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第2章 宿敵の家の当主を妻に貰ってから
第83話 違和感
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お店を出て、貰った紙に書かれた劇場に向かう。シアが言うには屋外にある劇場らしく、入場料を払えば誰でも見ることが出来るみたいだ。
とはいえ時間にはまだ余裕があるから、適当に街を見て回ろうと思って二人で歩いていた。
「えっと……今日は人通りが多いですね……」
「そ、そうだね……これだけ多いと、休日はもっとすごいんだろうなぁ……」
けど俺達の会話は少しぎこちない。その理由は。
「……あのさ」
店を出て少ししてから感じるようになった強烈な視線に根を上げた。それが見知らぬ誰かなら捕まえてもいいんだけど、さっきチラリとだけ確認した感じだと、知り合い……いや、知っている人みたいで。
「確か、システィさん……だっけ?」
遠くからじーっとこっちを見ているのは、アークゲート家の屋敷ですれ違ったシスティさんだった。確かシアの従妹で、ユティさんの補佐をしている人だった筈。その人がさっきから一定の距離を保って、俺達をつけている。
いや、つけているというよりも気づいて欲しいような雰囲気だ。隠れるような気配もないし。
「……すみません」
俺が気付いたんだからシアだって当然気づいていて、さっきから目じりを下げていた。
「本当は昨日が定例報告の日だったのですが、姿が見えなかったので忙しかったんだと思います。ですがなんでわざわざこの日に……」
「……ひょっとしたら緊急事態かもしれないね。ちょっと話を聞いてきたら?」
「しかし……」
渋ってくれるシアに俺は微笑む。システィさんと話をするだけならそんなに時間はかからないだろうし、大丈夫だろう。そう判断して、つないでいた手を離した。
「すぐそこで待ってるから、話してきなよ。あ、でもシスティさんをあんまり怒らないでね。きっと伝えたいっていう気持ちがあるからだと思うから」
「……ノヴァさんがそう言うなら」
渋々と言った様子でシアは踵を返して、システィさんの方へと駆けていく。その様子を見ながら、ああ言ったけど緊急事態じゃなければいいなと思った。
シアはすぐにシスティさんの所に到着。一方でシスティさんは見ていて可哀そうになるくらいの勢いで何度も頭を下げていて、シアはそれを苦笑いしながら必死に止めていた。じっと見ていたけど、しばらくするとシスティさんは驚いた様子で俺をじっと見て頭を深く下げた後、再び視線をシアに戻した。
何を話しているのかは流石に聞き取れないし、唇の動きから読み取れるはずもない。俺は邪魔になると思ったので通りから少し外れたところに移動した。といっても俺が元々いた場所から歩いて数歩の距離だからシアが見失うようなことはないだろう。
「あれー? お兄さんじゃん! なにしてるの?」
声を聞いて振り返ると、さっき劇団の紙をくれた少年が立っていた。
「あれ? さっきの……」
驚いた、まさかまた再会するなんて。さっき出会った場所からここはまあまあ離れているし、こんなに広い範囲に宣伝しているのか、大変だな。
「こっちに向かってるってことは、見てくれる気になった!?」
「あ、ああ……面白そうだしね」
相変わらずの元気さに少し気後れする。かと思うと、少年は首を傾げて俺をじっと見た。
「まさか……お兄さんって、貴族様?」
「え? ああ、そうだけど、そんな様なんか付けなくていいよ」
生まれてこの方、初対面の人に大きく敬われたことなんて片手で数えるほどしかない。そんな畏まられてもって感じだし。
「へぇ、お兄さん貴族にしては珍しいね。どこら辺の貴族なの?」
「俺は南にあるサリアの街の出身だよ」
「サリアの街!? ってことはフォルス家、剣の名門じゃないか!」
あえてぼかしたけど、一発で当てられてしまった。唯一の救いは、この少年が声を抑えてくれているので周りの人は全く気付いていないことくらいか。
「あ、あぁ……でもそんなに気にしないで、さっきみたいにお兄さんって呼んでよ」
これ以上貴族関連の話をするとシアの事も話さないといけなくなりそうで、無理やりに話題を変えようとする。
「ところで、劇を見るのは初めてなんだけど、人がお話の登場人物になりきるんでしょ?」
「そうだよ! よく知っているね!」
「君は出ないの?」
聞いてみると、少年は目を丸くしたけど、すぐに笑顔になった。
「うーん、僕は出ないかな。まだ宣伝要員さ」
「でもそれなら、そのうち劇に出たいとか?」
「うーん、どうだろうね?」
意外なことに、はぐらかされてしまった。劇団で働いていることから劇に興味があって、そういった演劇をする人になるのが夢かなと思っていたんだけど。
「あ、そうだ。お兄さん、今日の劇を見た後に決めて欲しいんだけど、他にもいくつかおススメの劇があるんだ」
いや、そうじゃない。意外なのは少年の言葉じゃなくて、なんていうか動きや雰囲気だ。
「今日はやらないけど、違う日にやったりするからぜひ見に来てよ!」
そう言って、右手で複数の紙を差し出してきた少年を見て、俺は咄嗟に声に出していた。
「君、誰だい? さっき会った人じゃないよね?」
瞬間、少年の顔から笑顔が消えて、固まった。
「お、お兄さん一体何を言って――」
「雰囲気が違うのもそうだけど、さっきの人は左利きだった。けど君は右利きだ」
「りょ、両利きなんだよー」
「雰囲気が違うよ。君はさっきの人じゃない」
「…………」
結構確信があるから強気にそう言えば、ついに少年は動きを止める。かと思うと、小さく笑い始めた。
「……お前、面白いな」
聞こえたのは今まで話していた少年とは全く違う声が、響いた。
とはいえ時間にはまだ余裕があるから、適当に街を見て回ろうと思って二人で歩いていた。
「えっと……今日は人通りが多いですね……」
「そ、そうだね……これだけ多いと、休日はもっとすごいんだろうなぁ……」
けど俺達の会話は少しぎこちない。その理由は。
「……あのさ」
店を出て少ししてから感じるようになった強烈な視線に根を上げた。それが見知らぬ誰かなら捕まえてもいいんだけど、さっきチラリとだけ確認した感じだと、知り合い……いや、知っている人みたいで。
「確か、システィさん……だっけ?」
遠くからじーっとこっちを見ているのは、アークゲート家の屋敷ですれ違ったシスティさんだった。確かシアの従妹で、ユティさんの補佐をしている人だった筈。その人がさっきから一定の距離を保って、俺達をつけている。
いや、つけているというよりも気づいて欲しいような雰囲気だ。隠れるような気配もないし。
「……すみません」
俺が気付いたんだからシアだって当然気づいていて、さっきから目じりを下げていた。
「本当は昨日が定例報告の日だったのですが、姿が見えなかったので忙しかったんだと思います。ですがなんでわざわざこの日に……」
「……ひょっとしたら緊急事態かもしれないね。ちょっと話を聞いてきたら?」
「しかし……」
渋ってくれるシアに俺は微笑む。システィさんと話をするだけならそんなに時間はかからないだろうし、大丈夫だろう。そう判断して、つないでいた手を離した。
「すぐそこで待ってるから、話してきなよ。あ、でもシスティさんをあんまり怒らないでね。きっと伝えたいっていう気持ちがあるからだと思うから」
「……ノヴァさんがそう言うなら」
渋々と言った様子でシアは踵を返して、システィさんの方へと駆けていく。その様子を見ながら、ああ言ったけど緊急事態じゃなければいいなと思った。
シアはすぐにシスティさんの所に到着。一方でシスティさんは見ていて可哀そうになるくらいの勢いで何度も頭を下げていて、シアはそれを苦笑いしながら必死に止めていた。じっと見ていたけど、しばらくするとシスティさんは驚いた様子で俺をじっと見て頭を深く下げた後、再び視線をシアに戻した。
何を話しているのかは流石に聞き取れないし、唇の動きから読み取れるはずもない。俺は邪魔になると思ったので通りから少し外れたところに移動した。といっても俺が元々いた場所から歩いて数歩の距離だからシアが見失うようなことはないだろう。
「あれー? お兄さんじゃん! なにしてるの?」
声を聞いて振り返ると、さっき劇団の紙をくれた少年が立っていた。
「あれ? さっきの……」
驚いた、まさかまた再会するなんて。さっき出会った場所からここはまあまあ離れているし、こんなに広い範囲に宣伝しているのか、大変だな。
「こっちに向かってるってことは、見てくれる気になった!?」
「あ、ああ……面白そうだしね」
相変わらずの元気さに少し気後れする。かと思うと、少年は首を傾げて俺をじっと見た。
「まさか……お兄さんって、貴族様?」
「え? ああ、そうだけど、そんな様なんか付けなくていいよ」
生まれてこの方、初対面の人に大きく敬われたことなんて片手で数えるほどしかない。そんな畏まられてもって感じだし。
「へぇ、お兄さん貴族にしては珍しいね。どこら辺の貴族なの?」
「俺は南にあるサリアの街の出身だよ」
「サリアの街!? ってことはフォルス家、剣の名門じゃないか!」
あえてぼかしたけど、一発で当てられてしまった。唯一の救いは、この少年が声を抑えてくれているので周りの人は全く気付いていないことくらいか。
「あ、あぁ……でもそんなに気にしないで、さっきみたいにお兄さんって呼んでよ」
これ以上貴族関連の話をするとシアの事も話さないといけなくなりそうで、無理やりに話題を変えようとする。
「ところで、劇を見るのは初めてなんだけど、人がお話の登場人物になりきるんでしょ?」
「そうだよ! よく知っているね!」
「君は出ないの?」
聞いてみると、少年は目を丸くしたけど、すぐに笑顔になった。
「うーん、僕は出ないかな。まだ宣伝要員さ」
「でもそれなら、そのうち劇に出たいとか?」
「うーん、どうだろうね?」
意外なことに、はぐらかされてしまった。劇団で働いていることから劇に興味があって、そういった演劇をする人になるのが夢かなと思っていたんだけど。
「あ、そうだ。お兄さん、今日の劇を見た後に決めて欲しいんだけど、他にもいくつかおススメの劇があるんだ」
いや、そうじゃない。意外なのは少年の言葉じゃなくて、なんていうか動きや雰囲気だ。
「今日はやらないけど、違う日にやったりするからぜひ見に来てよ!」
そう言って、右手で複数の紙を差し出してきた少年を見て、俺は咄嗟に声に出していた。
「君、誰だい? さっき会った人じゃないよね?」
瞬間、少年の顔から笑顔が消えて、固まった。
「お、お兄さん一体何を言って――」
「雰囲気が違うのもそうだけど、さっきの人は左利きだった。けど君は右利きだ」
「りょ、両利きなんだよー」
「雰囲気が違うよ。君はさっきの人じゃない」
「…………」
結構確信があるから強気にそう言えば、ついに少年は動きを止める。かと思うと、小さく笑い始めた。
「……お前、面白いな」
聞こえたのは今まで話していた少年とは全く違う声が、響いた。
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