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第227話 仲が良くて羨ましい
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食堂でマリエル嬢と別れ、庭へと向かうとマリアンジェラ様がベンチで静かに本を読んでおられる姿が見えた。
「マリアンジェラ様、ごきげんよう」
「あら、ロザンヌ様! ごきげんよう」
近付いてご挨拶すると、顔を上げてすぐに反応してくださった。そしてそのまま本を閉じる。
「読書中にお邪魔して申し訳ございません」
「いいえ。いいのよ。暇をつぶしていただけですから。そういえば、今日はお一人? マリエル様はどうなさったの?」
「先生から色々頼まれ事を引き受けてしまったようで、しばらくはお忙しいみたいなのです」
ひとまずそう言っておこう。
「そうなの。それは残念だわ。実はクッキーを焼いてきたのです。ロザンヌ様、よろしければお召し上がりになりませんか」
「はい、もちろんです!」
私は一も二もなく座ると、マリアンジェラ様は横に置いていたらしい上品な木箱を手に取った。
「できるだけ綺麗に出来上がったものを持ってきたのですが」
少しおずおずした様子で、そっと開けられた箱からクッキーがお顔見せする。
「わあ! 可愛らしい! 美味しそう!」
星型や花型、ハート型があったりと様々で、中央にはジャムがのせられているクッキーもある。
「すごい! マリアンジェラ様、すごいです!」
「ありがとう。お口に合うといいのだけれど」
……あれ? 今日たまたまお菓子を作って持ってきてくださったということ? いえ。もしかして昨日もいらっしゃったのかしら。
「あの、マリアンジェラ様。もしかして昨日もお待ちいただいていたのでしょうか」
「あ。いいえ。昨日は用事があって来なかったわ」
焦った様子のマリアンジェラ様で、明らかに気を遣ってくださっているのが分かった。多分マリエル嬢も足を運ばなかったのだろう。
「も、申し訳ありません。わたくし、昨日は学校をお休みしまして」
「いえ、いいのよ。あ、そうではなくてご病気でお休みだったの? わたくしの時にはお見舞いに来ていただいたのに、存じなくて申し訳ありません」
「いいえ。大したことはあ――」
「へぇ。君が病気とか。悪魔の霍乱か知恵熱かな」
私の言葉を遮るこの声は。
「あなたはまたロザンヌ様にそんな失礼な言い方をなさって」
マリアンジェラ様が笑顔で現れたセリアン様をたしなめた。
けれどセリアン様は気にした様子もなく、詰めて詰めてと私を端に押しやってマリアンジェラ様の横に座る。
なぜマリアンジェラ様との間に割って入るのだ!
「ロザンヌ嬢、もう体はいいの?」
「はい。おかげさまで」
「そう。良かったね」
「……ありがとう存じます」
気持ちが全くこもっておりませんが、大人な私は笑顔でお言葉を受け取りましょう。
「昨日のマリアンジェラ嬢が作ってきたクッキーなら大丈夫だよ。俺がもらったから」
「セリアン様!」
やはりマリアンジェラ様は昨日も作って持ってきてくださっていたのか。
「わざわざ作ってきてくださったのに、本当に申し訳ありません」
食べる専門だけれど、私だって作る手間暇の想像くらいはできる。せっかく作ったのに渡す相手がいなかった時のがっかり感も。
「いいえ。いいのよ。いつも会えるとは限らないと分かっていましたし、それに作るのが好きなので苦にはなっておりません。でも感想を頂けると嬉しいわ。ぜひ召し上がって」
マリアンジェラ様は腕を伸ばして、障害物のセリアン様を越えて私の方へとクッキーの箱を届けてくださった。
「ありがとうございます。頂きます」
私はクッキーを一枚手に取ってぱくりとかぶりつくと、口の中でじゅわりと優しい甘さが広がる。
「――っ。美味しい! マリアンジェラ様、職人様みたいです!」
「ほ、本当?」
感激でマリアンジェラ様を見ると、頬を赤く染めておられた。
「はい、凄く美味しいです! 最高です! もう一枚よろしいですか?」
「嬉しい。ロザンヌ様とマリエル様のために作ってきたのだから、一枚と言わず全部持って行って」
「ありがとうございます。マリエル様もきっと喜びます」
箱ごと受け取ると、セリアン様が指を伸ばし一枚取って口にし、まあまあだねと頷く。
「あ! セリアン様ったら。昨日頂いたのでしょう」
「いいじゃん。別に減るものじゃあるまいし」
「減るものですよ!」
普通に一枚減ったよ!
「ケチケチ言わないの」
「もうっ。マリアンジェラ様、セリアン様を叱ってくださいませ」
「……お二人」
私がマリアンジェラ様に話を振ると、ぽつりと呟かれた。
「仲が良くていいですね。羨ましいです」
セリアン様に向かってそうおっしゃって、少し拗ねたような表情を浮かべる。
「え? マリアンジェラ、それ」
「セリアン様ばかりロザンヌ様と仲が良くてずるい」
マリアンジェラ様はそのままセリアン様をじとりと恨めしそうに見つめると、まあそうなるよねと彼は引きつり笑いをする。
私は横で笑いを堪えていると、その顔むかつくんだけどとセリアン様は私の頬を引っ張った。
「マリアンジェラ様、ごきげんよう」
「あら、ロザンヌ様! ごきげんよう」
近付いてご挨拶すると、顔を上げてすぐに反応してくださった。そしてそのまま本を閉じる。
「読書中にお邪魔して申し訳ございません」
「いいえ。いいのよ。暇をつぶしていただけですから。そういえば、今日はお一人? マリエル様はどうなさったの?」
「先生から色々頼まれ事を引き受けてしまったようで、しばらくはお忙しいみたいなのです」
ひとまずそう言っておこう。
「そうなの。それは残念だわ。実はクッキーを焼いてきたのです。ロザンヌ様、よろしければお召し上がりになりませんか」
「はい、もちろんです!」
私は一も二もなく座ると、マリアンジェラ様は横に置いていたらしい上品な木箱を手に取った。
「できるだけ綺麗に出来上がったものを持ってきたのですが」
少しおずおずした様子で、そっと開けられた箱からクッキーがお顔見せする。
「わあ! 可愛らしい! 美味しそう!」
星型や花型、ハート型があったりと様々で、中央にはジャムがのせられているクッキーもある。
「すごい! マリアンジェラ様、すごいです!」
「ありがとう。お口に合うといいのだけれど」
……あれ? 今日たまたまお菓子を作って持ってきてくださったということ? いえ。もしかして昨日もいらっしゃったのかしら。
「あの、マリアンジェラ様。もしかして昨日もお待ちいただいていたのでしょうか」
「あ。いいえ。昨日は用事があって来なかったわ」
焦った様子のマリアンジェラ様で、明らかに気を遣ってくださっているのが分かった。多分マリエル嬢も足を運ばなかったのだろう。
「も、申し訳ありません。わたくし、昨日は学校をお休みしまして」
「いえ、いいのよ。あ、そうではなくてご病気でお休みだったの? わたくしの時にはお見舞いに来ていただいたのに、存じなくて申し訳ありません」
「いいえ。大したことはあ――」
「へぇ。君が病気とか。悪魔の霍乱か知恵熱かな」
私の言葉を遮るこの声は。
「あなたはまたロザンヌ様にそんな失礼な言い方をなさって」
マリアンジェラ様が笑顔で現れたセリアン様をたしなめた。
けれどセリアン様は気にした様子もなく、詰めて詰めてと私を端に押しやってマリアンジェラ様の横に座る。
なぜマリアンジェラ様との間に割って入るのだ!
「ロザンヌ嬢、もう体はいいの?」
「はい。おかげさまで」
「そう。良かったね」
「……ありがとう存じます」
気持ちが全くこもっておりませんが、大人な私は笑顔でお言葉を受け取りましょう。
「昨日のマリアンジェラ嬢が作ってきたクッキーなら大丈夫だよ。俺がもらったから」
「セリアン様!」
やはりマリアンジェラ様は昨日も作って持ってきてくださっていたのか。
「わざわざ作ってきてくださったのに、本当に申し訳ありません」
食べる専門だけれど、私だって作る手間暇の想像くらいはできる。せっかく作ったのに渡す相手がいなかった時のがっかり感も。
「いいえ。いいのよ。いつも会えるとは限らないと分かっていましたし、それに作るのが好きなので苦にはなっておりません。でも感想を頂けると嬉しいわ。ぜひ召し上がって」
マリアンジェラ様は腕を伸ばして、障害物のセリアン様を越えて私の方へとクッキーの箱を届けてくださった。
「ありがとうございます。頂きます」
私はクッキーを一枚手に取ってぱくりとかぶりつくと、口の中でじゅわりと優しい甘さが広がる。
「――っ。美味しい! マリアンジェラ様、職人様みたいです!」
「ほ、本当?」
感激でマリアンジェラ様を見ると、頬を赤く染めておられた。
「はい、凄く美味しいです! 最高です! もう一枚よろしいですか?」
「嬉しい。ロザンヌ様とマリエル様のために作ってきたのだから、一枚と言わず全部持って行って」
「ありがとうございます。マリエル様もきっと喜びます」
箱ごと受け取ると、セリアン様が指を伸ばし一枚取って口にし、まあまあだねと頷く。
「あ! セリアン様ったら。昨日頂いたのでしょう」
「いいじゃん。別に減るものじゃあるまいし」
「減るものですよ!」
普通に一枚減ったよ!
「ケチケチ言わないの」
「もうっ。マリアンジェラ様、セリアン様を叱ってくださいませ」
「……お二人」
私がマリアンジェラ様に話を振ると、ぽつりと呟かれた。
「仲が良くていいですね。羨ましいです」
セリアン様に向かってそうおっしゃって、少し拗ねたような表情を浮かべる。
「え? マリアンジェラ、それ」
「セリアン様ばかりロザンヌ様と仲が良くてずるい」
マリアンジェラ様はそのままセリアン様をじとりと恨めしそうに見つめると、まあそうなるよねと彼は引きつり笑いをする。
私は横で笑いを堪えていると、その顔むかつくんだけどとセリアン様は私の頬を引っ張った。
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