つかれやすい殿下のために掃除婦として就くことになりました

樹里

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第117話 ジェラルド様の個人情報を聞き出そう

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 殿下と部屋で別れ、私は学校に行くために馬車の停留場所へと向かった。
 本日は昨日からの雨も止んで、澄んだ青空が広がっている。実に気持ちの良い朝だ。

「おはようございます。ロザンヌ様、ユリアさん」
「おはようございます、ジェラルド様」
「おはようございます」

 いつもと同じ挨拶を交わして、私たちは馬車へと乗り込んだ。
 今日もユリアはジェラルドさんの手を借りていた。
 仮にユリアにとって相手の間合いを測る練習だったとしても、毎日続けばこれが普通の光景になるだろうと予想される。……まあ、予想を裏切ってくるのもユリアなので油断ならないけれど。

 そういえば、ジェラルドさんは護衛官としての仕事に徹しておられて、殿下が虚弱体質ということはご存知でも影のことは知らされていないのだったかな。だとしたら、そこには触れないようにしてお話をしなければ。

「ジェラルド様。ジェラルド様は普段、どんなお仕事をなさっているのですか?」

 ユリア自身も気になっているところでもあるのだろう。彼女は私の顔を見た。

「殿下の護衛が主ですが、日常的には事務仕事も多いですね。部下の配備や練習メニューを考えたりもしています」
「護衛官室にいらっしゃることが多いのですか?」
「そうですね。殿下が執務室におられる時間が多いですので、そのようになります」
「ジェラルド様、お休みを取っておられます? 殿下は日々、忙しくいらっしゃるでしょう」

 以前、殿下は倒れた時のために、仕事を詰め込んでこなしてきたとおっしゃっていた。必然的に長時間働いていることになるのだろうし、護衛官であるジェラルドさんも付き合わないといけないのではないだろうか。

「ええ。殿下はお休みなく動かれておりますが、私どもは交代で殿下の護衛を務めております。ロザンヌ様は足をお運びになられたことがないかもしれませんが、殿下の執務室を挟んだ一つ隣には、副官長室がありますので、私がお休みを頂いている際には彼が回してくれています」

 あのガタイの良い副官長のお部屋ね。お見かけして一度ご挨拶をしたことがあるけれど、それだけだ。……でも、あれ? 私が執務室に行く時はいつも在席されているような。

「他にも、私どもは鍛錬しなければならず、部屋を離れることがありますので常にお側に控えているというわけではございません」

 ああ、そっか。
 新人騎士ほどではないかもしれないけれど、体が鈍らないように鍛錬はしておかなければならないものね。

「……あ。あの、もしかしてお休みの日や時間帯に、わたくしども、特にユリアがご迷惑をおかけしておりませんか?」

 ジェラルドさんがご不在のところを見たことがないのは、私たちに時間を割いてくださっているからでは。

「いいえ。大丈夫ですよ。お付き合いの難しい時はちゃんとお伝えしますので」
「あ、いえ。その、お疲れのところ、お休みを削っていただくのはと思いまして」
「いいえ。休みの日と言っても、私は特に何かをしているというわけではありませんので、お気になさらないでください」

 ジェラルドさんは照れくさそうに笑った。

「そ、そうですか。ありがとうございます」

 ユリアはお澄まし顔で一言も話さずに聞いているばかりだけれど、内心は興味津々でしょう! よし。ここは私がユリアに代わって、もう少し個人的なことにまで踏み込んで聞いてみましょうか。……いえ、正直私が聞きたいだけなのだけど。

「ところでジェラルド様は、ご婚約者様や恋人はいらっしゃらないのですか? お休みの日にお二人で外にお出かけとか」
「え!? 私ですか? とんでもない話です。お恥ずかしい話ですが、もちろんいませんし、外に出かけることがあっても同僚とかですよ」
「本当ですか!?」

 こちらの方がびっくりして、思わず身を乗り出してしまったではないか。

「ジェラルド様のことですから、女性からの人気がとても高く、引く手数多だと思っておりますが」

 ジェラルドさんほど、いい男が恋人の一人もいないとは!

「いえいえ、まさか。私がなど、とんでもないことです」
「いいえ。それこそとんでもないお話です。そうよね、ユリア」

 私はユリアに振ってみると、彼女は何で私に話を振るのかとでも言いたげに眉を上げた。

「ジェラルド様ほどの素敵な男性に恋人がいらっしゃらないだなんて、何と勿体ないことでしょう。世の女性は一体何をのんびりされているのかしら。ねえ、ユリア」
「はい」

 何、その答え。本心で思っているのか、思っていないのかどっちよ!?

 でもユリアの表情が少し緩んでいるところを見ると、全くの無関心というわけではないらしい。それは好意を持っているからという意味なのか、単にその分、武術の相手をしてもらえるかもしれないという意味なのかもしれない。

 何にせよ、ユリアの心にまた一つ新たな感情が育っていっているのならば嬉しいなと思った。
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