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大陸を移動する猪
文字と修復の魔法
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今までの道中と同じく、昨夜も村で食事をしなかった。
一応、今回は村長に『どうですか?』と聞かれたよ?
食べるものが少ないから子供一人分とはいえ、配る人数が増えるのは辛いだろうと考えて辞退したの。
私はこっそりと食べるものがあるので問題ない。
就寝前に文字伝達の魔道具で栞にご飯が美味しかったとお礼を伝え、蓮には明日の予定をざっくりと書いて送る。
颯の文字伝達魔道具はフェリクスの所へ連絡に行っている可能性を考えて、何も書かずにいた。
翌朝も借りている部屋でこっそりご飯を食べてから部屋ごと洗浄して外へ出る。
外で木板を何枚も作って積み上げ、その辺に落ちていた石ころを一つ木板の下の方に嵌め込む。
板の上部にはこの村の言葉で『石』と書いた。
椀を作り、外側には『椀』と書き、皿の裏側にも『皿』と書く。
板に埋め込んだり張り付けられるものを付けて、名称と共に文字を書いた。
それらを作った箱の中に入れ、村長の家の前に置く。
一つ頷いて昨日作った塀の所まで移動すると、何かが暴れている物音がするのでひょいと外側の穴を覗くと軽自動車サイズの猪が落ちていた。
これはまた捕獲案件だなと思い、練習も兼ねると思うので結界を使わずワンを呼びに行く。
昨日と同じように台車を持ってきた男性陣は穴の中の魔獣に驚いていたものの、お肉の誘惑の方が勝ったのかどうやって仕留めるか相談していた。
そこで強化魔法を伝える事にする。
身体を動かす時に使う肉の部分を説明し、そこを強くしたら勢い良く投げる事ができたり、持ち上げる事ができたり、速く移動できるようになると聞いて真剣に頷いている。
昨日から生活魔法が使えるようになっている事実が後押しして、素直に話を聞いてくれるのでありがたい。
強化魔法を発動できるようになった後は、物を浮かせる魔法を伝え、その辺の丸太やお互いを浮かせる事ができるようになって喜んでいる。
「では仕上げに、強化魔法で仕留めて浮かせたら、穴の中の血を洗浄して代車で運ぶ所まで。どうぞ。」
課題として容赦なく任せました。
魚は平気だけれど、魔獣はまだ苦手なんだよ。
ごめんね。
ひと足先に村の中に戻り、今度は子供達と女性を呼んで集まってもらう。
洗浄魔法を覚えたことにより、食器を洗ったり洗濯から解放されて随分楽になったようだ。
特に乳幼児がいる家のおしめの洗濯は回数も多くて今まで大変だっただろう。
昨日までのように便利な魔法や必要な物を忘れないために、文字を覚えないか?と聞いてみる。
自分たちに覚えられるのだろうか?そう思っている人が多かったので、簡単に遊びながら覚えてみようと提案した。
遊びと聞いたら子供達が俄然やる気になっているのが可愛らしい。
村長の家の前に置いた箱を持ってきて、文字と品物が一つになった状態を見せる。
初めて文字を見ると意味が分からなくても、物と一緒になっていると分かりやすいはず。
ついでに一人一人名前を聞いて、名札のように書いた名前を持ってもらった。
自分の名前が書かれた文字は一番愛着が出ると思う。
子供達は読めないなりに『これ!私の名前!』『こっちは僕の名前だ!』と自慢し合っている。
暫く品物やそれぞれの名前を見てもらった後、半円に並んでもらい、皆さんにお尻を向けて私が地面に文字を書く。
「さて、これはなんて書いたでしょうか?」
子供達はなんだなんだ?とお互いの名札を見て、女性たちはどこかで見たような?と顔を見合わせる。
「あ、さっきその箱に入っていた・・・これですか?」
女性の一人が石を嵌め込んだ板を取り出した。
「正解です。」
若干カンニングっぽいけれど、最初だしいいのだ。
トランプの神経衰弱の様相を呈しているけれど、文字に慣れる事が肝要だろう。
地面に書いた文字を消し、次の文字を書く。
「次の文字はなんて書いているでしょうか?」
子供達はさっきと同じように箱の中に答えがあるんじゃないかと箱を見るが、そこにはない。
「あ!リーの名前が書かれている?」
別の女性が男の子を指さして言う。
「正解です。」
名前を言われた男の子は自分の名前なのに正解できなかったと悔しそうだ。
また地面に書いた文字を消し、新しい文字を書く。
「さて、この文字はなんて書いているでしょうか?」
こんな感じで文字当てクイズを15分ほど行い、そこから地面をノート代わりに枝で文字を書く遊びをした。
自分の名前が書けるようになったとか、人が書いた文字が読めるようになったと言いながらにぎやかに勉強していた。
最後に一人に一枚の木板を渡し、これに書いて勉強して、終わったら洗浄して新しく書いたらいいよと伝えると嬉しそうに両手で抱えていた。
書くための道具はその辺の石で鉛筆代わりになるので丁度いい感じだった。
一時間ほど文字の勉強した後は、魔法の勉強だ。
今日は修復魔法を覚えてもらいたいので、解体に行った男性にも集まってもらう。
全員一旦洗浄してさっぱりしたところで、各家から椅子やテーブルを持ってきてもらった。
衣類や道具類はとことん使って最後は燃やすのも良いけれど、長く大事に使えたら出費が抑えられる。
火事で燃えてしまったものは修復できないけれど、経年劣化や嵐で倒壊した家などは修復できる可能性が高いと聞くと、大人たちは目の色を変えて話に聞き入る。
修復魔法の言葉を伝え、発音の練習が終わったところで椅子を修復する様子を見せると、どよめく。
「こんな感じで皆さんもどうぞ。」
促したらそこかしこで道具を修復し始め、子供は穴が開いた衣服を見える範囲で修復して喜んでいた。
先ほど渡した木板もこうやって修復したら何度でも使えると聞き、子供達は自分の名前を書く作業に没頭している。
昨日はあちこち洗浄されて綺麗になったが、今日は子供達を始め大人達もあちこち修復して回ったので、村の中がなんだか新しく生まれ変わったようになっていった。
修復魔法の後は男性陣の中で作成系が得意な人に魔法で木を切ってもらい、梯子を作るようにお願いする。
塀の補修や穴に落ちた魔獣を仕留める時に必要になるかもしれないからだ。
協力しながら三つほど梯子を作り『こんな風に魔法が使えるなんて・・・。』と感心している。
覚えてしまったら無かった頃には戻れないよね。
魔道具を使うだけだったらあっさり失伝してしまうかもしれないけれど、自分でも使えると知ったら今度は長く使い続けられるんじゃないかなぁ?
そうだといいな。
梯子を作った後は、村の中の井戸がある場所に立て看板のようなものを作ってもらう。
木板に魔法の言葉を書いて、それを表す簡単な絵を描く。
絵が苦手なので、検索して転写しているのは内緒だ。
文字を覚える事も兼ねて、一枚の板につき一つの言葉と絵をセットで書いて立て看板にずらっと並べて張り付けてもらった。
まだ伝えていない魔法もあるけれど(火の魔法とか、子供が安易に使ったら危ないからね)、文字と用途を見てなんとなく馴染んでくれればいいと思う。
なんたって二日目だしね。
午後は畑仕事もあるだろうからと、私は一人で塀の作業に行く。
昨日の続きをしようと思ったら声が聞こえた。
「飯は食ったか?」
「こんにちはしのちゃん。」
颯と蓮だった。
昨日帰宅した時と同じ方法で、転移を分担してここに来ていたらしい。
山頂あたりで草木の植え替えをし、魔獣と住み分けしやすいように整えてきてくれたそうだ。
飛翔や跳躍が出来る二人だからこそ、身軽に実行してくれたんだよね。嬉しいなぁ。
少し能力が上がった感じだというので、昨日はキョン、今朝は猪が穴に落ちたと言えば、間接的に能力が上がったんだなと納得する二人。
その後は三人で穴を掘り、塀を作った。
ついでに開墾された土地には、以前食べた魚や蟹の殻を焼いて粉にした肥料を土に混ぜ込んでおいた。
作物が安定して栽培出来るようになるといいね。
いっぺんに完成させてしまうわけにはいかないので、ほどほどの所で作業を止め、ハマのアパートに三人で転移する。
栞がご飯を準備してくれたので、村での魔法や文字の勉強の話をしながら遠慮なくいただいた。
「私達って生まれた時から身近に絵本があったり、看板を見かけたり、TVがあったりで情報があるのが当たり前だったけれど、何も無いと覚えようがないものなのねぇ。」
「昔、戦後に聞き取りした外国人が『日本人の識字率が極めて高い』と驚いたって話を聞いたことがあるよな。」
「言葉を理解して文字として記録を残してくれた先人のお陰で、料理が再現できたりするもんね。」
蓮、颯、栞がお茶を飲みながらしみじみと元の世界を思い出す。
私は付与の仕事をしながら頷くのだった。
その後、蓮と共に教会の魔石室に転移していつもの魔道具ゲリラを行ってからワンのいる村に戻った。
塀がかなり出来上がっている上に、畑に出来そうな土地まであって驚かれた。
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いいねとお気に入りの登録ありがとうございます。
とても嬉しく、励みになっています。
貴重な時間を使って読んでいただき、感謝します。
一応、今回は村長に『どうですか?』と聞かれたよ?
食べるものが少ないから子供一人分とはいえ、配る人数が増えるのは辛いだろうと考えて辞退したの。
私はこっそりと食べるものがあるので問題ない。
就寝前に文字伝達の魔道具で栞にご飯が美味しかったとお礼を伝え、蓮には明日の予定をざっくりと書いて送る。
颯の文字伝達魔道具はフェリクスの所へ連絡に行っている可能性を考えて、何も書かずにいた。
翌朝も借りている部屋でこっそりご飯を食べてから部屋ごと洗浄して外へ出る。
外で木板を何枚も作って積み上げ、その辺に落ちていた石ころを一つ木板の下の方に嵌め込む。
板の上部にはこの村の言葉で『石』と書いた。
椀を作り、外側には『椀』と書き、皿の裏側にも『皿』と書く。
板に埋め込んだり張り付けられるものを付けて、名称と共に文字を書いた。
それらを作った箱の中に入れ、村長の家の前に置く。
一つ頷いて昨日作った塀の所まで移動すると、何かが暴れている物音がするのでひょいと外側の穴を覗くと軽自動車サイズの猪が落ちていた。
これはまた捕獲案件だなと思い、練習も兼ねると思うので結界を使わずワンを呼びに行く。
昨日と同じように台車を持ってきた男性陣は穴の中の魔獣に驚いていたものの、お肉の誘惑の方が勝ったのかどうやって仕留めるか相談していた。
そこで強化魔法を伝える事にする。
身体を動かす時に使う肉の部分を説明し、そこを強くしたら勢い良く投げる事ができたり、持ち上げる事ができたり、速く移動できるようになると聞いて真剣に頷いている。
昨日から生活魔法が使えるようになっている事実が後押しして、素直に話を聞いてくれるのでありがたい。
強化魔法を発動できるようになった後は、物を浮かせる魔法を伝え、その辺の丸太やお互いを浮かせる事ができるようになって喜んでいる。
「では仕上げに、強化魔法で仕留めて浮かせたら、穴の中の血を洗浄して代車で運ぶ所まで。どうぞ。」
課題として容赦なく任せました。
魚は平気だけれど、魔獣はまだ苦手なんだよ。
ごめんね。
ひと足先に村の中に戻り、今度は子供達と女性を呼んで集まってもらう。
洗浄魔法を覚えたことにより、食器を洗ったり洗濯から解放されて随分楽になったようだ。
特に乳幼児がいる家のおしめの洗濯は回数も多くて今まで大変だっただろう。
昨日までのように便利な魔法や必要な物を忘れないために、文字を覚えないか?と聞いてみる。
自分たちに覚えられるのだろうか?そう思っている人が多かったので、簡単に遊びながら覚えてみようと提案した。
遊びと聞いたら子供達が俄然やる気になっているのが可愛らしい。
村長の家の前に置いた箱を持ってきて、文字と品物が一つになった状態を見せる。
初めて文字を見ると意味が分からなくても、物と一緒になっていると分かりやすいはず。
ついでに一人一人名前を聞いて、名札のように書いた名前を持ってもらった。
自分の名前が書かれた文字は一番愛着が出ると思う。
子供達は読めないなりに『これ!私の名前!』『こっちは僕の名前だ!』と自慢し合っている。
暫く品物やそれぞれの名前を見てもらった後、半円に並んでもらい、皆さんにお尻を向けて私が地面に文字を書く。
「さて、これはなんて書いたでしょうか?」
子供達はなんだなんだ?とお互いの名札を見て、女性たちはどこかで見たような?と顔を見合わせる。
「あ、さっきその箱に入っていた・・・これですか?」
女性の一人が石を嵌め込んだ板を取り出した。
「正解です。」
若干カンニングっぽいけれど、最初だしいいのだ。
トランプの神経衰弱の様相を呈しているけれど、文字に慣れる事が肝要だろう。
地面に書いた文字を消し、次の文字を書く。
「次の文字はなんて書いているでしょうか?」
子供達はさっきと同じように箱の中に答えがあるんじゃないかと箱を見るが、そこにはない。
「あ!リーの名前が書かれている?」
別の女性が男の子を指さして言う。
「正解です。」
名前を言われた男の子は自分の名前なのに正解できなかったと悔しそうだ。
また地面に書いた文字を消し、新しい文字を書く。
「さて、この文字はなんて書いているでしょうか?」
こんな感じで文字当てクイズを15分ほど行い、そこから地面をノート代わりに枝で文字を書く遊びをした。
自分の名前が書けるようになったとか、人が書いた文字が読めるようになったと言いながらにぎやかに勉強していた。
最後に一人に一枚の木板を渡し、これに書いて勉強して、終わったら洗浄して新しく書いたらいいよと伝えると嬉しそうに両手で抱えていた。
書くための道具はその辺の石で鉛筆代わりになるので丁度いい感じだった。
一時間ほど文字の勉強した後は、魔法の勉強だ。
今日は修復魔法を覚えてもらいたいので、解体に行った男性にも集まってもらう。
全員一旦洗浄してさっぱりしたところで、各家から椅子やテーブルを持ってきてもらった。
衣類や道具類はとことん使って最後は燃やすのも良いけれど、長く大事に使えたら出費が抑えられる。
火事で燃えてしまったものは修復できないけれど、経年劣化や嵐で倒壊した家などは修復できる可能性が高いと聞くと、大人たちは目の色を変えて話に聞き入る。
修復魔法の言葉を伝え、発音の練習が終わったところで椅子を修復する様子を見せると、どよめく。
「こんな感じで皆さんもどうぞ。」
促したらそこかしこで道具を修復し始め、子供は穴が開いた衣服を見える範囲で修復して喜んでいた。
先ほど渡した木板もこうやって修復したら何度でも使えると聞き、子供達は自分の名前を書く作業に没頭している。
昨日はあちこち洗浄されて綺麗になったが、今日は子供達を始め大人達もあちこち修復して回ったので、村の中がなんだか新しく生まれ変わったようになっていった。
修復魔法の後は男性陣の中で作成系が得意な人に魔法で木を切ってもらい、梯子を作るようにお願いする。
塀の補修や穴に落ちた魔獣を仕留める時に必要になるかもしれないからだ。
協力しながら三つほど梯子を作り『こんな風に魔法が使えるなんて・・・。』と感心している。
覚えてしまったら無かった頃には戻れないよね。
魔道具を使うだけだったらあっさり失伝してしまうかもしれないけれど、自分でも使えると知ったら今度は長く使い続けられるんじゃないかなぁ?
そうだといいな。
梯子を作った後は、村の中の井戸がある場所に立て看板のようなものを作ってもらう。
木板に魔法の言葉を書いて、それを表す簡単な絵を描く。
絵が苦手なので、検索して転写しているのは内緒だ。
文字を覚える事も兼ねて、一枚の板につき一つの言葉と絵をセットで書いて立て看板にずらっと並べて張り付けてもらった。
まだ伝えていない魔法もあるけれど(火の魔法とか、子供が安易に使ったら危ないからね)、文字と用途を見てなんとなく馴染んでくれればいいと思う。
なんたって二日目だしね。
午後は畑仕事もあるだろうからと、私は一人で塀の作業に行く。
昨日の続きをしようと思ったら声が聞こえた。
「飯は食ったか?」
「こんにちはしのちゃん。」
颯と蓮だった。
昨日帰宅した時と同じ方法で、転移を分担してここに来ていたらしい。
山頂あたりで草木の植え替えをし、魔獣と住み分けしやすいように整えてきてくれたそうだ。
飛翔や跳躍が出来る二人だからこそ、身軽に実行してくれたんだよね。嬉しいなぁ。
少し能力が上がった感じだというので、昨日はキョン、今朝は猪が穴に落ちたと言えば、間接的に能力が上がったんだなと納得する二人。
その後は三人で穴を掘り、塀を作った。
ついでに開墾された土地には、以前食べた魚や蟹の殻を焼いて粉にした肥料を土に混ぜ込んでおいた。
作物が安定して栽培出来るようになるといいね。
いっぺんに完成させてしまうわけにはいかないので、ほどほどの所で作業を止め、ハマのアパートに三人で転移する。
栞がご飯を準備してくれたので、村での魔法や文字の勉強の話をしながら遠慮なくいただいた。
「私達って生まれた時から身近に絵本があったり、看板を見かけたり、TVがあったりで情報があるのが当たり前だったけれど、何も無いと覚えようがないものなのねぇ。」
「昔、戦後に聞き取りした外国人が『日本人の識字率が極めて高い』と驚いたって話を聞いたことがあるよな。」
「言葉を理解して文字として記録を残してくれた先人のお陰で、料理が再現できたりするもんね。」
蓮、颯、栞がお茶を飲みながらしみじみと元の世界を思い出す。
私は付与の仕事をしながら頷くのだった。
その後、蓮と共に教会の魔石室に転移していつもの魔道具ゲリラを行ってからワンのいる村に戻った。
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