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44話 逆転の法廷、そして民衆の声
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監察官クレマンが、自らの嫉妬と功名心を教会最高評議会の司教の前で自白してしまった。
その事実は、ジュリアス様の手によって、瞬く間に王都の政治の中枢へと駆け巡った。
クレマンのリリシア様に対する『異端』の告発は、その正当性を完全に失ったのだ。
そして運命の第二回査問会が開かれる。
だが、その雰囲気は、前回とは全く異なっていた。
「聖女リリシア様は我らが王都の、宝だ!」
「彼女のクッキーで、わしの腰痛が治ったんだ! 異端なものか、本物の奇跡だ!」
「クレマンこそ、聖女様に嫉妬した、俗物だ! 出ていけ!」
学園の大講堂の前には、朝からおびただしい数の民衆が詰めかけていた。
エマさんとソフィア様が王都中に広めた「真実」が人々の心を動かしたのだ。
彼らは、リリシア様を断罪から守るため、自らの意志でここに集まっていた。その声は、大きな、大きなうねりとなって、講堂の中まで響き渡っている。
講堂の中も空気は、俺たちの側にあった。
クレマンの失脚により、査問会の主導権は穏健派の司教様へと移っていた。彼の顔には、もはや前回のような冷酷な表情はない。
司教様は、静かに開会を宣言すると、まずクレマンの今回の査問会における、数々の不正と職権濫用を厳しく糾弾した。
そして、彼は証人席に座るリリシア様へと向き直った。その表情は、厳格ではあるが、どこか温かみがあった。
「聖女リリシアよ。あなたの今回の行動には、確かに軽率な点が、多々見受けられた。それは事実です。ですが」
司教様は一度言葉を切ると、講堂の外から聞こえてくる民衆の声に耳を傾けるように目を閉じた。
「ですが、あなたの力が多くの民を癒し、幸福をもたらしたことも、また事実。そして、あなたの過去に、我々が汲むべき事情があったことも我々は理解しました」
司教様はゆっくりと目を開けた。
「よって教会最高評議会は、あなたに罰を与えることは、しない。ただし条件があります」
その最後の言葉に、俺たちは息を呑んだ。
「あなたは、まだ若すぎる。そして、その力はあまりにも強大すぎる。あなたには、その力を正しく導くパートナーが必要不可欠です」
司教様の視線がまっすぐ俺を射抜いた。
「アラン・ウォルトン君。あなたに、その大役を命じます。聖女リリシアの公式な監督役として、常に彼女の隣に立ち、その道を照らしてあげなさい。……よろしいかな?」
それは問いかけの形をしていたが、事実上の命令だった。
俺がリリシア様の、監督役? 彼女を、導く?
今までとは、全く逆の立場。
俺は、リリシア様の顔を見た。
彼女は、ただ驚いたように目を丸くして、俺を見つめている。その瞳には、もう俺を支配しようとする狂気の光はなかった。
ただ、一人の、か弱き女の子が助けを求めるように俺を見ているだけだったのだ。
俺は静かに立ち上がり、司教様に向かって深く頭を下げる。
「……謹んで、お受けいたします」
その瞬間、講堂は割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。
外の民衆の声もひときわ大きくなる。
それは完全な勝利を告げる凱歌だった。
ちなみに余談だが、クレマンは全ての権威を剥奪され、辺境の修道院へと送られることになったという。
長かった戦いは、ついに終わりを告げたのだ。
査問会が閉会した後。
俺は、友人たちと勝利の喜びを分かち合った。
そして、静かに佇むリリシア様の元へと歩み寄ると、彼女は、はにかむように俯いた。
その頬は夕焼けのように赤く染まっている。
「あの……アランくん」
か細い、声だった。
「その……これから、よろしく、お願い、します。……私の、監督役、様」
最後の言葉は、少しだけ拗ねたような響きがあった。
俺は思わず吹き出してしまった。
そして、彼女の小さな手をそっと握った。
「ああ。よろしくな、リリシア」
初めて俺は彼女を呼び捨てにした。
彼女はびくりと肩を揺らすと、さらに顔を真っ赤にした。その反応があまりにも可愛らしくて、俺はどうしようもなく彼女のことを愛おしいと、思った。
その事実は、ジュリアス様の手によって、瞬く間に王都の政治の中枢へと駆け巡った。
クレマンのリリシア様に対する『異端』の告発は、その正当性を完全に失ったのだ。
そして運命の第二回査問会が開かれる。
だが、その雰囲気は、前回とは全く異なっていた。
「聖女リリシア様は我らが王都の、宝だ!」
「彼女のクッキーで、わしの腰痛が治ったんだ! 異端なものか、本物の奇跡だ!」
「クレマンこそ、聖女様に嫉妬した、俗物だ! 出ていけ!」
学園の大講堂の前には、朝からおびただしい数の民衆が詰めかけていた。
エマさんとソフィア様が王都中に広めた「真実」が人々の心を動かしたのだ。
彼らは、リリシア様を断罪から守るため、自らの意志でここに集まっていた。その声は、大きな、大きなうねりとなって、講堂の中まで響き渡っている。
講堂の中も空気は、俺たちの側にあった。
クレマンの失脚により、査問会の主導権は穏健派の司教様へと移っていた。彼の顔には、もはや前回のような冷酷な表情はない。
司教様は、静かに開会を宣言すると、まずクレマンの今回の査問会における、数々の不正と職権濫用を厳しく糾弾した。
そして、彼は証人席に座るリリシア様へと向き直った。その表情は、厳格ではあるが、どこか温かみがあった。
「聖女リリシアよ。あなたの今回の行動には、確かに軽率な点が、多々見受けられた。それは事実です。ですが」
司教様は一度言葉を切ると、講堂の外から聞こえてくる民衆の声に耳を傾けるように目を閉じた。
「ですが、あなたの力が多くの民を癒し、幸福をもたらしたことも、また事実。そして、あなたの過去に、我々が汲むべき事情があったことも我々は理解しました」
司教様はゆっくりと目を開けた。
「よって教会最高評議会は、あなたに罰を与えることは、しない。ただし条件があります」
その最後の言葉に、俺たちは息を呑んだ。
「あなたは、まだ若すぎる。そして、その力はあまりにも強大すぎる。あなたには、その力を正しく導くパートナーが必要不可欠です」
司教様の視線がまっすぐ俺を射抜いた。
「アラン・ウォルトン君。あなたに、その大役を命じます。聖女リリシアの公式な監督役として、常に彼女の隣に立ち、その道を照らしてあげなさい。……よろしいかな?」
それは問いかけの形をしていたが、事実上の命令だった。
俺がリリシア様の、監督役? 彼女を、導く?
今までとは、全く逆の立場。
俺は、リリシア様の顔を見た。
彼女は、ただ驚いたように目を丸くして、俺を見つめている。その瞳には、もう俺を支配しようとする狂気の光はなかった。
ただ、一人の、か弱き女の子が助けを求めるように俺を見ているだけだったのだ。
俺は静かに立ち上がり、司教様に向かって深く頭を下げる。
「……謹んで、お受けいたします」
その瞬間、講堂は割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。
外の民衆の声もひときわ大きくなる。
それは完全な勝利を告げる凱歌だった。
ちなみに余談だが、クレマンは全ての権威を剥奪され、辺境の修道院へと送られることになったという。
長かった戦いは、ついに終わりを告げたのだ。
査問会が閉会した後。
俺は、友人たちと勝利の喜びを分かち合った。
そして、静かに佇むリリシア様の元へと歩み寄ると、彼女は、はにかむように俯いた。
その頬は夕焼けのように赤く染まっている。
「あの……アランくん」
か細い、声だった。
「その……これから、よろしく、お願い、します。……私の、監督役、様」
最後の言葉は、少しだけ拗ねたような響きがあった。
俺は思わず吹き出してしまった。
そして、彼女の小さな手をそっと握った。
「ああ。よろしくな、リリシア」
初めて俺は彼女を呼び捨てにした。
彼女はびくりと肩を揺らすと、さらに顔を真っ赤にした。その反応があまりにも可愛らしくて、俺はどうしようもなく彼女のことを愛おしいと、思った。
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