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第71話 はいの威力
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「あ、えっと」
ジェラルドさんは私の話を受けて、また戸惑ったように笑い、ユリアを見る。
「ユリアさんが体を鍛えたいのでしょうか」
「はい」
「なぜ体を鍛えたいのでしょうか」
「最近、体が鈍ってきたからです」
「あ。そ、そうですか」
ユリアは淡々と答えているけれど、恐らくジェラルドさんが聞きたいことはそういう答えではない。ないけれど、ユリアに翻弄されているジェラルドさんが何だか可愛らしいので口出しせずにそのまま様子見をする。
「騎士たちの鍛錬場は私の許可で一部をお貸しすることは可能なのですが、騎士たちは威勢のいい荒くれ者も多いのです。女性には少々威圧感があって、お見苦しいかもしれません」
「はい」
「え? えっと。そうですね。何と言ったらいいのかな」
ユリア! はい、じゃない。はいじゃ!
だから止めた方がいいと遠回しにおっしゃってくれているんでしょう。ほら、見てよ。ますます困っているジェラルドさんを!
私は笑いをこらえるのに必死だ。
ユリアが小首を傾げつつ黙ってジェラルドさんを見ているので、彼はごほんと咳払いした。
「そ、それではですね、ユリアさんはどんな事をしたいのですか?」
「騎士の方々はどのような鍛錬をなさっているのですか」
質問を質問で返すユリア。
「例えば王城周りの走り込み、室内での腹筋、背筋などの基礎体力作りを始め、木剣の素振り、体術、剣術の練習、手合わせなどでしょうか」
やばい。ユリアの目に光が灯った。余計に興味を持ってしまったようですよ。
「では、それに参加させていただきたく思います」
「普段の練習メニューですと、王城周り十周とか、腹筋、背筋、何百回と少々ハードですので、ユリアさんの場合は少し数を減らしたメニューを考えましょうか」
ジェラルドさんがご親切にも提案してくださる。――が。
「いえ。同じメニューで構いません。女が単身乗り込んで、横で軽いメニューなどをこなしていたら不愉快に思われるでしょうから」
「し、しかし。女性にとってあまりにも厳しいかと思います。私は本日、エルベルト殿下の護衛に当たりますので、ユリアさんに何かあった時にすぐに対応できませんし」
いや、ユリアならできるかもしれないけれど、仮にできたらできたで、女性が男性と同じメニューをこなしている方が不愉快に思われるのでは……?
敵は増やすべきではない。
私もさすがにユリアを止めにかかる。
「そうよ。ジェラルド様のおっしゃる通りよ。それに鈍っていた体にいきなり鞭を打っては駄目よ多分きっと絶対駄目」
「大丈夫です。無理だと思ったら止めます」
嘘だ。止めないでしょう。ユリアは頑固者ですからね!
「じゃあ。ジェラルド様が鍛練場にいらっしゃる時に始めることにして、今日は見学だけさせていただいたら?」
「使用許可だけ頂けたら、あとは一人で大丈夫です。自己責任で行いますからお気遣いなく」
ああ、やっぱり頑固だ。誰に似たのか。
私は頭を抱えたくなった。
「あのね、ユリア。あなたがお気遣いなくと言ってもね、周りはお気遣うに決まっているでしょう」
私がユリアをたしなめていると、今まで黙っていた殿下が口を開いた。
「ジェラルド。私は王宮散策するだけだから、今日の君の任務は解くことにする。彼女に付いてやってくれ」
「え? ですが」
「私の方は大丈夫だ。ロザンヌ嬢がいるし」
ジェラルドさんからしたら、どういうことだってばよ、というお話だろう。殿下の身を守るのがジェラルドさんではなく、私で大丈夫というのだから。私としても荷が重いです。
「あの。殿下にそこまでしていただかなくても」
「はい。次の機会にさせていただきます。ご迷惑をおかけしました」
さすがに殿下の護衛の任務を解いてまで、自分の我を押し通すことはできなかったのだろう。ユリアも続いて謝罪した。
「いや、問題ない。君としても私に巻き込まれた側だからな。できるだけ君たちの希望に沿いたいと思っている。だからジェラルド、君は彼女に付いてくれ」
ジェラルドさんは一瞬迷ったようだけれども、殿下の命だと思い直されたのか、承知いたしましたと答える。
本当にいいのかしら。
言っておきますけど、刺客とか現れた時は我先に逃げさせていただきますからねー。
と思いつつ。
「殿下、ありがとうございます」
「ありがとうございます」
私とユリアは殿下に礼を取った。そして私はジェラルドさんの方に視線を向ける。
「ジェラルド様。多大なるご迷惑をおかけするかもしれませんが、何とぞ。何とぞ! ユリアのこと、よろしくお願い申し上げます」
「はい。承知いたしました」
力拳を作る私にジェラルドさんは笑みで応えてくれた。
ジェラルドさんは私の話を受けて、また戸惑ったように笑い、ユリアを見る。
「ユリアさんが体を鍛えたいのでしょうか」
「はい」
「なぜ体を鍛えたいのでしょうか」
「最近、体が鈍ってきたからです」
「あ。そ、そうですか」
ユリアは淡々と答えているけれど、恐らくジェラルドさんが聞きたいことはそういう答えではない。ないけれど、ユリアに翻弄されているジェラルドさんが何だか可愛らしいので口出しせずにそのまま様子見をする。
「騎士たちの鍛錬場は私の許可で一部をお貸しすることは可能なのですが、騎士たちは威勢のいい荒くれ者も多いのです。女性には少々威圧感があって、お見苦しいかもしれません」
「はい」
「え? えっと。そうですね。何と言ったらいいのかな」
ユリア! はい、じゃない。はいじゃ!
だから止めた方がいいと遠回しにおっしゃってくれているんでしょう。ほら、見てよ。ますます困っているジェラルドさんを!
私は笑いをこらえるのに必死だ。
ユリアが小首を傾げつつ黙ってジェラルドさんを見ているので、彼はごほんと咳払いした。
「そ、それではですね、ユリアさんはどんな事をしたいのですか?」
「騎士の方々はどのような鍛錬をなさっているのですか」
質問を質問で返すユリア。
「例えば王城周りの走り込み、室内での腹筋、背筋などの基礎体力作りを始め、木剣の素振り、体術、剣術の練習、手合わせなどでしょうか」
やばい。ユリアの目に光が灯った。余計に興味を持ってしまったようですよ。
「では、それに参加させていただきたく思います」
「普段の練習メニューですと、王城周り十周とか、腹筋、背筋、何百回と少々ハードですので、ユリアさんの場合は少し数を減らしたメニューを考えましょうか」
ジェラルドさんがご親切にも提案してくださる。――が。
「いえ。同じメニューで構いません。女が単身乗り込んで、横で軽いメニューなどをこなしていたら不愉快に思われるでしょうから」
「し、しかし。女性にとってあまりにも厳しいかと思います。私は本日、エルベルト殿下の護衛に当たりますので、ユリアさんに何かあった時にすぐに対応できませんし」
いや、ユリアならできるかもしれないけれど、仮にできたらできたで、女性が男性と同じメニューをこなしている方が不愉快に思われるのでは……?
敵は増やすべきではない。
私もさすがにユリアを止めにかかる。
「そうよ。ジェラルド様のおっしゃる通りよ。それに鈍っていた体にいきなり鞭を打っては駄目よ多分きっと絶対駄目」
「大丈夫です。無理だと思ったら止めます」
嘘だ。止めないでしょう。ユリアは頑固者ですからね!
「じゃあ。ジェラルド様が鍛練場にいらっしゃる時に始めることにして、今日は見学だけさせていただいたら?」
「使用許可だけ頂けたら、あとは一人で大丈夫です。自己責任で行いますからお気遣いなく」
ああ、やっぱり頑固だ。誰に似たのか。
私は頭を抱えたくなった。
「あのね、ユリア。あなたがお気遣いなくと言ってもね、周りはお気遣うに決まっているでしょう」
私がユリアをたしなめていると、今まで黙っていた殿下が口を開いた。
「ジェラルド。私は王宮散策するだけだから、今日の君の任務は解くことにする。彼女に付いてやってくれ」
「え? ですが」
「私の方は大丈夫だ。ロザンヌ嬢がいるし」
ジェラルドさんからしたら、どういうことだってばよ、というお話だろう。殿下の身を守るのがジェラルドさんではなく、私で大丈夫というのだから。私としても荷が重いです。
「あの。殿下にそこまでしていただかなくても」
「はい。次の機会にさせていただきます。ご迷惑をおかけしました」
さすがに殿下の護衛の任務を解いてまで、自分の我を押し通すことはできなかったのだろう。ユリアも続いて謝罪した。
「いや、問題ない。君としても私に巻き込まれた側だからな。できるだけ君たちの希望に沿いたいと思っている。だからジェラルド、君は彼女に付いてくれ」
ジェラルドさんは一瞬迷ったようだけれども、殿下の命だと思い直されたのか、承知いたしましたと答える。
本当にいいのかしら。
言っておきますけど、刺客とか現れた時は我先に逃げさせていただきますからねー。
と思いつつ。
「殿下、ありがとうございます」
「ありがとうございます」
私とユリアは殿下に礼を取った。そして私はジェラルドさんの方に視線を向ける。
「ジェラルド様。多大なるご迷惑をおかけするかもしれませんが、何とぞ。何とぞ! ユリアのこと、よろしくお願い申し上げます」
「はい。承知いたしました」
力拳を作る私にジェラルドさんは笑みで応えてくれた。
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