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36話 聖女への断罪
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俺たちは、その場に立ち尽くしていた。
頭を鈍器で殴られたような衝撃。
耳鳴りが止まらない。
査問会。
それは教会の聖職者が、その資格を問われる、最も重い裁判だ。
そして、その対象はリリシア様。
理由は、俺への寵愛。
「そんな……」
エマさんが青ざめた顔で呟く。
「教会本部が動いたというのか……。一体、どこから情報が漏れた……?」
ジュリアス様が苦々しく唇を噛む。
俺は、ただ呆然と、その光景を見つめることしかできなかった。
俺のせいだ。
彼女の異常な行動を放置し続けたせいだ。
彼女との関係を曖昧にし続けたせいだ。
学園で目立ちすぎたせいだ。
体育祭で武術大会で喫茶店で。
俺が彼女の力を利用し、そして彼女に反旗をひるがえした、その全てが巡り巡って彼女自身を追い詰める刃と変わってしまった。
「アラン様……」
ソフィア様が心配そうに俺の顔を覗き込む。
俺は固く拳を握りしめた。
違う。後悔している場合じゃない。
俺がやるべきことは一つだ。
「……リリシア様のところに、行く」
走り出そうとした、その時。
監察官クレマンと名乗った男が鋭い視線で、こちらを正確には、俺を射抜いた。
「君が、アラン・ウォルトンくんだね」
その声には、一切の感情がこもっていない。
ただ、事実を確認するだけの冷たい響き。
「今回の査問会において、君は、最重要参考人だ。追って、正式な召喚状を送る。それまで軽率な行動は、慎むように。特に、聖女リリシアとの個人的な接触は、固く禁ずる」
それは命令だった。
教会の絶対的な命令。
俺は何も言い返すことができなかった。
◇
翌日から学園の空気は一変した。
聖女リリシアに対する、査問会の噂は瞬く間に全校生徒へと広まった。
今まで彼女を、そして俺を畏敬の目で見ていた生徒たちは、今や好奇と非難の目で遠巻きに俺たちを眺めている。
そしてリリシア様は、学園に来なくなった。
教会本部の命令により、学園内の一室に軟禁状態に置かれているらしい。
俺は、彼女に会うことも、話すことも、許されない。『トゥルース・シーカー作戦』も完全に中断せざるを得なかった。
こんな状況で彼女の過去を探ることなどできるはずもない。
俺は無力だったというわけだ。
ようやく彼女と向き合おうと、決意した、その矢先にこれだからだ。
俺たちの間には、教会という、あまりにも巨大な壁が立ちはだかった。
数日が過ぎた。
俺たちの元に監察官クレマンからの正式な召喚状が届いた。俺だけでなく、ジュリアス様、エマさん、ソフィア様にも。
俺たち四人は、査問会の証人として召喚されることになったのだ。
査問会の前日。
俺たちは、四人で中庭に集まっていた。
重苦しい沈黙が続く。
「……どうすれば、リリシア先生を助けられるのかな」
エマさんが涙声で言った。
「下手に庇えば、我々も共犯と見なされかねん。監察官クレマンは、そういう情状酌量の通じる相手ではない」
ジュリアス様が冷静に、しかし悔しそうに答える。
ソフィア様が祈るように手を組んだ。
「全ては、神のご意志のままに……。ですが、もし、私にできることがあるのなら……」
俺は三人の顔を見渡した。
みんな自分のことのように苦しみ悩んでくれている。
「俺が、話す」
俺の静かな決意に満ちた声に三人が顔を上げた。
「査問会で、俺が全てを話す。俺が、彼女に何をされてきたか。そして俺が彼女に何を感じてきたか。真実をありのままに」
それはあまりにも危険な賭けだった。
俺の証言一つで、リリシア様は聖女の資格を剥奪され、断罪されるかもしれない。
だが、もう嘘や取り繕いは通用しない。
「俺は信じる。俺たちの言葉の力を。リリシア様を救い出す。……今度こそ、俺が」
頭を鈍器で殴られたような衝撃。
耳鳴りが止まらない。
査問会。
それは教会の聖職者が、その資格を問われる、最も重い裁判だ。
そして、その対象はリリシア様。
理由は、俺への寵愛。
「そんな……」
エマさんが青ざめた顔で呟く。
「教会本部が動いたというのか……。一体、どこから情報が漏れた……?」
ジュリアス様が苦々しく唇を噛む。
俺は、ただ呆然と、その光景を見つめることしかできなかった。
俺のせいだ。
彼女の異常な行動を放置し続けたせいだ。
彼女との関係を曖昧にし続けたせいだ。
学園で目立ちすぎたせいだ。
体育祭で武術大会で喫茶店で。
俺が彼女の力を利用し、そして彼女に反旗をひるがえした、その全てが巡り巡って彼女自身を追い詰める刃と変わってしまった。
「アラン様……」
ソフィア様が心配そうに俺の顔を覗き込む。
俺は固く拳を握りしめた。
違う。後悔している場合じゃない。
俺がやるべきことは一つだ。
「……リリシア様のところに、行く」
走り出そうとした、その時。
監察官クレマンと名乗った男が鋭い視線で、こちらを正確には、俺を射抜いた。
「君が、アラン・ウォルトンくんだね」
その声には、一切の感情がこもっていない。
ただ、事実を確認するだけの冷たい響き。
「今回の査問会において、君は、最重要参考人だ。追って、正式な召喚状を送る。それまで軽率な行動は、慎むように。特に、聖女リリシアとの個人的な接触は、固く禁ずる」
それは命令だった。
教会の絶対的な命令。
俺は何も言い返すことができなかった。
◇
翌日から学園の空気は一変した。
聖女リリシアに対する、査問会の噂は瞬く間に全校生徒へと広まった。
今まで彼女を、そして俺を畏敬の目で見ていた生徒たちは、今や好奇と非難の目で遠巻きに俺たちを眺めている。
そしてリリシア様は、学園に来なくなった。
教会本部の命令により、学園内の一室に軟禁状態に置かれているらしい。
俺は、彼女に会うことも、話すことも、許されない。『トゥルース・シーカー作戦』も完全に中断せざるを得なかった。
こんな状況で彼女の過去を探ることなどできるはずもない。
俺は無力だったというわけだ。
ようやく彼女と向き合おうと、決意した、その矢先にこれだからだ。
俺たちの間には、教会という、あまりにも巨大な壁が立ちはだかった。
数日が過ぎた。
俺たちの元に監察官クレマンからの正式な召喚状が届いた。俺だけでなく、ジュリアス様、エマさん、ソフィア様にも。
俺たち四人は、査問会の証人として召喚されることになったのだ。
査問会の前日。
俺たちは、四人で中庭に集まっていた。
重苦しい沈黙が続く。
「……どうすれば、リリシア先生を助けられるのかな」
エマさんが涙声で言った。
「下手に庇えば、我々も共犯と見なされかねん。監察官クレマンは、そういう情状酌量の通じる相手ではない」
ジュリアス様が冷静に、しかし悔しそうに答える。
ソフィア様が祈るように手を組んだ。
「全ては、神のご意志のままに……。ですが、もし、私にできることがあるのなら……」
俺は三人の顔を見渡した。
みんな自分のことのように苦しみ悩んでくれている。
「俺が、話す」
俺の静かな決意に満ちた声に三人が顔を上げた。
「査問会で、俺が全てを話す。俺が、彼女に何をされてきたか。そして俺が彼女に何を感じてきたか。真実をありのままに」
それはあまりにも危険な賭けだった。
俺の証言一つで、リリシア様は聖女の資格を剥奪され、断罪されるかもしれない。
だが、もう嘘や取り繕いは通用しない。
「俺は信じる。俺たちの言葉の力を。リリシア様を救い出す。……今度こそ、俺が」
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