【第三幕完結】奴隷から王になった少女が紡ぐ物語

香口 深衣

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第ニ幕

第一章 雨と疫病

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  雨が降り続いて、もう何日目だろうか。数えることも飽きてしまい、退屈で何度目かのため息が出る。

 気だるさもあり、机の上に突っ伏して、本棚に置かれた本の背表紙を眺める。様々な本が置かれているが、読めないものが多い。

 字は覚えたのだが、単語をまだ覚えきれていないのだ。だから、難しい本はひとりでは読めない。

―今度また、隆盛に教えてもらおう。

 そんなことを考えていると、扉が叩かれた。声をかけて入ってきたのは、綾さんと隆盛だった。

 今日は高等官を集めた会議だと聞いていたが、何かあったのだろうか、二人とも難しい顔をしている。

「どうしたの?」

「東刃で病が流行っているようだ。」

「疫病?」

「ああ、そのようだ。」

 隆盛の言葉に私は不安を感じた。それが分かったのだろう、隆盛は大丈夫だと私に笑って見せる。

「もうすでに、隔離の段階だ。この鬱陶うっとうしい雨が終わる頃には、終息するだろう。」

 隆盛の言葉は、いつも私を安心させてくれる。彼の言葉に嘘はなく、物事はいつも言葉の通りになっていた。

  今回も、彼の言葉通りに雨の時期が終わる頃に、病が終息したとの知らせが入った。

「今は、各家を兵士が見てまわっていると報告があった。」

 隆盛の言葉に、私はホッと安堵の息をもらす。でも、隆盛の表情は明るくない。

「厳しいのはこれからだ。経済が最悪な状態だからな。どうやって回復を図るか…」

「…難しい?」

「あ、ああ。そうだな。」

 再び難しい顔をして悩む隆盛だったが、私を見ると彼は微笑み、ポンと頭に手を置く。

その大きな手は、まるで私を包み込んでくれるように温かい。

「大丈夫だ。俺がいるんだ。そう簡単に国を傾けたりはしない。」

「どうするの?」

「まずは現状の把握だな。数日空ける。」

「隆盛!」

突然の言葉に、綾さんが血相を変える。

「今回は、正式な訪問をするつもりだ。」

「まだ疫病が、完全に治まっていない可能性だってあるのですよ!」

「綾は心配性だな。もう民も自由に、外出してる段階だと聞いている。問題なかろう?」

「ですが、わざわざ羅芯らしんの王が行く必要はないでしょう?」

「たいく・・・じ、自分の目で見てきたいのだ。」

「今、退屈と言いかけませんでしたか?」

 綾さんに鋭く睨まれて、ぶんぶんと大きく首を左右に振る隆盛の額から、一筋の汗が流れている。

「隆盛、私も連れて行って。」

「雪はダメだ。」

「えーなんでー。」

「そう、ふて腐れるな。いつもと違って国の状況が芳しくないから、治安が良いとはいえないんだ。だから、今回は留守番してなさい。」

「…隆盛だけずるい。」

「仕方ないだろ。これは遊びじゃないんだ。」

退屈しのぎに行こうとしている人の、言葉じゃないよ。と、私は心の中だけで思ったのだった。
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