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交際3ヶ月と1日 来てくれた(シーナの視点)
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その日の夜、森の奥深くシーナのいる家を訪ねる者がいた。
ウィルフィと取り決めた合図ではない。
シーナは体を強張らせ、武器になりそうなものがないか手を這わせて探る。
暖炉の側には火かき棒があるはずだ。
ウィルフィに教えて貰った暖炉の場所まで手探りで進んだ。
そうこうしているうちに、カチッと鍵の開く音が小さく響いた。
「……誰だ。」
音のしたほうへ顔を向け、視覚以外のすべての感覚を研ぎ澄ます。
何も言葉を発しないその人は、カツカツとゆっくり靴音を響かせ部屋の中へと入ってきた。
「ポーラール殿か。」
「……よく分かりましたね、シーナ団長 」
分かるに決まってる。
会議のときはいつも一番最初に席に座って、この靴音が聞こえてくるのを待っていた。
ポーラールのゴムの効いていない固めの靴音が近づく度に、もうすぐ会える喜びに胸を高鳴らせていたのだ。
シーナは自分の目が見えなくなると知って、正直チャンスだと思った。
勇気がなくて今まで話しかけることもできなかった。
でも最後くらい……少しくらいならいい思いをしてもバチは当たらないのでは……??
ポーラールには迷惑な話かもしれないが、もし嫌われてしまってもどうせ自分は姿を消すつもりだ。
目も見えなくなることだし、ポーラールの嫌そうに歪む顔も見なくて済む。
そう思って切り出したのが1ヶ月の恋人提案だった。
「……ポーラール殿はなぜここに?」
「……それはこっちのセリフっすよ。
なんで俺に一言もなく、こんなとこにいるんすか。
俺はシーナ団長の恋人でしょ?」
「……あれは1ヶ月だけという約束だ。
ポーラール殿が俺の相手をする必要はもうない。」
あの1ヶ月はシーナの人生で一番幸せな1ヶ月だった。
目が見えなくなった後の糧にしたくて、ポーラールの笑った顔をたくさん目に焼き付けておこうと思った。
だから、少し悔しかったけど彼の好きそうな女性がたくさんいる店に行った。
喜んでくれると思ったから。
少し胸が痛んだけど彼が一番お気に入りだという恋人に頼んで食事を共にした。
いっぱい笑ってくれると思ったから。
彼が二人で出掛けようと言ってくれたときは嬉しかった。
嬉しすぎて家に帰って少し泣いた。
作った弁当を「旨い」と食べてくれたときはもっと嬉しかった。
作り笑いじゃない笑顔を自分に向けてくれたから。
それから手を繋いでくれた……。
でも、彼の恋人が現れてこの後彼女を抱くのかと想像しただけで……ズキズキ胸が痛くて心臓が潰れてしまうかもと思った。
前まではそんなことなかったのに。
シーナは彼の好みからかけ離れているからどうせ見向きもされないと諦めていた。
なのに、いつの間にか自分は欲張りになってしまったらしい。
あんなに嫌いだったあの行為だって、彼が気持ちよくなってくれるのが嬉しくて初めて自分からしたいと思った。
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