宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙

文字の大きさ
199 / 237
第3章 宿敵の家と宿敵でなくなってから

第199話 心の内が読めない人

しおりを挟む
 その日、俺はシアと一緒に王城を訪れていた。オズワルド国王陛下とレイさんに、両家を一つにする案について説明するためだ。謁見の間の扉の前で緊張しているのに気づかれたのか、シアが声をかけてくれる。

「ノヴァさん、大丈夫ですか?」

「……うん、大丈夫だよ」

 苦笑いで返すのは、これから会う相手に対して少し緊張しているからだ。
 両脇の兵士が扉を開けてくれた。足を進めて中へと踏み入れれば、奥にはオズワルド国王陛下と、レイさんの二人だけが待っていた。

 シアと並んで足を進めて、二人の近くへと向かう。この場に居るのは陛下とレイさんの二人だけで、ベルさんは居ないようだった。

「よく来たな、ノヴァ、レティシア。それで話とはなんだ?」

 オズワルト陛下に促されて、俺は少しだけ緊張するも覚悟を決める。ここに来たのは俺の意志で、話すべきは俺だから。

「今日は陛下とレイモンド王子にお話ししたいことがあります」

「……ほう?」

「現在、私と妻のレティシアはフォルス家とアークゲート家を一つに纏め、新たな家にしたいと考えています」

「…………」

 率直に意見を伝えると、オズワルド陛下は黙って俺を見た。その瞳の中の感情は読み取れない。

「両家を一つにすると言っても、統治の体制は今とはそこまで変わりません。分割統治という体制を取り――」

 シアとユティさんと考えた両家を統合する案を事細かに説明する。
 その説明をレイさんはシアから聞かされているから涼しい顔で聞いている。一方で、説明をある程度進めてもオズワルド陛下の表情は変わらなかった。

「詳細については把握した。王家にはそれを認めて貰いたい。今のフォルスとアークゲートの関係は新たな家の北側、南側と考えて欲しい、ということだな?」

「……その通りでございます」

「なるほど……」

 考えるそぶりを見せるオズワルド陛下。彼が何を今思っているのかは、全く分からなかった。

「貴族の家の合併、統合……それが長い歴史で今までなかったわけではない。まあ、そのほとんどは吸収ではあるが……領地や統治の体勢が変わらないのならば、王家としてそれは認めたいと思う。我々との関係も変わらないだろうからな。それはそれとして、新しい家の名と誰が当主になるのかは決めているのか?」

「名前についてはあくまでも候補ではありますが、二つの家の名前からフォーゲートを考えています」

「……安直だな。まあ、構わないが」

 初めてオズワルド陛下がため息を吐いた。少し呆れているようにも見える。

「当主に関しては、夫であるノヴァが就く予定です」

 家の説明を終えたところで、シアからの補足が入った。新しい家の当主が誰になるかはシアとも話し合ったけど、結局彼女の強い意思は変わることなく、俺になることになった。
 これに関しては絶対にシアの方が良いと今も思うけど、彼女のみならずユティさんやオーロラちゃんも俺を推してくれている。ちょっと緊張するけど、北側は変わらず自分が担当するから、大丈夫だとシアは言ってくれた。

 俺が名目上は当主で、シアが実質的な副当主? みたいなものだろう。そんな役職は今頭の中で考えて作ったし、実力的にはシアの方が遥かに上だが。

「……両家が一つになり、より力を持つ、か」

 背筋に冷たい何かが走った。
 オズワルド陛下を見上げてみると、彼は俺をじっと見ていた。全くの無表情で、感情は読み取れない。今は冷たい、とは感じないけど、少しだけ不気味に思った。

「これでこの国の長年の北と南の壁は……取り払われるのであろうな」

 けれどそう言ったオズワルド陛下の表情は穏やかで、俺達の決定を受け入れてくれているようだった。さっき感じた冷たさは俺の勘違いだったのかもしれない。

「とはいえ今日はその報告だけであろう? 両家で詳細を詰める必要もあるだろうしな。全てが決まり、一つになるタイミングでまた訪れてくれ。こちらも色々とやることがあるのでな」

「はい、ありがとうございます」

「今日はわざわざご苦労であった。気を付けて帰れ」

「はっ」

 シアと一緒に頭を下げて、謁見の間を退去する。去り際に一瞬だけレイさんと目が合ったけど、その一瞬で微笑まれたのでどう返せばいいのか本当に困った。結局表情を変えることも出来ずに視線を外すしかなかったけど。

 謁見の間を出て、王城の廊下を歩く。

「これで伝えるべき人には伝えましたね」

「そうだね、一段落ってところだ」

 シアからは事前にノークさんを始めとするアークゲート側の人にはこの話をしたと聞いている。オズワルド殿下とレイさんに共有したことで、一段落着いた形だ。レイさんはあの感じだと事前に聞いていたと思うけど。

「……陛下、反対すると思ったけど、しなかったね」

 周りを見て誰もいないことを確認してそう告げると、シアは指を振った後に頷いた。きっと会話を周りに聞かれない魔法を使用してくれたんだろう。

「私とノヴァさんが結婚して、ノヴァさんが当主になった時点で両家はかなり近かったですからね。内心はともかく、強く反対することは出来ないでしょう。……ただ、いつもより彼の気持ちが見えなかったというのはありますね」

「あ、やっぱりシアも思ったんだ」

「陛下は元々あのように心の内が見えにくい方なんです。今まではノヴァさんとの結婚や、ノヴァさんの当主就任が衝撃的だったのか少しわかりやすくなっていましたが、最近は慣れてきたのかいつもの彼に戻っていましたね」

「前からちょっと思っていたけど、色々とやりづらい人だなと最近は思ってたよ」

 苦笑いをして廊下の曲がり角を曲がる。ふと廊下の隅が視界に入り、ある事を思い出した。

「それにしても、こうしてシアの側にいると、残っているシアの魔力を感じることは出来ないね」

「……?」

 首を傾げるシアに対して、この前あったことを説明した。

「前に王城に来た時に、シアのものらしき魔力を感じたんだ。ただ痕跡が残っていた? みたいな感じだったからすぐに消えちゃったんだけどね。あの時はなんとなく感じ取れたけど、今は全くだよ」

「近くにより強い魔力がありますからね」

 隣でクスクスと笑うシア。それに対して、俺も微笑んで返した。
 窓のある所を横切るときに、王都が見えた。どうせならと思い、シアの方を向いて声をかける。

「そうだ、せっかく久しぶりに王都に来たんだから、二人で楽しまない? 仕事とか残ってるかな?」

「…………」

 声をかけたけど、俺の妻は何かをじっと考えていて気づいていないようだった。

「シア?」

「え? あ、ああ、すみません。大丈夫です。ぜひご一緒させてください」

「なにそれ」

 あんまり聞かない言葉と、それを夫婦の関係で使うのかと思って、ついつい笑ってしまう。少し顔を赤くして苦笑いするシアが、印象的だった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...