶対に調査が足りていないのよ。魔法なんて過去の遺物だから難しいのは分かるけど。
そもそもどうやってあそこまでの大規模な魔法が使えたのか。そこまでの力があるなら、いままでも色々やらかしていそうだけど、そんな話は聞かないし。
恋心はそこまでのパワーを発揮できるの?
恋愛小説みたいね。愛の力で!ってやつかしら。でも、普通は愛の力で王子の呪いを解くとかが王道よね。逆に呪ってるから困ったものだわ。
待ってなさい、マルティナ公女。呪い返しにあったからなんなの?最後まで責任持って解除してもらうから!
あと、謝罪してもらわないと気が済まないわ。許すつもりはないけど、許されないから謝らないなんてらおかしいでしょう。
臭いものに蓋をするように、こっそり母国に帰るなんてどうなの?
だめね、コレも呪いの反動?怒りがおさまらないわね。顔を見た瞬間殴らないように気をつけましょう。
422
あなたにおすすめの小説
(完結)婚約破棄から始まる真実の愛
青空一夏
恋愛
私は、幼い頃からの婚約者の公爵様から、『つまらない女性なのは罪だ。妹のアリッサ王女と婚約する』と言われた。私は、そんなにつまらない人間なのだろうか?お父様もお母様も、砂糖菓子のようなかわいい雰囲気のアリッサだけをかわいがる。
女王であったお婆さまのお気に入りだった私は、一年前にお婆さまが亡くなってから虐げられる日々をおくっていた。婚約者を奪われ、妹の代わりに隣国の老王に嫁がされる私はどうなってしまうの?
美しく聡明な王女が、両親や妹に酷い仕打ちを受けながらも、結局は一番幸せになっているという内容になる(予定です)
あなたが捨てた花冠と后の愛
小鳥遊 れいら
恋愛
幼き頃から皇后になるために育てられた公爵令嬢のリリィは婚約者であるレオナルド皇太子と相思相愛であった。
順調に愛を育み合った2人は結婚したが、なかなか子宝に恵まれなかった。。。
そんなある日、隣国から王女であるルチア様が側妃として嫁いでくることを相談なしに伝えられる。
リリィは強引に話をしてくるレオナルドに嫌悪感を抱くようになる。追い打ちをかけるような出来事が起き、愛ではなく未来の皇后として国を守っていくことに自分の人生をかけることをしていく。
そのためにリリィが取った行動とは何なのか。
リリィの心が離れてしまったレオナルドはどうしていくのか。
2人の未来はいかに···
白い結婚の行方
宵森みなと
恋愛
「この結婚は、形式だけ。三年経ったら、離縁して養子縁組みをして欲しい。」
そう告げられたのは、まだ十二歳だった。
名門マイラス侯爵家の跡取りと、書面上だけの「夫婦」になるという取り決め。
愛もなく、未来も誓わず、ただ家と家の都合で交わされた契約だが、彼女にも目的はあった。
この白い結婚の意味を誰より彼女は、知っていた。自らの運命をどう選択するのか、彼女自身に委ねられていた。
冷静で、理知的で、どこか人を寄せつけない彼女。
誰もが「大人びている」と評した少女の胸の奥には、小さな祈りが宿っていた。
結婚に興味などなかったはずの青年も、少女との出会いと別れ、後悔を経て、再び運命を掴もうと足掻く。
これは、名ばかりの「夫婦」から始まった二人の物語。
偽りの契りが、やがて確かな絆へと変わるまで。
交差する記憶、巻き戻る時間、二度目の選択――。
真実の愛とは何かを、問いかける静かなる運命の物語。
──三年後、彼女の選択は、彼らは本当に“夫婦”になれるのだろうか?
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
【完結】亡くなった人を愛する貴方を、愛し続ける事はできませんでした
凛蓮月
恋愛
【おかげさまで完全完結致しました。閲覧頂きありがとうございます】
いつか見た、貴方と婚約者の仲睦まじい姿。
婚約者を失い悲しみにくれている貴方と新たに婚約をした私。
貴方は私を愛する事は無いと言ったけれど、私は貴方をお慕いしておりました。
例え貴方が今でも、亡くなった婚約者の女性を愛していても。
私は貴方が生きてさえいれば
それで良いと思っていたのです──。
【早速のホトラン入りありがとうございます!】
※作者の脳内異世界のお話です。
※小説家になろうにも同時掲載しています。
※諸事情により感想欄は閉じています。詳しくは近況ボードをご覧下さい。(追記12/31〜1/2迄受付る事に致しました)
【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに
おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」
結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。
「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」
「え?」
驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。
◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話
◇元サヤではありません
◇全56話完結予定
旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。
アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。
今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。
私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。
これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる