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第246話 痛恨の一撃
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「え、今から!? 今すぐですか!?」
「ああ。善は急げだ」
まだ時間は早いとはいえ、まさか今日動くとは思ってもいなかった。しかし、殿下としたら一日でも早く解明したいのだろう。エスメラルダ様の眠る地に何かあるか分からないが、訪れるべき場所ではある。
「分かりました。ですが服を着替えて来なくてはいけませんので、一度部屋に戻りたいのですが」
侍女服で町中に出るのは目立つだろうし、ユリアも練習着を持ってきたままだ。
……あ。そうか。ユリアには悪いことしちゃったな。
「お気になさらないでください」
小声で言われて、私はぎょっとする。
今、口に出していたかしらとユリアを見ると、お顔で分かりますと得意げだ。
「そうだな。私たちも着替えが必要だし、ジェラルドも手記を戻しておきたいだろうしな。では後ほど馬車の停留場所で落ち合おう」
書庫室を後にした私たちはひとまずそれぞれ分かれた。
着替えを終える前に私とユリアは一つ寄り道してから部屋に戻った。
クローゼットの前に立ちながらユリアに話しかける。
「埋葬されている場所は、きっと人が入らないようなひっそりしたような地でしょうね。エスメラルダ様は罪人として裁かれてしまったから、丁重な埋葬をされていないでしょう。もしかしたら足場さえも悪い所かもしれないわね。あるいは森の中だったりするのかしら」
「はい。服も靴もできるだけ動きやすい物を選んだ方がよろしいのではないでしょうか」
「ええ。分かったわ」
私が手頃な服装を選んで着替えるの見届けた後、ユリアは言った。
「では私も部屋に戻って着替えてきます」
「あら。部屋に戻るのは手間でしょう。わたくしの服を着ればいいわ。どれを選んでもらってもいいわよ。ええっと。ユリアはどの色が好きだった?」
「お言葉ですが」
また主と従者として線引きして遠慮されるのかなと眉を落としそうになったところ。
「ロザンヌ様の服では、おそらく胸がきつくて入りません」
「――ぐほっ!」
ユリアからの痛恨の一撃に膝を落とした。
一時的に再起不能になった私を放置したままユリアが着替えを終えて戻ってくると、私たちは馬車の停留場所へと向かった。
しかし殿下らの姿はない。私たちより遅いはずがないのになと思っていたら、ジェラルドさんがすぐに離れた所からやって来た。彼もまた騎士の服を脱いで私服に着替えている。
「ロザンヌ様、ユリアさん。お待たせして失礼いたしました。こちらへ」
「え?」
ジェラルドさんにいつもと違う場所へと誘導される。すると厩舎が見えてきた。それと共に馬を撫でている殿下の姿も目に入る。
なるほど。
馬車の停留場所の奥に厩舎があったのね。
「殿下」
「ああ、来たか」
殿下に近づくと一瞬、馬は私に気づいて怯えたような素振りを見せたが、殿下がなだめる。
私も左肩にいるネロにおとなしくねと撫でつつ(もしかしたらそこにいないかもしれない)あらためて馬を見つめた。
「馬車で行くのではないのですね」
てっきり馬車で行くものだとばかり思っていた。どちらにしろ動きやすい恰好をしておいて良かった。
「埋葬された地は町から離れた国有地だ」
あ、そうか。王家に対しての反逆者は、聖地化されないように一般市民が立ち入る所ができない場所に埋葬されるはずだ。
「整備された地ではないから馬車より馬で行く方が利便性がある。それに御者を疑うわけではないが、あまり個人的に赴く場所を知られたくないからな。ところでロザンヌ嬢、馬に乗った経験は?」
「誰に向かっておっしゃっているのです。こちとら、田舎住まいの娘ですよ。乗馬の経験の一つや二つございましてよ」
胸を張って手を当ててみたものの、私はすぐにため息をついた。
「ですが、馬がわたくしを怖がってなかなか乗せてくれませんでしたので、本当に一つか二つだけですが」
私って何もできない子みたい。いや、事実そうですが。だけど今考えてみれば、ネロの影響だったのだろう。
「そうか。もともと小規模で行く方がいいと考えていたからな。二頭でゆっくり向かうとするか。ロザンヌ嬢は私の馬――いや。君はジェラルドと一緒に。ユリア、君は私の馬に」
「……はい」
「かしこまりました」
私の返事に続いてユリアが頷いた。
そうだよね。二人乗りとなると密接するわけだから、殿下と触れてしまう可能性が高いものね。仕方がないことだ。
少しだけ残念に思いつつ、殿下から離れてジェラルドさんの元へと向かう。
「どうぞよろしくお願いいたします、ジェラルド様」
「はい。こちらこそよろしくお願いいたします」
笑顔のジェラルドさんに私もまた微笑みを返した。
「ああ。善は急げだ」
まだ時間は早いとはいえ、まさか今日動くとは思ってもいなかった。しかし、殿下としたら一日でも早く解明したいのだろう。エスメラルダ様の眠る地に何かあるか分からないが、訪れるべき場所ではある。
「分かりました。ですが服を着替えて来なくてはいけませんので、一度部屋に戻りたいのですが」
侍女服で町中に出るのは目立つだろうし、ユリアも練習着を持ってきたままだ。
……あ。そうか。ユリアには悪いことしちゃったな。
「お気になさらないでください」
小声で言われて、私はぎょっとする。
今、口に出していたかしらとユリアを見ると、お顔で分かりますと得意げだ。
「そうだな。私たちも着替えが必要だし、ジェラルドも手記を戻しておきたいだろうしな。では後ほど馬車の停留場所で落ち合おう」
書庫室を後にした私たちはひとまずそれぞれ分かれた。
着替えを終える前に私とユリアは一つ寄り道してから部屋に戻った。
クローゼットの前に立ちながらユリアに話しかける。
「埋葬されている場所は、きっと人が入らないようなひっそりしたような地でしょうね。エスメラルダ様は罪人として裁かれてしまったから、丁重な埋葬をされていないでしょう。もしかしたら足場さえも悪い所かもしれないわね。あるいは森の中だったりするのかしら」
「はい。服も靴もできるだけ動きやすい物を選んだ方がよろしいのではないでしょうか」
「ええ。分かったわ」
私が手頃な服装を選んで着替えるの見届けた後、ユリアは言った。
「では私も部屋に戻って着替えてきます」
「あら。部屋に戻るのは手間でしょう。わたくしの服を着ればいいわ。どれを選んでもらってもいいわよ。ええっと。ユリアはどの色が好きだった?」
「お言葉ですが」
また主と従者として線引きして遠慮されるのかなと眉を落としそうになったところ。
「ロザンヌ様の服では、おそらく胸がきつくて入りません」
「――ぐほっ!」
ユリアからの痛恨の一撃に膝を落とした。
一時的に再起不能になった私を放置したままユリアが着替えを終えて戻ってくると、私たちは馬車の停留場所へと向かった。
しかし殿下らの姿はない。私たちより遅いはずがないのになと思っていたら、ジェラルドさんがすぐに離れた所からやって来た。彼もまた騎士の服を脱いで私服に着替えている。
「ロザンヌ様、ユリアさん。お待たせして失礼いたしました。こちらへ」
「え?」
ジェラルドさんにいつもと違う場所へと誘導される。すると厩舎が見えてきた。それと共に馬を撫でている殿下の姿も目に入る。
なるほど。
馬車の停留場所の奥に厩舎があったのね。
「殿下」
「ああ、来たか」
殿下に近づくと一瞬、馬は私に気づいて怯えたような素振りを見せたが、殿下がなだめる。
私も左肩にいるネロにおとなしくねと撫でつつ(もしかしたらそこにいないかもしれない)あらためて馬を見つめた。
「馬車で行くのではないのですね」
てっきり馬車で行くものだとばかり思っていた。どちらにしろ動きやすい恰好をしておいて良かった。
「埋葬された地は町から離れた国有地だ」
あ、そうか。王家に対しての反逆者は、聖地化されないように一般市民が立ち入る所ができない場所に埋葬されるはずだ。
「整備された地ではないから馬車より馬で行く方が利便性がある。それに御者を疑うわけではないが、あまり個人的に赴く場所を知られたくないからな。ところでロザンヌ嬢、馬に乗った経験は?」
「誰に向かっておっしゃっているのです。こちとら、田舎住まいの娘ですよ。乗馬の経験の一つや二つございましてよ」
胸を張って手を当ててみたものの、私はすぐにため息をついた。
「ですが、馬がわたくしを怖がってなかなか乗せてくれませんでしたので、本当に一つか二つだけですが」
私って何もできない子みたい。いや、事実そうですが。だけど今考えてみれば、ネロの影響だったのだろう。
「そうか。もともと小規模で行く方がいいと考えていたからな。二頭でゆっくり向かうとするか。ロザンヌ嬢は私の馬――いや。君はジェラルドと一緒に。ユリア、君は私の馬に」
「……はい」
「かしこまりました」
私の返事に続いてユリアが頷いた。
そうだよね。二人乗りとなると密接するわけだから、殿下と触れてしまう可能性が高いものね。仕方がないことだ。
少しだけ残念に思いつつ、殿下から離れてジェラルドさんの元へと向かう。
「どうぞよろしくお願いいたします、ジェラルド様」
「はい。こちらこそよろしくお願いいたします」
笑顔のジェラルドさんに私もまた微笑みを返した。
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