うり坊、浄化で少女になった

秋の叶

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大陸を移動する猪

救助後

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 坑道から外へ出ると、取り出した岩石が積み上げられている。
「これだけの量の岩ををよく取り出したな・・・。」
 坑道で作業していた人達が唖然として見る。


「まずは落ち着きたいので、失礼しますね。」
 小雨が降っているので、作業員の休憩小屋で声を掛けて全員を洗浄した。
「はあ?」
 事情を全く知らない坑夫達が揃って口をあんぐりと開けている。
「皆さん温かいものをどうぞ。」
 そう言ってお湯が入った器を渡せば、無意識に手に取りつつも固まっていた。

 私は坑道に入り、設置した結界の魔道具を奥から順番に外して戻る。
 坑夫達はタンに声を掛けられ、思い出したように湯を飲み始めた。
 飲んで落ち着いたところで、タンが連れてきた私について説明する。
 大人が説明してくれると本当に楽。私は必要な時に実践して使い方を伝えるだけだ。

 皆さん順番に照明の魔法が使えるようになると、自分の手を見つめたまま動かなくなった。
 何か一つ目にするたびに動かなくなるのを見ると、疲れているんだろうなぁと思う。
「今日はこのまま一回家に帰って休んで、明日また働いたらいいんじゃないですか?」
「そうだな。閉じ込められて心身共にきついだろうから、家に帰って寝よう。」
 坑夫達はのろのろと歩いて家に戻って行った。
 

 私はタンと共にその場に残り、救助する際に取り出した岩を見る。
「どうした嬢ちゃん。」
「この岩って何かに使いますか?私が使ってもいいでしょうか?」
「使ってもいいだろうが・・・何に使うんだ?」
 近くに川があるか聞いて、そちらへ岩を移動しながら下りる。
 川の幅や深さを魔法で整え、岩で補強して浄化し、更に川下を整えていく。
 鉱山からの排水って怖いから、魔道具が設置出来ればいいけれど今は蓮がいないし、ため池でろ過をしてもらおう。

「ほぉ、魔法ってこんなに出来る物なんだな。」
「ええ、建築も畑を耕すのも出来るので、覚えて損はないでしょう?」
「嬢ちゃんに来てもらって良かったとつくづく思うぞ。」
 ふふっそう思ってくれたならなによりです。

「川は海に繋がっているので、綺麗な状態で流してほしいんですよ。ここの浄化をするための魔道具を一つお渡しするので、毎日朝晩に魔道具を使って欲しいです。」
 そう言って蜜柑の置物を渡した。
「なぁ・・・なんで蜜柑なんだ?」
「縁起物と聞いたので、飾っておいても不思議じゃないかなって思ったんですが。」
「飾り・・・まぁそうだな。」
 以前の世界だったら、某アニメの蜜柑の上下間に白猫がいる、あの状態で分割して魔道具を使うと言えば話が早いだろうけれど、タンには実地で見せて覚えてもらった。

 以前の世界では、水質汚染の教訓を踏まえて浄化するシステムが出来上がっていたけれど、この世界ではそういった認識がまだないかもしれない。
 今のうちに出来たらいいな。
 魔法で浄化できるなら、むしろ前の世界より綺麗な水になるんじゃないのかな?
 教会の皆さん頑張って!

 川の状態を改造した後は先ほどの休憩小屋に戻り、トイレだけ改革した。
 木材の扱いに慣れてきたタンが丸太で便器を作り、私は洗浄して元のトイレを破壊。
 土台に木を組んで囲いを作り、丸太便器を設置して屋根を置いたら完成。
「これもそのうちしっかりしたものを作ってくださいね。地震があったら崩壊しかねないので。」
「意外に丈夫じゃないか?」
「見かけだけです。多分。」


 翌日は坑夫の皆さんもすぐに仕事に向かわず、魔法講座で勉強してから出かけた。
 道具を使わずに魔法で掘る鉱山作業という新しい道を切り開くようだ。
 怪我や事故が無いように願うばかり。


 村で数日過ごしていると、近く(といっても山をいくつか超えたあたり)に竹がわんさか生えている集落があるという。
 商機が見えた気がしたので行ってみたいと呟けば、その村から嫁に来たという女性が案内の名乗りを上げてくれた。
「あの村でも魔法が使えるようになったら嬉しいわ。」
 チャンリーが目をキラキラさせて言うので、私も行くのが楽しみです。

 女性といえども強化魔法の習得はしてもらうよ。
 そう言って二人で歩き始めた・・・ら。
「あはははははっ!こんなに速く歩いた事って無いわ!なにこれ、楽しくなってきたんだけど!」
 先ほどからチャンリーの笑い声がこだましています。
 強化ハイとでもいうのか、何かが切れたとでもいうのか。

 落石をものともせずに飛び越えようとするので一旦止まってもらう。
「ちょーっと待ってもらえますか?」
「え?どうして?」
「これを退かしたいんです。」
 チャンリーが乗って踏みつけている岩を指さして伝えると、ようやく冷静になった。
「あ、そうね、こんなのが道に有ったら危ないわよね。」

 彼女が落ち着いたところで、道の安全を確保する作業に移る。
 落石を移動し、斜面と道を整える。
「毎回こんなことして歩いているの?」
「いえ、たまたま見かけたところだけです。後は村の皆さんが整えるでしょう?」
「そ・・・そうね。私達でも出来るようになったんだものね。」
 頬に手を当て、目を逸らしながら返事をする。
 道は誰かが通れるようにするもの、と思っていたんだろうな。

 私も以前の世界ではそう思っていた時期がある。子供の頃の事だ。
 道路はいつの間にか出来るものと思っていた。
 出来上がった道路も、誰かが掃除してくれていたから綺麗な状態だったわけだし、誰も手入れしないところは草がぼうぼうで、ゴミが沢山落ちて見るからに『荒れた地域』の雰囲気を醸し出していた。
 不思議なもので道路にゴミが多いと、集まる人の心まで荒んでいくような気がするから怖い。

 閑話休題。
 道を整えておくと、この後が楽よと言いたいだけなのだ。

 チャンリーの案内で、彼女の実家がある村に到着した。
 意外に長距離を移動した。よくこんな遠くから嫁に来たなぁと思うくらいには遠かった。
 身体強化して歩いても数日では到着しなかったよ。
 そして『わさわさ生えている』と実感するほど竹が見える。いわゆる慈竹だ。
 慈竹は春先にたけのこを収獲して食べる事もあるし、漢方薬として使う事もある。
 パンダの食料にならない種類の竹なんだって。

 今までの村よりは少し余裕がありそうだったけれど、いかんせん魔法が伝わっていないので衛生面は予想通りだ。
「最初に両親に魔法を教えて欲しいの!」
 久しぶりに実家に帰る楽しみと、魔法が使える嬉しさでずっとテンションが高いようですが、大丈夫ですか?持ちますか?そうですか。

 スキップするような勢いで家の戸口を開け放ち、『ただいま!』と元気に挨拶している。
「あれ!あんた、もしや離縁されたんじゃないだろうね!」
 『おかえり。』の挨拶も無く、いきなり疑われてます。
「違う違う、今日は便利な魔法を教えてくれる人を連れてきたからさ、覚えたら生活が楽になるよ。」
 ちょっ、チャンリーさんや、それは怪しい宗教勧誘と間違われませんか?
 既に手遅れですか?

 物凄く訝しんだ様子で娘(チャンリー)の後ろを見て、少女が出てきた事に戸惑っています。
 うん、同じ立場だったら私もそんな顔をすると思う。

 チャンリーの母親を見ると、違和感を覚えた。
 何が気になったんだろう?と自問自答し、足の状態に思い至る。
 ああ、纏足か・・・。

 纏足とは小さな頃から足の親指以外の指を足の裏側へ折り曲げ、布で強く縛って足を変形させて、大人になっても小さな足を維持させる風習の事だ。
 変形させる際は当然痛みを伴うので、それを緩和させるために幼子にアヘンを使ったと言うから尚酷い。
 私にしてみれば、コルセット文化と同じく拷問のカテゴリーに入っている。
 女性の立場が弱く、完全に所有物として愛でるためと感じるのだけれど、時代や家格によっては纏足していないと結婚が難しかったというから、女の子がいる家庭では必須の処遇だったのだろう。

 貴族女性の場合は侍女がお世話をしてくれたようだけれど、農村部の女性が纏足をしていたら動きが制限されて相当厳しいはず。
 前の世界での一時代には『不健康で不衛生だから』と、たびたび皇帝が禁止令を発したこともあるようだけれど、長く浸透していた文化は簡単にやめられなかったようで、行われなくなったのは1911年の革命の頃だと言うから、女性の立場の弱さに泣けてくる。

 チャンリーは纏足をしていなかったので、親御さんが自由に歩けるようにと願っていたのかもしれない。
 けれど大きな足ゆえに嫁入り先を探すのに難儀して、遠くの農村部に行ったのかなぁ?

「という事で、ヂューに魔法を教えてもらったらいいと思うよ。」
  私が考えに耽っている間に母子の会話が終了していた。

 この辺りの女性の纏足率が高ければ、トイレ事情ってさらに酷くなっていませんか?
 歩くだけでも苦痛で、ただ立っているだけでも数分しかできないんだよ?
 しゃがんで用を足すって無理でしょ。

 チャンリーの足を自由にしていた親御さんに私は拍手したいし、今後の生活が少しでも楽になるなら魔法をしっかり伝えたいと思う。


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