うり坊、浄化で少女になった

秋の叶

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教会の下宿人

二日目の授業

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 五日目の朝です。
 女子学院二日目の朝でもあります。
 昨日は縫い物もせずにアンに異国語を教えてもらいました。
 だからと言って今日から無事に授業を受けられるかというと、全くそんな気がしません。
 見学者だからと油断できない事を身を持って知ったので、覚悟を決めて登校したいと思います。

 朝食後に付与の仕事をして代金を受け取ると、フェリクスからの伝言を聞いた。
「子供を一人で混雑した鉄道に乗せるのはいかがなものか。」
 と言っていたそうですが、意外に私が一人で外出していると知ったので許可が下りました。
 アンからお弁当を受け取っていざ!
 ジャンの仕事を邪魔しなくて済んだ事にほっとしたのだけれど、雨が降ってきた。
 嵐じゃないから、このまま出ようとしたらがしっと肩を掴まれる。
「今日は乗って行こうな?」
 庭師のジャンが良い笑顔で凄んでいた。

 大人しく浮動車に乗って女子学院まで送ってもらいつつ、傘について聞く。
 村では笠が主流だったけれど、ジェドでは洋傘が出回り始めているらしい。
 是非購入しようと心の中で誓った。

 学院への通学は雨だった事もあり、魔動車で送ってもらう生徒が多いようで玄関前が混雑していた。
 私はさっと浮動車からおりてジャンに手を振る。
 ちょっと濡れたくらい問題ないので、玄関で洗浄して教室に入る。

 教室で先に来ていたお姉さま達に挨拶をし、自分の席に座る。
 中身の年齢は確実におばさんの私が一番上なんだけどね、なんというかこの学院のお嬢さん達ってとても大人の印象なんですよ。
 落ち着きがあって、考え方も動作もしっかりしているの。
 彼女達を見ているだけで身が引き締まる思いがするし、授業を受けたら心身ともに追い込まれるような引き締まりを実感中。

 ええ、一時間目は昨日と同じく宗教でした。お陰で異国語のオンパレードです。
 夕べアンから習った言葉が上滑りしていきます。
 文字が川のように流れて把握できません。
 くっ、ここで敗北宣言を出すわけにはいかない、しっかり耳に集中しよう。

 落ち着いて耳を傾けていると、アンから聞いていた単語らしきものも聴こえてきて、拾った単語を心の中で呟いていく。
 内容は全く分からないけれど、昨日の授業で習った文字を指先で追ったりしながら授業が終わる。

 二時間目は異国語の授業で、日常会話をメインに行われている模様。
 先生がゆっくりと話してくれる事もあって、私でも少しだけ理解できたのが嬉しい。
 全員で発音した後に一人一人発音を確認する際には、何故か私も指名された。
 昨日の事があったから慌てなかったよ。覚悟しておいて良かったぁ。
 ノートに書く時はお姉さま達は羽ペンを用意していたけれど、私は自前のガラスペンで書いていた。
 先生がガン見している気配がします。集中集中。気にしちゃダメ。

 授業が終わって、先生から『そのペンは?』と聞かれている事を隣の席の三つ編みのお姉さまに通訳してもらった。
 「ガラス屋さんで作ってもらったペンです。試してみますか?」
 そう言って渡すと、先生が試し書きをした後、にっこりと微笑んで返してくれた。
 先生がきっかけで流行したら新しいデザインの物が増えないかな?

 三時間目は裁縫室に移動し、裁縫の授業だった。
 「あったぁぁ!」
 教室に入って思わず叫んでしまった。
 見学者の少女がいきなり叫ぶので、お姉さま達もびっくりです。
 「貴女どうしたの?どこかぶつけたのかしら?」
 心配をかけました。すみません。
 
 こちらの世界に来て縫い物をしていて欲していた、あのミシン。こちらでは縫製機だったかな?それがあったんですよ。 
 女子学院すげーって思った瞬間です。
「この機械を使ってみたかったんです。初めて見て感動しました。煩くしてすみません。」
 お姉さま達に謝罪しつつ、裁縫の時間が俄然楽しみになった瞬間だ。

 最初は真っすぐに縫えているか確認する事もあって暖簾を作る。
 見学のはずだけれど、縫い物は早くから出来た方がいという事で同じ教材を渡された。
 大きな布を切って、着席して黙々と縫っていく。
 いつもの癖でつい手芸魔法を使ったため一気に縫い上げてしまい、気が付けば手が止まっていた。
 先生が見学者の私の様子に気が付いて、近くまで来て仕上がっている暖簾に驚く。
「もう縫い終わったのですか?素晴らしいですね。」
 縫い目や仕上がりを確認して合格をもらい、その後は見学をするか他の縫い物をするかと思案していたので、自分の縫い物をしていいか聞いて許可をもぎ取る。
 昨日縫えなかった巻きブラウスを縫う事にして取り出すと、そのデザインにまた驚かれたのだった。

 教室でアンが持たせてくれたお弁当を食べる。
 食事中は静かに食べて、おしゃべりは食後にするようだ。
 学び舎の頃の賑やかさとは違うなと感じながら昼食を終える。

 食後に後ろの席のハーフアップのお姉さまに裁縫の速さについて聞かれた。
 下着から始まり、編み物を仕上げたところで手芸魔法を覚えたと話すと、教室中で盛り上がる。
「私達も手芸魔法が使えるようになったら、貴女のように縫えるかもしれないわね。楽しみだわ。」
 学院では縫い物、自宅では編み物や学院で習わないような物を作ってみると張り切っていた。
 ついでなのでパンツも布教してみたら、既に月の物で悩み始めている人もいて、是非使ってみたいとの事。
 布ナプキンと共に伝えましたとも。
 
 午後からの授業は読み書きから始まった。
 この国の言葉と異国語の二種を石盤に書き取り、発音しながらしっかりと学んでいく。
 言葉って使わないと忘れていくから、今のうちに覚えてどこかで出番がある事を願うしかない。

 午後のもう一つの授業は計算だった。
 またもや指名されて解答する事態になったので、この授業ではもう見学者扱いから外れているんだなと開き直った。


 学院が終わって下校時刻になると雨が止んでいた。
 帰り道の商店街で傘を売っているお店を教えてもらい、洋傘を購入。
 ジャンプ式の便利さを知っている私には、ちょっと残念だけれど、傘があるだけありがたい。
 
 駅舎の公衆トイレで文字伝達の魔道具を確認し、蓮にメッセージを書いてから颯の家に転移する。
「おかえりなさい。しのちゃん。」
「ただいまです。蓮さん。」
「ふふっ、その様子じゃ今日も大変だったみたいね。」
「慣れる事があるのか分かりませんが、ずっと異国語の環境で疲弊してます。お姉さま達が普通に話してくれる事だけが心の潤いですよ。」
 
 愚痴を聞いてもらって私の仕事をする。
 ジロウは毎朝、颯の家に来て仕上がった物と、依頼する分の魔石を交換していくそうだ。
 颯がジェドに行っていると聞いて驚いていたが、余計な事は聞かずにいてくれるという。
 ジェドで魔道具が高く買い取ってもらえると知って、今度まとめて持って行って欲しいと話しているそうだ。 
 ちょっとでも高く買い取ってもらえると嬉しいよね。

 付与の仕事をしながら学院二日目の感想を蓮に話す。
「お姉さま達の年齢を考えると、自分が子供の頃ってこんなに落ち着いていなかったぞ?って驚きます。」
「あー分かるわぁ。昭和の頃の歌手の映像を見て年齢を聞いて驚いたもの。」
「語学力にもびっくりでした。」
「そういえば、紙幣に描かれていた津田梅子さんって留学した時の年齢が六歳って言ってたわよね。」
「うっわ、まじですか?知性の欠片も無かった我が身が恥ずかしい。」
「六歳から十四歳の五人の女の子が留学したって言うから、相当よね。途中二人が体調不良で帰国したらしいけれど、六歳の子が親元を離れて学び続けて帰国して学校を作ったと聞くと、箇条書きの話だけでお腹いっぱいになっちゃうわ。」
 新紙幣が出来る頃に特集が組まれて、それを見て覚えていたと蓮は言う。
 
 ジロウの分と蓮の分の魔石の付与が終わった後、少し時間が有るので何をするか話し合った。
 私が空いた時間に北陸方面に向かって歩いているのを知って、そちらに転移して魔石を購入する事になった。

 エチューの公衆トイレに転移し、そこから町の中を歩く。
 狩猟者登録所へ行って蓮が魔石の買い取りをする。
 ついでに卵かけご飯が一部で流行している事に触れ、養鶏をしている人が潰した鶏の魔石を持ってきたら浄化の魔道具を渡すようにといくつか置いてきた。

 曇り空の中、街の外へ出て二人で歩くと、蓮が跳躍魔法を試したいというので、付き合う事にした。
 一応の為、人型の結界をそれぞれに掛ける。
 蓮におんぶしてもらっって、蓮が少し腰を落とすとびゅん!っと上空に飛んだ。
 颯の飛行魔法は音もなく飛び立つ感じだったけれど、蓮の跳躍は勢いが凄い。
 びゅうびゅうと風の音が聞こえる中、上空に進み、途中で止まったような感じがしたかと思ったら、今度はひゅーっと落下する。
 胃がひゅっと縮まるような思いをしながら着地したら結構な距離を進んでいた。
「大丈夫かしら?このまま続けるわね。」
 そう言って蓮は何度も跳躍して街道を進んだ。
 途中見かけた魔道具に二人で魔力を入れながら二つほど町を通過し、三つ目に到着したところで、そこでも魔石を購入し、浄化の魔道具を置いてから公衆トイレに入って颯の家に戻った。

 蓮の跳躍魔法も落ちたら危ないので、人型の結界を小さな魔石に付与して小さな角の無いピラミッド型の魔道具を作って使ってもらう事にした。



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