宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙

文字の大きさ
148 / 237
第3章 宿敵の家と宿敵でなくなってから

第148話 一方、シア達からの評価は

しおりを挟む
「以上が、ローズ・フォルス、旧名ローズ・アインスタットのこれまでの経歴になります」

 ユティがまとめてくれた情報の書類を見ながら彼女からの報告を簡単に聞く。少し気になったので調べてもらいましたが、ローズに誰かと深いつながりがあるといったような怪しい点は見つかりませんでした。
 一般的な貴族夫人といったところでしょうか。これならば特に問題はなさそうです。

「つい先日南側の交流会に参加してローズ・フォルスに接触したそうですが、いかがでしたか?」

「そうですねぇ……」

 魔法や話術で周りの夫人を集めた私を遠巻きに見るローズの姿を思い出します。作り笑いと細められた瞼から覗く冷たい瞳は、ただの貴族夫人ならば身震いをするほどなのかもしれませんが。

「うーん、威嚇したユキリスのようなもの……でしょうか?」

「ユキリス?」

 たまたま交流会にて、氷で作った動物の像のモチーフだったので例に出しましたが、ユティはしっくり来ていないようで首をかしげています。
 どういうことなのか説明するために私は続けました。

「ローズ婦人は強い方ではなく、自分を強く見せたい方ということです。
 ある程度予想はしていましたが、ここにあるような強い口調や態度、自分を美しく着飾って交流会で注目を浴びたいといった行動は、もちろん自分がしたいというのもありますが、侮られたくないという気持ちからでしょう」

 実際、アインスタット家での過去の態度を調べてもらいましたが、父や母に対しては聞き訳が良く、使用人たちには強い物言いをしていたようです。ただその一方で少しびくびくしているような面もあったそうですので、間違いないと思います。

 親睦会で初めて会ったときも私との会話で驚き、イライラしていた雰囲気はありましたが、その中にほんの少しだけ怯えも見えた気がしますからね。

「ですので、そういった意味で威嚇するユキリスということです」

「それは何と言いますか……可愛らしいと言いますか……」

 苦笑いするユティを視界の隅に入れて私は手元の書類をめくります。そこに記されていたのは、彼女にとって夫であり、私にとって義理の兄でもあるカイラスとの関係性でした。
 冷え切っている……とまでは言えないものの上手くいっていない、というのが情報部隊が集めたものです。

 カイラスはカイラスでローズにそこまで関心がないものの、彼女が求めるものはほぼ全て与えていますし、ローズはローズでカイラスについて不満はあるものの、夫としての価値が高すぎるためにそれを甘んじて受け入れている、と

「ただ過去にはカイラスに当主の座を狙うようにと唆したこともあるようですが……」

 ユティの言った内容は確かに書類に書かれていました。ですがこの件に関しては、そこまで問題視はしていません。

「こちらは次期当主の候補筆頭がゼロードの時代ですからね。あれがなるくらいなら自分の夫の方が良い、と思うのも無理はないでしょう」

 実際、私もそう思っていましたし、と理由を述べると、ユティは頷いて口を開いた。

「それについては同意ですが、今も同じようなことを思っているかもしれませんよ?
 とはいえ夫であるカイラスがそれを許さないとは思いますが……念のためにローズ・フォルスを監視をしておきますか?」

 私と同じような結論に至っているユティは確認してきますが、私は首を横に振って否定の意を示します。

「カイラスの動向は探り続けているので、そちらは良いでしょう」

「かしこまりました」

 軽く頭を下げたユティは、しかしそのまま退室はせずに再び口を開きます。

「続いてレイモンド王子とマリアベル皇女の結婚式典ですが、こちらも参加人員はすでに用意が出来ています。私、オーラ、ノクターン先生は警備ではなく招待客として参加、という事でよろしかったでしょうか?」

「はい、それで構いません。二日後にノヴァさんと共に会場の下見を行いますので、そこで警備の配置をある程度決める予定です。後ほど共有しますね」

「お願いします」

 今回のレイとマリアベル皇女の結婚式典はこれまでの王族の式典とは違い、帝国と王国の関係が良好であることを外部に示す絶好の機会になります。
 予定通り行われ、そして何の問題もなく終わることが求められます。

「邪魔をする勢力の心当たりはありますか?」

 だからこそ事前に帝国、あるいは王国でこの結婚式典を妨害する勢力は洗い出しておきたかった。
 ユティは少し考えるそぶりをして、しばらくしてから口を開きます。

「王国、帝国どちらにも、両国の平和を快く思わない者はいるでしょう。戦時中の方が良かったと考える人も同じように。
 とはいえ、当日に妨害をしてくるような勢力も、仮にしてくるとしてアークゲートとフォルスの警備を何とかできる勢力も思いつきません」

 ユティの言葉は相手を侮っているようにも思えますが、アークゲート家とフォルス家、この国の二大貴族が万全の状態で警備をする会場で悪さを出来る勢力がいないのもまた事実。ユティは自分、私、オーラにノークすらも戦力の勘定に入れているでしょうしね。

 まあ、ユティの言いたいことは分かりましたが。

「念のため、当日の警備担当には十分に注意、および警戒することを徹底してください。今回はノヴァさんと共同で行う初めての大きな仕事ですから、フォルス家の人員とも最大限協力するように、と」

「かしこまりました。そのようにお伝えします」

 警備についての流れをおおよそ確認したところで、私は腕を組んで考えます。自分の属する国については考えましたが、あと残っているのは帝国について。当然、帝国からも多数の貴族が参加します。

 そしてその中にはあの無敗将軍、ダリア・マクナカンさんも居るでしょう。ノヴァさんに以前話をしたときには興味を持っていたので、今回の結婚式典で話をする機会があると良いのですが。

「いずれにせよ、この式典を成功させるために尽力する必要があります。私一人では力不足でしょう。ユティ、頼りにしていますよ」

「はい、お任せください。当主様とノヴァさんのためにアークゲート家は命燃やしきるまで尽くします」

「それは尽くしすぎですが……」

 大真面目な顔でとんでもないことを口にするユティに、私は苦笑いで返した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

親友に恋人を奪われた俺は、姉の様に思っていた親友の父親の後妻を貰う事にしました。傷ついた二人の恋愛物語

石のやっさん
恋愛
同世代の輪から浮いていた和也は、村の権力者の息子正一より、とうとう、その輪のなから外されてしまった。幼馴染もかっての婚約者芽瑠も全員正一の物ので、そこに居場所が無いと悟った和也はそれを受け入れる事にした。 本来なら絶望的な状況の筈だが……和也の顔は笑っていた。 『勇者からの追放物』を書く時にに集めた資料を基に異世界でなくどこかの日本にありそうな架空な場所での物語を書いてみました。 「25周年アニバーサリーカップ」出展にあたり 主人公の年齢を25歳 ヒロインの年齢を30歳にしました。 カクヨムでカクヨムコン10に応募して中間突破した作品を加筆修正した作品です。 大きく物語は変わりませんが、所々、加筆修正が入ります。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

私の手からこぼれ落ちるもの

アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。 優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。 でもそれは偽りだった。 お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。 お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。 心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。 私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。 こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら… ❈ 作者独自の世界観です。 ❈ 作者独自の設定です。 ❈ ざまぁはありません。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

処理中です...