アシュリーの願いごと

ましろ

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57.女の子同盟

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「嫌い嫌い、大っ嫌い!馬鹿ぁっ!!」

やだ、信じられない、気持ち悪いっ!

「エリサ、落ち着いて?」
「落ち着く?どうやって!?なんで皆そんなに普通の顔してられるの?」

兄様達はいつから知ってたの。私だけが知らなくて、お父様もお母様も大好きだと言っていたの?

……きもちわるい

「うぇっ」
「大丈夫か!?」

嘔吐きそうになるのを必死に我慢する。

「………出てって」
「エリサ!」
「みんな出て行って!出てけ──っっつ!!」

皆を無理矢理部屋から追い出した。
だって気持ちが悪かった。

大好きだった家族が化け物になってしまったみたい。

お父様は浮気をして、お母様は他人の夫を奪って、……私はそんな二人から産まれたの?
お兄様達は気付けばお父様に冷たかった。
だからかしら。お父様は私をとっても可愛がってくれた。私は何も知らずに、自分が特別に愛されているのだと自惚れていたわ。

「馬鹿みたい。本当の事を知らないで」

どうしよう。ここにいたくない。
何処かに行きたい。ここじゃないとこ。

「……こんな家消えちゃえ」



♢♢♢



「エーリーサ、ルーチェちゃんが来ましたよ。開けてくーださい!」

…………今、一番会いたくない子が来ちゃった。そういえばお約束をしていたのだった。

「…今日は具合が悪いの。申し訳ないけど帰ってくれるかしら」

アシュリー様にそっくりなルーチェの顔を見るのは辛い。まだどうしたらいいのか分からないのに……

「ええ?嫌よ?だって一緒にお話しするのを楽しみにしていたのに。エリ姉様、お顔を見せて?」

ルーチェは甘え上手だ。時折こうして私を姉様と呼ぶ。末っ子の私がその呼び方に弱いと知っているから。
ウィル兄様の女の子版のようなルーチェは、どうやら中身はジェフリー様に似たらしく、存外したたかなのよね。

「…お父様達は近くにいる?」
「いないわよ。ここにいるのは可愛い妹分のルーチェさんだけでーす」

自分で可愛いと言うあたりが……

「もういいわ、入って」
「ありがとう!」

すると、ルーチェはなぜかワゴンを押しながら入ってきた。

「……なにそれ」
「ウィル兄様達に頼まれたの。エリサがお腹を空かせてるだろうからって。
姉様の好きな海老とアボカドのサンドイッチと、あ、これは私の好きなチキンのサンドイッチ!タレが絶妙に美味しいのよね」

楽しそうに言いながら、テーブルの上に並べていく。

「あ、ルーチェ。お茶は私が淹れるわ。火傷したら大変だもの」
「はーい」

ついお姉さんぶってしまうけど、見た目は同い年くらいなのよね。ルーチェのご両親は背が高いからか、ルーチェも一つ年上の私とあまり変わらない身長なのだ。

「ん、美味しい。それで?姉様はどうして閉じ篭ってるのかしら。それとも本当は監禁されているの?」
「……監禁されていたら今頃貴方に助けてくれてありがとうと縋りついていると思うわ」

何だか気が抜ける会話ね。さっきまでの殺伐とした感情が何処かに行ってしまったわ。

「ルーチェも知っているの?」
「何を?このサンドイッチが美味しいことなら知ってるわよ。はい、あーん」
「んぐっ」

……もぐもぐ。人の口に勝手に食べ物を押し付けるべきではないわね。っごくん。

「んんっ、うちの両親がアシュリー様にしてしまったことよ」
「知ってるけどちょっとしか知らないわ」

まさかのルーチェまで知っていたなんて!
何なの、何で私は仲間外れなの!?

「それで姉様は何に怒っているのかしら」
「……分かんない。でもたぶん全部よ」

お父様たちがしてしまったこと、内緒にされてたこと、……幸せそうに暮らしていること。
そう、全部。全部が腹立たしいわ。

「悪いことをした人は一生悔やみ続けて笑顔を無くして生きていかなくてはいけない。一族郎党すべからくそうすべし。そういうこと?」
「……そこまでは言ってないけど。でもだって悪いことをしたのでしょう。それなのにどうして幸せな家庭なんか築いちゃってるの?……私だって不義の子だわ」

私はこんなにも悩んでいるのに、ルーチェは美味しそうに今度はフルーツサンドを食べ、また私の口にもあーんと突っ込んでくる。

「お父様が言うにはね?悪事にも色々なものがあるのですって。そこだけを切り取るとただの悪いことだけど、どうしてそうなってしまったのかでチャンスを与えるべきか如何かが変わると教えてくれたわ」

人の家庭を壊すのに良いも悪いも無いでしょう。完全なる悪だとしか思えない。

「まずはね、ちゃんとお話しは最後まで聞こうよ。それから一緒に考えましょう?
私は絶対にエリサの味方だよ。だっておんなじ女の子だもの」

ルーチェは本当に私を扱うのが上手い。

「……じゃあ、一緒に聞いてくれる?一人だと本当に吐きそうになるの」
「うん!もちろんよ」

私を安心させるように握ってきた手は、

「…もう、クリームが付いてるじゃない」
「えへっ」







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