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第185話 病気の原因はやはり
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マリアンジェラ様は見たところ、熱があったり、咳き込んだりしているご様子はない。高熱はともかく、殿下に取り憑く影もそのような症状はないと聞くが……。
「お医者様は何とおっしゃっているのですか?」
「お恥ずかしい話ですが、心労かもしれないそうです」
「流行病ではない?」
「ええ。ですからロザンヌ様をお呼びしたのです。移してしまっては大変ですもの」
やはり影が原因?
「体が重だるくて、食欲が全くなくて、夜もほとんど眠れないものですから酷い顔をしているでしょう」
マリアンジェラ様は、隠すように私が握る反対の手をご自分の頬に当てる。
「いいえ。マリアンジェラ様はどんなお姿でも品があってお綺麗です。ただ、おっしゃるようにお疲れのご様子ですね」
食事も睡眠もほとんど取れていないのであれば、より倦怠感が出るのは仕方がないことだ。
「まあ。お世辞でも嬉しいわ。お医者様もゆっくり休養と食事を取れば大丈夫だろうと。それにロザンヌ様にお会いしたからかしら。何だか元気になってきた気がします」
「はい。今、わたくしの力強い元気パワーを手から注ぎ込んでおりますので」
私はあらためて両手でぎゅっとマリアンジェラ様の手を握ると、ありがとうございますと笑顔になった。
マリアンジェラ様はまだ気付いてはおられないけれど、呼吸の乱れが整い、顔色も少しずつ血色を取り戻してきているのが見て取れる。
普通の病気がみるみる内に良くなるわけがない。間違いない。影が原因だ。
我知らず唇を噛んでしまう。
「どうかなさったの?」
私の顔を見て眉を落とすマリアンジェラ様に、私ははっと我に返る。
「あ、いえ。……申し訳ございません、マリアンジェラ様」
私を庇ってくださったために、マリアンジェラ様が狙われてしまった。あるいはベルモンテ侯爵家は日々、上位貴族を虎視眈々と狙っていて、その隙を与えてしまったのかもしれない。
「もっと早くにお見舞いに伺っていれば」
そうだ。もっと早くにお見舞いに来ていれば、ここまでマリアンジェラ様を苦しめることもなかったはず。
「毎日お顔を合わせていませんでしたし、何よりもわたくしが言っておりませんでしたから。休む二、三日前から予兆はあったのですが、ここまで悪くなるとは思いませんでした」
マリアンジェラ様は表情に陰を落として一つ息を吐く。
「一人でベッドの中にいますとね、自分だけどこか遠くに離された気分になるのです。誰からも、家族の者さえからも忘れ去られるようなそんな感覚に。このままずっとこうだったらどうしようと、ずっとこの暗い世界に一人取り残されたらどうしようと悪い方向にばかり考えてしまうのです。とても心細くて寂しくて恐ろしくて。だから」
私の手を力強くぎゅっと握り返し、マリアンジェラ様はふわりと顔をほころばせた。
「ロザンヌ様が顔を見せてくださって本当に嬉しかったの。とても心強かったの。わたくしに光を与えてくださってありがとうございます」
「そんな……わたくしは」
あなた様をそんな風に追い込んでしまった張本人なのに……。
小首を傾げていたマリアンジェラ様だったけれど、きゅうくるくるとお腹に空腹を主張されて顔を赤らめた。
「あ、あら。安心したらお腹が空いてきちゃったみたい。不思議なものね。さっきまでは全く食欲がなかったのに」
「お腹が空くのは元気の証拠です。わたくし、いつもお腹が空いておりますもの」
「まあ」
マリアンジェラ様はくすくすと笑う。
もう大丈夫だ。
私はマリアンジェラ様の手を離した。
「では、そろそろ失礼いたしますね」
「もう?」
「ええ。お腹が空いておられる時にお食事なさった方がよろしいかと思います」
「そうね……」
残念そうにされているけれど、マリアンジェラ様は素直に頷く。
実際、どれくらいお食事を取っていないのか分からないけれど、体が激しく欲しているのは間違いない。
「セリアン様もとても心配していらっしゃいました。今も下で不服そうにお待ちなのです」
仕方がないからセリアン様のことも話題に上げておいてあげます。
「ええ、そうね。とても感謝しています。ですが、病床に伏している姿をお見せしたくはなかったものですから。――あ。お帰りの前に、申し訳ないですけれど、あのテーブルにあるペンとメモを取ってくださる? セリアンに感謝の手紙を渡していただきたいのです」
マリアンジェラ様も無意識でおっしゃっているのだろう。彼のことをセリアンと呼んだ。
私は何食わぬ顔で返事してペンとメモを手渡すと、マリアンジェラ様はさらさらと書き付けて私に差し出す。
「これをお願いいたします」
「確かに承りました。マリアンジェラ様、一日も早いご快復をお祈りいたします」
「ありがとうございます。また学校でお会いしましょう」
「はい。元気なお姿のマリアンジェラ様とお会いできるのを楽しみにしております」
私は深々と礼を取ると、笑顔で部屋を後にした。
「お医者様は何とおっしゃっているのですか?」
「お恥ずかしい話ですが、心労かもしれないそうです」
「流行病ではない?」
「ええ。ですからロザンヌ様をお呼びしたのです。移してしまっては大変ですもの」
やはり影が原因?
「体が重だるくて、食欲が全くなくて、夜もほとんど眠れないものですから酷い顔をしているでしょう」
マリアンジェラ様は、隠すように私が握る反対の手をご自分の頬に当てる。
「いいえ。マリアンジェラ様はどんなお姿でも品があってお綺麗です。ただ、おっしゃるようにお疲れのご様子ですね」
食事も睡眠もほとんど取れていないのであれば、より倦怠感が出るのは仕方がないことだ。
「まあ。お世辞でも嬉しいわ。お医者様もゆっくり休養と食事を取れば大丈夫だろうと。それにロザンヌ様にお会いしたからかしら。何だか元気になってきた気がします」
「はい。今、わたくしの力強い元気パワーを手から注ぎ込んでおりますので」
私はあらためて両手でぎゅっとマリアンジェラ様の手を握ると、ありがとうございますと笑顔になった。
マリアンジェラ様はまだ気付いてはおられないけれど、呼吸の乱れが整い、顔色も少しずつ血色を取り戻してきているのが見て取れる。
普通の病気がみるみる内に良くなるわけがない。間違いない。影が原因だ。
我知らず唇を噛んでしまう。
「どうかなさったの?」
私の顔を見て眉を落とすマリアンジェラ様に、私ははっと我に返る。
「あ、いえ。……申し訳ございません、マリアンジェラ様」
私を庇ってくださったために、マリアンジェラ様が狙われてしまった。あるいはベルモンテ侯爵家は日々、上位貴族を虎視眈々と狙っていて、その隙を与えてしまったのかもしれない。
「もっと早くにお見舞いに伺っていれば」
そうだ。もっと早くにお見舞いに来ていれば、ここまでマリアンジェラ様を苦しめることもなかったはず。
「毎日お顔を合わせていませんでしたし、何よりもわたくしが言っておりませんでしたから。休む二、三日前から予兆はあったのですが、ここまで悪くなるとは思いませんでした」
マリアンジェラ様は表情に陰を落として一つ息を吐く。
「一人でベッドの中にいますとね、自分だけどこか遠くに離された気分になるのです。誰からも、家族の者さえからも忘れ去られるようなそんな感覚に。このままずっとこうだったらどうしようと、ずっとこの暗い世界に一人取り残されたらどうしようと悪い方向にばかり考えてしまうのです。とても心細くて寂しくて恐ろしくて。だから」
私の手を力強くぎゅっと握り返し、マリアンジェラ様はふわりと顔をほころばせた。
「ロザンヌ様が顔を見せてくださって本当に嬉しかったの。とても心強かったの。わたくしに光を与えてくださってありがとうございます」
「そんな……わたくしは」
あなた様をそんな風に追い込んでしまった張本人なのに……。
小首を傾げていたマリアンジェラ様だったけれど、きゅうくるくるとお腹に空腹を主張されて顔を赤らめた。
「あ、あら。安心したらお腹が空いてきちゃったみたい。不思議なものね。さっきまでは全く食欲がなかったのに」
「お腹が空くのは元気の証拠です。わたくし、いつもお腹が空いておりますもの」
「まあ」
マリアンジェラ様はくすくすと笑う。
もう大丈夫だ。
私はマリアンジェラ様の手を離した。
「では、そろそろ失礼いたしますね」
「もう?」
「ええ。お腹が空いておられる時にお食事なさった方がよろしいかと思います」
「そうね……」
残念そうにされているけれど、マリアンジェラ様は素直に頷く。
実際、どれくらいお食事を取っていないのか分からないけれど、体が激しく欲しているのは間違いない。
「セリアン様もとても心配していらっしゃいました。今も下で不服そうにお待ちなのです」
仕方がないからセリアン様のことも話題に上げておいてあげます。
「ええ、そうね。とても感謝しています。ですが、病床に伏している姿をお見せしたくはなかったものですから。――あ。お帰りの前に、申し訳ないですけれど、あのテーブルにあるペンとメモを取ってくださる? セリアンに感謝の手紙を渡していただきたいのです」
マリアンジェラ様も無意識でおっしゃっているのだろう。彼のことをセリアンと呼んだ。
私は何食わぬ顔で返事してペンとメモを手渡すと、マリアンジェラ様はさらさらと書き付けて私に差し出す。
「これをお願いいたします」
「確かに承りました。マリアンジェラ様、一日も早いご快復をお祈りいたします」
「ありがとうございます。また学校でお会いしましょう」
「はい。元気なお姿のマリアンジェラ様とお会いできるのを楽しみにしております」
私は深々と礼を取ると、笑顔で部屋を後にした。
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