うり坊、浄化で少女になった

秋の叶

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村の居候

呼び出しの魔道具

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 持参していたおにぎりを食べてから帰る準備をする。
 現代日本と違ってびっちり授業はしないらしい。
 遠方から来る人もいるので、三つの授業を受けたら、お昼ご飯を食べて終了になる。
 冬だと日が沈むのが早いものね。

 子供達用の玄関に向かうと、裁縫の先生に声を掛けられる。
「しのさん、ちょっとこちらに寄ってもらえますか?」
 先生が持っていた布に型を描く事になった。
「今ある布がこれしかないので、二種類だけお願いしたいの。」
 ビキニタイプとボクサータイプを試したいそうなので、先生が席を外している間に型を転写した。
 戻ってきた先生に渡し、今日縫い上げたパンツを見せながら縫い代の話をする。
 初めての品なので、私と同じような縫い方をするそうだ。
 ついでなので、尿漏れなどの際にも安心して使える品だと力説した。
 これで男女共に必要な品だと知ってもらえたら嬉しい。

 先生との話が終わって玄関に向かうと、子供は誰もいなかった。
 一人で村に向かって歩くと、女の子が少し先の道に立っていた。
 同じ教室の子だったかな?
「しのさん、途中まで一緒に帰りませんか?」
 どうやら待っていてくれたらしい。いや、待ち伏せ?
 こくりと頷いて聞く。
「同じ教室の人ですか?」
「うん、私ミヨって言うの。宜しくね。」
「よろしくお願いします。」

 私が追い付いたところで一緒に歩き出す。
「先生の所でさっき作っていた物の話をしてきたの?」
 学び舎を出るのが遅かったので、予想していたらしい。
「そうなの。今ある布に二種類だけ型を描いてきたから、先生も作ってみるらしいよ。」
「へぇ。・・・ねぇ、私も布を持ってきたら、型を描いてもらえるかな?」
「良いですよ。もし、薄い板があったら、それに書いておけば、何枚でも自分で作れると思うけれど、まずは試してみないと分からないよね。」
「うん。」
「皆が作っているのは浴衣なの?」
「寝間着よ。長く着られるように大きめに作りましょうって。寝間着が縫えるようになったら、厚みのある着物や洋装も縫えるようになるから。」
「そうだったのね。まだ小さいのにちゃんと縫っていて偉いなぁ。」
 しみじみ言うと、ぷぷっと吹き出す声が聞こえる。
「小さいって・・・私達同じ年じゃない。ふふふっ・・・あはは。」
 堪えきれなくなったようにミヨが笑い出す。
 そうでした、今は同じ年でした。
「そうだね。ふふっ。」

 町を出たところで分かれ道になり、手を振ってミヨと別れる。
「初日で友達が出来たって事かな?」
 ちょっと嬉しくなりながら歩く。
「あ、町にある塀の魔道具にも魔力を入れたいかも。」
 近くにいた人に場所を聞いて、魔力を入れてから村に向かった。
 

 徒歩で二時間くらいって言ってた気がするから、身体強化の魔法を練習しながら歩こうかな。
 強化した身体で歩いて行くと、前方に男の子たちの姿が見えた。
 下校中の男子って目に見えない何かと戦って帰ったりするよね。
 そんな記憶を思い出すような光景が見えた。

 通り過ぎようとしたら声を掛けられる。
「あ、教室に来た新人だ。」
「本当だ。新しく村に来た人だ。」
 立ち止まって会釈をし、また歩き出そうとしたら引き留められた。
「ちょっと待てよ。お前走ってきたのか?」
「いえ、生活魔法の身体強化で歩いてきたのよ。」
 それを聞いてどよめく男子達。
「え、走っていないけど追い付いたのか?どうやって?」
 話を聞いていなかったのか、脳内で理解するまでに時間がかかるのか、とりあえずもう一度同じ言葉を繰り返す。
「生活魔法の身体強化で歩いたのよ。」

 男子達は口をぽかんと開けて驚いていた。
「どうやってやるんだ?」
 目をキラキラさせながら聞くので、足やお尻それに背中の筋肉を魔法で強化して歩くと伝えると、其々がぶつぶつと口の中で言い出す。
「筋肉が痛くなったりするかもしれないから、気を付けてね。」
 そう言い残して先に歩いた。
 後ろから『ずるい』と聞こえたけれど、私自身も練習中だ。
 体力をつける事も兼ねて、しっかりと歩きたいと思う。


 帰宅するとマサとキヨが驚いていた。
「しの、帰ってくるのが早かったな。もしかして具合が悪くて暇をもらって来たか?」
 暇をもらってくる、つまり早退したのか聞かれたので、ふるふると首を振って説明する。
「ちゃんと勉強してきたし、具合も悪くないですよ。身体強化を使って歩いたら、ちょっと早く着いただけなので。」
 それを聞いて安堵した様子を見せる二人。
「ほぉ、身体強化で歩いたのか。魔法の使い方が上手だなぁ。」
「そうだねぇ、掃除で洗浄する時も家ごと洗浄しているものねぇ。」
「イチも豪快に魔法を使っていたが、しのもだなぁ。」

 ・・・え?ちょっと待って?
 豪快に使っていないよね?適度に使っていたと思うんだけど、違うの?普通ってどんな感じ?
 これからは他の人の魔法を観察しなくちゃ。
 内心冷や汗をかきながら、部屋に荷物を置きに行く。

 草履ってビーチサンダル感覚かと思ったけれど、慣れていないのもあって指の股がかなり痛い。
 足の裏も痛いし、毎日回復魔法が必須の気配。
 靴も欲しいなぁ。

 再び外に出て、マサに魔道具師の所へ行っても良いか聞いてみる。
 行ってみて忙しいようだったら帰ってくることを約束した。
 先に村の塀の魔道具に魔力を入れてから出かけた。

「こんにちは。ジロウさん、いらっしゃいますか?」
 絶対に訪問しようと思って名前をしっかり憶えていたので、玄関前で呼ぶ。
 少しの間があって扉が開く。
「ん?ああ、マサさんの所に来た・・・えっと。」
「しのです。」
「そうそう、しのか。どうした?」
「今、お忙しいですか?もし、お時間が有るなら見学したいなと思って。」
「魔道具に興味があるのか?手が空いているから見て行ってもいいぞ。」

 魔道具工房にお邪魔すると、石材や木材、魔石道具類が整頓して置かれていた。
 最近はどんな道具を作っているのか尋ねると、室内灯の魔道具や街灯の魔道具を作っているそうだ。
 コンロの魔道具や冷暖房の魔道具はある程度行き渡ると、それほど必要ないものね。
 修復魔法もあるから壊れて廃棄する事も少ないだろう。
「ジロウさん、少しお聞きしたいのですが、玄関先で鳴らすようなベルって出回っているんですか?」
「ベル?たまに教会関係者の家なんかで見かける、入り口で紐を引っ張ってチリンチリン鳴らすあれか?」
「あ、手動方式なんですね。」
「ちょっと待て、手動式という事は魔石を使った方法もあるのか?」
 がしっと肩を掴まれたので、ちょっと後ろに下がりつつ、両手を前に出して『どうどう』と宥めてみる。

 ジロウさんが冷静さを取り戻したところで、玄関に設置するベルの仕組みを軽く話す。
「こういう道具があれば、玄関先で叫ばなくても良いんじゃないかな?って感じたんです。ベルの音も何種類か用意出来たら好みで選べて良いかなって。」
「なるほどな。」
「欲を言えば会話が出来る装置や誰が来たのか顔がわかる装置が付いたら一番いいのですけど。」
「ちょっと待て、そんなにぽんぽん考えが出てくるなんて、何か知っているのか?」

 まずいと思いつつ、ぶんぶん首を振る。
「魔道具の作り方なんて知らないですよ?ただ、こんな感じの物が出来たら便利だなーって思ったんです。」
「そうか。うん。まずはベルの魔道具ってのを作ってみないとわからないな。」
「入り口の外と家の中に設置するから魔石って二つ使う事になりますか?」
「そうだな、呼ぶ時に音を鳴らすための魔力と、部屋で応答するための魔力の両方が必要になりそうだな。蛇やねずみから取れた小さい魔石はあるが、付与をどうするか・・・。」
「私、付与が出来ると思います。」
「なんだって!・・・じゃあ、すぐ作り始める事が出来るんだな。」

 早速一円玉ほどの小さな魔石を受け取って、浄化をした後に付与して鑑定で確認してみる。
『音の魔石:風の魔力を付与した魔石が使われている。魔石の魔力効率--。』
 
 合計四つの魔石に付与をして、ジロウに渡す。
「これですぐに作れるな。形としてはさっき話をしていた感じで良さそうだし。この辺に枝を置いていたから・・・。」
 親指と人差し指で輪を作ったくらいの太さの枝を輪切りしていく。
 中に魔石が入るようにくぼみを作り、ささくれが無いように周囲を磨いて魔石を嵌め込む。
 もう一つは一回り大きな枝を選び、上部に余白があるように穴を作って、余白部分には『呼ぶ』と文字が彫られた。
 外に設置する際にわかりやすいし、迷わなくていい。

「・・・出来た。」
 ジロウが溜息のように言うので、鑑定する。

『呼び出しの魔道具:風の魔力を付与した魔石が使われている。魔石の魔力効率わずか。』
『応答の魔道具:風の魔力を付与した魔石が使われている。魔石の魔力効率わずか。』
 
 早速試作品を次郎の家の扉に設置し、応答の魔道具は工房と奥の部屋の間に設置した。
 私が外に出て呼び出しの魔道具を押す事にする。
「くっ・・・子供にはギリギリの高さだった。危ない危ない。」
 無事に押すと、家の中からカラーンカラーンと聞こえた。
「聞こえたぞ!」
 ジロウがうきうきした感じで返事をする声が聞こえたので中に入る。

「しの、これは良いな!増産する時は付与を手伝ってもらえるか?」
「いいですよ。お給金弾んでもらえますか?」
「しっかりしてるなぁ、浄化と付与の分をちゃんと支払うよ。」
 子供だからと言わずに、ちゃんと報酬を支払ってくれるなんてありがたい。

「浄化は一つ銅貨一枚、付与は小さい魔石だから銅貨五枚、一組当たり小銀貨一枚と銅貨二枚でもいいか?」
「それでお願いします!」
 お小遣い確保の予感に心の中でグッとこぶしを握った。

 その後、音の種類について話をして、いくつかの候補を作る。
 ジロウが枝の加工をする間に魔石の浄化と付与をしていると、夕飯の時間が近いとマサが呼びに来た。

 ジロウがマサの家についてきて、玄関の扉に魔道具を設置する。
 家に入るとキヨが驚いた顔をしているのを華麗にスルーして、マサと相談したジロウは廊下に応答の魔道具を取り付けた。
 そのまま外に出て少しすると、チリンチリンと廊下で音が鳴る。
「ふむふむ。それでここを触るんだな。聞こえたぞー。」
 マサが張り切って応答した。

 嵐のように去っていたジロウに呆れつつも、今度は誰が音を鳴らすかしらねと応答する楽しみが出来たキヨだった。
 

 個人的には訪問者の画像を見て話しが出来ると防犯にもなって良いのだけれど、技術的にはもう少し後になるかな。



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