魔法のせいだから許して?

ましろ

文字の大きさ
38 / 50

38.

しおりを挟む
あまり眠れなかった……

断罪劇が思ったよりショックだったみたい。
ちゃんと言葉を交わせば分かり合えるかも、なんてありえないと知ってしまった。

結局、心からの謝罪をしたのは王妃様だけだった。あんなにたくさんの人がいたのに。
怖いな。相手より優位に立つ為なら平気で他人を傷付ける人が。弱い人をなぶって愉悦を覚えるとか意味が分からない。

真実の愛もアレだったしね。愛してるといいながら、自分の立場を守る為なら愛する人を悪者にする。ありえないわ。やっぱりもう一発殴りたかった。あの程度の愛にたくさんのものが犠牲になったのかと思うと本当に腹立たしい。


……綺麗なものが見たいな


何がいいだろう。いっそのこと、このまま旅に出ようか。すべてを捨てて美しい海原を渡れば、この汚泥の様な人の悪意から逃げられる?
アルブレヒト殿下に頼もうかな。もういいんじゃないかな、逃げちゃっても。

……でも約束は守らなきゃよね。会って話をしましょうと手紙を送ってしまった。気が重い……魔法が完全に解けて、彼らはどう変わっただろう。





三人と会う場所はフィデルのタウンハウスになった。先輩はまだお父様に謝罪をしていないから我が家には呼べないし、学園には私が行きたくなかった。多分そういう事情を察してくれていたのだろう。彼からうちに集まろうと言ってもらえて本当に感謝している。
先に先輩と話す時間を設けてくれたことも。

久しぶりに会う先輩は少し痩せた気がする。


「先輩、黙って領地に行ってしまってすみませんでした」


先に逃げたのは先輩だけど、騙すように領地に行ったことは謝らないといけないわよね。


「いや、俺の方こそ本当に悪かった」

「……それは、何についての謝罪ですか?」


先輩が少し驚いている。でも、何についてなのか言ってくれないと答えようが無い。それとも今までの私ならとりあえず許していたかな。でもお父様も怒っていたし、なあなあで済ませるのは良くないわよね?


「……怒っているのか?」

「ですから何についてです?主語が抜けていて分かりづらいです。きちんとお話しましょう」

「だからそれは……伯爵と殿下の許しを得ず、勝手に入室した件だよ」

「よかったわ。別の件だと言われたらどうしようかと思いました。ですが、その謝罪は父にしてください。あれからかなりの日にちが経っています。叱責は覚悟してくださいね」


とりあえずその件を一番に謝罪してくれてよかった。本当にどうしてあんなに逃げていたのか。せめて手紙でもいいから送ってくれたらよかったのに。


「なんだか雰囲気が変わったな。冷たくなった気がする。やっぱり俺のこと呆れているのか?」


冷たい?それはどういう意味だろう。
……そうか。いままでは先輩を盲目的に信頼していた。私をずっと助けてくれたヒーロー。そんなつもりは無かったけど、色々知ってしまって温度差があるのかな。よく分からないわ。
でも、ヒーローじゃないって教えてくれたのは先輩自身だよ?手紙にそう書いてあったじゃない。もしかして……あれは許してもらえるはずだと思って送ってきただけなの?


「……手紙で……謝罪をしたいと書いてきたのは先輩よ?だから私は聞く覚悟をもってここに来たの。それとも、内容は手紙で済ませたから、言葉では全部ひっくるめてごめんで終わらせるということなの?」


なんだろう。すごく心臓がバクバクしてる。これ以上聞きたくない。……先輩は本当はどういう人だったの?


「そんなに俺を馬鹿にしたいのか?」


卑屈な表情。こんな顔は初めて見た。
先輩は少し意地悪だけど、本当は優しくて、頼りになって……


「もう知ってるだろ!俺が殿下のことを勝手にライバル視してたこと!そんな俺の事が馬鹿みたいだと思っているんだろ?勝てるわけないのにって!」


ずっと抑えてたのはジーク様への劣等感なの?なぜ?あなたがいたから私は……
待って。嫌だ、気付きたくない。


「先輩……私が好きだって言ってくれましたね。でもずっと不思議だったの。どうして、ジーク様の前で告白したの?」

「あれは!」

「ねぇ、正直に言って。あの時……ううん、ジーク様の魔法が解けてから、自分の感情がどう変化したか。マルティナ様の魔導具が回収されたのは知ってるわよね?その後、どう変わったのか」


1年間ずっと、私と先輩は図書室という小さな世界で、友情のような愛情のような、曖昧な関係のまま過ごしていた。名前のない関係が私にはありがたかった。形だけになっていても婚約者がいるのに恋などできないから。やられたからってやり返したくなかった。
でも……マルティナ様は私が他の人を好きになることを望んでいたの?
もしかして、気付いていた?先輩のジーク様への劣等感と私への恋心を。……利用されていたの?あの空間は魔法で作られた偽物だったというの。


「もしかして先輩は気付いてた?ジーク様のおかしな行動が魔法の反動だって」

「!!」


本当に頭がいいんだな。でも嘘は下手くそね。

先輩のそんなに余裕がない顔を初めて見た。私の勘も結構当たるみたいだよ、ビアンカ。
もうこれ以上聞きたくない。でも、聞かなければ前に進めない。私もだけど先輩も。


「……あの1年間は本当に幸せだったんだ。初恋の女の子と毎日会って少しずつ仲良くなれて。アイツへの劣等感なんて感じなくなった。だからいい先輩ぶるのも簡単だった。
でも、殿下が魔法を解いてから……俺は前以上に殿下への劣等感が増したんだ。お前の為に魔法を解くなんてどれだけだよ!どこまで王子様なんだ!
だから絶対に邪魔をしてやるって思った。お前はアイツを怖がるからきっと俺のものにできるって思ったのに。どこまでもお前を諦めず、お前もだんだん怖がらなくなった。とうとう話し合いをするなんて言うから!
徹底的に見せ付けようと思ったんだ。ビアンカに煽られて、でもアイツが今更どう頑張ろうとお前は俺を選ぶって思ったんだ!だからあの場で告白したんだよ!それなのに……お前は俺を冷たくあしらったんだ。
こんなはずじゃなかったのにっ!!」



しおりを挟む
感想 156

あなたにおすすめの小説

(完結)婚約破棄から始まる真実の愛

青空一夏
恋愛
 私は、幼い頃からの婚約者の公爵様から、『つまらない女性なのは罪だ。妹のアリッサ王女と婚約する』と言われた。私は、そんなにつまらない人間なのだろうか?お父様もお母様も、砂糖菓子のようなかわいい雰囲気のアリッサだけをかわいがる。  女王であったお婆さまのお気に入りだった私は、一年前にお婆さまが亡くなってから虐げられる日々をおくっていた。婚約者を奪われ、妹の代わりに隣国の老王に嫁がされる私はどうなってしまうの?  美しく聡明な王女が、両親や妹に酷い仕打ちを受けながらも、結局は一番幸せになっているという内容になる(予定です)

あなたが捨てた花冠と后の愛

小鳥遊 れいら
恋愛
幼き頃から皇后になるために育てられた公爵令嬢のリリィは婚約者であるレオナルド皇太子と相思相愛であった。 順調に愛を育み合った2人は結婚したが、なかなか子宝に恵まれなかった。。。 そんなある日、隣国から王女であるルチア様が側妃として嫁いでくることを相談なしに伝えられる。 リリィは強引に話をしてくるレオナルドに嫌悪感を抱くようになる。追い打ちをかけるような出来事が起き、愛ではなく未来の皇后として国を守っていくことに自分の人生をかけることをしていく。 そのためにリリィが取った行動とは何なのか。 リリィの心が離れてしまったレオナルドはどうしていくのか。 2人の未来はいかに···

白い結婚の行方

宵森みなと
恋愛
「この結婚は、形式だけ。三年経ったら、離縁して養子縁組みをして欲しい。」 そう告げられたのは、まだ十二歳だった。 名門マイラス侯爵家の跡取りと、書面上だけの「夫婦」になるという取り決め。 愛もなく、未来も誓わず、ただ家と家の都合で交わされた契約だが、彼女にも目的はあった。 この白い結婚の意味を誰より彼女は、知っていた。自らの運命をどう選択するのか、彼女自身に委ねられていた。 冷静で、理知的で、どこか人を寄せつけない彼女。 誰もが「大人びている」と評した少女の胸の奥には、小さな祈りが宿っていた。 結婚に興味などなかったはずの青年も、少女との出会いと別れ、後悔を経て、再び運命を掴もうと足掻く。 これは、名ばかりの「夫婦」から始まった二人の物語。 偽りの契りが、やがて確かな絆へと変わるまで。 交差する記憶、巻き戻る時間、二度目の選択――。 真実の愛とは何かを、問いかける静かなる運命の物語。 ──三年後、彼女の選択は、彼らは本当に“夫婦”になれるのだろうか?  

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

無価値な私はいらないでしょう?

火野村志紀
恋愛
いっそのこと、手放してくださった方が楽でした。 だから、私から離れようと思うのです。

【完結】亡くなった人を愛する貴方を、愛し続ける事はできませんでした

凛蓮月
恋愛
【おかげさまで完全完結致しました。閲覧頂きありがとうございます】 いつか見た、貴方と婚約者の仲睦まじい姿。 婚約者を失い悲しみにくれている貴方と新たに婚約をした私。 貴方は私を愛する事は無いと言ったけれど、私は貴方をお慕いしておりました。 例え貴方が今でも、亡くなった婚約者の女性を愛していても。 私は貴方が生きてさえいれば それで良いと思っていたのです──。 【早速のホトラン入りありがとうございます!】 ※作者の脳内異世界のお話です。 ※小説家になろうにも同時掲載しています。 ※諸事情により感想欄は閉じています。詳しくは近況ボードをご覧下さい。(追記12/31〜1/2迄受付る事に致しました)

【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに

おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」 結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。 「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」 「え?」 驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。 ◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話 ◇元サヤではありません ◇全56話完結予定

旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。

アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。 今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。 私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。 これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。

処理中です...