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第1章 宿敵の家の当主を妻に貰うまで
第34話 交差し、受け入れる想い
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オーロラちゃん達が繋げてくれたゲートは王都の人通りのない道に繋がっていた。自分のいる場所を確認して、俺は走り出す。ここからあの路地裏まではすぐだ。
暗くなった王都を駆け抜けて、あの日の路地裏へ。一度しか行ったことがない筈なのに、全く迷うことなく向かうことが出来た。場所を知っているって言うのもあるけど、体が覚えているような、そんな感じだ。
路地裏は10年が経って様変わりしていた。店の荷物が乱雑に置かれていたのが嘘みたいに今では整備されていた。荷物は置かれていないけど、人の姿もなかった。雰囲気は10年前のまま。
そして雪だるまが――彼女が蹲っているのも、10年前のままだった。
「……やっぱり、ここにいたんだな」
俺の声に、ピクリと彼女は反応した。蹲る雪だるま――雪はあの日と違って降っていないけど――の隣に座り込んで、空を見上げた。すっかり暗くなった時間帯。空には月が顔を出して、俺達を照らしてくれていた。
「シアのお母さんの話」
大きくピクリと反応し、強く顔をうずめるシア。それに気づいてはいたけど、俺は話を続けた。
「ユティさんから聞いた。シアのお母さんがどんな人で、そしてシアが自分をお母さんと重ねているんじゃないかって」
「…………」
「……でも、シアが本当は何を考えているのかはやっぱり分からなかった。だから、教えて欲しいんだ。シアが何を思って、何に気づいて……何に苦しんでいるのか」
「…………」
シアは答えない。蹲ったまま、顔も上げてくれない。けど俺は待ち続けた。シアのペースでいいって、そう思ったから。
「……話している途中で、自分がやっていることがあの人と変わらないのではないかと思いました。あの人は魔法のためでしたけど、私はノヴァさんのために同じようなことをしたのではないかと」
「何を……したの?」
問いかける。責めるような口調ではなく、受け入れるような声が自然に出ていた。
「……嫌いになりませんか?」
「ならない」
はっきりと答えて、シアの言葉を待った。
「……2年前、母を決闘で下して当主の座を奪いました。それまで力を隠していたので、急に当主になった私を糾弾する一族の者は魔法で無理やり屈服させました。戦争を終わらせるために王族と帝国に秘密裏に圧力をかけました。もしも逆らえば命はない、という脅しだってかけました」
「……うん」
「ノヴァさんがフォルス家で不遇な扱いをされていることを知り、ターニャさんに接触しました。彼女の後ろ盾となって、ノヴァさんにとって害になる人を遠ざける手助けをしました。その代わりに……ノヴァさんの事を色々と教えてもらったりして、南部の戦役では危険な目に合わないようにしたりと、裏から手を回していました」
「……うん?」
あれ? 当主の座とか、戦争とかスケールが大きい話をしていると思ったら、急に俺の話になったぞ。っていうかターニャ、俺の事売ってない?
なんか様子がおかしいなとは思っていたけど、そういうことだったのか……。
「フォルス家との縁談に反対意見を出す者には圧力をかけて黙らせましたし……つまり、自分の思い通りになるようにいろいろやってきたんです」
「なるほど……」
話を聞いていて、シアがやってきたことはなんとなく分かった。その上で俺が言えることがあるとすれば。
「……いや、別にいいんじゃない?」
「え?」
驚いて顔を上げるシア。そんな彼女と目を合わせて、俺は自分の考えを告げる。
「誰だって自分の思い通りにしたいっていうのはあると思うし、それが出来るかどうかは力を持っているかどうかで、シアにはそれがあった。だからそれをしたってだけでしょ? こう言っちゃなんだけど、そんなに悩まなくてもいいんじゃないかな?」
シアのやってきたことの詳細は分からないけれど、話を聞いている限り悪い事だとは思わなかった。
「少なくとも……うーん、俺もシアと同じ立場ならそうしたと思う。むしろ俺なら……フォルス家のムカつく奴を片っ端から痛めつけてるかも」
幼き日、何度頭の中で思い描いたことか。ある日力に目覚め、自分を痛めつけたゼロードの兄上を、存在を無視するカイラスの兄上を、こんな目に会わせる環境を作った父上を、俺を蔑む使用人たちを見返せたらと。
結局思い描いただけで実現はしなかったけど。そう考えると、やっぱりゼロードの兄上の腕の一本くらいは折ってやりたいところだ。
「…………」
シアはしばらく俺を驚いた表情でじっと見ていたけど、やがて俯いてぽつぽつと言葉を紡ぎ始めた。
「……私、結構ノヴァさんの知らないところで、ノヴァさんの情報を集めたりとかしてましたけど、気持ち悪いとか思いませんか?」
「思うわけないよ。俺の事を想ってやってたんでしょ? むしろ嬉しい……っていうか、聞いてくれたら全然話したのに」
「け、結構ノヴァさん以外の人には冷たかったり、ちょっと冷酷に当たったりしたんですけど……」
「俺だってシアやターニャ、オーロラちゃんとか以外はそっけない感じだよ。っていうか、皆そんなもんだと思うけどなぁ」
「…………」
驚いて唖然とするシアに、俺は笑って伝える。俺が今、思っていることを。
「だから、シアはシアのままでいいんじゃないかな。お母さんと同じとか思ってるかもしれないけど、俺は違うと思う。っていうか仮に同じだとしても、間違ってはいないと思うよ」
「……間違って……ない」
「ああ。それに、もし間違えたら俺がシアを止めるよ。それは間違っているって、教える」
「ノヴァさん……」
シアは俺から視線を外し、自分の手のひらを見つめた。
「最後に一つだけ聞いてもいいですか?」
「うん? なに?」
「……私が母に似ているのも不安の一つでしたけど、もう一つ不安があります」
「なに? 話してみて」
ゆっくりとシアは俺の方を向いて、口を開く。
「あの人は、自分が大切にしていたものを、結局は私に奪われました。魔法も、当主の座も、何もかもです。あの人と似た私は同じような道を辿るのではないかと……ノヴァさんを失うんじゃないかと、不安なんです」
不安で揺れ動く灰色の瞳、そんなシアの感情に引きずられるかのように、ピリピリとした空気が辺りを包む。俺は思わずシアの手を取った。
「大丈夫」
揺れた瞳の動きがピタリと止まる。重苦しい雰囲気が、霧散する。
「俺は誰にも奪われないし、どこにも行かない」
それにアークゲート家の屋敷で分かったことでもある。シアの力を受ければ、俺は誰にも負けない。それなら、誰にも奪われたりはしないだろう。
「っ!」
俺の手を弾いて、シアは胸の中に飛び込んでくる。夜は肌寒いのに、シアの温かさを全身で感じた。彼女を支えるために背に手を回せば、シアも同じように手を回してくれた。
「ノヴァさん……好きです……ずっとずっと、好きでした……愛しています」
「ああ……俺もだよ……あの日からずっと」
幼い日の想いが色あせることなく続いたのなら、それは恋になる。きっとあの時苦しんでいるシアの手を握ったときから、その思いはずっと在って。でもそれがどんどん大きくなって。
「シアの事が、好きだ」
彼女と同じ、愛になった。
「シア、縁談を受け入れさせてくれ……一緒になろう」
長く保留していた縁談話に決着をつける。シアと一緒になりたい。共に歩んでいきたい。胸を焦がすほどの情熱が行き場をなくして、シアを強く抱きしめた。
「いいんですか……私、結構重いですよ? ノヴァさんのこと、全部知りたいって思って、知っちゃうような女ですよ?」
「いいよ。全部教える。それで足りなければ、いくらでも探ってくれ。シアの好きなようにしていいから」
「……不束者ですが、よろしくお願いします」
「シアが不束者なら、俺はなんなのって感じだけどね」
抱き合ったまま、俺達は二人して笑いあう。名残惜しくもゆっくりと離れて、俺とシアは目線を絡ませあった。
「な、なんていうか、出会いの場で縁談を受け入れてくれるって、ちょっとロマンチックですね」
「そ、そうだね……」
シアに言われて急に恥ずかしくなってきたので、俺は彼女から視線を外す。お互いに顔を見合わせることなく沈黙が落ちる中で、俺もシアも何の理由もなしに首を動かして色んな所を見ていた。何かがあるわけでもないのに。
やがてその間が面白かったのか、シアが笑った。それにつられてなんだかおかしくなって、俺も笑った。おかしかったのもあるけど、それ以上にそうしたい気分だったんだ。シアに両手を握られて驚いて彼女を見れば、綺麗な笑顔を浮かべていた。
「ノヴァさん、ありがとうございます。私は私のままでいいんだって、分かりました。なんだか悩んで不安に思っていたのが馬鹿らしく感じてしまいます。本当……いつも救ってくれるのはノヴァさんですね」
「大げさだよ……でも、俺が助けになれているなら嬉しいかな」
二回もシアの助けになれたっていうことは、俺の中で誇らしいことになっていた。本当、あの日ここでシアに出会えて良かった。
「でもこれでやっと婚約者ですね。よろしくお願いします。ノヴァさん」
「ああ、こちらこそよろしく」
「では早速籍を入れましょうか」
「いきなりだな……」
「でも私達ももう20歳。それに私はアークゲート家の当主ですから、婚約はすなわち結婚ですよ」
「そうだけど、ちょっと心の準備ってものがさ……」
苦笑いしながら、そう返す。シアとの縁談を受け入れればすぐに結婚になることは分かっていたことだけど、実際にそういった状況になると気持ちの整理が追い付かないところがあるのは仕方のないことで。
「じゃあ、もっと未来の事を考えましょうか」
「これまた抽象的なことだなぁ……」
そう呟くも、俺は空を見上げて、そして次にシアを見る。これから先、俺にはもったいない程の良い人であるシアと一緒に過ごしていくだろう。俺もまだ具体的なことは分からないけど。
「でも、穏やかに生活できればいいと思う。シアが戦乱を収めてくれたから……俺はこの平和を長引かせる手伝いがしたいかな」
漠然としたことだけど、シアの助けになりたいというのはあった。戦争を終わらせて、平和をもたらしてくれたシアと一緒に彼女が達成したものを保てればと。今まで何もしてこなかった俺が初めて心に決めた、大きすぎる目標だった。
「そうですね、私も同じです。ノヴァさんと一緒に、この穏やかな日々を護っていきましょう」
きっとシアは俺の助けがなくてもこの平和を維持できると思う。それでも、少しでも助けになれればと俺は思った。
暗くなった王都を駆け抜けて、あの日の路地裏へ。一度しか行ったことがない筈なのに、全く迷うことなく向かうことが出来た。場所を知っているって言うのもあるけど、体が覚えているような、そんな感じだ。
路地裏は10年が経って様変わりしていた。店の荷物が乱雑に置かれていたのが嘘みたいに今では整備されていた。荷物は置かれていないけど、人の姿もなかった。雰囲気は10年前のまま。
そして雪だるまが――彼女が蹲っているのも、10年前のままだった。
「……やっぱり、ここにいたんだな」
俺の声に、ピクリと彼女は反応した。蹲る雪だるま――雪はあの日と違って降っていないけど――の隣に座り込んで、空を見上げた。すっかり暗くなった時間帯。空には月が顔を出して、俺達を照らしてくれていた。
「シアのお母さんの話」
大きくピクリと反応し、強く顔をうずめるシア。それに気づいてはいたけど、俺は話を続けた。
「ユティさんから聞いた。シアのお母さんがどんな人で、そしてシアが自分をお母さんと重ねているんじゃないかって」
「…………」
「……でも、シアが本当は何を考えているのかはやっぱり分からなかった。だから、教えて欲しいんだ。シアが何を思って、何に気づいて……何に苦しんでいるのか」
「…………」
シアは答えない。蹲ったまま、顔も上げてくれない。けど俺は待ち続けた。シアのペースでいいって、そう思ったから。
「……話している途中で、自分がやっていることがあの人と変わらないのではないかと思いました。あの人は魔法のためでしたけど、私はノヴァさんのために同じようなことをしたのではないかと」
「何を……したの?」
問いかける。責めるような口調ではなく、受け入れるような声が自然に出ていた。
「……嫌いになりませんか?」
「ならない」
はっきりと答えて、シアの言葉を待った。
「……2年前、母を決闘で下して当主の座を奪いました。それまで力を隠していたので、急に当主になった私を糾弾する一族の者は魔法で無理やり屈服させました。戦争を終わらせるために王族と帝国に秘密裏に圧力をかけました。もしも逆らえば命はない、という脅しだってかけました」
「……うん」
「ノヴァさんがフォルス家で不遇な扱いをされていることを知り、ターニャさんに接触しました。彼女の後ろ盾となって、ノヴァさんにとって害になる人を遠ざける手助けをしました。その代わりに……ノヴァさんの事を色々と教えてもらったりして、南部の戦役では危険な目に合わないようにしたりと、裏から手を回していました」
「……うん?」
あれ? 当主の座とか、戦争とかスケールが大きい話をしていると思ったら、急に俺の話になったぞ。っていうかターニャ、俺の事売ってない?
なんか様子がおかしいなとは思っていたけど、そういうことだったのか……。
「フォルス家との縁談に反対意見を出す者には圧力をかけて黙らせましたし……つまり、自分の思い通りになるようにいろいろやってきたんです」
「なるほど……」
話を聞いていて、シアがやってきたことはなんとなく分かった。その上で俺が言えることがあるとすれば。
「……いや、別にいいんじゃない?」
「え?」
驚いて顔を上げるシア。そんな彼女と目を合わせて、俺は自分の考えを告げる。
「誰だって自分の思い通りにしたいっていうのはあると思うし、それが出来るかどうかは力を持っているかどうかで、シアにはそれがあった。だからそれをしたってだけでしょ? こう言っちゃなんだけど、そんなに悩まなくてもいいんじゃないかな?」
シアのやってきたことの詳細は分からないけれど、話を聞いている限り悪い事だとは思わなかった。
「少なくとも……うーん、俺もシアと同じ立場ならそうしたと思う。むしろ俺なら……フォルス家のムカつく奴を片っ端から痛めつけてるかも」
幼き日、何度頭の中で思い描いたことか。ある日力に目覚め、自分を痛めつけたゼロードの兄上を、存在を無視するカイラスの兄上を、こんな目に会わせる環境を作った父上を、俺を蔑む使用人たちを見返せたらと。
結局思い描いただけで実現はしなかったけど。そう考えると、やっぱりゼロードの兄上の腕の一本くらいは折ってやりたいところだ。
「…………」
シアはしばらく俺を驚いた表情でじっと見ていたけど、やがて俯いてぽつぽつと言葉を紡ぎ始めた。
「……私、結構ノヴァさんの知らないところで、ノヴァさんの情報を集めたりとかしてましたけど、気持ち悪いとか思いませんか?」
「思うわけないよ。俺の事を想ってやってたんでしょ? むしろ嬉しい……っていうか、聞いてくれたら全然話したのに」
「け、結構ノヴァさん以外の人には冷たかったり、ちょっと冷酷に当たったりしたんですけど……」
「俺だってシアやターニャ、オーロラちゃんとか以外はそっけない感じだよ。っていうか、皆そんなもんだと思うけどなぁ」
「…………」
驚いて唖然とするシアに、俺は笑って伝える。俺が今、思っていることを。
「だから、シアはシアのままでいいんじゃないかな。お母さんと同じとか思ってるかもしれないけど、俺は違うと思う。っていうか仮に同じだとしても、間違ってはいないと思うよ」
「……間違って……ない」
「ああ。それに、もし間違えたら俺がシアを止めるよ。それは間違っているって、教える」
「ノヴァさん……」
シアは俺から視線を外し、自分の手のひらを見つめた。
「最後に一つだけ聞いてもいいですか?」
「うん? なに?」
「……私が母に似ているのも不安の一つでしたけど、もう一つ不安があります」
「なに? 話してみて」
ゆっくりとシアは俺の方を向いて、口を開く。
「あの人は、自分が大切にしていたものを、結局は私に奪われました。魔法も、当主の座も、何もかもです。あの人と似た私は同じような道を辿るのではないかと……ノヴァさんを失うんじゃないかと、不安なんです」
不安で揺れ動く灰色の瞳、そんなシアの感情に引きずられるかのように、ピリピリとした空気が辺りを包む。俺は思わずシアの手を取った。
「大丈夫」
揺れた瞳の動きがピタリと止まる。重苦しい雰囲気が、霧散する。
「俺は誰にも奪われないし、どこにも行かない」
それにアークゲート家の屋敷で分かったことでもある。シアの力を受ければ、俺は誰にも負けない。それなら、誰にも奪われたりはしないだろう。
「っ!」
俺の手を弾いて、シアは胸の中に飛び込んでくる。夜は肌寒いのに、シアの温かさを全身で感じた。彼女を支えるために背に手を回せば、シアも同じように手を回してくれた。
「ノヴァさん……好きです……ずっとずっと、好きでした……愛しています」
「ああ……俺もだよ……あの日からずっと」
幼い日の想いが色あせることなく続いたのなら、それは恋になる。きっとあの時苦しんでいるシアの手を握ったときから、その思いはずっと在って。でもそれがどんどん大きくなって。
「シアの事が、好きだ」
彼女と同じ、愛になった。
「シア、縁談を受け入れさせてくれ……一緒になろう」
長く保留していた縁談話に決着をつける。シアと一緒になりたい。共に歩んでいきたい。胸を焦がすほどの情熱が行き場をなくして、シアを強く抱きしめた。
「いいんですか……私、結構重いですよ? ノヴァさんのこと、全部知りたいって思って、知っちゃうような女ですよ?」
「いいよ。全部教える。それで足りなければ、いくらでも探ってくれ。シアの好きなようにしていいから」
「……不束者ですが、よろしくお願いします」
「シアが不束者なら、俺はなんなのって感じだけどね」
抱き合ったまま、俺達は二人して笑いあう。名残惜しくもゆっくりと離れて、俺とシアは目線を絡ませあった。
「な、なんていうか、出会いの場で縁談を受け入れてくれるって、ちょっとロマンチックですね」
「そ、そうだね……」
シアに言われて急に恥ずかしくなってきたので、俺は彼女から視線を外す。お互いに顔を見合わせることなく沈黙が落ちる中で、俺もシアも何の理由もなしに首を動かして色んな所を見ていた。何かがあるわけでもないのに。
やがてその間が面白かったのか、シアが笑った。それにつられてなんだかおかしくなって、俺も笑った。おかしかったのもあるけど、それ以上にそうしたい気分だったんだ。シアに両手を握られて驚いて彼女を見れば、綺麗な笑顔を浮かべていた。
「ノヴァさん、ありがとうございます。私は私のままでいいんだって、分かりました。なんだか悩んで不安に思っていたのが馬鹿らしく感じてしまいます。本当……いつも救ってくれるのはノヴァさんですね」
「大げさだよ……でも、俺が助けになれているなら嬉しいかな」
二回もシアの助けになれたっていうことは、俺の中で誇らしいことになっていた。本当、あの日ここでシアに出会えて良かった。
「でもこれでやっと婚約者ですね。よろしくお願いします。ノヴァさん」
「ああ、こちらこそよろしく」
「では早速籍を入れましょうか」
「いきなりだな……」
「でも私達ももう20歳。それに私はアークゲート家の当主ですから、婚約はすなわち結婚ですよ」
「そうだけど、ちょっと心の準備ってものがさ……」
苦笑いしながら、そう返す。シアとの縁談を受け入れればすぐに結婚になることは分かっていたことだけど、実際にそういった状況になると気持ちの整理が追い付かないところがあるのは仕方のないことで。
「じゃあ、もっと未来の事を考えましょうか」
「これまた抽象的なことだなぁ……」
そう呟くも、俺は空を見上げて、そして次にシアを見る。これから先、俺にはもったいない程の良い人であるシアと一緒に過ごしていくだろう。俺もまだ具体的なことは分からないけど。
「でも、穏やかに生活できればいいと思う。シアが戦乱を収めてくれたから……俺はこの平和を長引かせる手伝いがしたいかな」
漠然としたことだけど、シアの助けになりたいというのはあった。戦争を終わらせて、平和をもたらしてくれたシアと一緒に彼女が達成したものを保てればと。今まで何もしてこなかった俺が初めて心に決めた、大きすぎる目標だった。
「そうですね、私も同じです。ノヴァさんと一緒に、この穏やかな日々を護っていきましょう」
きっとシアは俺の助けがなくてもこの平和を維持できると思う。それでも、少しでも助けになれればと俺は思った。
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