魔法のせいだから許して?

ましろ

文字の大きさ
45 / 50

45. マルティナside

しおりを挟む
「34番、手紙だ」


34番。今の私の名前。
ここでは誰も私の名前を呼ばない。

朝から晩までひたすら働き、粗末な食事と風呂は無く、夜に水の入った桶を渡され、それを使って体を拭うだけ。

私は何の為に生きているのだろう。

そんな地獄の様な日常の中、ときおり届く手紙。

『マルティナ様、お元気ですか』

元気なわけがないでしょう!!
どこまでも私を馬鹿にし続ける女だ。

くだらない日常を書き連ね、ジーク様との繋がりを見せつける。
なぜあの二人はいつまでも側にいるの?
私はこんなに苦しい目に合っているのに……
手紙を読む度に悔しさで涙が溢れた。


でも……彼女だけなのだ。私の名を呼ぶのは。

『マルティナ様』

平民落ちした私に敬称を付けて呼ぶ嫌味な女。父も友人も、もちろんあんなに愛したジーク様も、誰一人来ないこんな牢獄に手紙を送り続ける愚か者。

もし彼女がいなくなったら?

……ゾッとした。
誰からも名前を呼ばれず、ただただ働き続けるの?あと何年?……刑期を聞いていない……まさか一生?

ただ……ただ愛しただけなのに

孤独という恐怖が私を蝕む。
誰か、誰でもいい。名前を呼んで欲しい。
34番じゃない!私はマルティナよ!!


最近手紙が届かない……なぜ?

読めば腹が立つことばかり。でも、私をマルティナにしてくれる唯一のモノ。

あれがなくなったらどう生きればいいの……

いっそのこと死にたい。
でも、自死する勇気などないのだ。




「やあ、久しぶりだね」

「……アルブレヒト殿下……」

「うん、いいね。少しは反省しているかな。貴族令嬢だった君には辛い毎日だよね?」


反省?何を……もうあまり考える力が無い。


「申し訳ありません、私が愚かでした」


ただ生きたいがために謝罪の言葉を口にする。


「リーゼロッテから知らされているかな。ジークがね、王位継承権を放棄したよ。そして今は王子ではない。クリューガー伯爵だ。爵位すらいらないと言うのを宥めるのが大変だったよ。だから領地を持たない名ばかりの伯爵位。どうだ?君のおかげて没落したあの子は。
女性に触れられると吐くそうだよ。一年もの間好きでもないお前の恋人役を無理矢理やらされていたせいだ。あれでは結婚すらできない」


何それ……ジーク様が領地すら持たない伯爵?無理矢理恋人役をしていて女性に触れられない?


「……違うわ……私を愛しているから他の女に触れられないだけよ……」

「ああ、やはり反省などしていないか。リーゼロッテがね、無期懲役はさすがに可哀想だと言ったんだ。だから刑期を決めてあげてほしいとね。残念だよ。あの子の望みを叶えることは出来ないようだ」

「あ……」


なんてことを!助かる最後のチャンスを失ってしまった!!


「……なぜあの女の意見が通るのよ!なぜあなたが判断するの!陛下は?陛下なら!」

「はは!残念ながら私はもう王子ではないよ。今では私が国王だ。なぜリーゼロッテが?可愛い妹分でジークの宝物だからね。これからは同じ仕事を頑張ってくれるし、あの子が唯一触れることのできる女性だ。大切にするに決まっているだろう?
卒業式のパーティーはもちろん彼女がパートナーだったよ。私の戴冠式もね。これからの行事もすべてそうなるだろう」

「……なんで……」

「お前の汚い愛魔法などでは二人の絆は切れなかったようだ。残念だったな。あとこれを渡しておくよ。」


渡されたのはあの女からの手紙。


「それが届かなくなれば、彼女のありがたみが理解できるかと思ったのだけどな。お前には難しいことだったようだ。
ではな、また何年かしたら様子を見に来るよ」


何年かしたら……何年?この生活をあと何年も……


「ごめんなさい!違うの反省しているわ!」


どれだけ叫ぼうと、振り向くことなく悠然と去って行ってしまった。
私は自ら助かるチャンスを失ったのだ。

呆然としながらも残された手紙を開く。

『マルティナ様、お元気ですか』

いつもの書き出しを見て、声を上げて泣いた。








しおりを挟む
感想 156

あなたにおすすめの小説

(完結)婚約破棄から始まる真実の愛

青空一夏
恋愛
 私は、幼い頃からの婚約者の公爵様から、『つまらない女性なのは罪だ。妹のアリッサ王女と婚約する』と言われた。私は、そんなにつまらない人間なのだろうか?お父様もお母様も、砂糖菓子のようなかわいい雰囲気のアリッサだけをかわいがる。  女王であったお婆さまのお気に入りだった私は、一年前にお婆さまが亡くなってから虐げられる日々をおくっていた。婚約者を奪われ、妹の代わりに隣国の老王に嫁がされる私はどうなってしまうの?  美しく聡明な王女が、両親や妹に酷い仕打ちを受けながらも、結局は一番幸せになっているという内容になる(予定です)

あなたが捨てた花冠と后の愛

小鳥遊 れいら
恋愛
幼き頃から皇后になるために育てられた公爵令嬢のリリィは婚約者であるレオナルド皇太子と相思相愛であった。 順調に愛を育み合った2人は結婚したが、なかなか子宝に恵まれなかった。。。 そんなある日、隣国から王女であるルチア様が側妃として嫁いでくることを相談なしに伝えられる。 リリィは強引に話をしてくるレオナルドに嫌悪感を抱くようになる。追い打ちをかけるような出来事が起き、愛ではなく未来の皇后として国を守っていくことに自分の人生をかけることをしていく。 そのためにリリィが取った行動とは何なのか。 リリィの心が離れてしまったレオナルドはどうしていくのか。 2人の未来はいかに···

白い結婚の行方

宵森みなと
恋愛
「この結婚は、形式だけ。三年経ったら、離縁して養子縁組みをして欲しい。」 そう告げられたのは、まだ十二歳だった。 名門マイラス侯爵家の跡取りと、書面上だけの「夫婦」になるという取り決め。 愛もなく、未来も誓わず、ただ家と家の都合で交わされた契約だが、彼女にも目的はあった。 この白い結婚の意味を誰より彼女は、知っていた。自らの運命をどう選択するのか、彼女自身に委ねられていた。 冷静で、理知的で、どこか人を寄せつけない彼女。 誰もが「大人びている」と評した少女の胸の奥には、小さな祈りが宿っていた。 結婚に興味などなかったはずの青年も、少女との出会いと別れ、後悔を経て、再び運命を掴もうと足掻く。 これは、名ばかりの「夫婦」から始まった二人の物語。 偽りの契りが、やがて確かな絆へと変わるまで。 交差する記憶、巻き戻る時間、二度目の選択――。 真実の愛とは何かを、問いかける静かなる運命の物語。 ──三年後、彼女の選択は、彼らは本当に“夫婦”になれるのだろうか?  

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

無価値な私はいらないでしょう?

火野村志紀
恋愛
いっそのこと、手放してくださった方が楽でした。 だから、私から離れようと思うのです。

【完結】亡くなった人を愛する貴方を、愛し続ける事はできませんでした

凛蓮月
恋愛
【おかげさまで完全完結致しました。閲覧頂きありがとうございます】 いつか見た、貴方と婚約者の仲睦まじい姿。 婚約者を失い悲しみにくれている貴方と新たに婚約をした私。 貴方は私を愛する事は無いと言ったけれど、私は貴方をお慕いしておりました。 例え貴方が今でも、亡くなった婚約者の女性を愛していても。 私は貴方が生きてさえいれば それで良いと思っていたのです──。 【早速のホトラン入りありがとうございます!】 ※作者の脳内異世界のお話です。 ※小説家になろうにも同時掲載しています。 ※諸事情により感想欄は閉じています。詳しくは近況ボードをご覧下さい。(追記12/31〜1/2迄受付る事に致しました)

【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに

おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」 結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。 「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」 「え?」 驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。 ◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話 ◇元サヤではありません ◇全56話完結予定

旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。

アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。 今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。 私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。 これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。

処理中です...