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第十八話 ペンギン、パーティによばれる
しおりを挟む村の入り口の近くでユニコーンとは別れた。
幻獣であるユニコーンは、やはり人間とはあまり顔を合わせたくはないようで、人目のつかないような木立の中で三人娘を下ろすと、すぐに森へと消えて行った。
オレと三人娘は、小さな冒険をなしとげた高揚感や、家族へのプレゼントを手に入れた事への達成感に浸りながら足取りも軽やかに家路に着いた。
だが、そんな気持ちもすぐにぶっ飛んだ。
「エ~~マ~~~ッ、あ、た、し、はあれほど服を汚すなっっって、口酸っぱくビネガーくさくなるまで言ったよね」
玄関の前で仁王立ちするのはメグだった。
「なんでまた汚してくるの! 誰が洗濯すると思ってるのッ! 」
「オーガがいる……」
エマは思わず本音がこぼれた。
うんそっくりだ。
「誰がオーガだッ! それにアニー、エニーッ。あんたらあれほど見張っとけって言ったのに。一緒になって泥だらけになって! 」
アニーもエニーも顔を青くして直立不動だ。
だから言ったのに、メグに怒られても知らないぞって。いや思っただけで言ってないか。
まあでもそこは自業自得だな。それを覚悟で山に入ったんだろうから。
何かを成し遂げるには、犠牲はつきものだが、服を汚して怒られるだけで婆ちゃんへのプレゼントが手に入ったんだから安いもんだ。
……ってか、この人は自分の娘でも、姪っ子でも同じように叱るんだな。
自分の娘には甘くて、他人の子には厳しい人もいれば、他人の子には無関心で悪いことをしても叱る事もしないひとがいるが、メグは関係ないんだな。
たぶんエマも、アニーエニーもみんな家族なんだろうな。
いいなそういうの。
ぐ~~~っ。オレの腹がなる。
それにしても腹減ったな。
朝飯の後に魚は食ったが、その後は昼飯抜きで三人娘に付き合ってたから、もう腹がペコペコだった。
オレは怒られている三人を尻目に家に入ろうとした。
「コラッ、ペンペン! 」
「グエッ? 」
は? 何? これオレも怒られる流れ? オレは見張りとか言われてないぞ。
「あんたが一番汚れてるじゃないの」
うん? まあガケを滑り降りたり、ユニコーンに引きずられたりは確かにしたが……。
「グアー…略…(これ自前の毛皮だから、お前に洗ってもらう必要はないぞ)」
「そんなんじゃ、婆ちゃんの快気祝いのパーティーに出られないじゃない。ほらさっさと三人と一緒にお風呂入ってきなさい」
お、おう。そうかパーティーか。宴会の方だよね、婆ちゃんの冒険者チームに加入するって事じゃないよね。でも……オレも参加していいのか? ペンギンだよ。
と思いながらも、オレと三人娘は連れ立って風呂場に向かう。
風呂場の手前にキッチンがあって、デミと、双子の父親シルベスタの弟アーノルドと、その妻ジェシカが三人でパーティーの料理を作っていた。
「もうアーノルドは無駄に筋肉がついてて邪魔! そっちでジャガイモの皮むきでもしててよ」
「筋肉無駄じゃねーし。キッチンが狭いだけだし」
「あんたら夫婦うるさい、イチャイチャすんなら外に行けッ」
アーノルドとジェシカ夫婦が言い争いを始めるのをデミが諌める。
アーノルドとジェシカは、以前はシルベスタやメグと一緒に同じパーティで冒険者をやってたとか。夫婦仲がいいんだか悪いんだか。
そんな冒険者夫婦を一括する十三歳のデミも肝が据わってるな……。
まだ料理を作ってる途中のようだから、オレからもプレゼントをするかな。
オレは巾着袋から、二本角ウサギの肉を出して、そっと調理台の上に置いておく。
オレ自身は料理ができないが、ここに置いておけば誰か料理してくれるだろう。
「あれ、おい、この肉の塊も使うのか? 兄貴が取ってきたのかな。すっげ良い肉ッポイけど何に使うんだ」
「え~っと何の肉だろ? スープに入れるの? 」
「ローストホニャララでいいんじゃない」
「いやホニャララシチューがいいよ」
なんだよホニャララって。ウサギだよウサギ肉。
まあ、久しぶりに獣肉が食えるなら、何でも良いけどな。
オレはどんな料理ができるか楽しみに風呂場へと急いだ。
「では、アンさんとリースさんの床払いを祝って乾杯」
「「「「「「かんぱ~いッ! 」」」」」」
ジャン爺ちゃんの乾杯の音頭で家族十三人がグラスを掲げる。居候のオレの前にも果実水と木の実を入れた器が置かれている。
ジャンは奥さんであるアンや、息子の嫁のリースのことをさん付けで呼んでいる。
この家の男たちは女たちの尻にしかれているのかな?
「モグモグ、メグこの肉うまいな、ローストホニャララだっけ。……って何の肉だなんだ? 」
「フヘっ、知らないはお。ヒフヘフハは捕ってきたんひゃないの」
筋肉親父シルベスタが義理の妹のジェシカに聞くと、彼女は肉を頬張りながら聞き返す
「オレは知らないけど、アーノルドが捕ってきたのか」
「モグモグ……」
兄よりもさらに筋肉な男、アーノルドは肉を頬張りながらも、オレも知らない、というように首を横に振る。
「じゃあ親父か」
「ワシは最近は、狩はしとらんぞ」
アーノルドとは正反対に痩せたジャンが首を振る。こいつらホントに親子か?
「まあ、ひーんひゃなひ、ほうへほ」
「そうだな、まあいいか。さあ子供たちも、アンさんもいっぱい食いなさい」
口いっぱい肉を詰め込んだデミが、話を締めくくるように言うと、祖父のジャンがうなずきながらローストホニャララを切り分けて、家族にとりわけていく。
見るとシルベスタもアーノルドもそれぞれの奥さんに肉を取ってあげている。意外と奥さん孝行するんだな。
やはりみんな尻に敷かれているのかもしれない。
みなローストホニャララをうまそうに食べている。
「あ~、美味しいお肉食べて、カワイイペンギンに癒されて、幸せだ~」
「次、あたしに代わって~」
「見て、お腹プヨプヨ~、運動不足かな~」
デミがオレを膝の上に乗せながら、ローストホニャララを頬張る。それを見てメグがうらやましそうな目を向け、ジェシカがオレの腹を撫で回す。
悔しいがちょっと気持ちがいい。だが、運動不足じゃないぞ。
適当なところで三人娘が席を立って廊下に行くと、手にプレゼントを持って現れた。
エマは祖母のアンに、アニーとエニーは母親のリースに鉢に植えた白い花を手渡した。
「アンお婆ちゃん、トコバライ? おめでとう」
「「ママ、おめでとう」」
「「あらあら、ありがとう」」
二人はうれしそうに白い花を受け取った。
「まあ、フラウの花じゃない。うれしい、エマありがとう。これ私が好きな花だって知ってたの? 」
「うん、小従兄ちゃんに教えてもらったの」
「お義母さん、私もこれ好きなんです。アニー、エニーありがとう」
アンとリースがうれしそうに花を見つめるのを見て、三人の娘もうれしそうに笑った。
「そうか、その花を取りに森へいって、それで泥だらけになってきたのか」
デミが納得するように言った。
それを見ていたジョシュアとジョアンが、「抜け駆けずるいぞ」といって自分たちも用意したプレゼントを母親と祖母に手渡した。
「お婆ちゃん、ママ御病気全快おめでとう」
それはデミたちが森で摘んだ薬草を売ったお金で買ったブローチだった。
「これは子供たち全員からのプレゼントよ。この間行商の人が来たときに買ったんだ。ちなみに選んだのは私。すっごい悩んだんだから」
デミが代表して説明し、ブローチを祖母と母親の服の胸元につけてあげた。
見ると子供たち、そしてメグもジェシカも女性はみんな、少しずつデザインは違うが統一したモチーフのブローチをしていた。
「ステキなデザインね」
「あら、みんなおそろいなのね」
女性陣はみなにっこりと笑った。
「「私たちは、今日一生懸命お料理作ったから」」「オレも」
メグとジェシカとアーノルドが、プレゼントの代わりに一所懸命に豪華な料理を作ったとアピールする。
「え~っとオレは……」
「そのワシはなあ……」
シルベスタとジャンが頭をかいている。特にプレゼントを用意していなかったらしい。
「いいんですよ。二人は私たちが寝込んでいるときに一所懸命看病してくれましたから」
「それに、私たちができない分、家族をまとめてくれたからね」
アンとリースが助け舟を出すと、二人の表情がパァッと明るくなった。
うん。家族仲がいいな。
うまそうな料理と嬉しいプレゼント、楽しい会話。
家族総出の快気祝いのパーティは和やかに進んでいった。
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