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第124話 火花散る会話
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昼食を済ませたところで、はて、今日はいつ頃出発するのかなと疑問に思った。
午後から行こうという簡単な約束で、具体的な時間帯まで決めていなかった。
部屋で待っていれば呼びに来てくれるかなと考えていると、殿下の部屋に繋がる扉の鍵が回る音にはっと気付いた。
来た!
「ユリア! 援護よろしく!」
私はユリアを連れて一気に走り寄ると、ドアノブをがっつり掴んだ。
だーかーら! ノックをしなさい、ノックをさ! というか、ユリア。ただ後ろに立っているだけじゃない!
と振り返って文句を言おうと思ったところで、不意にノックされた。
「殿下ですか!?」
殿下以外の人間が侵入し、開けようとしていたら大問題だとは思うけれど、聞かずにはいられない。
「ああ。準備はもういいか」
今、問答無用で開けようとしていたじゃない。遅れてノックしていたけれど。
「はい。開けます」
私は力を抜くと扉が引かれ、殿下の姿が現れる。そのすぐ側にはジェラルドさんもいらっしゃった。
それでピンと来ましたね。ジェラルドさんに慌てて止められ、ノックするよう促されたのだと。まったくもう!
「おはようございます、殿下。ジェラルド様」
「おはようございます」
まずは私とユリアが挨拶をする。
「ああ、おはよう」
「おはようございます。ロザンヌ様、ユリアさん」
続いて殿下とジェラルドさんが挨拶を返してくださった。
直後、殿下は私の姿を無言でしげしげと見つめると一言。
「化けたな。どこに出しても恥ずかしくないただの町娘だ」
明らかに良い意味で言っていませんよね。
でも私はこめかみに青筋を立てつつも、にっこりと笑う。
「おかげさまで。貴族としての気配をうまく消すのが、わたくしの唯一の特技でして」
そういえば、以前、アレオン護衛官にも貴族の娘として見られていませんでしたものね。あれ? と言うことは、私には普段から貴族のかけらも見当たらないということでしょうか。……失敬な。
「殿下はと申しますと」
今度は私が殿下を評価するために、上から下へとじろじろ無遠慮に見る。
一応、お忍び用の衣服なのだろう。いつものピラピラしているジャボも無いし、ジュストコールもジレも着ていないので、王子風(?)のかっちりしたイメージはない。ブラウスも若干品質が低く見えるあっさりとしたデザインとなっている。手には顔を隠すためと思われる帽子も持っているし、服装だけを見れば及第点だ。
しかしである。それを着ている人物は全く気配が消せていない。
ええ、格好いいですとも。それこそ男前は何を着ても、本人の品格だけは落とすこともないのでしょう。妙にお似合いですとも。むしろ服の方が恥ずかしがって殿下に寄せてきていますとも! でもここは嫌味の一つも返しておかないとだめでしょう。
私は顔を上げると殿下と視線を交わした。
「とてもお似合いですわ。何をお召しになっても素敵ですね」
「ありがとう」
素直な私の答えに殿下は困惑されたようだけれど、すぐにまだ油断ならないと顔を引き締めた。
なかなか鋭いですね。
「ですが、殿下は王子臭を一切隠し切れておられませんね。お忍びにならないのではと、わたくしは懸念いたします」
王子臭? と殿下はぴくりと眉を上げるも、余裕の笑みを浮かべる。
「仕方がない。溢れんばかりの気品は服装一つでは隠しきれないからな」
「ええ。全くもっておっしゃるとおりですわ。わたくし、殿下の溢れこぼれる気品にいつも気圧されて恐縮しておりますもの」
私は顔の前で手を組み、小首を傾げてみせた。
「そうか。だったら普段からもっと敬っていいぞ」
「敬いすぎて、もうお腹一杯にございます」
「私は常に空腹だが?」
「そうですか。それは欲深いことでいらっしゃいますね」
唇に手を当ててほほほと私は笑う。
ばちばち火花を散らす私たちに、ジェラルドさんもユリアも口を挟めずにいるようだ。ユリアの場合は、最初から口を出す気はさらさらないようだけれど。
「ええっと。それではご準備が整いましたところで、そろそろ参りましょうか」
話が途切れたところでジェラルドさんは何とか話を切り換えた。
殿下はそこで観客に気付いて咳払いする。
「そうだな。行こう」
「はい。よろしくお願いいたします」
「とりあえず別々に部屋を出て、それぞれ馬車の駐輪所に向かうことにする」
まあ、殿下が私の部屋から出て来たら、部屋の前に立つ護衛官の方にびっくりされちゃうもんね。
「承知いたしました」
「それでは後で」
殿下はそう言い残すと扉を閉めて自分の部屋に戻られた。
午後から行こうという簡単な約束で、具体的な時間帯まで決めていなかった。
部屋で待っていれば呼びに来てくれるかなと考えていると、殿下の部屋に繋がる扉の鍵が回る音にはっと気付いた。
来た!
「ユリア! 援護よろしく!」
私はユリアを連れて一気に走り寄ると、ドアノブをがっつり掴んだ。
だーかーら! ノックをしなさい、ノックをさ! というか、ユリア。ただ後ろに立っているだけじゃない!
と振り返って文句を言おうと思ったところで、不意にノックされた。
「殿下ですか!?」
殿下以外の人間が侵入し、開けようとしていたら大問題だとは思うけれど、聞かずにはいられない。
「ああ。準備はもういいか」
今、問答無用で開けようとしていたじゃない。遅れてノックしていたけれど。
「はい。開けます」
私は力を抜くと扉が引かれ、殿下の姿が現れる。そのすぐ側にはジェラルドさんもいらっしゃった。
それでピンと来ましたね。ジェラルドさんに慌てて止められ、ノックするよう促されたのだと。まったくもう!
「おはようございます、殿下。ジェラルド様」
「おはようございます」
まずは私とユリアが挨拶をする。
「ああ、おはよう」
「おはようございます。ロザンヌ様、ユリアさん」
続いて殿下とジェラルドさんが挨拶を返してくださった。
直後、殿下は私の姿を無言でしげしげと見つめると一言。
「化けたな。どこに出しても恥ずかしくないただの町娘だ」
明らかに良い意味で言っていませんよね。
でも私はこめかみに青筋を立てつつも、にっこりと笑う。
「おかげさまで。貴族としての気配をうまく消すのが、わたくしの唯一の特技でして」
そういえば、以前、アレオン護衛官にも貴族の娘として見られていませんでしたものね。あれ? と言うことは、私には普段から貴族のかけらも見当たらないということでしょうか。……失敬な。
「殿下はと申しますと」
今度は私が殿下を評価するために、上から下へとじろじろ無遠慮に見る。
一応、お忍び用の衣服なのだろう。いつものピラピラしているジャボも無いし、ジュストコールもジレも着ていないので、王子風(?)のかっちりしたイメージはない。ブラウスも若干品質が低く見えるあっさりとしたデザインとなっている。手には顔を隠すためと思われる帽子も持っているし、服装だけを見れば及第点だ。
しかしである。それを着ている人物は全く気配が消せていない。
ええ、格好いいですとも。それこそ男前は何を着ても、本人の品格だけは落とすこともないのでしょう。妙にお似合いですとも。むしろ服の方が恥ずかしがって殿下に寄せてきていますとも! でもここは嫌味の一つも返しておかないとだめでしょう。
私は顔を上げると殿下と視線を交わした。
「とてもお似合いですわ。何をお召しになっても素敵ですね」
「ありがとう」
素直な私の答えに殿下は困惑されたようだけれど、すぐにまだ油断ならないと顔を引き締めた。
なかなか鋭いですね。
「ですが、殿下は王子臭を一切隠し切れておられませんね。お忍びにならないのではと、わたくしは懸念いたします」
王子臭? と殿下はぴくりと眉を上げるも、余裕の笑みを浮かべる。
「仕方がない。溢れんばかりの気品は服装一つでは隠しきれないからな」
「ええ。全くもっておっしゃるとおりですわ。わたくし、殿下の溢れこぼれる気品にいつも気圧されて恐縮しておりますもの」
私は顔の前で手を組み、小首を傾げてみせた。
「そうか。だったら普段からもっと敬っていいぞ」
「敬いすぎて、もうお腹一杯にございます」
「私は常に空腹だが?」
「そうですか。それは欲深いことでいらっしゃいますね」
唇に手を当ててほほほと私は笑う。
ばちばち火花を散らす私たちに、ジェラルドさんもユリアも口を挟めずにいるようだ。ユリアの場合は、最初から口を出す気はさらさらないようだけれど。
「ええっと。それではご準備が整いましたところで、そろそろ参りましょうか」
話が途切れたところでジェラルドさんは何とか話を切り換えた。
殿下はそこで観客に気付いて咳払いする。
「そうだな。行こう」
「はい。よろしくお願いいたします」
「とりあえず別々に部屋を出て、それぞれ馬車の駐輪所に向かうことにする」
まあ、殿下が私の部屋から出て来たら、部屋の前に立つ護衛官の方にびっくりされちゃうもんね。
「承知いたしました」
「それでは後で」
殿下はそう言い残すと扉を閉めて自分の部屋に戻られた。
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