宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙

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第3章 宿敵の家と宿敵でなくなってから

第199話 心の内が読めない人

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 その日、俺はシアと一緒に王城を訪れていた。オズワルド国王陛下とレイさんに、両家を一つにする案について説明するためだ。謁見の間の扉の前で緊張しているのに気づかれたのか、シアが声をかけてくれる。

「ノヴァさん、大丈夫ですか?」

「……うん、大丈夫だよ」

 苦笑いで返すのは、これから会う相手に対して少し緊張しているからだ。
 両脇の兵士が扉を開けてくれた。足を進めて中へと踏み入れれば、奥にはオズワルド国王陛下と、レイさんの二人だけが待っていた。

 シアと並んで足を進めて、二人の近くへと向かう。この場に居るのは陛下とレイさんの二人だけで、ベルさんは居ないようだった。

「よく来たな、ノヴァ、レティシア。それで話とはなんだ?」

 オズワルト陛下に促されて、俺は少しだけ緊張するも覚悟を決める。ここに来たのは俺の意志で、話すべきは俺だから。

「今日は陛下とレイモンド王子にお話ししたいことがあります」

「……ほう?」

「現在、私と妻のレティシアはフォルス家とアークゲート家を一つに纏め、新たな家にしたいと考えています」

「…………」

 率直に意見を伝えると、オズワルド陛下は黙って俺を見た。その瞳の中の感情は読み取れない。

「両家を一つにすると言っても、統治の体制は今とはそこまで変わりません。分割統治という体制を取り――」

 シアとユティさんと考えた両家を統合する案を事細かに説明する。
 その説明をレイさんはシアから聞かされているから涼しい顔で聞いている。一方で、説明をある程度進めてもオズワルド陛下の表情は変わらなかった。

「詳細については把握した。王家にはそれを認めて貰いたい。今のフォルスとアークゲートの関係は新たな家の北側、南側と考えて欲しい、ということだな?」

「……その通りでございます」

「なるほど……」

 考えるそぶりを見せるオズワルド陛下。彼が何を今思っているのかは、全く分からなかった。

「貴族の家の合併、統合……それが長い歴史で今までなかったわけではない。まあ、そのほとんどは吸収ではあるが……領地や統治の体勢が変わらないのならば、王家としてそれは認めたいと思う。我々との関係も変わらないだろうからな。それはそれとして、新しい家の名と誰が当主になるのかは決めているのか?」

「名前についてはあくまでも候補ではありますが、二つの家の名前からフォーゲートを考えています」

「……安直だな。まあ、構わないが」

 初めてオズワルド陛下がため息を吐いた。少し呆れているようにも見える。

「当主に関しては、夫であるノヴァが就く予定です」

 家の説明を終えたところで、シアからの補足が入った。新しい家の当主が誰になるかはシアとも話し合ったけど、結局彼女の強い意思は変わることなく、俺になることになった。
 これに関しては絶対にシアの方が良いと今も思うけど、彼女のみならずユティさんやオーロラちゃんも俺を推してくれている。ちょっと緊張するけど、北側は変わらず自分が担当するから、大丈夫だとシアは言ってくれた。

 俺が名目上は当主で、シアが実質的な副当主? みたいなものだろう。そんな役職は今頭の中で考えて作ったし、実力的にはシアの方が遥かに上だが。

「……両家が一つになり、より力を持つ、か」

 背筋に冷たい何かが走った。
 オズワルド陛下を見上げてみると、彼は俺をじっと見ていた。全くの無表情で、感情は読み取れない。今は冷たい、とは感じないけど、少しだけ不気味に思った。

「これでこの国の長年の北と南の壁は……取り払われるのであろうな」

 けれどそう言ったオズワルド陛下の表情は穏やかで、俺達の決定を受け入れてくれているようだった。さっき感じた冷たさは俺の勘違いだったのかもしれない。

「とはいえ今日はその報告だけであろう? 両家で詳細を詰める必要もあるだろうしな。全てが決まり、一つになるタイミングでまた訪れてくれ。こちらも色々とやることがあるのでな」

「はい、ありがとうございます」

「今日はわざわざご苦労であった。気を付けて帰れ」

「はっ」

 シアと一緒に頭を下げて、謁見の間を退去する。去り際に一瞬だけレイさんと目が合ったけど、その一瞬で微笑まれたのでどう返せばいいのか本当に困った。結局表情を変えることも出来ずに視線を外すしかなかったけど。

 謁見の間を出て、王城の廊下を歩く。

「これで伝えるべき人には伝えましたね」

「そうだね、一段落ってところだ」

 シアからは事前にノークさんを始めとするアークゲート側の人にはこの話をしたと聞いている。オズワルド殿下とレイさんに共有したことで、一段落着いた形だ。レイさんはあの感じだと事前に聞いていたと思うけど。

「……陛下、反対すると思ったけど、しなかったね」

 周りを見て誰もいないことを確認してそう告げると、シアは指を振った後に頷いた。きっと会話を周りに聞かれない魔法を使用してくれたんだろう。

「私とノヴァさんが結婚して、ノヴァさんが当主になった時点で両家はかなり近かったですからね。内心はともかく、強く反対することは出来ないでしょう。……ただ、いつもより彼の気持ちが見えなかったというのはありますね」

「あ、やっぱりシアも思ったんだ」

「陛下は元々あのように心の内が見えにくい方なんです。今まではノヴァさんとの結婚や、ノヴァさんの当主就任が衝撃的だったのか少しわかりやすくなっていましたが、最近は慣れてきたのかいつもの彼に戻っていましたね」

「前からちょっと思っていたけど、色々とやりづらい人だなと最近は思ってたよ」

 苦笑いをして廊下の曲がり角を曲がる。ふと廊下の隅が視界に入り、ある事を思い出した。

「それにしても、こうしてシアの側にいると、残っているシアの魔力を感じることは出来ないね」

「……?」

 首を傾げるシアに対して、この前あったことを説明した。

「前に王城に来た時に、シアのものらしき魔力を感じたんだ。ただ痕跡が残っていた? みたいな感じだったからすぐに消えちゃったんだけどね。あの時はなんとなく感じ取れたけど、今は全くだよ」

「近くにより強い魔力がありますからね」

 隣でクスクスと笑うシア。それに対して、俺も微笑んで返した。
 窓のある所を横切るときに、王都が見えた。どうせならと思い、シアの方を向いて声をかける。

「そうだ、せっかく久しぶりに王都に来たんだから、二人で楽しまない? 仕事とか残ってるかな?」

「…………」

 声をかけたけど、俺の妻は何かをじっと考えていて気づいていないようだった。

「シア?」

「え? あ、ああ、すみません。大丈夫です。ぜひご一緒させてください」

「なにそれ」

 あんまり聞かない言葉と、それを夫婦の関係で使うのかと思って、ついつい笑ってしまう。少し顔を赤くして苦笑いするシアが、印象的だった。
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