魔法のせいだから許して?

ましろ

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44. ジークハルトside

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魔導具研究所の準備もあらかた終わったな。

卒業まであと2ヶ月。思ったよりも時間がかかってしまった。でもこれでやっと始められる。悪夢の終わりを。





どれだけ後悔しても仕切れない。何度あの一瞬に戻りたいと思ったか。

リーゼを思い出しただけなのに──

今でも夢に見る。可愛かったリーゼが魔女に乗っ取られるおぞましさ。

たぶん、私は恋をしてはいけなかった。
母上の言う事は間違っていないのだろう。私の恋心はあってはならなかったのだ。私が王子でありながら恋という隙を見せてしまったから、あんなにも多くの人が罪を犯してしまった。そしてリーゼを苦しめ傷付けてしまった。
それでも、時は戻らない。だから少しでも前に進まなくては。

魔法……忌々しい代物だが、あれは使い方を間違えただけだ。もっと違う使い方ができれば。だが、魔力持ちなどいないし、いたとしても他人の為に平和を祈り続ける様な聖者ではないだろう。自分が魔力無しなのが悔しいところだが、無い物ねだりをしても仕方がない。有るもので……有るもの。魔力以外の力?そうだ、魔導具は本当に魔力でしか動かせないのか?

それからはひたすら魔導具について調べ続けた。現実を忘れたかったのもある。
ギレッセンに来て倒れて、本当に王子としては終わりなのだと悟った。これも私への罰なのだろう。
でも、兄上にはもう私は必要ない。それならば問題はない。せめて魔導具の開発で貢献できるといいな。私が国の為に生きるのは当然だ。王家の者としての責務だから。でも結婚だけは無理だな。想像しただけで吐き気がする。女性に触れられないのはある意味よかった。

金継ぎを教えてくれたのは先生だった。
倒れた頃の私は思ったよりも疲弊していたそうだ。国からもある程度の情報開示があったのだろう。
あれを見せてもらった時、思わず涙が溢れた。
もう二度と元には戻れず、壊れたまま罪を償い続けるのだと思っていた。でも、割れた破片を丁寧に継ぎ、傷があるのにも関わらず、いや、それこそが魅力かのような姿に救われた気がしたのだ。
でも私が救われるなど許されない。リーゼならこれを受け取る権利があると思った。罪の無い彼女こそが救われなくては。
送り返されるかもしれないと思いつつ、少しでも癒やしになればと祈りながら彼女に送った。





まさかリーゼがギレッセンまで来るとは思わなかった。二度と会えないと思っていたのに……

駄目だな。リーゼに会えただけで嬉しくなる。許されるはずがないのに。どうしてこんなにも愛しいと思ってしまうのだろう。
彼女が私の手にそっと触れる。
温かい。久しぶりに感じる人の体温。
リーゼならこんなにも心地いい。
この温もりだけでこれからも生きていける。そう思ったくらい、私の心を満たしただなんて君は思いもしないだろうね。

それなのに、まさか新しい繋がりを求めてくれるとは思わなかった。




それからは穏やかな日々だった。
ロッテとはもちろん恋人では無い。ただとても大切な人。そんな君がどこかで繋がっている。それだけでいい。
それなのに、君は一緒の仕事がしたいとまで言ってくれた。でも駄目だよ。きっとロッテは同郷の人間が私しかいないから無意識に頼っているだけだ。もっと広い世界があるのだから、いつまでもあの事件に囚われる必要はないんだ。
魔導具研究を素敵だと言ってくれてありがとう。その言葉だけで頑張ることができるよ。
どうか君は自由に、幸せに生きてほしい。





「ハルト様、私ね、この国に来る時に美しいものが見たいと思ったんです。だから船旅を選んだのよ。海はとても綺麗で大きくて、自分の悩みなんてちっぽけだと思ったわ。凄く酔ったけど、望んだ以上に美しい景色が見れて大満足だったの。
でもね、この学園でもっと美しいものを見つけたわ。何かわかりますか?」


突然の質問に答えが見つからない。この学園でロッテが美しいと思ったもの?


「この学園にそんなに美しい物なんてあった?」

「はい!降参ですか?」


残念ながらまったく分からない。両手を上げて降参の意思を伝える。


「それはね、ハルト様よ」

「……は?」

「ふふ、そんな顔初めて見ました!」


いや、だって。まったく意味が分からない。顔など気にしている場合じゃないだろう?


「魔導具の話をしている時のハルト様ですよ。
どんな困難も諦めることなく、ひたすら最善を目指して努力することを止めないあなたを、とても美しいと思ったわ。
あれから色々な仕事を調べました。やり甲斐のありそうなもの、楽しそうなもの、たくさんありましたよ。
でも、あの時の感動を超えるものはなかった。
私もあなたみたいになりたい。どこまでも諦めず、人の幸せを願える人。
だから、卒業したらあなたの仲間に入れてくれませんか?」


本当に……どこまで私を救い続けるのだろう。まだ側にいることを許すのか?


「……何年かかるか分かりませんよ?」

「承知の上です」

「死ぬまで完成しないかもしれません」

「あら、まさかの弱気ですか?」

「……私は研究をやめません」

「同じですね!」

「……ずっと一緒にいることになりますよ」

「新しい繋がりを求めたのは私です」


駄目だ。私に断れるわけがない。


「こんな私を美しいだなんて、目がおかしいのでは?」

「あはは!そんなこと言うのはあなただけよ。さあ、私の気持ちは伝えたわ。どうですか?」


どうって。もういいか。だって私のせいじゃない。自由になってと扉を開けたのに、戻って来たのはロッテだ。


「分かりました。やる気のある方は大歓迎ですよ。じゃあ仲間ついでに私もお願いごとをしてもいいかな?」

「いいですよ?」

「リーゼロッテ嬢。卒業パーティーのパートナーになっていただけませんか?」


跪いて手を差し伸べる。
こうなったら自分の気持ちに正直に生きてやる。


「あら、仕事プラスダンスのパートナーも?」

「そうだね。実は未だにロッテ以外は吐き気がする。だから今後もパートナーが必要な時はお願いできないかな」

「ボスの頼みなら喜んでお受けしますわ」



今はもう恋ではなく、ただただ愛しい人。
初恋で、元婚約者で、たんなる同郷の人間で、今後は仕事仲間。でもどんなに関係が変わろうとも、君を大切に思うこの気持ちだけは、ずっとずっと変わることはないだろう。




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