うり坊、浄化で少女になった

秋の叶

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教会の下宿人

ジェドの教会

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 初めて見る景色に興味があるものの、ガタガタと揺れる魔動車に酔いそうになってうんざりし、今回もまた寝て気持ち悪さをやり過ごす。
 途中の町で何度か休憩を挟みつつ、食事とトイレ休憩以外はずっと車内にいた。
 起こされてトイレに行き、車に戻って寝るとまた起こされ、食べては寝て、起こされてトイレに行って、また魔動車に乗って寝て。
「起きてください。」
 そう言って起こされた時はとっぷりと日が暮れて、辺りは真っ暗になっていた。

「え?ここどこ?」
「今日、宿泊するオワラの教会です。荷物はそのままで。魔動車に鍵をかけます。」
 淡々と告げるのはハーフっぽい顔立ちの教会の服に身を包んだクレマン。
 休憩があったとはいえ、長時間運転で疲れているのだろう。
 これ以上説明させるなという気配が滲み出ている。
 大人しく後ろを付いて行くと、お仕着せの日本人っぽい女性が客室に案内してくれた。
 夕飯は少し前の休憩で終わっていたので、洗浄して寝るだけだ。
 
 就寝前に状況を文字伝達の魔道具で颯とジロウに知らせる。
 村を出る前、ジロウからは対になる文字伝達の魔道具を渡されたし、颯は元から持っている。
 前回と同じく誘拐モードでカーチの村を離れた事に元フクロウの颯は驚いていた。
 現在地もおそらく名古屋あたりだと伝えると『うわっ、一気に走ったな。』とあきれている。
  
 途中で越えたはずの海峡の事を全く覚えていないのはちょっと残念だ。
 自分の事ながら、子供の熟睡度って凄い。

 村でお世話になっていた魔道具師のジロウも無事で良かったと言いつつ、現在地に驚いていた。
 距離が離れても連絡が取れるのはありがたい。
 ある意味魔道具の実用距離を実験することも出来た。
 命を狙われているわけではないし、女子学院に通うと聞いているので、このまま様子を見ると伝えて魔道具をインベントリに仕舞う。

 ソーギの町の学び舎で同じ教室だったミヨやミドリにお別れを言う間もなかったな。
 何度も買い物に行ったり、材料の相談をした布屋の女将さんにも挨拶出来なかったな。
 転移魔法を使えばすぐに行けるとわかっているけれど、それでもホームシックになった。


 翌朝、目が覚めて顔を洗うついでに部屋ごと生活魔法で洗浄する。
 使った寝具が綺麗に整えられたことに満足し、いつものセーターとジャンパースカート、ガーターベルトにロング靴下を装着し、ワラビータイプの靴を履いて部屋の扉を開ける。
 昨夜客室に案内してくれた女性が、こちらに向かって歩いていた。
「朝ご飯は食堂に準備していますので、案内します。」
 タイミングが良かったようで、そのまま案内してもらった。
 
 食堂に入り、椅子に座るとクレマンも来て着席する。
「おはようございます。」
 挨拶をした後はお互い無言だ。
 パンと野菜の煮込みを食べ、口の中を洗浄したら駐車場の魔動車に移動して出発。

 魔動車の揺れがどうにも慣れないので、またもや寝てやり過ごす。
 いくらでも寝られる若さって凄い。と元おばさんで、元猪の私はつくづく思うのだった。

 一度トイレ休憩で起き、その後また眠って次に起こされると目的地と思われる教会に着いていた。
 まずは魔動車から荷物を下ろし、風呂敷を手で抱え、生活魔法で荷物を浮かせてクレマンの後ろを付いて行く。
 途中でお仕着せを着た赤毛の外国人らしき中年女性に交代し、彼女に案内されて客室へ進む。
 ドアを開け、赤毛の女性が不要な荷物を廊下に出し、私は自分の荷物を入れる。
 
 机の横にドレッサーを置き、ベッドに布団一式を乗せ、クローゼットに風呂敷を置いた。
「ふぅ。」
 あっという間に片付いたけれど、どこまで歩くのか分からないまま付いてきたので、精神的に疲れた。
 部屋の鍵を受け取り、メッセンジャーバックの中に入れる。

「ご飯は食べられそうですか?」
 疲れすぎた子供は食欲が失せる事もあるので、確認してくれたらしい。
 食べると伝えれば、持ってきてくれるというので椅子に座って待つ。
 
 パンとスープの簡単な昼ご飯を食べ、少し落ち着いた。
「この後、フェリクス様と面談がありますので、案内しますね。」
 食器を片付けに来た赤毛の人が言うので、片付けが終わるのを待つ。


 部屋を出て、執務室と思われる部屋に案内された。
「久しぶりですね。よく来てくれました。まずは座ってください。」
 両手を広げて歓迎するフェリクスにぺこりと頭を下げて、椅子に腰かける。
 赤毛の女性がお茶を準備してくれて、二人分のカップを目の前のテーブルに置いてくれた。
「ありがとうございます。」
 お礼を言うと、にっこりと微笑んで部屋から出ていった。

「今回はこちらの提案を受け入れてくれたようで、感謝します。それで」
「あの!」
 フェリクスが話しているけれど、遮るように声を発する。
「どうしました?」
 怪訝な顔で問いかけるので、思っている事をぶっちゃけることにした。
「どうして今回も誘拐のような連れ出し方をされたのかという事と、何のためにこんな遠い所へ呼ばれたのかという事と、いつ帰してもらえるのかという事と、来てしまったからには街を歩きたいという事を確認したいのですが。」
 昨日から溜め込んでいた文句を一気に言った。

「えっ?」
 私が話し始めた最初の言葉の時点で絶句し、息まで止まったんじゃないかという表情で固まるフェリクス。
 一度深呼吸してから、ゆっくりと口を開く。
「誘拐・・・ですか?」
 肯定のために私はしっかりと、重々しく頷く。

「昨日、クレマンさんが村に来て『ジェドに連れていきます。春から向こうの女子学院に通ってください。』と言った後、すぐに荷物を準備するように言われて、そのまま荷物をまとめてここまで来ました。説明も同意も無い、有無を言わせない実行って、ほぼ誘拐と認識したのですが、違いますか?」
 昨日からの状況を説明すると、フェリクスはおでこに手を当て、下を向いて無言になった。

 目の前の男性が再起動するまで、お茶を飲んで待つ事にする。
 一口、二口と飲んだところでフェリクスは再起動したらしい。
 手を下ろし、私をじっと見つめるので、カップをテーブルの上に戻した。

「まずは謝罪からしなければいけないようですね。」
 そういって今回の出来事について説明してくれた。

 地震のあったあの翌日、結界魔法を付与した魔石を置いて私が去った後、震源地近くの地域までフェリクスは移動したそうだ。
 魔道具があるとはいえ、炉を使う鍜治場などがあり、全く火を使わないわけではないので火災が発生していた。
 初期消火が間に合わないところでは延焼し、建物の修復が出来ないところもあったという。
 倒壊した家屋は少しずつ修復魔法で直し、多数の山崩れは現在も安全確認の上、地域の人達がどのような形で整えるか話し合い中だそうだ。
 余震も多かったため、重要な建物には結界魔道具を優先的に設置したとの事。

 そこで、結界魔道具の有用性と今後の災害に備えて数を揃えることが急務だと判断したらしい。
 それなりの数の付与が出来る人材として私をジェドに招こうという話が出て、事情を話し、条件として女子学院への通学と生活環境の提供を提案したのだとか。了承を得られたら連れてきてほしいと頼んだという。

 最後の方がほぼ抜けているよね?
 提案も条件も一切なかったよ?
 決定事項だったよ?

「『フェリクス様が決めた事です。』って、すぐに行くと言われて、今ここです。」
「・・・クレマンが大変失礼しました。」
 おそらく、あのおじさ・・・クレマンはフェリクス至上主義なのではないだろうか?この人が言った言葉が全てで、他の人が従わないはずが無いという認識で行動しているような気がする。
 暴走信者?部下?がいると大変だねぇ。
 
 ということで、仕切り直しです。
 来てしまったものは仕方がない、暫くこちらで生活する事を条件付きで了承しました。
 学び舎に行かない代わりに、ハマの教会系列の女子学院へ通う。
 ただし年齢が低いため、見学扱いとする。
 話した印象だけで年齢を確認していなかったために、まさか女子学院入学前の女児だと認識していなかったそうだ。中身がおばさんでごめん。

 滞在先が何故ジェドなのかというと、フェリクスがいる教会だからだ。
 シクゼンの教会は出張で行っていたらしい。

 魔石への結界付与は毎日七個行う。
 浄化済みの魔石を用意してもらって付与をし、銀貨三枚と小銀貨五枚の報酬を受け取る。
 十日で七十個も魔道具が出来たら相当な数だけれど、ジェド周辺では足りないので、少なくとも二カ月はみっちり付与して欲しいのだそうだ。
 
 食費や滞在費、学院代は全て教会で賄うとの事だったが、食費だけでも払わせてくれとごねて、月に銀貨五枚支払うことで同意した。
 ただより怖いものはないからね。

 学院と魔石付与以外は自由行動する事も許可を貰ったので、夕食前に部屋に戻ればOKという事になった。
 通学は、行きは浮動車で送ってもらい、帰りは自力で徒歩で帰ってくる事に決まる。
 魔動車で送ると言われた時は断固拒否し、庭師のおじさんが浮動車を持っているというので、それに乗せてもらう事になった。

 お互いにちょうどいい距離感で話がまとまった。
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