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こんなの、夫婦じゃない……!
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夕方になって、ようやくチェックインの開始時刻になると、私は予約していたホテルにやって来た。
煌びやかな明かりを綺麗に磨かれた大理石の床が反射して眩しささえ感じられる。
ホテルのロビーを見渡すと、私以外にも少なからずアジア系の人達がおり、内心でほっと安堵する。
(チェックインは……ここかな?)
スマートフォンでロビーに書かれた案内板を翻訳していると、妙に人が並んでいる列を見つける。私の後に入ってきた旅行客と思しきスーツケースを引きずった団体もそこの列に並んだので、おそらく、そこがチェックインの列なのだろう。
私も後に続いて、チェックインをする人達の列に並ぶと自分の順番がやって来るのをじっと待つ。すぐに順番が来ると、若い男性スタッフがいるチェックインカウンターに向かったのだった。
スマートフォンの通訳機能を駆使して、私が話した日本語を英語に翻訳してもらい、男性スタッフが話した英語を日本語に通訳してもらう事で言語の問題は克服した。
しかし、ここで問題が発生したのだった。
「予約していない……? そんなはずはありません! えっと、英語では……」
気持ちが急いているからか、スマートフォンの翻訳機能が遅く感じられる。
男性スタッフの説明によると、どうやら予約の際に手続きが最後まで完了していなかったのではないかとの事だった。ホテルの予約サイト内を日本語に翻訳して手続きを行ったが、どこか見落としたのかもしれない。
しかも、よりにもよって今日は複数組の団体客が宿泊に来ており、空いている部屋が無いとまで言われてしまったのだった。
(ううっ……。ついてない……)
私は肩を落としてチェックインカウンターから離れると、スーツケースを引きずって入り口に向かって歩いて行く。
そのホテルを諦めて、別のホテルを探す事にしたのだった。
「今晩、どうしよう……今からホテル見つかるかな……」
ホテルから出ると、外は日本と同じオレンジ色の夕陽が輝いていた。
早く別のホテルを見つけないと夜になってしまう。私はスマートフォンを取り出して別のホテルを検索する。このまま異国の地で野宿するのだけは嫌だった。
スマートフォンのロック画面を解除した時、不在着信を知らせる通知が届いていた事に気づく。
(誰だろう……)
スマートフォンを操作して不在着信を確認しようとした時、「ハロー」と見知らぬ女性に声を掛けられる。
「あなた日本人?」
見た目こそこの国特有の白皙の肌に金髪のアメリカ人だが、話しているのは紛れもなく日本語だった。
ニューヨークに来てまだ一日も経っていないのに、聞き馴染んだ母国語にほっと安堵する。
「そうです。日本人です」
「そこのホテルに泊まらないの?」
流暢な日本語と共に示されたのは、さっきまで私が居たホテルだった。私は首を振った。
「それが……ちゃんと予約出来ていなかったみたいで……部屋も満室だと言われてしまって……」
「おおっ……日本人の中にはそういう人が多いのよ」
「そうなんですか?」
「そういう事。じゃあ、こっち来て」
そう言って、女性は私のスーツケースを掴んで引っ張って行こうとしたので、足を踏ん張って、スーツケースを引っ張り返しながら「あの!」と引き止める。
「どこに行くんですか?」
「どこってホテルよ。わたし、すぐに泊まれる格安のホテルを知っているの。そこに車も待たせているから、バスなんて待たなくてもすぐに行けるわ」
女性が示した方を見れば、ホテル前に泊まっている何台もの車の内、ワゴン車の一台が後部座席のドアを開けて、女性を待っているようだった。
「でも……」
「いいから、いいから。泊まるところが無くて困っていたんでしょ?」
「それはそうですが……。でも……」
「遠慮しないで。そうやって日本人はすぐ遠慮するんだから」
女性に手を掴まれた時、誰かが後ろから私の肩を掴んだのだった。
「すみませんが、彼女をどこに連れて行くのでしょうか。彼女は俺の妻です」
耳に馴染んだ男性特有の低い声に、私は時間が止まったかの様な錯覚さえ覚えた。
後ろを振り返ると、そこには先程ガラス越しに姿を見つけた、契約夫の姿があったのだった。
煌びやかな明かりを綺麗に磨かれた大理石の床が反射して眩しささえ感じられる。
ホテルのロビーを見渡すと、私以外にも少なからずアジア系の人達がおり、内心でほっと安堵する。
(チェックインは……ここかな?)
スマートフォンでロビーに書かれた案内板を翻訳していると、妙に人が並んでいる列を見つける。私の後に入ってきた旅行客と思しきスーツケースを引きずった団体もそこの列に並んだので、おそらく、そこがチェックインの列なのだろう。
私も後に続いて、チェックインをする人達の列に並ぶと自分の順番がやって来るのをじっと待つ。すぐに順番が来ると、若い男性スタッフがいるチェックインカウンターに向かったのだった。
スマートフォンの通訳機能を駆使して、私が話した日本語を英語に翻訳してもらい、男性スタッフが話した英語を日本語に通訳してもらう事で言語の問題は克服した。
しかし、ここで問題が発生したのだった。
「予約していない……? そんなはずはありません! えっと、英語では……」
気持ちが急いているからか、スマートフォンの翻訳機能が遅く感じられる。
男性スタッフの説明によると、どうやら予約の際に手続きが最後まで完了していなかったのではないかとの事だった。ホテルの予約サイト内を日本語に翻訳して手続きを行ったが、どこか見落としたのかもしれない。
しかも、よりにもよって今日は複数組の団体客が宿泊に来ており、空いている部屋が無いとまで言われてしまったのだった。
(ううっ……。ついてない……)
私は肩を落としてチェックインカウンターから離れると、スーツケースを引きずって入り口に向かって歩いて行く。
そのホテルを諦めて、別のホテルを探す事にしたのだった。
「今晩、どうしよう……今からホテル見つかるかな……」
ホテルから出ると、外は日本と同じオレンジ色の夕陽が輝いていた。
早く別のホテルを見つけないと夜になってしまう。私はスマートフォンを取り出して別のホテルを検索する。このまま異国の地で野宿するのだけは嫌だった。
スマートフォンのロック画面を解除した時、不在着信を知らせる通知が届いていた事に気づく。
(誰だろう……)
スマートフォンを操作して不在着信を確認しようとした時、「ハロー」と見知らぬ女性に声を掛けられる。
「あなた日本人?」
見た目こそこの国特有の白皙の肌に金髪のアメリカ人だが、話しているのは紛れもなく日本語だった。
ニューヨークに来てまだ一日も経っていないのに、聞き馴染んだ母国語にほっと安堵する。
「そうです。日本人です」
「そこのホテルに泊まらないの?」
流暢な日本語と共に示されたのは、さっきまで私が居たホテルだった。私は首を振った。
「それが……ちゃんと予約出来ていなかったみたいで……部屋も満室だと言われてしまって……」
「おおっ……日本人の中にはそういう人が多いのよ」
「そうなんですか?」
「そういう事。じゃあ、こっち来て」
そう言って、女性は私のスーツケースを掴んで引っ張って行こうとしたので、足を踏ん張って、スーツケースを引っ張り返しながら「あの!」と引き止める。
「どこに行くんですか?」
「どこってホテルよ。わたし、すぐに泊まれる格安のホテルを知っているの。そこに車も待たせているから、バスなんて待たなくてもすぐに行けるわ」
女性が示した方を見れば、ホテル前に泊まっている何台もの車の内、ワゴン車の一台が後部座席のドアを開けて、女性を待っているようだった。
「でも……」
「いいから、いいから。泊まるところが無くて困っていたんでしょ?」
「それはそうですが……。でも……」
「遠慮しないで。そうやって日本人はすぐ遠慮するんだから」
女性に手を掴まれた時、誰かが後ろから私の肩を掴んだのだった。
「すみませんが、彼女をどこに連れて行くのでしょうか。彼女は俺の妻です」
耳に馴染んだ男性特有の低い声に、私は時間が止まったかの様な錯覚さえ覚えた。
後ろを振り返ると、そこには先程ガラス越しに姿を見つけた、契約夫の姿があったのだった。
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