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第2章 宿敵の家の当主を妻に貰ってから
第87話 親睦会への招待
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「? あっ、これ……」
昼前の業務時間。と言ってもそこまで忙しくはないときに、業務を手伝ってくれていたターニャがぽつりと呟いた。かと思えば彼女は勢い良く立ち上がり、少しだけ難しい顔をして俺の元へ近づいてくる。というよりも、少し怒っているように思えた。
「旦那様……ついに来ましたよー」
「来たって、何が?」
「これですよ、これ」
そういってターニャが差し出してきた封筒を受け取る。裏を向ければ俺の実家であるフォルス家の封がされていて、差出人はゼロードだった。これはつまり……。
そう思って机の引き出しからペーパーナイフを取り出してさっと開封する。出てきたのは、一枚の紙。
「……やっぱり、親睦会の招待状だ」
書かれていた内容は、親睦会の招待状だった。ご丁寧にゼロードの印まで押してある。
「一週間後ですよね? 急すぎません?」
「……まあ、俺に出すか出さないか迷って迷って、父上のチェックが入って渋々送ったって感じじゃないかな」
なんとなくそんな光景が頭に浮かぶ。あのゼロードが自分から俺に手紙を送るとは思えないし。にしても親睦会か。
紙に視線を落とす。ターニャも同じように紙を見ていて、ぽつりと呟いた。
「誰でも好きな人を招待してくれって書いてありますね。ちょっとムカつくから、オーロラさんやユースティティアさんも呼びますか。それでフォルス家の奴らにちょっと苦しい思いをしてもらいましょう」
「いやいや、二人だって予定があるし、そもそも苦しいのはその二人もだからね? そんな真似させられないよ」
ターニャが過去の出来事からあまりフォルス家を良くないと思っていることはよく分かっているし、そういったことを言いたい気持ちも分からなくはないけど、オーロラちゃんやユティさんを苦しめるのは絶対にダメだ。
そう言うとターニャも目を見開いて、すぐに頭を下げた。
「も、申し訳ありません……そうでしたね、失念していました……」
「まあ、そうだよね……俺といると皆普通だし、シアはシアで特殊だろうし」
覇気を持たない俺と一緒にいてもオーロラちゃんやユティさんの気分が悪くなることはない。シアは唯一フォルス家の人といて気分が悪くならない例外だけど、シアは存在自体がちょっと特殊って感じだし。
いや、オーロラちゃんも超優秀らしいし、ユティさんだってそうだから案外そうなのかも? なんてことを思った。
「ということは、旦那様と奥様の二人ですかね?」
「そうなるね」
親睦会の流れは詳しくは知らないけど、一日で終わるはずだ。泊るようなこともないから大丈夫だろう。
「……大丈夫ですかね? あの猿ですよ? ひょっとしたら旦那様を暗殺しに来るかも……」
「いや、そんなことしないでしょ。ただ、戦いをもう一度申し込まれることはあるかもしれないね」
実家での戦いは俺の勝利だったけど、ゼロードはそれに対して納得がいっていないみたいだった。だから南側の貴族たちが集まる場で再戦を申し込まれる可能性はある。戦いが二度目ならゼロードだって対策してくるだろう。
いや、何か難癖をつけてシアの協力を無しにしてくるかもしれない。こっちとしては知ったことじゃないけど。
「……ちょっとめんどくさいですね。これから先何度も挑まれるかもしれませんよ?」
「まあ、それならそれで、その度に勝つだけだよ」
そう言うと、ターニャは目を見開いた。
「おぉ……旦那様もお強くなりましたね」
感極まったようにそう言う彼女に、おおげさだなぁ、と返す。
「そうかな……でもそうかも。きっとシアのお陰かな」
彼女のお陰で自信がつきつつある。過信したらいけないけど、ゼロードに対してくらい強く出るのは許される筈だ。
「そうですね……いえ、思い返せば旦那様は昔から強かったのです……ですが私が……」
「ターニャ……急に泣かれると俺も困るよ……」
「すみません……ちょっと昔を思い出しまして……」
きっと小さい頃にターニャを護るために体を張ってゼロードに挑んだ時の事を思い出しているのだろう。それを思い返すと俺もしみじみとすることはあるけど、何も泣くことはないだろう。そう思ってハンカチを取り出して、差し出した。
「ありがとうございます……」
涙をふくターニャを見ながら、苦笑いをして招待状に目を戻す。日付は約一週間後、時間帯は夜。
何も起こらないなら、それに越したことはないんだけどな。
そう思って、俺は丁寧に紙を封筒の中へと戻した。
昼前の業務時間。と言ってもそこまで忙しくはないときに、業務を手伝ってくれていたターニャがぽつりと呟いた。かと思えば彼女は勢い良く立ち上がり、少しだけ難しい顔をして俺の元へ近づいてくる。というよりも、少し怒っているように思えた。
「旦那様……ついに来ましたよー」
「来たって、何が?」
「これですよ、これ」
そういってターニャが差し出してきた封筒を受け取る。裏を向ければ俺の実家であるフォルス家の封がされていて、差出人はゼロードだった。これはつまり……。
そう思って机の引き出しからペーパーナイフを取り出してさっと開封する。出てきたのは、一枚の紙。
「……やっぱり、親睦会の招待状だ」
書かれていた内容は、親睦会の招待状だった。ご丁寧にゼロードの印まで押してある。
「一週間後ですよね? 急すぎません?」
「……まあ、俺に出すか出さないか迷って迷って、父上のチェックが入って渋々送ったって感じじゃないかな」
なんとなくそんな光景が頭に浮かぶ。あのゼロードが自分から俺に手紙を送るとは思えないし。にしても親睦会か。
紙に視線を落とす。ターニャも同じように紙を見ていて、ぽつりと呟いた。
「誰でも好きな人を招待してくれって書いてありますね。ちょっとムカつくから、オーロラさんやユースティティアさんも呼びますか。それでフォルス家の奴らにちょっと苦しい思いをしてもらいましょう」
「いやいや、二人だって予定があるし、そもそも苦しいのはその二人もだからね? そんな真似させられないよ」
ターニャが過去の出来事からあまりフォルス家を良くないと思っていることはよく分かっているし、そういったことを言いたい気持ちも分からなくはないけど、オーロラちゃんやユティさんを苦しめるのは絶対にダメだ。
そう言うとターニャも目を見開いて、すぐに頭を下げた。
「も、申し訳ありません……そうでしたね、失念していました……」
「まあ、そうだよね……俺といると皆普通だし、シアはシアで特殊だろうし」
覇気を持たない俺と一緒にいてもオーロラちゃんやユティさんの気分が悪くなることはない。シアは唯一フォルス家の人といて気分が悪くならない例外だけど、シアは存在自体がちょっと特殊って感じだし。
いや、オーロラちゃんも超優秀らしいし、ユティさんだってそうだから案外そうなのかも? なんてことを思った。
「ということは、旦那様と奥様の二人ですかね?」
「そうなるね」
親睦会の流れは詳しくは知らないけど、一日で終わるはずだ。泊るようなこともないから大丈夫だろう。
「……大丈夫ですかね? あの猿ですよ? ひょっとしたら旦那様を暗殺しに来るかも……」
「いや、そんなことしないでしょ。ただ、戦いをもう一度申し込まれることはあるかもしれないね」
実家での戦いは俺の勝利だったけど、ゼロードはそれに対して納得がいっていないみたいだった。だから南側の貴族たちが集まる場で再戦を申し込まれる可能性はある。戦いが二度目ならゼロードだって対策してくるだろう。
いや、何か難癖をつけてシアの協力を無しにしてくるかもしれない。こっちとしては知ったことじゃないけど。
「……ちょっとめんどくさいですね。これから先何度も挑まれるかもしれませんよ?」
「まあ、それならそれで、その度に勝つだけだよ」
そう言うと、ターニャは目を見開いた。
「おぉ……旦那様もお強くなりましたね」
感極まったようにそう言う彼女に、おおげさだなぁ、と返す。
「そうかな……でもそうかも。きっとシアのお陰かな」
彼女のお陰で自信がつきつつある。過信したらいけないけど、ゼロードに対してくらい強く出るのは許される筈だ。
「そうですね……いえ、思い返せば旦那様は昔から強かったのです……ですが私が……」
「ターニャ……急に泣かれると俺も困るよ……」
「すみません……ちょっと昔を思い出しまして……」
きっと小さい頃にターニャを護るために体を張ってゼロードに挑んだ時の事を思い出しているのだろう。それを思い返すと俺もしみじみとすることはあるけど、何も泣くことはないだろう。そう思ってハンカチを取り出して、差し出した。
「ありがとうございます……」
涙をふくターニャを見ながら、苦笑いをして招待状に目を戻す。日付は約一週間後、時間帯は夜。
何も起こらないなら、それに越したことはないんだけどな。
そう思って、俺は丁寧に紙を封筒の中へと戻した。
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