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2話 理不尽な勇者
しおりを挟むそしてガイボルスはいつも通りに俺への罵倒を続けた。
「はん、もちろんこれだけじゃない。これだけでもFランクお前が役立たずだって証明するには十分だが、ほかにもまだ理由はある。」
「Fランク、お前はライオスから与えられた雑用の仕事をちゃんとこなしていない。」
魔法使いのナスタークが俺に言った。
「ガイボルスの言う通りだ。ライオス様はFランクごときでも俺達勇者パーティーの雑用ぐらいならできるだろうと思って雑用を任されていたのだぞ。まさか誰でもできるはずの雑用すらまともにこなせないとは論外だろうが!!」
ブルムットも俺に畳みかけてくる。
「本当にとんでもない野郎だぞ、Fランクお前は!!名前の通りFランクの役立たずなんだからな。その役立たずぶりには驚きを禁じえない!!まさか誰でもできるはずの雑用すらこなせないなんて思わないぞ。」
「いいかFランク!!お前は雑用すら満足にこなせないゴミの中のゴミ、最底辺であるEランク以下の冒険者!!Fランクなんだよ!!」
俺的にはアイテム調達から戦略立案まで手を抜いていた事は一度もないんだが。
まあそういう事をちゃんと評価してくれる人間ではないというのは分かってはいるが。
俺が正しい事をしていようが何をしていようが、いつも俺は罵倒され続けたのだから。
いつも通りの辛辣な罵倒がガイボルスやブルムットやナスタークから続々出てきた。
「おまけにFランク、テメエは戦闘でも役立たずときてるんだからな。」
「ライオスから戦闘に参加するなと命令されているから俺は魔物との戦闘に参加していないだけだ。参加していいのならいくらでも参加する。」
「ふざけた事を言ってんじゃんねえぞ!!雑用だけでこれだけ足を引っ張ってやがるんだ。Fランクお前に戦闘なんかに参加させたらこのパーティーが速効で全滅しちまうだろうが!!」
「全くだ雑用もこなせないFランクが戦闘なんてできる訳ないだろうが!!Fランクなんざみすみす魔物に殺されるだけだろうが!!」
「その通りだ、テメエが勝手に死ぬのは構わねえが俺達まで巻き添えになるんだぞ!!ふざけた事を言ってるんじゃねえぞ!!」
「Fランク!!このガイボルスの銅像の横にテメエなんぞの銅像を置くなんて絶対に許さねえからな!!ライオスと並んで銅像にしてもらうのは誇らしいかぎりだが、Fランクテメエみたいな俺達の足をひっぱるしかできない野郎と並んで銅像にしてもうなんて絶対にごめんなんだよ!!」
「全くだ、Fランクみたいな役立たずが勇者パーティーの一員だったというだけでもとんでもない汚点なのに、このブルムットの銅像と一緒にFランクの銅像なんか並べられたらたまったものではないわ!!貴様なんかがこのブルムットと肩を並べていいわけないだろうが!!テメエなんざ銅像にしてもらう価値もないFランク野郎なんだよ!!無価値な自分の身の程をちゃんと弁えろ!!」
「ねえみんな、もう止めてあげて。クリードがかわいそうだよ。」
見かねたミリーが俺を庇ってくれたのだった。
俺を勇者パーティーに推薦してくれたのは他ならぬミリーだった。
勇者パーティー内では俺の罵倒はいつもの事ではあったが、ミリーだけは俺を対等な仲間として接してくれていた。
ライオス達は俺の事をFランク以下の冒険者とよく言ってくるが、そもそも俺は冒険者ギルドに登録していないので、冒険者ですらない。
なぜ俺がFランクという蔑称で呼ばれているかといえば、パーティーに加入した時に俺の顔を見るなり、ライオスがお前みたいな無能はきっとEランク以下の冒険者に違いないと無茶苦茶を言われてそれ以降ずっとEランク以下の無価値な冒険者という意味でFランクの蔑称が続いているだけだった。
俺はライオスに聞いた。
「パーティーメンバーの決定権はライオスにある、だからライオスが出て行けというのなら俺はそれに従うしかない。」
「分かってるじゃないか、Fランク!!テメエの居場所なんざここには最初からなかったんだよ。今さら後悔した所で遅い。」
いや悪いが全く後悔はしていないぞ。
正直ライオスが俺を追放すると宣言してくれて俺はむしろ嬉しくすら感じていた。
なにせライオス達の罵倒の嵐を聞かなくて済むようになるのだから。
そう思うととても気楽になってきて、色々とライオス達に聞きたくなっていた。
「なあライオス、お前は俺の事を見下していたようだがそれはやっぱり俺は仲間としては見ていなかったという事か?」
すると案の定ミリー以外のメンバーが大笑いを始めたのだった。
「な、仲間?」
「Fランク、お前今なんて言った、まさか仲間って言ったのか?」
「身の程知らずとはまさにこの事だな。」
ライオスが俺に言った。
「Fランク、お前まさか自分がこのライオス様の仲間だと思ってやがったのか!!」
まあ別にライオス達が俺を見下しているのはとうの前に分かっていた事であったがこの際聞いてみる事にしたのだ。
「Fランク!!とんでもない勘違い野郎だ、テメエは!!テメエはもちろん俺達の仲間じゃねえ!!」
「いいかこのライオス様はとても優れた能力を持っている人間なんだ。そしてFランクお前は、そこらの地べたを這いずり回っているたくさんの無価値なゴミ共と一緒なんだよ。お前は世界を埋め尽くしている無価値なゴミ共の一人なんだよ。テメエはそっち側の人間なんだよ!!一方のライオス様は優秀で価値のある人間なんだ。このライオス様と共に戦うメンバーは当然優れた人間でなければならないんだ。」
「つまりライオス、やはりお前はおれを最初から仲間として見ていなかったのか?」
「当然だ、最初からお前は仲間じゃなかったよ!!お前は仲間じゃなくてずっと奴隷でしかなかったんだよ!!地べたを這いずり回っている無価値で低能なゴミ共でも奴隷ぐらいなら務まると思ってな。それで奴隷として使うためにFランクお前を呼んだってわけだ。分かったか、Fランク!!Fランクお前はライオスの仲間ではなくライオスの奴隷だったんだよ!」
俺はかなり呆れていた。
予想通りの言葉ではあったが、よくもまあこんな事を口に出せるものだと思ったからだ。
ライオス達は構わず続けた。
「いいか、ブルムッドもガイボルスもこのナスタークも勇者パーティーに入れて当然の優秀な人間であるという事だ。そこらへんにうじゃうじゃいる低能で無価値なゴミ共ともは本質的に違うのだ。」
「そうだ、俺達はライオスのパーティーにふさわしい人間なのだ。」
「ぎゃはっはっは!!Fランク!!お前はこの世界に溢れている無価値なゴミ共の一人なんだよ。だからお前が雑用を命じられるのも、仲間として扱われないのも当然の流れなんだよ!!もう笑っちまうぜ。Fランク、テメエみたいな無価値なゴミが俺達の仲間なわけないだろうが!自分が奴隷という最低限の役割すら認識してないとはな。いやー、うける。」
「いいか!!このライオス様の言葉をよーく覚えておけ、Fランク。お前みたいな無価値なゴミはこの世界に山ほどいるんだよ。俺達みたいな優秀な人間っていうのは希少種なんだよ!!だから特別扱いされて当然でありお前らみたいな地べたを這いずり回っている連中は冷遇されて当然なんだ!!」
「Fランク、分かったらとっとと出て行け!!このライオス様の慈悲としてFランクてめえに預けているアイテムはテメエにくれてやる!」
ミリーだけは俺に優しく言ってくれた。
「クリード、私はそんな事全然思ってないよ。今だってクリードは大切な仲間だと思ってる。」
「ねえみんなお願いクリードを追放するなんてやめてあげて、クリードがいなくなったら私達困ってしまうわよ?」
「ミリー、何を言っているんだ。このFランクが出ていけば、全てがうまくいくようになる。」
「そうだブルムットの言う通りだ、Fランクこそがトラブルメーカーなんだ。そんなFランクをこのまま置いておいたこの先どんな迷惑をかけられるか分かったもんじゃないぞ。」
「みんなお願い、そう言わずにクリードの話を聞いてあげて。」
俺はミリーに言った。
「ありがとう、ミリー。でももういいよ。俺はこのパーティー出て行く。」
庇ってくれたミリーには悪かったけど、身勝手極まりないライオス達とこれ以上一緒にいなくていいと考えるとむしろ早く出て行きたくすらなっていた。
もう魔王クレスタの討伐が終わったのだから、ライオス達のひどい罵倒を我慢する必要はもうないのだから。
「Fランク、お前のような無価値な人間は自分の身の程をわきまえて当然なんだ。もう俺様のパーティーメンバーからも除外した。さっさと出て行け。」
ミリー以外のメンバー達が俺に罵声を浴びせてくる。
「Fランク!!良かったな!!勇者パティーから追放されて。俺はとっても嬉しいぞ!!」
「いい気味だ!!テメエみたいなEランク以下の冒険者はとっとと出て行け!!」
「Fランク、お前は追放されて当然のゴミ以下の冒険者なんだよ。それをちゃんと心に刻んでおけ!!」
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