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ユイ視点
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「俺、レンタル彼氏やめようと思ってるんです」
「え?」
「祐樹さんとは個人的に会いたくて。俺と正式に付き合ってくれませんか?」
俺の告白に祐樹さんはびっくりしたのか、目をまんまるに見開く。
「……え、いいの?」
「はい。いつもみたいに連絡してくれれば、すぐに会いに行きますから」
俺の答えに、祐樹さんは一瞬何かを考えた後、小さな声で「わかった」と言った。
その目を見て俺は思った。
あぁ、やっぱこの人は物分かりが良くて助かる、と。
☆
俺の両親は、クソがつくほど真面目で、頭が固かった。
「ゲーム禁止」
「アニメ禁止」
「お菓子禁止」
そんなバカみたいな制約のせいで、俺は子供の楽しみなんてひとつも味わわせて貰えなかった。毎日毎日机に齧り付いて、週6で習い事に通って、楽しいことなんてひとつもない。地獄みたいな日々だった。
だから、その反動だろうか。
上京したことで親の呪縛から解放された俺は、親が選んだ高学歴と言える大学になんてほとんど行かず、とにかく毎日遊びまくった。年上も、年下も、顔が良いらしい俺に寄ってくる奴らを片っ端から味見し、悪い遊びを楽しんだ。勉強なんてくそくらえだし、そんなことしなくたって生きていける。あんな生活になんて絶対に戻りたくなかった俺は、親への当てつけみたいに毎日毎日遊び歩いた。
だけど、そんな生活が親にバレないわけがなかった。
「あなたがこんな子だなんて思わなかった」「何のために厳しく育てたと思ってるの」「あなたみたいなのがうちの子なんて恥ずかしい」そんな電話が毎日親からかかってくるようになり、終いには家にまで押しかけてくるようになった。
そして揉めに揉めた大学2年生の秋、俺はとうとう親に勘当された。その日から俺は生活費どころか住む場所さえ失い、大学費も貰えなくなってしまったのだ。
だけど、そんな状態になっても俺は態度を改めなかった。適当な女を捕まえては養ってもらい、飽きたら違う女の元へ行く。働きもしなければ、大学へも行かない、ヒモみたいな生活を送り続けた。だけど選ぶ女によっては、結婚しろだの、妊娠しただの、だるい展開になることも多くて。そろそろ面倒だから自分で稼ぐか、そう思って始めたのがレンタル彼氏のバイトだった。
山川祐樹という男に出会ったのも、そのバイトの中だ。
それまで女としか会ったことのなかった俺は、内心かなり面倒に思っていた。男相手なんてキモいし、ゲイの扱い方なんて知らない。彼氏ヅラされてベタベタされたら仕事といえどキレてしまうかもしれない。そう思っていた。
だけど、待ち合わせ場所に現れた男は、そんな予想を裏切るようなめちゃくちゃ普通の奴だった。物腰が柔らかくて、謙虚で、本当にデートしに来たのかって思うほど淡白で。ベタベタどころか手すら繋ぎたがらなかった。俺にとってはありがたいけど、デートの内容としてはつまらない。だから一度目のデートが終わった後、コイツと会う事はもうないだろうと思った。
だけど、意外にも会う機会は直ぐに訪れた。あれ以降、男が何故か俺を指名しまくったからだ。多い時なんて3日に1回の頻度で。他の客でもそんな奴はそうそういない。
しかも男は、会ったからといって何をする訳でもなかった。ただ友達と遊びに行くみたいに出掛けるだけ。甘い言葉も過度なスキンシップも望まない。幸薄そうな顔でこちらを見て儚く笑っているだけだ。だからこそ、何故男が高い金を払ってサービスを利用するのかがわからなかった。
だけど、暫く時間が経ってからその理由に気付いた。男は俺に惚れているのだ、と。表情や行動からは分かりづらいけれど、よく見てみれば俺に対する好意が伺える。会う回数を重ねていくうちに、最初よりも段々と元気になっているのがその証拠だ。なんだ、そういう事だったのか。惚れているなら全てにおいて辻褄が合う。
気持ちに気付いてからの俺は、男に甘えまくった。甘えたってのは仕草の話じゃない。主に金銭面での話だ。デートの度にプレゼントをもらい、お小遣いを巻き上げる。男は女みたいに結婚しろとか妊娠したとか言わないし、何ならセックスだってしなくていい。本当にチョロくていい鴨だった。
だけど、そんなクズな生活を半年ほど続けたある日、俺はレンタル彼氏のバイトを辞めることになった。理由は客の女が俺に惚れてストーカーになったから。比較的軽いストーカーだったし、警察沙汰になったことで女も目が覚めたみたいだったけど、俺のバイトを続ける意欲はガタ落ちした。
レンタル彼氏をやめるって事は、収入がなくなるってことだ。別に全く働きたくない訳ではないけど、そこそこ遊ぶ金は欲しい。そこで俺は思いついた。あの男から援助して貰えばいいのだと。あのチョロい男なら面倒ごとも起きないし、会うのだってそこまで苦じゃない。抱けといわれたら抱けなくもない。非常に都合の良い存在だった。
そんな訳で男と付き合い始めたのだが。
付き合ったからと言って、俺たちの関係は今までと大して変わらなかった。何故なら男が俺の意図をしっかり理解していたからだ。付き合ったというのに束縛もしないしセックスも誘ってこない。愛情表現や甘い言葉も欲しがらない。それなのにちゃんと頻繁にプレゼントとかお小遣いを渡してくる。
男は非常に優秀だった。
そんな男の態度に、最初は照れているのかと思った。うぶな成人男性なんてそれはそれでキモいと思ったけれど、見てるうちにそうじゃないことに気付いた。それとなく聞いてみれば、付き合ってきた人数も少なくはないっぽい。
じゃあ何で俺にはしてこない?俺たち付き合ってるんだよな?ただの都合のいい金づるとして扱っていたのは自分の筈なのに、何故かそんな苛立ちが募る。だけど男はいつまで経ってもやっぱり無欲で。ただ儚く微笑んでいるだけ。
家に行ってみれば、部屋も普通。別にそこまで金を持ってる訳じゃないっぽい。なのに俺なんかに貢いでバカみたいだ。こんなことに使うくらいなら、他のことに使えば良いのに……って俺は何を考えてる?金づるなんだからそれで良いじゃないか。
俺は寝ても覚めても男のことばかり考える。
これじゃあまるで俺が男に惚れてるみたいじゃないか。
「え?」
「祐樹さんとは個人的に会いたくて。俺と正式に付き合ってくれませんか?」
俺の告白に祐樹さんはびっくりしたのか、目をまんまるに見開く。
「……え、いいの?」
「はい。いつもみたいに連絡してくれれば、すぐに会いに行きますから」
俺の答えに、祐樹さんは一瞬何かを考えた後、小さな声で「わかった」と言った。
その目を見て俺は思った。
あぁ、やっぱこの人は物分かりが良くて助かる、と。
☆
俺の両親は、クソがつくほど真面目で、頭が固かった。
「ゲーム禁止」
「アニメ禁止」
「お菓子禁止」
そんなバカみたいな制約のせいで、俺は子供の楽しみなんてひとつも味わわせて貰えなかった。毎日毎日机に齧り付いて、週6で習い事に通って、楽しいことなんてひとつもない。地獄みたいな日々だった。
だから、その反動だろうか。
上京したことで親の呪縛から解放された俺は、親が選んだ高学歴と言える大学になんてほとんど行かず、とにかく毎日遊びまくった。年上も、年下も、顔が良いらしい俺に寄ってくる奴らを片っ端から味見し、悪い遊びを楽しんだ。勉強なんてくそくらえだし、そんなことしなくたって生きていける。あんな生活になんて絶対に戻りたくなかった俺は、親への当てつけみたいに毎日毎日遊び歩いた。
だけど、そんな生活が親にバレないわけがなかった。
「あなたがこんな子だなんて思わなかった」「何のために厳しく育てたと思ってるの」「あなたみたいなのがうちの子なんて恥ずかしい」そんな電話が毎日親からかかってくるようになり、終いには家にまで押しかけてくるようになった。
そして揉めに揉めた大学2年生の秋、俺はとうとう親に勘当された。その日から俺は生活費どころか住む場所さえ失い、大学費も貰えなくなってしまったのだ。
だけど、そんな状態になっても俺は態度を改めなかった。適当な女を捕まえては養ってもらい、飽きたら違う女の元へ行く。働きもしなければ、大学へも行かない、ヒモみたいな生活を送り続けた。だけど選ぶ女によっては、結婚しろだの、妊娠しただの、だるい展開になることも多くて。そろそろ面倒だから自分で稼ぐか、そう思って始めたのがレンタル彼氏のバイトだった。
山川祐樹という男に出会ったのも、そのバイトの中だ。
それまで女としか会ったことのなかった俺は、内心かなり面倒に思っていた。男相手なんてキモいし、ゲイの扱い方なんて知らない。彼氏ヅラされてベタベタされたら仕事といえどキレてしまうかもしれない。そう思っていた。
だけど、待ち合わせ場所に現れた男は、そんな予想を裏切るようなめちゃくちゃ普通の奴だった。物腰が柔らかくて、謙虚で、本当にデートしに来たのかって思うほど淡白で。ベタベタどころか手すら繋ぎたがらなかった。俺にとってはありがたいけど、デートの内容としてはつまらない。だから一度目のデートが終わった後、コイツと会う事はもうないだろうと思った。
だけど、意外にも会う機会は直ぐに訪れた。あれ以降、男が何故か俺を指名しまくったからだ。多い時なんて3日に1回の頻度で。他の客でもそんな奴はそうそういない。
しかも男は、会ったからといって何をする訳でもなかった。ただ友達と遊びに行くみたいに出掛けるだけ。甘い言葉も過度なスキンシップも望まない。幸薄そうな顔でこちらを見て儚く笑っているだけだ。だからこそ、何故男が高い金を払ってサービスを利用するのかがわからなかった。
だけど、暫く時間が経ってからその理由に気付いた。男は俺に惚れているのだ、と。表情や行動からは分かりづらいけれど、よく見てみれば俺に対する好意が伺える。会う回数を重ねていくうちに、最初よりも段々と元気になっているのがその証拠だ。なんだ、そういう事だったのか。惚れているなら全てにおいて辻褄が合う。
気持ちに気付いてからの俺は、男に甘えまくった。甘えたってのは仕草の話じゃない。主に金銭面での話だ。デートの度にプレゼントをもらい、お小遣いを巻き上げる。男は女みたいに結婚しろとか妊娠したとか言わないし、何ならセックスだってしなくていい。本当にチョロくていい鴨だった。
だけど、そんなクズな生活を半年ほど続けたある日、俺はレンタル彼氏のバイトを辞めることになった。理由は客の女が俺に惚れてストーカーになったから。比較的軽いストーカーだったし、警察沙汰になったことで女も目が覚めたみたいだったけど、俺のバイトを続ける意欲はガタ落ちした。
レンタル彼氏をやめるって事は、収入がなくなるってことだ。別に全く働きたくない訳ではないけど、そこそこ遊ぶ金は欲しい。そこで俺は思いついた。あの男から援助して貰えばいいのだと。あのチョロい男なら面倒ごとも起きないし、会うのだってそこまで苦じゃない。抱けといわれたら抱けなくもない。非常に都合の良い存在だった。
そんな訳で男と付き合い始めたのだが。
付き合ったからと言って、俺たちの関係は今までと大して変わらなかった。何故なら男が俺の意図をしっかり理解していたからだ。付き合ったというのに束縛もしないしセックスも誘ってこない。愛情表現や甘い言葉も欲しがらない。それなのにちゃんと頻繁にプレゼントとかお小遣いを渡してくる。
男は非常に優秀だった。
そんな男の態度に、最初は照れているのかと思った。うぶな成人男性なんてそれはそれでキモいと思ったけれど、見てるうちにそうじゃないことに気付いた。それとなく聞いてみれば、付き合ってきた人数も少なくはないっぽい。
じゃあ何で俺にはしてこない?俺たち付き合ってるんだよな?ただの都合のいい金づるとして扱っていたのは自分の筈なのに、何故かそんな苛立ちが募る。だけど男はいつまで経ってもやっぱり無欲で。ただ儚く微笑んでいるだけ。
家に行ってみれば、部屋も普通。別にそこまで金を持ってる訳じゃないっぽい。なのに俺なんかに貢いでバカみたいだ。こんなことに使うくらいなら、他のことに使えば良いのに……って俺は何を考えてる?金づるなんだからそれで良いじゃないか。
俺は寝ても覚めても男のことばかり考える。
これじゃあまるで俺が男に惚れてるみたいじゃないか。
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