魔法のせいだから許して?

ましろ

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27.

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落ち着いて、深呼吸よ。
怒りを抑えるのに苦労する。


「……申し訳ありません。魔法が解けた反動なのか、感情の制御が難しいのです」

「なんと、そのようなことが。初めて聞きました」

「いえ、殿下もそうだったと思いますよ。魔法が解けた後の殿下はどこかおかしかったわ。私はその姿を知っているので、そういうものだと理解できましたの。
本当に事例の無かった殿下はさぞ戸惑われたことでしょう」


あの頃の狂気じみた殿下は、感情が溢れ出して止められなかったのかもしれない。
今、私が怒りを抑えるのが難しいように。
考えれば考える程、公女と王妃様に腹が立つ悪循環。早く話を終わらせないと。


「王妃様はどこまで調査に携わっていたのでしょう」

「……最初からです。学園での事態を知った陛下が私達に調査依頼をした最初から。殿下が関わっているなら自分が責任を持つとおっしゃって、報告などはすべて王妃様にあげていました」


ようするに、殿下を信じることができなかった王妃様が悪手を打ちまくり、あんな結末になったの?


「公女はどの様にして魔法を掛けていたのです?」

「祈り、です。幼い頃から毎朝祈っていたと。学園に入るまでは、皆に愛される幸せな一日になるように、という願いだったそうです」


本当に普通に祈るだけ?でも、他の人に害がある祈りじゃないから分からなかったのかしら。


「その頃は、庶子であっても疎まれることなく、皆に愛される日々だったと言っていました。それが周りの優しさか魔法かは判断ができません」


そうよね、たぶん誰に聞いても、庶子だから本当は意地悪したかったのに!なんて言う人はいないでしょう。品性を疑われるもの。


「学園に入ってからは殿下に愛されるように、に変わったそうです。でも、まったく効果が得られなくて焦っていたと。ただ一度だけ、歓迎会の時に公女がお菓子を食べている姿を愛おしそうに見つめていたそうです。その瞬間に自分を愛するよう強く強く祈ったら、やっと願いが叶ったと言っていました」


……まさか……またお菓子を食べてる笑顔を見て好きになったの?


「ただその時の殿下が、公女は焼き菓子を食べていたのに、ケーキを食べている姿が、と言っていたので勘違いしていて不愉快だったと話していました」


まさかの11歳の私?!
私を思い出して、魔法に掛けられたの?
今更過ぎるわよ……どうして誰も教えてくれなかったの!
感情が抑えられず、両手で顔を覆い深くため息をつく。


「あ!調査結果で分かってます!殿下がお嬢様に一目惚れした瞬間なんですよね?お嬢様への愛の為に魔法に掛からず、初恋の思い出を利用されてとうとう魔法に掛けられるも、愛する人を手にかけたショックで自力で魔法を解いてしまう!歪んだ愛の呪いを真実の愛で打ち砕くなんて凄いです!」


喜々として語りだしたのはなぜ?
それはどこのファンタジー小説かしら?


「……アドラーさん、少し黙って」

「すみません!魔法が忘れられかけたこの時代に、こんな愛に満ちた奇跡に出会えると思わず!」

「本当に黙って!」


……そんなに綺麗なお話じゃないわ。王子の愛にお姫様は気付かず、継母にも邪魔されて、とっくに別れておしまい。物語になるわけないじゃない!


「魔力が上がった理由は?」

「あ、はい!魔導具の使用と集団心理ではないかと推測されます」

「魔導具?」

「はい。初期の調査では分かっていなかったのですが、彼女は祈る時に母から譲られたネックレスを握り祈っていたそうです。それが魔導具だったようですね」


そんな便利グッズを子供に与えないで欲しかったわ。でも愛されたいは度を越さなければ普通の願いよね。


「集団心理って?」

「たぶん、公女の殿下への想いは周囲にバレていたのではないでしょうか。
それを見た人達が二人の恋物語を想像する。純愛だったりあなたが悪役令嬢だったり色々でしょう。ですがそれらが公女の願いと同じ指向性だったんです。殿下と公女が幸せになり、あなたは捨てられる。この2つですね。
殿下には魔法が掛からなかったけど、周囲にはじわじわ浸透していていき、余計に多くの人がそう願ってしまった。
昔は貴族の方が魔力が高いと言われていました。たぶん、血の濃さでしょう。今ではすっかり薄れてしまっていますが、たぶんゼロではないのです。
そんな僅かな魔力を持った貴族が多い学園で、皆が同じことを思う。力が強い公女と同じ願いを。更にそこには増幅する魔導具があった。
想像した物語のような出来事が目の前で起きている。無責任な楽しさでもっともっとと望む。公女と殿下の恋物語が真実になり、悪役令嬢のあなたは最終的には殿下に断罪される。王道の物語のラストです。
人間はもともと残虐性を持ってますから、あなたを貶めるのも皆がやっているからと罪悪感を感じない。
これが事件の真相あらましではないかと、今現在では考えられています。
ですが、すべては推測です。そこまでの魔法解析はできないのですよ」


公女だけでなく、恋物語を楽しんだ学園皆が犯人なの?


「そう……すべては魔法のせいで……私は運が悪かったというのね」





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