【完結】もう一度やり直したいんです〜すれ違い契約夫婦は異国で再スタートする〜

四片霞彩

文字の大きさ
37 / 88
もう一度、やり直したいんです

37

しおりを挟む
(うわぁ……! ひろっ!)

 シャワー浴びた後、食料を求めてやって来たのは、マンション近くに建つスーパーマーケットだった。スマートフォンの地図を見ながらやって来たが、マンションから徒歩五分掛かるか掛からないかの距離に、日本の何倍もの広さのあるスーパーマーケットがあるとは思わなかった。
 前の客に習ってカゴとカートを持って店内に入ったが、中に入ってスーパーマーケットの広さと品数の多さに度肝を抜かされたのだった。

(とりあえず、食料を買おう。野菜や果物、パッケージに写真が載っている物なら、英語が読めなくても何か分かるよね……?)

 これだけ広いと何を買えばいいのか迷ってしまうが、とりあえずは今自分が食べる分は買うべきだろう。それから、若佐先生が食べる分も――。

(いくら日本に帰れと言われても、このまま帰れないよね……)

 日本とは違い、海外は危険が多い分、早く帰国して欲しいという若佐先生の気持ちは分かる。
 でもここで帰国してしまったら、何も変わらない。
 離婚届を出して他人に戻るか、これまでのすれ違い生活を送るだけか。
 何も変わらないなら、ここまで来た意味が無くなってしまう。

(まずは自分から歩み寄ってみよう。もう怯えないで、目を逸らさないで、遠慮しないで……。だって、自分から心を開かなければ、相手も心を開いてくれないから……)

 本当はまだ昨日怒られた事と、その後にあった衝撃で、ますます若佐先生に恐怖心を抱いてしまっている。そんな及び腰になっている自分を叱咤激励すると、手短に買い物を済ませたのだった。

 何とか買い物を済ませて外に出ると、来た道を戻ろうとする。その途中、スーパーマーケットに向かう時はなかったホットドッグの移動ワゴン車を見つけたのだった。

(美味しそうな匂い)

 ソーセージが焼ける匂いが辺りを漂い、食欲をそそられ、空腹を刺激される。
 丁度、人が引けたようで、他には誰も並んでいなかった。英語の練習には良いかもしれない。
 移動ワゴン車に近づいて行くと、私の姿に気づいたエプロン姿の中年の男性が人の良さそうな笑みを浮かべたのだった。

「これ、一個」

 カウンターに貼られていたホットドッグの写真を指差し、人差し指を立てる。男性は意味が分かったのか、親指を立てるとホットドッグを作り始めたのだった。安心したのも束の間、ドル札を数枚財布から取り出したところで、男性が何か話し始めたのだった。

「えっ……なんだろう?」

 何か伝えたがっているが、男性が早口というのもあり言葉が聞き取れなかった。

「早くスマホを出さないと……!」

 慌てて、スマートフォンを取り出すが、その間にも男性は何かを叫ぶように繰り返し、数人が立ち止まって私達の様子を興味深そうに見ていた。中には笑いながら見物している人もいたので、だんだん顔が赤くなってきたのだった。心なしか男性も苛立って来たようで、怒鳴り声にも似た声を上げた時、見知らぬ女性が私達の間に入ってきたのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ホストと女医は診察室で

星野しずく
恋愛
町田慶子は開業したばかりのクリニックで忙しい毎日を送っていた。ある日クリニックに招かれざる客、歌舞伎町のホスト、聖夜が後輩の真也に連れられてやってきた。聖夜の強引な誘いを断れず、慶子は初めてホストクラブを訪れる。しかし、その日の夜、慶子が目覚めたのは…、なぜか聖夜と二人きりのホテルの一室だった…。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました

鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。 けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。 そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。 シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。 困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。 夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。 そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。 ※他投稿サイトにも掲載中

15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~

深冬 芽以
恋愛
 交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。  2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。  愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。 「その時計、気に入ってるのね」 「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」 『お揃いで』ね?  夫は知らない。  私が知っていることを。  結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?  私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?  今も私を好きですか?  後悔していませんか?  私は今もあなたが好きです。  だから、ずっと、後悔しているの……。  妻になり、強くなった。  母になり、逞しくなった。  だけど、傷つかないわけじゃない。

【完結】京都若旦那の恋愛事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜

藍生蕗
恋愛
大学二年生、二十歳の千田 史織は内気な性格を直したくて京都へと一人旅を決行。そこで見舞われたアクシデントで出会った男性に感銘を受け、改めて変わりたいと奮起する。 それから四年後、従姉のお見合い相手に探りを入れて欲しいと頼まれて再び京都へ。 訳あり跡取り息子と、少し惚けた箱入り娘のすれ違い恋物語

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜

椿かもめ
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。 【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】 ☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆ ※ベリーズカフェでも掲載中 ※推敲、校正前のものです。ご注意下さい

【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない

ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。 既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。 未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。 後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。 欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。 * 作り話です * そんなに長くしない予定です

処理中です...