うり坊、浄化で少女になった

秋の叶

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村の居候

人化

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 あれから何度か嵐の日を経験した。
 台風という単語はまだ無いようだったので、全部『嵐』と説明された。
 元の世界でも荒れた天気の日が苦手で、被害報道を見聞きして更にやりきれない思いになっていた。

 とんでもない天気の日でも、患者さんが根性で通院している姿を見た時には複雑な思いをしたものだけれど。


 色付いていた広葉樹の葉が落ち、風が肌に刺さるように感じる季節になった。
 毎日欠かさずにこなしている魔力補充と付与魔法のお陰で、私の魔力は順調に増え、お金も貯まり始めた。
 ということで、今日は山の上の甕に借りていたものを返却する日です。

 就寝前に山の上に移動し、浄化の魔道具の下を生活魔法で掘る。
 この世界に初めて来た(変化?)日よりも、スムーズに魔法が使えるので、あっという間に掘り終わった。
「最初はどれだけ慎重に深く埋めたんだと叔母さんに文句を言ったけれど、魔法が熟練するとそれほどでもなかったんだね。文句を言ってごめんね叔母さん。」

 取り出した甕を洗浄し、蓋を開けて借りていた金貨二枚とTシャツとチノパン、それから新しいシーツを入れる。
 魔道具類も今となっては自力で付与して作ってもらえるものばかりなので、そのままにした。
 甕の蓋を閉じ、穴の底に入れて埋め戻す。

「うん、一つ区切りがついたかな。今までありがとうございました。」
 両手を合わせて拝んだ。

 返却作業が終わる頃、颯が飛んで来て終わるのを見守っていた。
 ここに埋められているのは、亡くなった方の遺品と叔母夫婦の遺品だと伝えてある。

「こんばんは、しの。」
「颯さん、こんばんは。お待たせしてすみません。」
「全く待っていないから気にするな。」
「ありがとうございます。寒くなってきましたねぇ。冬の間、颯さんは大丈夫なんですか?」
「比較的寒さには強い気がするが、過ごしてみないと何とも言えないな。」
 確かに。
 その年によって寒さが厳しい時もあれば、暖冬と言われる年もある。

「塀の魔道具も三つは余裕で魔力を入れられるようになったし、別の山頂で見かけた浄化の魔道具に触れたり魔力を入れてみたが、この通りだ。」
 近況を教えてくれたが変化が無いという。

「うーん・・・他に出来そうな事って何かあるのかなぁ?」
「これ以上無さそうだよな。フクロウのまま俺の人生が終わるんだろうか・・・。」
「魔力を増やしても、他の浄化の魔道具でも変化が無いとなると、あと試せるのは・・・あ!」
「ん?何かあるのか?」
「私が浄化の魔法をかけるのは試してませんね。」
「っ!! それがあったか、よし、試してくれ。」

 気休めだろうなと思いつつ、颯に浄化の魔法をかけてみる。
 魔石を浄化するよりも多くの魔力が持っていかれるなと思っていると、颯の様子が変化した。
 フクロウの姿がぼやけたかと思ったら、点滅を始め、一瞬暗くなった後、月明りの下に浮かび上がる人の姿。
 これはいけないと思い、真後ろを向いた。

「おっ!おおおー!・・・しの!とうとうやったぞ!体を取り戻した!」
 大喜びする声が聞こえるので、一緒に祝いたいが、その前にするべき事がある。
「颯さん、服、服を着てください!」
 山の中で叫ぶわけにはいかないので、抑えた声で伝えると、はっとした颯がごそごそし始めた。

「もういいぞ。」
 インベントリに入れていた着替えが活躍したらしい。
 振り向くと着物を着た細身の若者が立っていた。
「わぁー、颯さんおめでとうございます!」
「ありがとう、君のお陰で取り戻せたよ。だけど・・・。」
 ん?
 颯は突然鑑定しだす。
「あーやっぱりかー。」
「どうしたんですか?」
「俺を鑑定してみてくれ。」
 許可が出たので鑑定してみる。

名前:森山颯
年齢:十七歳
魔法:生活魔法、飛行魔法、遠見魔法、集音魔法、建築魔法、鑑定魔法、インベントリ

 名前からフクロウが消えて、年齢が十七歳になっている。

「年齢から米印が消えましたね。」
「うん。それだけじゃない、若くなっているんだ。」
「あー・・・私も若くなったから戸惑うのがよくわかります。」
 なんなんでしょうね、これ。
 私はうり坊だったし。颯さんはフクロウ。
「もしかして・・・動物の年齢を人間換算した?のかな?」
 ぼそっと呟くと、颯さんががばりと顔を上げる。
「それ、有るかも。君はうり坊としてどれくらい過ごしたんだ?」
「んー四カ月前後だと思います。」
「俺は春になったら二歳になる予定だったから・・・まーじーかー。」

 動物から人になった衝撃は、事前知識があっても状況を把握するのに時間がかかるだろう。
 年齢が違えば尚更だ。
 私?私はほら、素っ裸事件でそれどころじゃなくなったというか、尊厳を取り戻すのを優先したというか。
 問題解決に勤しんでいるうちにうやむやになった。

「しょうがない、こうなったら若者として生きるしかないな。」
「ですね。」
「学び舎は通わなくていいだろうから、住民の登録をどこかでして、あとは仕事か。それ以前にまずは宿か。」
「どこに泊まりますか?一番近い町にしますか?」
「そうだな、この姿で飛行魔法をいきなり使ったら落下時の怪我が怖い。申し訳ないんだが町まで送ってもらえないかな?明日、町に来てもらえたらありがたい。」
「学び舎の帰りに合流するのでもいいですか?」
「ああ、勉強の日だったか。では学び舎の後に。」

 ソーギの町の前に転移して、颯を見送った。

 
 翌日、いつものように学び舎に行き、帰りはミヨとミドリに先に帰ってもらった。
 お昼ご飯を食べる前に文字伝達の魔道具に『ご飯を食べたら学び舎を出る』と書き込む。
 食べ終わって待ち合わせをしていた町の入口へ行くと、颯が立っていた。
「お待たせしました。」
「いや、忙しいのに悪いな。」
「いえいえ、最初が一番忙しいと思うので・・・。」
「そうなんだよ、あれもこれも足りない事に気が付いたよ。という事で、まずはシクゼンに運んでもらえないかな?靴と鞄が欲しい。あと古着屋にも寄りたい。」

 公衆トイレから二人で転移し、革の店で鞄を選び、靴を注文していた。
 注文の際、靴はダーティーバックスのような物が良いという話になり、これも型紙を転写する。
 今までと違うデザインにホクホクする店主。
 新商品として並ぶんだろうな。

 それから古着屋に寄って、シャツやズボンを選び、再び革のお店に立ち寄ってベルトと上着を購入していた。
 ロックな印象の若者が出来上がった。
 革製品マジック。
 着物は寝間着にするそうだ。
 
 ソーギで颯と別れ、転移で自分の部屋に移動する。
 ジロウの所に行っていつものように魔石に付与をして代金を受け取った後、考えていたものを作ってもらうために交渉する。
 それは小さなピラミッド型の人型結界で、義叔父が叔母に付与してもらって作っていた物。
 飛行魔法を使う颯が、うっかり落下しても怪我をしないようにと考えている。
 
 交渉したら『これくらい遠慮するな。』と男前な態度でチャチャッと作ってくれた。
 ジロウ格好いい。
 ヤスリで角を丸く整えたピラミッド型の魔道具を鑑定する。

『結界の魔道具(小):聖の魔力を付与した魔石が使われている。魔石の魔力効率はわずか。』
 
 うん、きちんと出来上がっている。
 魔力を補充して鞄の中でインベントリに仕舞った。

 家に戻って文字伝達の魔道具を確認すると、颯からメッセージが届いていた。
 無事に住民登録が出来て、単発の仕事を見つけたらしい。
 建築系は重宝されるんだろうなぁ。

 小さくてもいいから自力で家を建て、宿生活を卒業したいとの事。
 フクロウ時代に山でこっそり古木を切ったというか、抜いた後は若木を植林しつつ木材を集めていたようで、この世界の技術を学びつつ、今までの知識を応用した家を建てる予定だという。
 本格的な冬になりそうな気配だけれど、どうなるんだろう?

 
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