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第2章 宿敵の家の当主を妻に貰ってから
第81話 シアと王都デート
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屋敷の入り口付近で待つ。時間は昼を過ぎて、朝の訓練も今日の仕事もある程度片付けていたから準備は万端だ。
扉の開く音がしてそっちをみると、同じように準備を終えたシアがちょうど出てくるところだった。
「おまたせしました」
「ううん、全然待ってないよ」
「ふふっ、じゃあ行きましょうか、王都に」
「ああ」
そう返事をすると、シアはゲートの準備を始める。
ゼロードとの戦いっていうちょっとした事件はあったけど、次期当主の座を勝ち取ったから今日は以前シアと約束していたデートの日だ。今日は休みの日じゃないけど、俺もシアも仕事を事前に済ませることでなんとか時間を確保できた。
まあ、俺の仕事量なんて大したことないから、シアの方が大変だったとは思うけど。
「準備完了です」
「いつもありがとう。今日はシアのおススメのお店に連れて行ってくれるんだよね?」
「いえいえ、簡単なことですから。はい、その予定ですよ」
今日のデート計画はシアが立ててくれた。俺が王都にそこまで詳しくないっていうのもあると思うけど、シアから「ぜひ、自分に」と言われたからだ。
案内してくれるお店はカフェと飲食店が合体したような形態らしく、昼食をそこでとる予定にしていたから昼はまだ食べていない。それにしてもシアが紹介してくれる店、楽しみだ。
隣に立つシアと、どちらからというわけでもなく手を繋ぐ。ゲートを一緒に通る場合の暗黙のルールだけど、最近になってようやく慣れてきて、自然に行えるようになった。
そのことに微笑んで、俺はシアと一緒に金色のゲートに足を踏み入れた。
ゲートの先は人通りのほとんどない裏通りだった。シアのゲートの魔法は隠しているわけじゃないけど、大っぴらにしているわけでもない。もしも大通りに出たら出たで周りの人が驚くことを考慮して、いつも人目のないところに繋いでくれている。
「どうします? すぐに行きますか? それとも少し歩きますか?」
「うーん……せっかくだし少し歩こうかな」
小腹が空きつつあるけど、どうせならもう少し時間を置いた方が良いかもしれない。もちろんシアの紹介してくれるお店だから味は期待しているけど、空腹であればあるほど美味しくなるかもしれないという、我ながらちょっと子供っぽい理由だ。
それを気取られたのか、シアは穏やかに微笑んだ。
「では適当に歩きましょう。何件かお店を紹介しますよ」
「うん、ありがとう」
俺達は二人並んで、ゲートから出てきた路地裏を後にする。二人の手は繋いだままで、歩幅は広くはなかった。
×××
シアはアークゲート家の当主だけあって王都に詳しいのか、紹介してくれる店の数は多くて、どれもこれも高そうな雰囲気だった。飲食店だけじゃなくて、服屋や宝石店、あとは人目につかないように話が出来るお店も教えてくれたりした。
「……大丈夫ですかノヴァさん? 少し一気に紹介し過ぎましたかね?」
「確かに数は多いけど、大丈夫だよ。ただ当主になるからこういった知識も必要になるなって思い知らされたというか」
「なるほど……大変ですね、将来のノヴァさんは」
「シアには負けるさ」
そう微笑んで、頭の中でお店の復習をざっと行う。確かに数は多いけど一気に覚える必要はない。その内少しずつ覚えていけばいいかな。
「……ノヴァさんは王都に来たことがあまりないんですよね?」
「そうだね。数えるくらいしかないかな」
しかも家族で来るから、決して自由に遊べるわけじゃない。子供の頃の俺にとって、王都っていう場所はこんな活気に満ちていて煌びやかな街じゃなくて、良い思い出のないつまらない街だった。
実際、家族から離れてこっそりと行動したのも一度や二度じゃない。注意を引くために子供心ながらやったことだけど、結局ターニャしか探しに来てくれないから諦めてやらなくなったっけな。
「なら、今日は大いに楽しみましょう。ノヴァさんの初デビューですね」
けど数少ない自由行動の中でシアと出会えたんだから、あの雪の日に駆けだした子供の頃の俺には本当に良くやったと褒めてやりたいくらいだ。
「あ、でもオーラに案内させたので初ではないですかね」
と思ったら、あの日出会った少女の成長した姿であるシアは思い出したように呟いた。
「いや、実はあの日はオーロラちゃん、カフェに行くのが楽しみだったみたいで、あんまり王都は案内されていないんだ。カフェを出た後もユティさんのお土産を買いに一直線だったからね」
「そうだったんですね、あの子ったら……」
溜息を吐くシアに、苦笑いで返したとき。
『ロザリア劇団の新作だよー!』
遠くから聞こえた声に、思わずそっちを見た。なにか紙を配っている少年がいて、大きな声を出している。劇団……と言ったかな?
「気になるなら見てみましょうか」
「え? ああ」
シアに言われて、俺達は少年に近づく。見られていることに気づいていたらしく、早い段階で俺達を見ていた少年は笑顔で待っていた。
「お兄さん、元気かい? 今日は彼女さんと一緒で羨ましいよ。そんな二人で劇を見ないかい? ロゼリア劇団の新作さ!」
そう言って左手で紙を差し出してきた陽気な少年から受け取って目を通す。タイトルは『北の大地に咲く花』。二人の女性が大きく描かれていて、彼女たちの服装を見るに戦いの作品かな?
「今回の新作は北の大国の姫将軍と、南の大国の女将軍の話さ。敵同士ながらも、その中で友情も育まれる注目作。ぜひ見に来てくれよな!」
「ノヴァさん、ロゼリア劇団は王都でも有名な劇団です。見てみるのもいいかもしれませんよ」
「へぇ、そうなんだ」
俺は知らなかったけど有名らしく、シアの言うことを裏付けるように俺達が立ち止まっている間も多くの人が通り過ぎるたびに置かれている紙を手に取っていく。
「おぉ、彼女さんいいねぇ! そう、うちは一流の自覚があるからね」
「ありがとうございます……ちなみに彼女ではなく妻です」
シアの一応の補足に、少年は目を見開いて大げさに驚いた。
「なんてこったい! お兄さんが羨ましくて仕方ないや!」
「ははっ、ありがとう……考えておくよ」
「うん、前向きに検討してくれ!」
あんまり人の流れの中で立ち止まるのも悪いと思って、キリのいいところで話を切り上げた。
シアと一緒に人の流れに戻って、紙を丁寧に折りたたんでポケットにしまう。
「行かないんですか? 興味ありそうでしたけど」
「うーん、シアは他に行きたいところとかないの? なければ行きたいって感じかな」
せっかくのデートだし、俺だけの意見でシアを振り回したくはなかった。もしシアが行きたいところがあればそちらにつき合おうと思っていたけど。
「特にありませんよ」
ばっさりと返されてしまった。
「本当? 買いたい本とかあったりしない?」
よく夜や休日に本を読んでいるからそう聞いてみれば、シアは首を傾げた。
かと思うと、「あぁ」と小さく呟く。
「そこまで本にこだわりはないんです。読めればいいので」
「そうなんだ」
好みの分野があるわけじゃなくて、好き嫌いせずに何でも読むってやつかな。思い返してみれば、シアが読んでいる本って小説だったり実用書だったり、時たま絵本だったりして統一感がないことを思い出した。
そういうふうにえり好みしないからこそ、彼女は賢いのかもしれない。
「屋敷にある本で十分ですよ」
「でも読み切っちゃわない? 休日とか夜とか空いてる時間で読んでるけど、合計時間は結構長いよ?」
「読み切っても何周もできるので大丈夫です」
「?」
言っている意味がよく分からなかったけど、シアが大丈夫だと言うから、まあいいのかと一応納得した。
「ノヴァさんは、時間があるときにやってることと言えば剣ですよね」
「そうだね。剣の訓練は毎日欠かさないし、体を動かすのは好きだからね」
「私はさっぱりなので、逆に少しだけ興味があったりします」
「え? そうなの?」
シアが剣を握っている姿は想像できないけど、想像できないだけで少しは扱えるのかなとは思っていた。アークゲート家の訓練所には木刀もあったし。
「はい、というより実は一度も持ったことないですね。剣も槍も杖もです」
「そうなんだ……あれ? でもアークゲート家で俺の剣技が凄いって……」
「触ったことはありませんが、見たことは何度もありますし戦ったこともありますからね。その人達と比べて劣らないと感じた、という意味です」
「そ、そうだったんだね」
ちょっと恥ずかしく感じたけど、それならともう一歩踏み込んで聞いてみることにする。
「その……シアが知っている剣が強い人ってどんな人なの?」
戦争を終結させたシアが思い描く人なんだから、相当な剣豪に違いないと思って聞いてみると、何人か当てがあるのか考え込み始めたシア。
最初は「うーん」と言っていた彼女は、しばらくして俺の方を見た。
「例えば、コールレイク帝国のダリアさんとかですかね。彼女の得物は両手剣でしたが」
「……いや、それって帝国最強の将軍じゃないか」
例えに出された人物が大物過ぎて苦笑いする。
シアが出した人物はダリア・マクナカン。戦争に参加していなかった俺でも名前を知っているほどの大物だ。戦争が終結するまでは無敗将軍と呼ばれていたくらいに。
そんな大物と比べられていたの、俺? と心配になってシアを見れば、彼女は困ったように微笑んだ。
「もちろん、戦場での経験の差や彼女の特殊な力があるので実際に戦えばダリアさんが勝つでしょう。ですが、それでも良い勝負になるとは思いますよ。おそらくダリアさんからすれば、ノヴァさんの中に光るものを見出すのは間違いないでしょうね」
「そう……なのかな?」
無敗将軍と並ぶと言われると流石に身内贔屓のようなものかなって思えるけど、無敗将軍が光るものを見出すと言われると本当のように思える。まあ仮にそれすら俺を持ち上げての発言だったとしても、それでちょっと嬉しい気持ちになっているから別にいいんだけど。
いやちょっとじゃなくて結構嬉しいかも。
そういえば、ダリアさんの事を知っているってことは、きっとコールレイクとの戦いでシアとダリアさんが戦ったってことだよね?
「ダリアさん……無敗将軍か……ねえ――」
「着きましたね」
声をかけようとしたところでシアの方を見れば、彼女の奥には一つのお店が。どうやらここがシアが案内してくれたお店らしい。確かに結構王都を歩いたし、時間的にはちょうどいいくらいか。
さっきまでの考えを頭から追い払って中に入ろうとしたとき。
「食べた後にお話ししましょうか。ノヴァさんの聞きたいことについて」
そうシアが言ってくれた。
「……そうだね、聞かせてもらおうかな」
彼女の好意に甘えるとしよう。
俺達は二人手を繋いだままで、見るからに高価そうなお店の中へと入っていった。
扉の開く音がしてそっちをみると、同じように準備を終えたシアがちょうど出てくるところだった。
「おまたせしました」
「ううん、全然待ってないよ」
「ふふっ、じゃあ行きましょうか、王都に」
「ああ」
そう返事をすると、シアはゲートの準備を始める。
ゼロードとの戦いっていうちょっとした事件はあったけど、次期当主の座を勝ち取ったから今日は以前シアと約束していたデートの日だ。今日は休みの日じゃないけど、俺もシアも仕事を事前に済ませることでなんとか時間を確保できた。
まあ、俺の仕事量なんて大したことないから、シアの方が大変だったとは思うけど。
「準備完了です」
「いつもありがとう。今日はシアのおススメのお店に連れて行ってくれるんだよね?」
「いえいえ、簡単なことですから。はい、その予定ですよ」
今日のデート計画はシアが立ててくれた。俺が王都にそこまで詳しくないっていうのもあると思うけど、シアから「ぜひ、自分に」と言われたからだ。
案内してくれるお店はカフェと飲食店が合体したような形態らしく、昼食をそこでとる予定にしていたから昼はまだ食べていない。それにしてもシアが紹介してくれる店、楽しみだ。
隣に立つシアと、どちらからというわけでもなく手を繋ぐ。ゲートを一緒に通る場合の暗黙のルールだけど、最近になってようやく慣れてきて、自然に行えるようになった。
そのことに微笑んで、俺はシアと一緒に金色のゲートに足を踏み入れた。
ゲートの先は人通りのほとんどない裏通りだった。シアのゲートの魔法は隠しているわけじゃないけど、大っぴらにしているわけでもない。もしも大通りに出たら出たで周りの人が驚くことを考慮して、いつも人目のないところに繋いでくれている。
「どうします? すぐに行きますか? それとも少し歩きますか?」
「うーん……せっかくだし少し歩こうかな」
小腹が空きつつあるけど、どうせならもう少し時間を置いた方が良いかもしれない。もちろんシアの紹介してくれるお店だから味は期待しているけど、空腹であればあるほど美味しくなるかもしれないという、我ながらちょっと子供っぽい理由だ。
それを気取られたのか、シアは穏やかに微笑んだ。
「では適当に歩きましょう。何件かお店を紹介しますよ」
「うん、ありがとう」
俺達は二人並んで、ゲートから出てきた路地裏を後にする。二人の手は繋いだままで、歩幅は広くはなかった。
×××
シアはアークゲート家の当主だけあって王都に詳しいのか、紹介してくれる店の数は多くて、どれもこれも高そうな雰囲気だった。飲食店だけじゃなくて、服屋や宝石店、あとは人目につかないように話が出来るお店も教えてくれたりした。
「……大丈夫ですかノヴァさん? 少し一気に紹介し過ぎましたかね?」
「確かに数は多いけど、大丈夫だよ。ただ当主になるからこういった知識も必要になるなって思い知らされたというか」
「なるほど……大変ですね、将来のノヴァさんは」
「シアには負けるさ」
そう微笑んで、頭の中でお店の復習をざっと行う。確かに数は多いけど一気に覚える必要はない。その内少しずつ覚えていけばいいかな。
「……ノヴァさんは王都に来たことがあまりないんですよね?」
「そうだね。数えるくらいしかないかな」
しかも家族で来るから、決して自由に遊べるわけじゃない。子供の頃の俺にとって、王都っていう場所はこんな活気に満ちていて煌びやかな街じゃなくて、良い思い出のないつまらない街だった。
実際、家族から離れてこっそりと行動したのも一度や二度じゃない。注意を引くために子供心ながらやったことだけど、結局ターニャしか探しに来てくれないから諦めてやらなくなったっけな。
「なら、今日は大いに楽しみましょう。ノヴァさんの初デビューですね」
けど数少ない自由行動の中でシアと出会えたんだから、あの雪の日に駆けだした子供の頃の俺には本当に良くやったと褒めてやりたいくらいだ。
「あ、でもオーラに案内させたので初ではないですかね」
と思ったら、あの日出会った少女の成長した姿であるシアは思い出したように呟いた。
「いや、実はあの日はオーロラちゃん、カフェに行くのが楽しみだったみたいで、あんまり王都は案内されていないんだ。カフェを出た後もユティさんのお土産を買いに一直線だったからね」
「そうだったんですね、あの子ったら……」
溜息を吐くシアに、苦笑いで返したとき。
『ロザリア劇団の新作だよー!』
遠くから聞こえた声に、思わずそっちを見た。なにか紙を配っている少年がいて、大きな声を出している。劇団……と言ったかな?
「気になるなら見てみましょうか」
「え? ああ」
シアに言われて、俺達は少年に近づく。見られていることに気づいていたらしく、早い段階で俺達を見ていた少年は笑顔で待っていた。
「お兄さん、元気かい? 今日は彼女さんと一緒で羨ましいよ。そんな二人で劇を見ないかい? ロゼリア劇団の新作さ!」
そう言って左手で紙を差し出してきた陽気な少年から受け取って目を通す。タイトルは『北の大地に咲く花』。二人の女性が大きく描かれていて、彼女たちの服装を見るに戦いの作品かな?
「今回の新作は北の大国の姫将軍と、南の大国の女将軍の話さ。敵同士ながらも、その中で友情も育まれる注目作。ぜひ見に来てくれよな!」
「ノヴァさん、ロゼリア劇団は王都でも有名な劇団です。見てみるのもいいかもしれませんよ」
「へぇ、そうなんだ」
俺は知らなかったけど有名らしく、シアの言うことを裏付けるように俺達が立ち止まっている間も多くの人が通り過ぎるたびに置かれている紙を手に取っていく。
「おぉ、彼女さんいいねぇ! そう、うちは一流の自覚があるからね」
「ありがとうございます……ちなみに彼女ではなく妻です」
シアの一応の補足に、少年は目を見開いて大げさに驚いた。
「なんてこったい! お兄さんが羨ましくて仕方ないや!」
「ははっ、ありがとう……考えておくよ」
「うん、前向きに検討してくれ!」
あんまり人の流れの中で立ち止まるのも悪いと思って、キリのいいところで話を切り上げた。
シアと一緒に人の流れに戻って、紙を丁寧に折りたたんでポケットにしまう。
「行かないんですか? 興味ありそうでしたけど」
「うーん、シアは他に行きたいところとかないの? なければ行きたいって感じかな」
せっかくのデートだし、俺だけの意見でシアを振り回したくはなかった。もしシアが行きたいところがあればそちらにつき合おうと思っていたけど。
「特にありませんよ」
ばっさりと返されてしまった。
「本当? 買いたい本とかあったりしない?」
よく夜や休日に本を読んでいるからそう聞いてみれば、シアは首を傾げた。
かと思うと、「あぁ」と小さく呟く。
「そこまで本にこだわりはないんです。読めればいいので」
「そうなんだ」
好みの分野があるわけじゃなくて、好き嫌いせずに何でも読むってやつかな。思い返してみれば、シアが読んでいる本って小説だったり実用書だったり、時たま絵本だったりして統一感がないことを思い出した。
そういうふうにえり好みしないからこそ、彼女は賢いのかもしれない。
「屋敷にある本で十分ですよ」
「でも読み切っちゃわない? 休日とか夜とか空いてる時間で読んでるけど、合計時間は結構長いよ?」
「読み切っても何周もできるので大丈夫です」
「?」
言っている意味がよく分からなかったけど、シアが大丈夫だと言うから、まあいいのかと一応納得した。
「ノヴァさんは、時間があるときにやってることと言えば剣ですよね」
「そうだね。剣の訓練は毎日欠かさないし、体を動かすのは好きだからね」
「私はさっぱりなので、逆に少しだけ興味があったりします」
「え? そうなの?」
シアが剣を握っている姿は想像できないけど、想像できないだけで少しは扱えるのかなとは思っていた。アークゲート家の訓練所には木刀もあったし。
「はい、というより実は一度も持ったことないですね。剣も槍も杖もです」
「そうなんだ……あれ? でもアークゲート家で俺の剣技が凄いって……」
「触ったことはありませんが、見たことは何度もありますし戦ったこともありますからね。その人達と比べて劣らないと感じた、という意味です」
「そ、そうだったんだね」
ちょっと恥ずかしく感じたけど、それならともう一歩踏み込んで聞いてみることにする。
「その……シアが知っている剣が強い人ってどんな人なの?」
戦争を終結させたシアが思い描く人なんだから、相当な剣豪に違いないと思って聞いてみると、何人か当てがあるのか考え込み始めたシア。
最初は「うーん」と言っていた彼女は、しばらくして俺の方を見た。
「例えば、コールレイク帝国のダリアさんとかですかね。彼女の得物は両手剣でしたが」
「……いや、それって帝国最強の将軍じゃないか」
例えに出された人物が大物過ぎて苦笑いする。
シアが出した人物はダリア・マクナカン。戦争に参加していなかった俺でも名前を知っているほどの大物だ。戦争が終結するまでは無敗将軍と呼ばれていたくらいに。
そんな大物と比べられていたの、俺? と心配になってシアを見れば、彼女は困ったように微笑んだ。
「もちろん、戦場での経験の差や彼女の特殊な力があるので実際に戦えばダリアさんが勝つでしょう。ですが、それでも良い勝負になるとは思いますよ。おそらくダリアさんからすれば、ノヴァさんの中に光るものを見出すのは間違いないでしょうね」
「そう……なのかな?」
無敗将軍と並ぶと言われると流石に身内贔屓のようなものかなって思えるけど、無敗将軍が光るものを見出すと言われると本当のように思える。まあ仮にそれすら俺を持ち上げての発言だったとしても、それでちょっと嬉しい気持ちになっているから別にいいんだけど。
いやちょっとじゃなくて結構嬉しいかも。
そういえば、ダリアさんの事を知っているってことは、きっとコールレイクとの戦いでシアとダリアさんが戦ったってことだよね?
「ダリアさん……無敗将軍か……ねえ――」
「着きましたね」
声をかけようとしたところでシアの方を見れば、彼女の奥には一つのお店が。どうやらここがシアが案内してくれたお店らしい。確かに結構王都を歩いたし、時間的にはちょうどいいくらいか。
さっきまでの考えを頭から追い払って中に入ろうとしたとき。
「食べた後にお話ししましょうか。ノヴァさんの聞きたいことについて」
そうシアが言ってくれた。
「……そうだね、聞かせてもらおうかな」
彼女の好意に甘えるとしよう。
俺達は二人手を繋いだままで、見るからに高価そうなお店の中へと入っていった。
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