宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙

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第3章 宿敵の家と宿敵でなくなってから

第163話 合わない数字

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 最終試験を見終わって俺は自分の執務室に戻る。今日は試験を見たかったから他の仕事は昨日の内に前倒して終わらせている。けれどまだ時間は夕方に差し掛かったくらいで、少し手持無沙汰になってしまった。

 ふと執務机に近づくと、机の上に置いている五つの便箋の内、一つに新しく書き込みがあるのに気づいた。立ったままで桃色の便箋を手に取ってみれば、オーロラちゃんからの連絡だった。

『こんにちはお兄様。このあとアークゲート家の屋敷に戻るのだけど、良ければ一緒にお茶でもどう? 久しぶりにお話したいなと思っているんだけど』

 今からでも間に合うかなと思ったものの、とりあえず応じてみる。すると書き込んでからすぐに返信があった。どうやら連絡が来たのはそこまで前の事ではなかったようだ。

 喜ぶオーロラちゃんの文章を見て微笑んだ俺はゲートの機器を取り出す。昔は間違えてユティさんの部屋に繋いだこともあったけど、今ではアークゲートの屋敷の入り口に繋ぐのも慣れたものだ。

 起動したところで、紙にペンが走る音を聞いた。視線を便箋に向けてみると、新たに書き込みがあった。

『ごめんなさい、ちょっと片付けないといけない書類が急に出てきて……すぐ片付けるから、先に私の部屋で待っていて。今日はたまたまリサが本家の屋敷に行ってるから、リサにはこっちから連絡しておくわね』

 おや、どうやらちょっと急用ができてしまったらしい。とはいえ少し待つくらいなら全然問題ない。俺はささっと、大丈夫だよ、と書いて返信する。
 ありがとう、というオーロラちゃんからの元気な文字を最後にして、俺はゲートへと足を踏み入れた。

 本当に一瞬で、南から北へと移動できてしまうゲート。通るたびにシアの力ってやっぱり凄いなぁと感心してしまう。これを知ってしまうと、これ以外の移動方法が億劫に感じてしまうのが唯一の欠点か。

 でも便利だしなぁ……基本的にどの場面でも相手に来てもらうよりも俺が行く方が早くて楽だと思うくらいには。

 そんなことをアークゲートの屋敷の入り口で思っていると、少し騒がしい足音を聞いた。振り返ると、向こうからリサさんが走ってきていた。

「旦那……えっとノヴァさん、ようこそアークゲート家へ。お嬢様から急に言われたから驚きました」

「お久しぶりですリサさん。すみません、オーロラちゃん急な用事が出来ちゃったみたいで」

「いえ、謝らなければならないのはこちらのほうです。本当に申し訳ありません」

「いえいえ、オーロラちゃんも忙しいですからね。全然気にしていません」

 お互いに謝るという少し変な展開になる。アークゲート家のメイドさん達とは顔なじみではあるけど、リサさんはその中でもかかわりが深い部類に入る人だ。一番初めに会ったメイドさんだし、オーロラちゃんの専属侍女っていう立場でもあるから。

「あ、とりあえずお嬢様のお部屋にご案内しますね」

 リサさんに案内されて、オーロラちゃんの部屋に通される。彼女の部屋は二階の左側、廊下の角を曲がってすぐにある。そこまでリサさんの背中に従ってついていき、部屋の中に入る。
 とある人とは違って綺麗に整理された部屋が出迎えてくれる。ただ机の上は少しだけ散らかっていて、オーロラちゃんの忙しさを物語っているようだった。

 リサさんはすぐにお茶の用意をしてくれるけど、途中であることに気づいたようで、「あっ」と呟いた。

「そういえば、北側で有名なコーヒー屋の豆が手に入ったのですが、いかがですか?」

「本当ですか? それは興味があります」

「そうですよね。一階の厨房にあるはずなので、ちょっと取ってきますね。ノヴァさんはごゆっくりお過ごしください」

「すみません、お願いします」

「いえいえ、これも侍女の務めですから」

 ニコニコとした笑顔で部屋を出ていくリサさんを見送って、俺は少し待つ。けど今俺はオーロラちゃんの部屋で一人で、特にすることがあるわけじゃない。
 だからなんとなく、部屋を見渡した。

「綺麗だな」

 片付いているというよりも、そこまで物が置かれていない。オーロラちゃんは色々なものに興味があるけど、部屋の中の物は少ないようだ。そういえばフォルスの屋敷に居る時の部屋も何回か見たけど、意外とさっぱりしていたかな。

 そんなことを思いながら、なんとなく気になって席を立つ。なぜかオーロラちゃんの勉強机の上が気になって、そっちへ向かう。近づけば、やはり散らかっているようで色々な書類が乱雑に置かれていた。

「……すごいな」

 オーロラちゃんの文字が書かれた書類が多い。魔法の勉強の成果や、領地の情報をまとめたものなんかもあったりした。

「あっ」

 それを見ていたから、手が当たってしまって書類の小さな山を崩してしまった。床に散らばった書類を纏めて、再び机の上に戻す。
 それを見て、せめて散らかっているんじゃなくて、整理して置いておくような形にしようと思って。

 ふと、その中の書類の一枚を手に取った。

「っと」

 一枚かと思ったら綴じられていたみたいで、4枚くらいの書類だった。変な風に開いてしまったので、紙を整えると、大きな文言が目に入った。

「領地継承書?」

 目を通してみると、ノークさんの領地をオーロラちゃんに継承するための書類のようだった。中にはシアの名前もあったりして、そういえばこんな書類を俺も書いたなぁ、なんて思ったりした。
 紙をめくって確認してみると北側と南側だと形式が少し違うようだった。

「……?」

 けど三枚目、四枚目をめくって、俺は書いてあることの違和感に気づく。何度も三枚目と四枚目を行き来して確認するけど、確かにどっちにも書いてある。

「……え?」

 四枚目に目を向けたままで、俺は声をあげた。やっぱり見間違いじゃないのか、とそう思って目を凝らすけど、当然変わるわけがない。
 俺の視線の先の書類には、オーロラちゃんの名前が書いてある。

『四女 オーロラ・アークゲート』

 と、書いてある。
『四女』。つまりシア達姉妹は三姉妹じゃなくて、四人目がいるということか?
 俺の頭の中で疑問が湧き上がるのと、部屋の扉が開いて遅れていたオーロラちゃんが入ってくるのは同時だった。
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