うり坊、浄化で少女になった

秋の叶

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村の居候

雨の日

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 起きたら雨だった。
 雨が降っても学び舎に行くけれど、木製の番傘は重いので傘は使わない。
 使うのは帽子型と言うか、頭に乗せるかさこ地蔵の話に出てくるアレだ。すげ笠。
 すげ笠をかぶらずに、ほっかむりで走ってくる子供もいた。
 
 学び舎に到着したら、洗浄で綺麗さっぱりして勉強を始めるので、気持ち悪さが無いのがいい。
 
 最初の授業は単語の暗唱だった。
 小さい子が覚える単語を先生が書き出して、読み方を覚える。
 文字に慣れると、これも問題なく出来そうでほっとした。

 次の時間は計算。
 今の年齢では足し算引き算がメインだけれど、成長したら方程式など習うのだろうか?
 進学して高等教育に行ってからなのか?
 とりあえず、今のところ引っかかる所はない。

 最後は魔法の勉強だった。
 生活魔法を再確認しつつ、出来ない子供は出来るように練習し、出来る子は種類を増やして行く。
 ここに来て、自分がちょっと違う事に気が付いた。
 そう、私は日本語のまま無詠唱で使っている。
 他の子供達は魔法用の言葉を覚えて使うか、魔道具を使用しているのだ。

 なんか、ちょっとまずくない?
 そう思っていたら、あの男の子が言い出しちゃったよ。
「先生—、身体強化って特別な呪文じゃなくても出来たぞー。」
 男の子は教室中の注目を集めた上に、先生がぎょっとしている。
 私から聞いたと言い出すのか、自分に注目を集めたままでいたいのか、さあどっちだ?
 出来れば男の子の中で完結して欲しい案件なので、気配と息を殺して見守る。

「筋肉っていうのを強くしたら出来るってー。『身体強化』ほらな。」
 同級生たちから『おぉー!』と拍手をもらってドヤ顔の男の子。
 あの時、一緒にいた子も盛り上がっている。
 先生は詳細を聞いて、一人でぶつぶつ言いだした。

 よし、これでこちらは何も聞かれないはずだ。
 歴史の勉強の時に先生が『この国の言葉で身体強化の生活魔法を使える人が増え、力仕事をする人たちを中心に全国に拡大した。』って話してたものね。だから大丈夫なはず。

 授業が無事に終わり、お弁当のおにぎりを食べて教室を出ると裁縫の先生に呼び止められる。
「しのさん、先日のアレ、慣れないけれど女性には必要だと思うわ。知り合いに教えていいかしら?」
「どうぞどうぞ。」
 マサといい、先生といい、下着の話題は憚られるようで、アレで通すようだ。
 私としては一般的になってくれたらありがたいので、どんどん広めてほしい所です。
 ゴムがあればもっといい。
 
 先生と話が終わって外に出ると、小雨のまま雨は降り続いていた。
 ミヨちゃんもいないし、帰る前に布屋さんに寄りたいけれど、商品を濡らしそうで止めた。
 塀の魔道具と道路にある魔道具に魔力を入れながら帰ろう。
 雨に濡れつつ、魔道具に魔力を入れているとカイの声がする。
「しの、今帰りか?」
「あ、カイさん、はい、今帰る所です。」
「乗っていくか?」
「良いんですか?お願いします。」

 カイの浮動車に乗せてもらい、洗浄で濡れた服を綺麗にする。
「しのは毎回魔道具に魔力を入れているのか?」
「はい、魔力が増えたり魔法を覚えるかもしれないって聞いたので、知っている所の魔道具に入れてます。」
「そうか、しのくらいの年の子だと、目先の遊びに夢中になって忘れがちなのに、まじめだなぁ。」
「ふふっ、自分の為なので。」
「たしかにな、後から『もっと前にやっておけばよかった』って言い出すよな。」
 うんうんと頷いておく。

「そういえば親父が持ってきた下着。あれはしのからの贈り物だって?」
「はい。お世話になっているので何か実用品を贈りたくて、下着にしました。」
「便所に行った時、ふんどしより楽でな。村中の男衆で騒ぎになって悪かったな。」
「気に入ってくれて良かったです。」
「今日は雨だから家の中にいるって言うんで、布が足りなくなった奴から頼まれたのがそこにあるそれだ。」
 そう言ってカイは、私が座っている後ろの座席に積んだ荷物に顎をしゃくる。
「布屋も『ここ数日急に売れ行きが良い。』って驚いていたぞ?」
「えぇっ!そうなんですか?商売の邪魔になっていないと良いけど。」
「ははっ!子供が何を心配してる。売る方も売れた方が嬉しいだろう。」
「そっか、そうですよね。」

 そんな話をしているうちに村に着いたので、お礼を言って浮動車を降りる。
 そのまま村の塀の魔道具に魔力を入れて、帰宅した。
 勉強道具を部屋に置いて、ジロウの家に行くと告げると、マサが呼び止める。
「ジロウに『この前の呼び出し魔動具の礼だ。』と渡してくれ。」
 手にキヨが作ったパンツを二枚乗せられた。
 あの魔道具は宣伝だけじゃなくてテストも兼ねていたものね。
 ジロウにとって初期投資だったから、村長の家には無料でつけていた。お礼に渡すのか。
 パンツ・・・相当気に入ってくれたんだなぁ。

 ジロウの家に入り、早速パンツを渡す。
「ん?なんだこりゃ?」
 マサが気に入った下着で、昨日から村中で流行りだしていると伝えると無言で受け取ってくれた。
 身内でも何でもない少女から受け取るには微妙だったかもしれないが、マサからの任務は無事に果たした。

 今日は学び舎に出かけた日だったので七組の魔石に付与する。
 付与しているとジロウがそっと聞く。
「そういえば、村長から卵かけご飯の話を聞いたんだが・・・。」
「簡単で美味しいですよね。」
「いや、味の話じゃなくてな。食べる時に浄化するって聞いたんだが?」
「卵を生で食べる時は、お腹が痛くなるのが怖いので一応浄化しました。」
 ジロウは口をぽかんと開けている。
 ん?私何か変な事を言ったか?
 あ、浄化の魔道具が無いと危険な食べ方になるかも?
 
「えっとジロウさん、もしかして鶏を飼っている家に浄化の魔道具があった方がいいですか?」
「浄化してから食べるっていう事が、今までに無いからなぁ。しののところに毎日通われても困るんじゃないか?」
「そうでした。ここでは普通に使っていたから忘れてましたが、浄化魔法って使える人が少ないんでしたね・・・。」
「美味しいとわかったら、人が浄化の魔道具のある所に殺到しそうだな。」
 人間の食の探求は侮れないと、歴史が証明している。
 毒性のある物を工夫を重ねて、安全に食べている物の話を聞いた時には、どれ程切実に食料を求めたのか、どれ程の犠牲があったのかと思ったものだ。
 
 そこからどうすればいいのか相談し、ジロウに浄化の魔道具を追加で作ってもらった。
 山の上にあるような装飾されたタイプではなく、角に丸みのある小さな四角い入れ物で、魔道具だと思われないようなデザインの物だ。

『浄化の魔道具:聖の魔力を付与した魔石が使われている。魔石の魔力効率十分。』

 村の中では鶏を飼育している家に『狩猟者登録所からだ』と渡し、人が問い合わせに行きそうな狩猟者登録所には『顔見知りの鶏飼育の人が来たら渡してくれ』とお願いする事にした。
 ジロウが魔石を登録所に買いに行くときに、値段の交渉がてら少しずつ魔道具を渡すという事で、話が落ち着いた。

 ちなみに、浄化の魔石に関しての付与の代金は辞退した。
 諸々の面倒をお願いする形になってしょんぼりすると、子供が気にするなと懐の広さを見せてくれた。
 浄化の付与は毎日一つか二つということに決まった。
「しのが大きくなってどこかに嫁に行くかもしれないからなぁ。その時のために一つここにも浄化の魔道具をもらうよ。」
 ちゃっかりしているジロウ。さっきの感動が霧散した。
 
 なんにせよ、卵かけご飯の影響で教会から人が来たら大変だった。
 危ない危ない。
 

 ジロウから今日の分の代金、小銀貨8枚と銅貨2枚を受け取って家に戻る。
 部屋に入って軽く仮眠し、夕飯前に鞄づくりの続きをする。
 夕食の配膳を手伝い、いつものように三人で手を合わせてから食べる。

 食事の支度に関しては、手伝おうとしても身長が足りず思うように動けないため、運ぶだけだったりする。
 片づけは食卓の上にある食器を丸ごと洗浄してから棚に入れてもらっている。
 初めての時はマサもキヨも目を剥いていた。
「食べこぼしもあるだろうから、食器ごと洗浄したけれどダメですか?台所に手が届かないし・・・。」
 そう聞いたら、納得してくれたけれど『イチの姪っ子だなぁ』とマサが呟いていた。

 食事をしながら二人に履物について聞く。
 洋装の人が増えている事もあって、靴も出回ってきているものの、農村部ではまだまだ裸足か草鞋、草履なのだそう。
 パンツの次は靴が欲しい。
 靴の作り方は専門じゃないと難しいだろうなぁ。
 あ、でもルームシューズみたいなものであれば自力で何とかなる?
 底を少し丈夫にすれば、修復魔法でお手入れできるし、草履より楽かも?
 個人的には鼻緒の部分が辛い。長距離を歩くほど辛い。
 無い物は、自分で作るしかないよね。
 子供ゆえの不器用さがあるけれど、幸いにも材料を揃えるための資金はある程度出来たし。
 ショートタイプか、ブーツタイプか・・・手始めはショートタイプが良いかもしれないな。
 そんな事を考えながら食事を終えた。

 食後に部屋で鞄づくりの続きをする。
 せっせと縫って、何とか完成!
 ファスナーもないし、ボタンも無いから蓋を閉められないけれ・・・ど。
 あ!ボタン。
 これは簡単に付けられそうじゃない?
 木のボタンでもいいし、貝で作ってもいいし、刺繍した布でくるみボタンを作っても可愛らしいし。
 明日、また布屋さんに行こう。


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