宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙

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第3章 宿敵の家と宿敵でなくなってから

第190話 彼女の提案と、決意

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「思いついたことがあるんです」

 それはレイチェルさんと出会って数日後の夕食の後だった。食べ終わり、お酒を片手に談笑をしていると、不意にシアがそんなことを言った。

「以前言っていた、フォルス家とアークゲート家が共同で出来る何かの件ですが、大会はどうでしょうか?」

「大会?」

 言われたことをそのまま復唱すれば、シアは頷いて返してくれた。

「フォルス家は剣の名家、アークゲート家は魔法の名家です。どちらも力比べという意味では共感が持てるかなと。特にアークゲートの魔法ならば試合をする人達が怪我をする心配や、周りに被害が出ることもありませんからね」

「……なるほど、アークゲートの魔力とフォルスの覇気が反発しなくなったから、そういったことも確かにできるね」

 いい案だなと感じた。俺も色々なことを考えているけど、今のシアのは悪くない案だと思う。フォルス家の兵の皆や、アークゲート家の皆にとっても良い刺激になるだろう。戦いではなく、競うという事を前面に出せば反発も少なそうだ。

 俺の様子を見て手ごたえがあると感じたのか、シアは微笑んで続きを説明してくれる。

「アークゲートは北、フォルスは南ですので、北は魔法、南は剣の大会を開くのはいかがでしょうか? 優勝者には景品や賞金を出すといった試みをすれば、人も集まると思います」

「……話を聞いた感じですと、腕試しが出来るなら景品や賞金がなくても人は集まりそうですけどね」

 シアの言葉に、ターニャは苦笑いで答える。

「そう……かな?」

「天下のフォルスとアークゲートが大会を開くなら、参加するだけで泊が付きますからね。むしろ多すぎて選別するのも大変そうです」

「年に一回として、かなり大規模なものになるでしょうな」

「開催回数が増えれば、この国を代表する行事にすらなりそうですね」

 ジルさん、ローエンさん、ラプラスさんも次々に意見を言ってくれる。彼らの意見を頭の中でまとめて、光景を思い浮かべた。

 北のアークゲートでは魔法の大会を開く。北の人達が集まってきて、魔法の腕を競う。アークゲートの人なら競技に向いた魔法で周りへの被害とか、怪我の対策をしてくれるだろう。
 南のフォルスでは剣の大会を開く。こっちも南の人達が集まってきて、それぞれの件の腕を競うことになるだろう。でも結局はアークゲート家の人に来てもらって、周りや参加者の怪我に対応してもらうわけで。

「……どっちも一か所でやっちゃいけないのかな?」

「……え?」

 シアの声が隣から聞こえたから、俺はそっちを向いて説明を始めた。

「いや、剣や魔法の大会は盛り上がると思うけど、アークゲートの魔力とフォルスの覇気の反発は無いから、どっちも一か所でやればいいんじゃないかなって。そうすれば一回で済むし、剣に自信がある人は魔法に自信がある人を見れるでしょ? 逆もまた然りだから、それもいいかなって思って。
 あー、でも思ったことを言っているだけで、一か所でやるってなると色々問題があったり?」

 途中でシアが黙ってしまったので取り繕ってみたけど、彼女は首を横に振った。

「いえ、確かによくよく考えれば一か所でまとめて開催した方が規模も大きく出来ますし、準備の負担も軽くなります……集まる人は減るとは思いますが、それでも大きくは減らないでしょう。一か所で行いつつも、魔法のみ、剣のみ、どちらもありの三つの部を作ることだってできます。とても良い考えですよ、ノヴァさん!」

「そ、そう?……ありがとう」

 思ったことを言っただけだけど、ここまで称賛されるとちょっと照れるものがある。俺の斜め前に座っていたラプラスさんも、うんうんと頷いて口を開いた。

「これまでのことから自然と北と南で分けて考えていましたが、確かにフォルス家とアークゲート家の呪いがなくなった今、一か所でやるのは良いかもしれませんね。それこそ王都で場所を借りて行えれば、場所としては一番かと」

「王族の人も見てくれるでしょうし」

「ターニャ嬢の言う通りですな」

 ターニャの言葉に頷くジルさん。もちろん詳細はもっと詰める必要はあるけど、皆の中には面白そう、という気持ちが共有されていた。

「では、各部門の優勝者は前回までの優勝者と戦える、というのはいかがでしょうか。剣の部門は旦那様と、魔法の部門は奥様と戦えるという形ですね。模範試合というものです」

「……いや、俺が優勝できるかは分からないし、そもそもシアと模範試合って……誰も勝てないんじゃ……」

「そもそも私達はどちらかというと運営側な気がしますが……」

 お酒を飲んで気持ちが高ぶっているターニャに苦笑いで返す俺とシア。というか、ふと思ったけど俺が剣の部門、シアが魔法の部門だとして、どちらも使える部門の前回優勝者はターニャの中では誰なのか。少し気になったけど、これ以上聞くとさらに語りだしそうだからやめておくことにした。

 グラスでお酒を一口飲んだシアは、それを音を立ててテーブルに置く。

「ですが、悪くない催し物になると考えています。ひょっとしたら隠れた才能を持つ人物を見つけ出すきっかけにもなるかもしれませんし、接戦となれば観戦する人達も楽しめるでしょう。試合の決まりや会場、告知などについては考える必要があるので今すぐとはいきませんが、近いうちに実現できたらいいですね」

「うん、本当に良い案だと思うよ。シア、考えてくれてありがとう」

「いえいえ、仕事に少し余裕が出来たときに考えただけですから」

 ふふっ、と微笑むシア。それを見てターニャが口を開いた。

「最近は旦那様も仕事が減ってきましたが、奥様もなのですね」

 彼女の言う通り、最近は仕事も落ち着いている。まあしばらくすればまた仕事が忙しくなるから、小休止みたいな時期だ。なんというか、波があるというか。
 それはシアも同じらしく、彼女も頷いていた。

「…………」

 ターニャと談笑するシアの横顔を見ながら俺は思う。レイチェルさんと会ったあと、俺も仕事が落ち着いている時の空いた時間で考えることが多くなった。

『後悔の無いように生きてくださいね』

 今の段階で、俺はどうすれば後悔なく生きられるのか。考えて考えて、答えを一つだけ出している。まだ誰にも言っていない、正しいかどうかも分からない答えだ。
 それをこの後シアに聞いてみよう。誰よりも先に相談したい相手に自分の考えを打ち明けよう。

 そう思って、俺は自分のお酒を一口飲んだ。
 この後の話の事を考えてそこまで多くは飲まないように、心で制限をかけた。
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