雨宮課長に甘えたい

コハラ

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トラブル

《2》

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「顔が死んでるよ」

12階のカフェバー隣にある社食でとんかつ定食を食べている時に桃子に言われた。
総務部に異動になってからは同じフロアにある人事部の桃子とランチをとる事が増えた。

お昼の時間にちゃんと休憩が取れるようになったからだ。宣伝部にいた頃は社外に出ていた事も多かったし、忙しくてお昼の時間に食べる事はあまりなかった。今は規則正しい生活を送れているが、味気ない。宣伝部が恋しい。

「そう言えばさ、聞いた?」

桃子が急に声を潜める。話したくて仕方ないって顔をしている。

「雨宮課長ってさ、昔」

ぴくん! 耳が反応する。

「雨宮課長がどうしたの?」
「あ、雨宮課長!」

桃子が急に慌てた様子で会釈をした。
桃子の視線を辿って後ろを向くと、白トレーを持った雨宮課長が立っている。

「人事の桜井さんだったね。こんにちは」

すぐ後ろで雨宮課長の穏やかな声がして、鼓動が速くなる。

「雨宮課長も今からお昼ですか?」

桃子が話し続ける。

「そうなんだ」
「課長、よかったら一緒にどうですか?」

桃子が言った。

えー! なんで誘うの!

「いいの?」
「はい。ねえ、奈々子」

桃子がこっちを見る。

「あの、はい。雨宮課長、どうぞ」

そう言うしかなかった。

「中島さん、ありがとう。では、お邪魔します」

課長が私の右隣に座る。体の右側にどんどん熱が集まって、ドキドキする。

「課長はお蕎麦ですか」

雨宮課長が置いたトレーの上にはざるそばがあった。

「こう暑いと、さっぱりしたものが欲しくなって」
「今日も30度気温がありますもんね。私も麺が良くて、パスタにしちゃいました」

桃子と課長の話を聞いてとんかつ定食を食べているのが、恥ずかしくなる。
宣伝部にいた頃のクセで“かつ”と名の付く食べ物にしてしまった。しかもご飯、特盛だし。

桃子みたいにカルボナーラとか、もう少し女子っぽいものにすれば良かった。

「奈々子は暑くても食欲衰えないね」
桃子のいじわる。課長の前でつっこまないでよ。もう、この場から消えたい。
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