最強勇者の物語2

しまうま弁当

文字の大きさ
263 / 265
第5章 アグトリア動乱

背後

しおりを挟む
8月14日正午になった。

ビヘイブ要塞の中にあるビヘイブ村の集会所でカスパーが部下達を集めて軍議を行っていた。

カスパーの部下がカスパーに言った。

「カスパー様、一つご提案したき議がございます。宜しいでしょうか?」

カスパーがその部下に言った。

「ああ、構わない。言ってくれ。」

その部下がカスパーに言った。

「現在敵はこのビヘイブ要塞を孤立させるために急ぎ陣地構築を進めております。ヌエド軍が長期戦を想定して兵糧攻めをしようとしているのは明らかかと。敵の陣地が完成すればこのビヘイブ要塞は完全に孤立してしまいます。そうなる前に仕掛けるべきかと。」

カスパーがその部下に尋ねた。

「つまり夜襲を仕掛けようというのだな?」

その部下がカスパーに言った。

「はい。」

カスパーがその部下に言った。

「うむ、よい提案だ。ヌエドに陣地構築に専念させてやる必要もない。今夜にでも夜襲を仕掛けるとしよう。」

別の部下がカスパーに言った。

「問題はどこの陣地を攻撃するかですな?」

カスパーが部下達に言った。

「そうだな、ヴィスパの陣地がいいだろう。すでに土塁を守っている兵士達から情報を集めてある。兵士達の話によればこのビヘイブ要塞の南西側に布陣しているヴィスパの部隊の陣地構築が相当遅れているようだ。狙うならうってつけの場所だろう。」



その部下がカスパーに言った。

「ヴィスパ?確かトリガートの無能市長だったな。」

別の部下がカスパーに言った。

「分かりました、ではヴィスパの陣地に夜襲を仕掛けると致しましょう。」

すると集会所の中にカスパーの部下のルンゲが入ってきた。

そしてカスパーに言った。

「カスパー様?失礼します。」

カスパーがルンゲに言った。

「おおっ、ルンゲか?どうかしたか?」

ルンゲがカスパーに言った。

「カスパー様、現れました。」

カスパーがルンゲに言った。

「そうか!来たか。」

ルンゲがカスパーに言った。

「先ほど南側の土塁より確認致しました。間違いございません。」

カスパーがルンゲに言った。

「報告ご苦労だった、ルンゲ。」

「では失礼致します。」

ルンゲはそう言うと集会所より出ていった。

すると軍議に参加していた部下がカスパーに尋ねた。

「カスパー様?何かあったのですか?」

カスパーがその部下に言った。

「もうすぐここにやって来るようだ。」

その部下がカスパーに言った。

「おおっ!!ではいよいよ?」

カスパーがその部下に言った。

「うむ。」

別の部下がカスパーに尋ねた。

「ではヴィスパへの夜襲は中止致しますか?」

カスパーが別の部下に言った。

「そうだな。よし少し経ったらヴィスパの陣地に攻撃を仕掛ける。人数は少なくて構わない。ただし目立つように攻撃をするんだ。」

部下がカスパーに尋ねた。

「人数を少なく?目立つように?それで宜しいのですか?」

カスパーが部下に言った。

「それでたぶんヴィスパは退却するはずだ。ヴィスパの部隊とヌエド軍を分断できるだろう。」

部下がカスパーに言った。

「了解しました。」

カスパーが部下達に言った。

「我々の役割は可能な限りヌエド軍の注意を前面に引き付けておく事だ。よいな!」

部下達がカスパーに言った。

「はっ!」

カスパーが部下達に指示を出した。

「では出撃の準備を始めてくれ!」

一方その頃ヌエド軍は8月11日に決まった作戦通りにビヘイブ要塞を完全包囲したまま各部隊が陣地の構築に取り掛かっていた。

ビヘイブ要塞の南側にはヴィスパの部隊とメルクンガの部隊とマグリオの部隊が布陣していた。

ヴィスパはビヘイブ要塞の南西側に布陣していた。

そして他のヌエド軍の部隊に比べて陣地構築が遅れていた。

ヴィスパが陣地の中で椅子に腰かけてあくびをしていた。

ヴィスパが部下に言った。

「まったく陣地構築というのは大変な仕事だな。」

するとヴィスパの部下のベギンゴがヴィスパに言った。

「ヴィスパ様、陣地を構築しなくても宜しいのですか?」

ヴィスパがベギンゴに言った。

「ちゃんと構築してるだろう?」

ベギンゴがヴィスパに言った。

「もうみなの作業を終わらせてしまっても宜しいのですか?全然作業が進んでおりませんが?」

ヴィスパがベギンゴに言った。

「朝からの長時間労働でみな疲れている。休息を取るべきだろう。言っておくが作業をする事は許さぬぞ!お前も早く下がって休め!!いいな!!」

ベギンゴがヴィスパに言った。

「はっ!」

その後ベギンゴはヴィスパの陣地の中を見て回っていった。

ヴィスパの陣地ではあちこちで酒宴が催されていた。

「さあ、ウメール酒だ!!飲みまくるぞ!!」

「おーー!!」

ヴィスパの部下達があちこちで羽目を外して大宴会を催しているのだった。

その様子をベギンゴは遠目に見ていた。

「みな食糧が無くなったらどうするつもりなんだ?」

するとベギンゴの隣にライズンという男がやってきてベギンゴに言った。

「ベギンゴ、お前は細かい事を気にしすぎだ。ほら!俺らも飲もうぜ!!」

ライズンはそう言うと陶磁器で作られた大きな酒筒を見せた。

その酒筒にはウメール酒がたっぷりと入っていた。

ベギンゴがライズンに尋ねた。

「そのウメール酒はどうしたんだ?」

ライズンがベギンゴに言った。

「倉庫番の奴から貰ったのさ。」

ベギンゴがライズンに聞き返した。

「貰った?」

ライズンがベギンゴに言った。

「ああ、倉庫からウメール酒を拝借しようと思ってたら、倉庫番の奴が気前よくくれたんだよ。」

ベギンゴがライズンに言った。

「まったく倉庫番のくせに何をやってるんだ!!お前もなにウメール酒をくすねようとしてるんだ?」

ライズンがベギンゴに言った。

「ここ数日暇だからな。ちょこっと作業したらすぐに休憩だろう?だから空いた時間に酒を楽しもうと思ってな。」

ヴィスパは部下達に陣地構築の作業を朝の三十分だけ指示していた。

この日も三十分だけ部下達に穴を掘らせて、そして残りの時間は全て休憩時間としていたのだ。

ベギンゴがライズンに言った。

「朝方にちょこっと作業したら翌日の朝までずっと休憩だ。こんなんで陣地構築が進むはずがない。ヴィスパ様は一体どういうお考えなのだ?」

ライズンがベギンゴに言った。

「あのヴィスパが考えてるわけないだろう?どうせ自分より部下が働き者になるのが嫌なんだろう。だから自分の労働時間に合わせて俺達の作業時間を少なくしてるんだろうよ。」

ベギンゴがライズンに言った。

「やはりヴィスパ様にもう一度掛け合ってこよう。」

ライズンがベギンゴに言った。

「余計な事はすんなよ?毎日ちょっと作業するだけであとは残り時間全部のんびりできるんだぞ?このままでいいだろうが?すげえ楽だろうが?」

ベギンゴがライズンに言った。

「うーん、確かにそうだな。」

ライズンがベギンゴに言った。

「だろう。どうだ?どっちが酒が強いか勝負しないか?」

ベギンゴがライズンに言った。

「ほう、面白そうだな。」

すると一人の男が話に割り込んできた。

「俺も混ぜてくれ。」

ライズンが振り返るとその男に言った。

「お前は倉庫番をしてた奴だよな?こんな所にいていいのか?」

倉庫番の男がライズンに言った。

「別にいいさ?何の指示も受けてないからな。それにみんな遊んでるのに、なんで俺だけ仕事しなきゃならないんだ。」

ベギンゴが倉庫番の男に言った。

「おいおい、お前ちゃんと仕事をしろよ!!」

倉庫番の男がベギンゴに言った。

「だから何の指示も受けてないんだよ。」

ベギンゴが倉庫番の男に尋ねた。

「どういう事だ?」

倉庫番の男がベギンゴに言った。

「何をどれだけ渡すっていう指示が出てないんだよ。食料1日どれだけ渡すかも決まってない。だから取りに来た連中が希望する分は全部渡してるんだよ。」

ベギンゴが倉庫番の男に言った。

「おいおい、それじゃあ倉庫番を立ててる意味がないだろう?」

倉庫番の男がベギンゴに言った。

「そう思うだろ。だから、倉庫番なんてやらなくてもいいんだよ!だから俺も混ぜてくれ!」

ライズンがベギンゴに言った。

「ベギンゴ?別にいいんじゃないか?それとも自分達だけ遊び呆けておきながらこいつにだけ仕事しろなんて言うつもりか?」

ベギンゴがライズンに言った。

「それもそうだな!分かった。」

ライズンが言った。

「よし!それじゃあ三人で酒飲み勝負だ!!」

倉庫番の男が言った。

「よし!そうこなくちゃ!!負けねぞ!」

一方その頃ヴィスパは1日の仕事を終えて就寝しようとしていた。

「よし、今日も私はしっかり仕事をした。この中で誰よりも働いた。誰よりも汗をかいた。私はとても頑張った。では寝よう。」

ヴィスパはそう呟くと横になって眠りについた。

午後1時になった。

ヴィスパの寝ている所にベギンゴがやって来た。

そして大きな声で言った。

「ヴィスパ様!!大変です。」

ヴィスパは起き出して不機嫌そうにベギンゴに言った。

「ええい!!騒がしいぞ!!」

ベギンゴがヴィスパに言った。

「敵の奇襲です。敵が攻めて来ました。」



ヴィスパが驚いてベギンゴに言った。

「なんだと!!」

するとヴィスパがベギンゴに指示を出した。

「引くぞ!!」

ベギンゴがヴィスパに聞き返した。

「はっ?」

ヴィスパがベギンゴに大声で言った。

「退却だ!!退却!!後ろに下がれ!!」

そしてヴィスパは飛び起きて外に出ると、外につないでいた馬に股がり後方へと逃げていってしまった。

油断していたヴィスパの部隊は大混乱に陥った。

そしてヴィスパの部下達は武器や防具もその場に棄てて、大慌てでヴィスパの後を追って後方に退却していった。



ヌエド軍の陣地構築を妨害するためにカスパーが少数の部隊で奇襲攻撃を仕掛けたのだった。

ヴィスパはこれにど肝を抜かして自分の部隊を後方に退却させてしまったのだった。

この報を聞いたヌエド軍の諸将は驚いた。

ビヘイブ要塞の西側にはブリンガフの部隊が布陣していた。

ブリンガフはこの報を聞いて激怒していた。

「何?あのお溶ろけが敵の奇襲にビビって後退しただと!」

ブリンガフの部下がブリンガフに言った。

「はい!ヴィスパ殿の部隊は南に退いたようです。」

ブリンガフが部下に尋ねた。

「それで敵の規模は?」

部下がブリンガフに言った。

「およそ50人くらいと思われます。」

ブリンガフが部下に言った。

「はあ?!!あいつは三千人を率いてるんだぞ!!50人の奇襲に三千人がビビって逃げたってのか?」

部下がブリンガフに言った。

「どうやらそのようです。」

ブリンガフが大声で言った。

「あのお溶ろけ!!包囲網に大穴を空けやがって!!どれだけ足を引っ張れば気が済むんだ!!本当に何の約にも立たねえじゃねえーか!!」

一方こちらはマグリオの部隊である。

マグリオの部隊はビヘイブ要塞の南東側に布陣していた。

マグリオもこのヴィスパの退却の報を聞き驚いていた。

「なんだと?敵の奇襲によってヴィスパ殿が南に退却しただと!」

部下がマグリオに言った。

「どうやらそのようです。」

マグリオが部下に言った。

「まずいな。ヴィスパ殿が布陣していた場所に穴があいてしまったな。すぐに塞がねばならんが。」

すると別の部下がマグリオに言った。

「メルクンガ殿より使者が来ております。」

マグリオが部下に言った。

「うむ分かった。通してくれ。」

すぐにマグリオの所にメルクンガからの使者が通された。

メルクンガからの使者がマグリオに言った。

「我らはヴィスパ殿の布陣していた場所の埋めるために陣を西に移動させております。ただヴィスパ殿が布陣していた場所には陣地構築をした様子がなく、堀も柵も設けていないようです。メルクンガ様は自分の部隊だけではこれを維持するのは厳しいとお考えです。マグリオ様にもどうかご協力をお願いしたいとの事です。」

マグリオがメルクンガからの使者に言った。

「ほう、メルクンガ殿はもう動かれたか。あい分かった。メルクンガ殿と共に我らも西側に陣を広げる。あと私の方からヌエド様に加勢をお願いしておこう。そうメルクンガ殿にお伝えくだされ。」

メルクンガからの使者が頷いて言った。

「はっ!」

そしてそのまま外に出て行った。

そしてマグリオはすぐにヌエドに使者を送った。

使者を送った理由としてはビヘイブ要塞の南側を抑えるにはメルクンガの部隊とマグリオの部隊では抑える人数が不足していた。

この時メルクンガの部隊は1300人であり、マグリオの部隊に至っては千人を切っていた。

両部隊を足しても2300人にも届かなかった。

ビヘイブ要塞の南側の土塁をカバーするのは人数が足りなかった。

特にメルクンガの部隊はヴィスパの部隊が陣地構築を行っていない場所をカバーする必要があったため、マグリオよりも人数を必要としていたのだ。

こちらはヌエドの陣地である。

ヌエドはビヘイブ要塞の東側に陣地を構えていた。

ヌエドの元にマグリオからの使者がやって来ていた。

マグリオからの使者がヌエドに言った。

「ヴィスパ殿が布陣していた場所を埋めるべくメルクンガ殿の部隊が陣を西側に伸ばしております。ですがいかんせん兵力が不足しており援軍をお願いしたいとの事です。」

ヌエドが使者に言った。

「そうだろうな、メルクンガ殿とマグリオの部隊だけでは南側を全て押さえるのは厳しいだろう。分かった。俺の直属部隊からメルクンガ殿に千人を加勢に向かわせる。そうメルクンガ殿に伝えてくれ!」

使者がヌエドに言った。

「はっ!ありがとうございます。」

するとヌエドが別の部下に言った。

「すまぬが、ヴィスパ殿の所に行ってくれぬか?」

ヌエドの別の部下がヌエドに尋ねた。

「はっ!了解しました。それでなんとお伝えすれば?」

ヌエドが部下に言った。

「すぐに持ち場に戻られよと。」

ヌエドはメルクンガの部隊に千人の援軍を送った。

これはビヘイブ要塞を囲む包囲網を崩壊させない為である。

南西側に布陣していたヴィスパの部隊三千人が抜けてしまった事は、他の部隊に大きな負担がかかる事になった。

だが他の部隊も兵数に余裕のある部隊は少なかった。

そして唯一余裕があるのがヌエドの直属部隊だけであったのだ。

ここまで穴を塞ごうと急いだ理由はドロメ盗賊軍にヴィスパが空けた穴から浸透させないためであった。

そして午後2時になった。

するとカスパーの部隊が土塁を越えて再び攻撃を仕掛けてきた。

こちらはメルクンガの陣地である。

メルクンガの元に部下がやって来ていた。

メルクンガが部下に尋ねた。

「どうした?」

部下がメルクンガに言った。

「ドロメの攻撃にございます。ヤーグ様の所に敵が集中攻撃を仕掛けてきております。」

メルクンガの部下の一人であるヤーグからの救援要請であった。

この時メルクンガの部隊はかなり長さの場所に分散して布陣していた。



メルクンガが部下に言った。

「来たか、それで敵の数は?」

部下がメルクンガに言った。

「およそ八百です。」

メルクンガが部下に言った。

「となると敵の狙いは一点突破か。」

部下がメルクンガに尋ねた。

「いかがいたしますか?」

メルクンガが部下に言った。

「ヌエド様の援軍が到着しだいそちらの救援に向かう。ヤーグにはそれまで何としても持ちこたえよと伝えてくれ!」

「はっ!」

メルクンガの部下はそう言うと走っていった。

そのすぐ後にヌエドからの援軍千人が到着すると、メルクンガ自ら援軍を率いてヤーグの元に救援に向かった。

ヤーグの部隊は突破される寸前だったが、メルクンガの救援が間に合い突破を阻止する事ができた。



だがカスパーの部隊はメルクンガが救援にきた後も激しい攻撃を続けていた。

メルクンガが言った。

「ドロメもなかなか諦めが悪いな!」

そこにメルクンガの部下が報告にやって来た。

「どうした?」

部下がメルクンガに言った。

「ヴィスパ殿です。ヴィスパ殿の部隊が戻ってきた模様です。」

メルクンガが部下に尋ねた。

「何?本当か?」

部下がメルクンガに言った。

「はっ!ヴィスパ殿の部下達が続々こちらに向かって来ております。」

メルクンガが部下に言った。

「これでドロメも引き上げざるおえまい。」

この報を聞いたメルクンガは喜んでいた。

だがその期待は裏切られる事になった。

突然たくさんの矢がメルクンガの部下達の頭上に降り注いだのだ。

突然後ろから飛んできた矢に対応する事ができずに、メルクンガの部下達が次々と倒れていった。

そして後方からたくさんの兵士達がメルクンガの部隊にむけて走ってきた。

その兵士達は手に持った武器でメルクンガの部下達に次々と襲いかかってきた。

メルクンガの部下達は突然の事に対応できず、一方的にその兵士達に倒されていった。

メルクンガ自身も例外ではなかった。

すぐに所属不明の兵士達が襲いかかってきた。

メルクンガも槍を奮って戦った。

メルクンガが大声で言った。

「一体どうなっている?こいつらどこから現れたんだ?まさかヴィスパ殿が裏切ったのか?」



メルクンガは何が起こったか訳もわからずに防戦するしかなかった。

後方よりやって来たのはヴィスパの部隊ではなかった。

ドロメ盗賊軍の部隊が後方より攻撃を仕掛けてきたのだった。

だが挟撃される形となったメルクンガの部隊は一気に大苦戦に陥った。

前方のカスパーの部隊に加えて、後方からも攻撃を受ける形となり、メルクンガの部下達は次々に倒されていった。

そしてすぐに壊滅まで追い込まれてしまった。

メルクンガ自身は何とか防戦に徹しながら戦っていたが、すでに周囲にいた部下達は倒されて取り囲まれていた。

だがメルクンガはたった一人で、槍で勇猛に戦い取り囲んだ兵士達を近づけさせなかった。

逆に取り囲こんだ兵士達の方が尻すごんでいた。

メルクンガが槍を振りかざしながら大声で言った。

「このメルクンガ!簡単に倒せると思うな!」

すると大柄で全身鎧と兜を身に纏った兵士がメルクンガの前に現れた。

その兵士は顔を兜で覆っており、顔を見ることはできなかった。

そしてその甲冑の兵士が大きな声で他の兵士達に言った。

「おい!こんな奴ぐらいさっさと倒せ!!」

この様子を見ていたメルクンガがその甲冑の兵士に言った。

「ほう、そなたこの私を倒す自信があるようだな?」

甲冑の兵士がメルクンガに言った。

「自信はあるが、俺様は強い奴と戦うのは嫌いなんだよ。」

すると甲冑の兵士が懐から何かを取り出した。

それは紫色の鮮やかな紋様が描かれた布だった。

メルクンガは慌ててその布から目をそらした。

甲冑の兵士が大きな声でメルクンガに言った。

「おいおいメルクンガ!!瞬時に麻痺手巾(まひしゅきん)から目をそらすとか勘弁してくれ。俺様の面倒が増えるだろうが!!」

だがメルクンガはすぐにふらつき始めそのまま倒れ込んでしまった。

すると甲冑の兵士が大きな声で言った。

「ったく驚かせるじゃねえよ。ちゃんと効いてるみたいだな。」

メルクンガは麻痺手巾(まひしゅきん)の効果によって全身が痺れてしまい、動けなくなってしまった。

麻痺手巾(まひしゅきん)は魔道具の一つで、布の紋様を見た相手を麻痺させる効果を持っていた。

すると体を動かせないメルクンガがその甲冑の兵士に言った。

「ど、どうやらこの私を知っているようだが?」

だか甲冑の兵士は何も言わずに剣を鞘から取り出した。

そして甲冑の兵士がメルクンガの脇腹を突き刺した。

メルクンガが悲痛な声をあげる。

「ぐはっ!!」

そしてもう一回メルクンガの脇腹を突き刺した。

メルクンガが悲痛な声をあげた。

「ぐあっ!」

するとさきほどまで黙っていた甲冑の兵士がようやく話を始めた。

甲冑の兵士がメルクンガに言った。

「俺様の事ならテメエも良く知ってるはずだぜ!!」

すると甲冑の男が着ていた兜を脱いだ。

メルクンガがその甲冑の男の顔を見て驚いて言った。

「お前はグロッケン!!そうかそういう事か!!」



するとグロッケンがメルクンガの胸に剣を突き刺した。

メルクンガが悲痛な叫びをあげた。

「ぐは!」

そしてメルクンガは息絶えた。

グロッケンは再び兜を付けると部下達に指示を出した。

「おい、お前らはここに残ってメルクンガを土の中に埋めておけ!残りの連中は俺に続け。あっちにいる部隊に攻撃を仕掛けるぞ!!」

周りにいた部下達がグロッケンに言った。

「はっ!グロッケン様。」

グロッケンが部下達に言った。

「おい!俺の名前を呼ぶな!!分かったな!」

部下達がグロッケンに言った。

「はっ!申し訳ございません。」

グロッケンはそう言うとマグリオの部隊に向かっていった。


時間が戻り8月2日の午後2時頃ビヘイブ村の集会所である。

集会所の奥にある部屋でカスパーとグロッケンが話していた。

グロッケンがカスパーに尋ねた。

「何?ビヘイブからメロポリに主力を動かすだと?」

カスパーがグロッケンに言った。

「そうだ。ヌエドはまず威力偵察の為の部隊を出すはずだ。まずビヘイブにてその部隊と交戦する。そしてその偵察部隊を撃退したらすぐに三千人をメロポリ村に移動させて伏せておく。残りの千人でビヘイブに籠城してヌエドを迎え撃つ訳だ。」





グロッケンがカスパーに言った。

「それで?」

カスパーがグロッケンに言った。

「恐らくヌエドはこのビヘイブを包囲するはずだ。時期を見計らってビヘイブに主力を戻らせる。恐らくヌエドはビヘイブの要塞に対してしか備えを行っていないはずだ。そこをビヘイブの駐留部隊と主力とで挟み撃ちを行う。主力は後方からヌエド軍を攻撃してもらう。恐らくこれで勝利できるだろう。」





グロッケンが訝しげにカスパーに言った。

「そんな手うまくいくのか?」

カスパーがグロッケンに言った。

「この策が一番有効であると私は考えている。」

グロッケンがカスパーに言った。

「だったら何の為にこのビヘイブに要塞を築こうとしてるんだ!!三千人もメロポリ村に移動させるなら、そんな要塞そもそも要らないだろうが!」

カスパーがグロッケンに言った。

「そうだな。千人で籠城するだけなら確かにここに大きな要塞を造る意味はない。だがヌエドの大軍を釘付けにできるのならば、造る意味は充分にあるんじゃないか?」

グロッケンがカスパーに言った。

「つまり要塞をエサにしてヌエドを釘付けにしようって事か?」

カスパーがグロッケンに言った。

「その通りだ。新しく造られた要塞を見れば、当然そこに籠城するために造ったとヌエドは考えるだろう。そのうえで、偵察に来た部隊に全軍がビヘイブに籠っている所を見せれば、ヌエドはこちらの全軍がビヘイブに籠城していると信じ込むはずだ。」


グロッケンがカスパーに言った。

「おいおい!千人で籠城してヌエドの大軍を迎えうつてか?そんなもん死ににいくようなもんじゃねえか。ヌエドが総攻撃をしてきたら全滅は確実だぞ!」

カスパーがグロッケンに言った。

「確かに総攻撃をされれば全滅してしまうだろうな。だが恐らくヌエドは総攻撃をしてこないはずだ。」

グロッケンがカスパーに尋ねた。

「なぜそう思う?」

カスパーがグロッケンに言った。

「ヌエドは軍略を理解している。そして良識家でもある。味方にたくさんの死者がでる選択は極力選ばないはずだ。強固な要塞に対して力攻めを行えば大きな犠牲が出ることぐらいヌエドなら理解しているだろうからな。」

グロッケンがカスパーに言った。

「つまりヌエドの常識につけこもうって訳か?」

カスパーがグロッケンに言った。

「その通りだ。」

グロッケンがカスパーに言った。

「総攻撃をしてこないとしても千人でヌエド大軍と対峙するのが大変な事に変わりないだろうが?いいか!!俺様は絶対に残らないからな!!」

カスパーがグロッケンに言った。

「もちろん、分かっている。私がビヘイブに残るつもりだ。その心配はしなくていい。」

グロッケンは納得できない様子でカスパーに言った。

「ふーん?」

カスパーがグロッケンに尋ねた。

「聞きたい事はそれだけか?」

するとグロッケンがカスパーに尋ねた。

「いやカスパーもう一つ聞かせろ?今このドロメ盗賊団でまともに動けるのはこの俺だけだ。テメエがここに残るって事はさては主力を連れていく役目を俺にやらせるつもりだな?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...