うり坊、浄化で少女になった

秋の叶

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村の居候

靴完成

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 数日、同じような生活リズムで過ごした。
 家にいる時は靴(ルームシューズ)をせっせと作り、ジロウの所に毎日通って付与魔法をし、塀の魔道具に魔力を入れる。
 靴作りに集中しているせいか、あれだけ通っていた布屋さんには暫く行かなかった。
 使わない分、ジロウからの報酬の銀貨四枚、小銀貨四枚、銅貨八枚がまるっと残っている。

 学校ではミヨと一緒に帰る事がなかった。
 用事があるか、タイミングが合わなかったんだろう。

 裁縫の先生には、マホと同じくスナップボタン付きの布の使い方を伝えた。
 パンっと両手を叩いて大喜びしだした時は、ちょっとびっくりした。
 でも、気持ちはわかる。
 切実だよね。
 
 そして靴が完成した。
 出来上がったのはバレエシューズのような形。
 問題は履き心地だ。
 室内で大丈夫でも、外に行ったら途端にダメな事はよくある。
 素人が作っているし、ルームシューズだし、以前の自分が使っていたような靴の完成度を求めてはいけない。
 
 足を入れた瞬間は問題無かった。
 部屋の中を歩いても大丈夫そう。
 成長期なので少し大きめに作り、足先には布を詰めている。
 靴裏が滑ると思って、ちょっと加工したけれど、どの程度耐えられるか・・・。
 玄関に靴を持って行って、そこで履く。
 キヨが出てきて、完成したものを見て驚いていた。
「しのちゃん、靴ってそういう物だったのね。これは作るのに時間がかかるわ。」
 町まで試し歩きをすると言ったら見送ってくれた。
 
 先に塀の魔道具に魔力を入れて家の前に戻る。
 うん、このくらいだったら使えそう。
 ただ、地面が濡れたらズルっと滑りそう。
 ゴム底が欲しいなぁ。
 
 靴の感触を確かめながら、身体強化を使って速く歩く。
 サイズの調整をしてあるのでパカパカすることはないし、今のところかかとや指先が痛い感じも無い。
 途中、道路の魔道具に魔力を入れ、一時間ほど歩いて町に到着する。
「ここまで歩けるなら使えるんじゃない?」
 ちょっと自画自賛する。
 個人的には草履より快適だった。

 そのまま町の塀の魔道具に魔力を入れ、布屋さんに行く。
「あらぁ、お嬢ちゃん、久しぶりねぇ。」
 女将さんが驚いた顔で出迎えてくれた。
「おはようございます。靴を作るのに集中していて暫く来られませんでした。」
「え、もしかして出来たの?・・・それ?」
 足元を見て言うのでこくりと頷く。
「まぁ!出来たのね。今度ゆっくり見せてもらう事にして、それよりも財布よ財布!」

 女将さんはお会計をするための台のそばに置いた箱の中を見せてくれる。
 ジッパーを使った財布が色々と置かれていた。
「わぁ!出来たんですね。見ても良いですか?」
「どうぞどうぞ、もう何人か買って行った人がいるのよ。袋と違ってお金がこぼれ落ちないのが良いって。スリ対策に紐を腕に結んで持ち歩くと言ってた人もいたわ。」
 現時点で、この国には紙幣というものが無いみたい。
 商人が証書などを使っているかもしれないけれど、一般の人々は硬貨を使っている。
 そういった事情もあって、長財布ではなく、ポケットティッシュサイズのものでマチがあるデザインを話していた。
 
 落ち着いた色の物から可愛らしい柄が入った物まであったので、三つほど選んでお会計してもらう。
 縫い物が得意な人はデザインを考えるところから、仕上がって使う所まで楽しめるのだろうけれど、私は選んで使いたい派だ。
 必要に駆られて縫い物を始めたけれど、無いから仕方なく縫っているのが現状だ。

「そういえば女将さんに聞きたい事があったんです。」
「なんだい?」
「布を縫う機械ってありますか?」
 ミシンという名前なのかどうかわからないので、当たり障りなく聞いてみる。
 ファスナーはジッパーだったしね。

「縫製機の事かい?」
「はい。どんな仕様の物なんですか?手で回すのでしょうか?」
「よく知っているねぇ。昔は手で回して使う機械が今では魔石で動かせるようになっているね。」
 そうだ、足踏み式になる以前に、魔石で動かそうという発想になるのがこの世界だ。
 という事は、コンパクトな家庭用ミシン、ここでいえば家庭用縫製機がありそう。
 縫うものが多くなったら購入を検討しつつ、自力で縫わなくても物が揃う事を願ってやまない。
 ついでなので、靴に使えそうな布を買い足してお店を出た。

 その後、革を取り扱う店に行き、追加で前回と同じように傷や穴の開いた革を購入する。
 私の足元を見て、作り方に感心されたので、どこかで製作する工房は無いかと聞いてみたけれど、この町には無かった。
 非常に残念だ。

 靴を履くなら靴下も欲しいんだけど、これも縫わなきゃダメかなぁ?縫うというより編む事になるのか?
 くっ・・・快適な環境を整えるのが遠い。

 革のお店を出た後は、お昼まで時間が有るのでいつもと逆の道へ進んだ。
 道なりに行けば別の村に着くはず。
 行ける場所を増やしておけば、何かの時に転移で移動できそう。
 連休の時にでも、周辺の道や村を網羅したいなぁ。

 到着した村の塀の魔道具にも魔力を入れて、公衆トイレで転移をして家に戻る。
 購入したものをインベントリに入れたり、お土産を出してから部屋を出るとキヨがびっくりしていた。
「しのちゃんいつの間に帰ってたの?」
「さっき帰ってきたの。驚かせてごめんなさい。」

 お昼ご飯を三人で食べて、布屋さんで買ってきたジッパー付きの財布をマサとキヨに渡す。
「これ、町の布屋さんで新しく取り扱い始めた財布です。使いやすそうだったから二人にお土産です。」
「この前も贈り物をもらったのに、いいのかい?お金はしののために使うなり、取っておいてほしいけどねぇ。」
 キヨが苦言を呈するけれど、この前のパンツより嬉しそうだ。
 マサも袋の中のお金を入れ替えて『これは良い』と喜んでいた。

 食後はいつものようにジロウの所で魔石に付与魔法を施す。
 代金を受け取り、財布に入れると、ジロウがじっと手元を見ていた。
「しの、その入れ物は?」
「これですか?町の布屋さんで取り扱いが始まった財布ですよ。」
「布屋か、分かった。」
 女将さん、どうやらお客さんゲットですよ。 


 寝る前に転移で山の上の魔石の所へ行く。
 星空を見ながら誰にともなく報告する。
「パンツは何とかなったし、バックも作ったんだよ。やっと靴が一つ出来たけれど靴下も欲しい。編める自信がないなぁ。どこかで売っているなら買いに行きたいな。あーパジャマも無いと冬になったら辛いか。ある程度揃ったら、甕から取り出していたものを返すからね。道のりが遠いなぁ。」

 過去の自分に対してなのか、両親に対してなのか、叔母夫婦に対してなのか、猪の母に対してなのか、自分への決意表明なのか、よくわからないけれど、ここに来て少しだけ過ごす時間が私には必要な気がしていた。
 どこかでフクロウがホーホーと鳴いていた。


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