魔法のせいだから許して?

ましろ

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36. マルティナside

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どうして?ただ愛されたかっただけなのに。幸せになりたかっただけなのに。
彼女の怒りは正しいのだろう。でも仕方がなかった、あなたが私の幸せを邪魔するから!


「……本当に私のせいなのかしら。ただあなたが皆から嫌われていただけじゃないと、どうして言い切れるの。なんでも私のせいにしないで!」


そうよ。きっとそう!私は悪くない。あなたがただ嫌われていただけよ。


「そうですか。ではジーク様も魔法のせいではなく、もともとあの様な性分を持っていたというのね?あなたとの真実の愛で、そんな悪い面が表に出てしまったと言うのかしら。
婚約者を平気で冷遇して楽しそうに浮気をして。あの時、あなたも見ていたでしょう。私の髪を掴んで土下座を強要したわね。あなたに謝罪をするようにと。額から血を流していても許してもらえなかった。あの暴力も本当の彼がやったことなのね?」


違う……彼は暴力なんて振るわないわ。でも、否定したら私がリーゼロッテさんに酷いことをしたのを認めることになる。


「……誰にだって過ちはあるわ。ジークは私を愛しすぎただけよ」


ごめんなさい、ジーク!でもこれ以上国に迷惑は掛けられないのよ!


パンッ!


一瞬何が起きたか分からなかった。ジンッと頬に痛みが走る。
……信じられない。私を殴るなんて!


「あなた!」

バシッ!!


反論しようとすると、さっき以上の力で再び頬を張られた。痛い、怖い!


「その程度の思いで!自分可愛さにジーク様を悪人にしてしまえる程度の思いで何が真実の愛よ!ふざけるな!!」


そう叫んでもう一度大きく手を振り上げるのが見えた。


「ヒッ!」


痛みが襲ってくる恐怖に、両腕で顔を庇い縮こまる。こんな扱いを受けた事は今まで一度もなかったのに!
しかし、痛みはやってこなかった。
恐る恐る顔を上げると、リーゼロッテさんの手を止める男性が目に入った。

ジーク……じゃない。でも似ているわ


「リーゼロッテ、気持ちは分かるけど、これ以上は駄目だ。君が怪我をしたらジークが悲しむ」

「だって!この女は許せません!!」

「うん、許さないから大丈夫。少し休憩していて。続きは私がやろう」


男は冷たい眼差しを向けながらゆっくりと近付いて来た。軽蔑しきった瞳。私の味方ではないと物語っている。


「はじめまして。第一王子のアルブレヒトだ。弟のことをずいぶんと貶めてくれたね。さぁ、どうやって裁こうか」


第一王子……ジークのお兄様?
どうしよう、本当に裁かれるの……


「わ、私は貶めてなんかいません!」

「ではジークは狂人だと?お前のくだらない恋愛ごっこのせいで、どれだけ多くの人間の人生が狂ったと思う?
学園長と教師5名退職、生徒11名は修道院もしくは退学。王妃は蟄居。陛下も時期を早め退位するだろう。第二王子は婚約取り消し、精神状態不安定のため王位継承権の放棄すら考えられている」


なんで……退職とか修道院って何。どうして陛下や王妃まで?……婚約……取り消されたの?


「……ジークは婚約してないの?」

「は!ここまで愚かなのか。今言われた内容で一番先に聞くのがそれか?なんだ。リーゼロッテとの婚約が白紙なら、次は自分が婚約者になれるとでも?」


だってジークは私を愛しているわ。たくさん愛を囁いてくれた、抱きしめてくれた。私の望む通りに。


「お前は我が国の王子を意のままに操り王家に潜り込もうとした。なぜだ。そのまま操り王にでも据えようとしたのか?
貴様は国家転覆を狙った極悪人として我が国の刑罰を受けさせる。すでに公国からは籍が抜かれているから只の平民としてだ」


……は?

国家転覆ってなに?

籍が抜かれたってなに?

極悪人として刑罰を受けるってなに?!


「いや!違うわ!私はジークと愛し合っただけよ!国家転覆なんて考えた事も無いわ!」

「お前のような嘘つきの言うことを信じると思うのか?」

「ごめんなさい!私が祈ったの!ジークが私を愛するように!リーゼロッテが苦しむように!皆が私とジークを祝福してリーゼロッテを貶めるようにって!伯爵令嬢なんてジークに相応しくない、公女の私こそが相応しいって!
それだけよそれだけ!国なんて狙ってない!!」


はぁ、はぁ、はぁ
声の限り、自分の罪を叫んだ


どうして何も言ってくれないの。ちゃんと言ったわ。私は罪人ではないでしょう?


「魔法を使っていた自覚があるのだな?」

「…はい。ジークが分かりやすく変わったから」

「幸せだったか?」

「はい!」


あの一年は本当に幸せだった!大好きなジークが側にいて、皆がお似合いだと祝福をする。憎いリーゼロッテは虐められ、泣きそうな顔で私達を見ている。最高の一年だったわ。


「これで証言が取れた。一年もの長期間、自分の意志で魔法を使い、大勢の人間を操っていたとな。そして未だに罪の意識が無い。減刑は無いな。我が国は死刑は行わない。悪党を楽にしてやる必要は無いからだ。死ぬまで国の為に働いてもらおう。
おい、牢に連れて行け!」

「そんな、どうして!ちゃんと認めたわ!」

「口を開くな。弟の未来を潰した屑の声など聞きたくもない」


その冷たい言葉を最後に私は部屋から引き摺り出された。今は冷たい牢獄に入れられている。貴族牢ではない、本当の牢獄。

どうしてこんなことに……

何が駄目だったの?あんなに幸せだったのに。こんな未来は望んでなかった。今からでも毎日祈れば変わるかな。
そうよ。忘れていたわ、祈ればいいの。



早くここから出られますように

愛される一日を過ごせますように

あの幸せな日々が戻りますように──





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