宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙

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第3章 宿敵の家と宿敵でなくなってから

第174話 薬に関する報告

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 ノックの音が響く。声をかけてみれば、扉の向こうから声が聞こえた。

『ノヴァ、私だ。ライラックだ』

「どうぞ」

 扉が開き、ライラックの叔父上が部屋へと入ってくる。その後にはカイラスの兄上に、ギリアムさんも続いた。親睦会を直後に控えるこの時間で三人を呼んだのには理由がある。今ここに居る三人が、フォルス家で覇気を使える主要人物たちだからだ。

「お久しぶりです、ライラックの叔父上、カイラスの兄上、そしてギリアムさん」

「ああ、久しぶりだな。今回の招待、感謝する」

「久しぶりだなノヴァ。そしてありがとう。私達の事を考えてアークゲート家を呼ばないでくれたんだろう?」

「私のような者にも声をかけて頂き、ありがとうございます」

 ライラックの叔父上、カイラスの兄上、ギリアムさんが続けるように言葉を返してくれる。全員に目を合わせたのちに、俺は頷いた。

「今日お三方を呼んだのは、お伝えしたいことがあるからです」

「伝えたいこと?」

「はい、現在アークゲート家はフォルス家の覇気とアークゲート家の魔力の反発を打ち消す薬の開発をしています。私の方でもこの研究に出資していて、時間はかかるものの完成の目途が立ちつつある状態です」

「……なっ」

 ナタさん達が尽力してくれている薬の開発の事を打ち明けると、ライラックの叔父上が驚いたように声を上げた。カイラスの兄上にギリアムさんも信じられないといった顔をしている。

「出来るのか……そんなことが……」

 カイラスの兄上の言葉に、ナタさんから聞いたことを思い出しながら答える。

「理論上は可能らしいです。難しいことは分かりませんが、覇気と魔力をそれぞれほんの少しずらして衝突しないようにする、という話だったと思います。薬として開発し、薬を一度服用することで今後は反発が起こらなくなることを想定しているそうです」

「……話を聞く限りでは理想的な薬だな。……それはアークゲート家が開発しているのか?」

 アークゲート家に対して思うところが多すぎるであろうライラックの叔父上の言葉に、俺は首を横に振った。

「先ほども言いましたが、アークゲート家、フォルス家共に出資をしているだけです。開発自体は王都の研究所で行われています。
 話はここからなのですが、完成した暁には使用しますか? ということを聞きたいのです」

 俺の言葉にライラックの叔父上は顎に手を添えて考えるそぶりを見せる。

「うーむ……アークゲートの魔力との反発が無くなるのなら、とても喜ばしい事だ。その呪いのせいで、参加できた式典に参加できなかった事も数えきれないほどあるからな……」

 ライラックの叔父上が言っているのはレイさんとベルさんの結婚式典の件だろう。あれに関しては申し訳なかったとは思うけど、警備をフォルス家とアークゲート家に依頼したのは王族だ。まあ、警備の事を考えるならあの形が最善だったとは思うけど。

「私は使用したいと考えている。ノヴァ、完成した暁には知らせてくれないか? 加えて開発を支援してくれているアークゲート家当主にも礼を伝えてくれると嬉しい」

 予想外の言葉に少しだけ驚いた。カイラスの兄上がシア達に感謝を伝えて欲しいと言うなんて、思ってもいなかった。

「なっ……カイラス……」

 それはライラックの叔父上も同じようで、驚いて目を見開いている。しかしすぐに表情を切り替え、だが、そうだな……、と呟いた。

「呪いを解消してくれるのは事実。感謝は伝えるべきだろう……」

 カイラスの兄上は、ところで、と話を切り出してくる。

「資金は足りているのか? 足りていないなら多少ならば出せるが……」

「兄上……いえ、大丈夫です。資金は十分。あとは時間の問題と聞いています」

「そうか。まあフォルスの本家とアークゲート家が出資しているならば、問題はないか」

 カイラスの兄上は頷いて納得しているようだ。
 すると不意にギリアムさんが手を挙げた。

「それでは、私が最初に薬を服用しましょう。効力があることを確認してからカイラス、そしてライラック殿に使用してもらうのが良いでしょう。私ならばもし問題が起きても、そこまで問題にはならない筈です」

「……分かりました、ありがとうございます。問題が起こらないようにはしますが、完成した暁には一番に声をかけさせてもらいます」

 感謝の念を込めてそう告げると、笑い声が聞こえた。ギリアムさんは微笑んでいた。

「完成少し前の最終段階でも構いませんぞ。旦那様の信じた薬という事ならば、このギリアムも信じられますからな」

「……ギリアムさん」

 嬉しいことを言ってくれる。開発した薬を一番に使うのは勇気のいることだろう。けれど俺を信じて立候補してくれたギリアムさんに、心の中で深く感謝した。

「ふむ……大丈夫という事ならば、私にも知らせてくれ。子供達にも与えたいからな」

「はい、必ず」

 ライラックの叔父上も受け入れてくれた。フォルスの家系で覇気を使える人はそこまで多くはない。カイラスの兄上を除けば、ギリアムさん回りとライラックの叔父上周りくらいだ。
 これでフォルスの覇気とアークゲートの魔力の反発は将来的になくなるだろう。

「…………」

「叔父上?」

 カイラスの兄上の言葉を聞いて、俺は思考の海から呼び戻される。ライラックの叔父上の方を見てみると、何かを考えているようだった。

「……いや、なんでもない。ノヴァ、話は以上か? それなら私は会場の方へ向かうが」

「はい、ありがとうございました。それでは後ほど会場で」

「ああ」

 踵を返し、部屋を出ていくライラックの叔父上。そしてそれに続くようにカイラスの兄上も部屋を出ていって、最後にギリアムさんが頭を下げて部屋を後にした。
 閉じた扉を見たままで俺はふぅ、と息をつく。

 一番心配していたライラックの叔父上とカイラスの兄上への報告は上手く行った。流石に反対されることはないと思っていたけど、それでも少し緊張はしていた。
 それにしても、カイラスの兄上が前向きに受け入れてくれたのは大きかった。ライラックの叔父上は最初は微妙そうな顔をしていたけど、カイラスの兄上の意見で少しだけ考えを変えたみたいだったし。

「……さて、あとは親睦会だけだな」

 残っているのは親睦会に参加して、壇上で北と南の確執をなくしていきたいと宣言をするだけだ。
 気持ちを落ち着かせて、俺は部屋を後にした。
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