うり坊、浄化で少女になった

秋の叶

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大陸を移動する猪

チャンリーの実家

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 チャンリーから雑に紹介されたので、私は一旦仕切り直すようにぺこりと頭を下げた。
 日本式のお辞儀はインパクトがあるようで、ちょっとギョッとされる。
 『自分を卑下する姿勢として捉えられる。』と、以前ジョーカイに来る際に船の中で聞いた。

 それから感染症が広まった話や、ジョーカイと農村部の違いについて話をして、魔法の話をする頃には前のめりで聞いてくれた。
 特に腰かけて用を足すトイレは纏足の女性にとってパワーワードになるくらい、興味があるようだ。

 隣でうんうんと頷きながら話を聞いていたチャンリーが、使わなくなった椅子を家の中から選んで真ん中に穴を開け、穴の内側と外側を竹で囲んで装飾する。
 鉱山の村からここに来るまでの間に随分魔法の扱いが上手くなった。
「お母さん、これに座ったら楽になるよ。」
 
 娘が作った即席トイレよりも、生活魔法で工作している様子に驚いています。
 ですよねー。
 チャンリーが使えるようになったという話は出てなかったもの。
 お母さんの脳内大丈夫かな?

 
 その後、チャンリーの父親が休憩のために家に戻り、娘がいる事に驚く。
「お前、追い出されてきたのか!」
 ここでも離婚したと思われる不憫さよ。
 大丈夫、ご主人の許可と笑顔で『帰りを待ってる。』と言っていたものね?
 私もお父さんに証言するよ。

 改めて説明して竹装飾のトイレを見せながら洗浄魔法について解説する。
「このように男女共に腰かけて使用できますし、魔法で綺麗な状態を保てます。」

 ここまで聞いたところで、お父さんは村中の男性にトイレ改革を推し進めると言い出した。
 一日に何度も利用するトイレが快適になると知ったら、共用の厠やおまるよりこちらの方が良いと感じたようだ。

 男性社会で纏足を推奨するのは、女性を家の中に閉じ込めておくためのものだから。 
 それを女性が進んで容認していたとしても、痛がる姿ってなるべく見たくないよね。
 この村ではまず、洗浄魔法とトイレ改革から着手されることが決まった。

 ただ、まとめて話すと楽なのだけれど、女性は外に出られない。
 先に男性が集まって魔法の使い方を覚え、その後、私やチャンリーが各家を回る事になりました。

 まず、男性陣はチャンリーが生活魔法で腰かけ便器を作る事に驚いていた。
「足が大きい女は粗野だっていうが、魔法を使うための言葉を言えるし、繊細な装飾も出来るんだな。」
 貶されているのか褒められているのか分からない言葉が聞こえる。
 うん、褒められていると思った方が精神衛生上いいよね。

 まずは愛する奥様と家族のために厠を作りましょう。
 そんな号令で各家でトイレを作って設置した。

 ところ変われば事情が変わるものだけれど、すっかり思考から抜け落ちていた纏足の女性を見る事になるとは。
 遠い所まで来たんだなと実感した。

 
 トイレ改革の翌日は、膝立ちで家事を行う女性達の快適さを上げる為、水を出す魔法の勉強とコンロの魔道具作りだ。
 魔道具師になれそうな人がいないものかと、トイレ作りの時から何人か魔石を持って埋め込めるか確認した。
 ここでも一人いたので、その人に魔道具の仕上げを依頼する。
 チャンリーが『付与は有料だ。』と説明すると、こんな子供で女なのに外で仕事をするのかと驚いた顔で見られたけれど、事実です。
 外の国について話をすれば、顔を歪められてしまいましたよ。

 この村も数日で一気にインフラが整い、快適性が上がったと思う。
 さて、ここからが商談です。
「竹で綿を作って欲しいんです。」
 私の言葉に男性全員が特大の『はあ?』と尻上がりの声で異議を唱える。
 やくざの団体に囲まれて『何言ってんだお前。』と凄まれている気分になります。怖い。

 明日には魔道具を作る事ができる大人が来るのでよろしくと言えば、男性の大人と話し合った方が早いと皆さん引き上げていった。
 女子供の立場の弱さが話し合いにも表れるので、私の仕事はここまでだ。

 
 翌日になると颯と蓮が村にやって来る。
 文字伝達魔道具や、直接ハマに行って話し合っていたので予定通り。
 竹を竹綿にして、輸出してくれたら向こうで竹布にしてさらに加工する事ができる。
 颯が新しく旅館建築を狙っていたりもするし、竹製品が揃ったら着手する気配があるなぁ。

 村の一画に竹を綿に加工するための建築を始めると、チャンリーが熱心に見ている。
 見ているだけでは飽き足らず、颯に質問して木材の扱い方や建築魔法について聞いている。
 彼女に時々、小さな仕事を任せながら建築を進め、まずは作業小屋が出来上がる。
 魔動機械については蓮がメインで動くので、颯の解説を聞きながら観察していた。

 竹綿を作るための施設が完成すると、山から竹を切って身体強化で運ぶ便利さを実感しつつ、作業に入る村の男性達。
 出来上がった物を報酬として、颯と蓮が受け取る事になった。
 
 さて帰ろうかと片づけをしていると、チャンリーが口を開く。
「あの、私の実家を新しく建てたいのですが、建て方を教えてもらえませんか?」
 え?建てるの?

 話を聞くと母親が動きやすい家にしたいのだそう。
 親を見て育ち、他所に嫁いで考える事もあったんだろうなぁ。
 
 チャンリーの両親も交え、広さや間取りと動線を話し合い、季節の違いについても聞き取って颯が設計する。
 必要な魔道具について蓮が聞き取り、世の中にはここで紹介した物以外の魔道具があると知って驚く両親と、頷くチャンリー。
 チャンリーも全部知っているわけじゃないんだけどね。と、苦笑しながら見守った。

 木材については道路を整えつつ抜いた樹木を使う事にして、村から少し離れた道を四人で整える。
 チャンリーも引っこ抜きが上達しているよ。
 樹木の枝を落としたり、皮を剥ぐところまで終わったらその日の作業は終了。
 
 翌日は朝からチャンリーの家を解体し、使える素材を利用しつつ一気に建てていった。
 豪邸や宿泊施設などこだわりが多数ある建物は時間がかかるけれど、実用重視の家づくりは短時間で終わる颯の技術の凄い事。
 
 ご両親は解体した家の側に椅子を置いて、そこで口を開けて作業を見守っていた。
 ついでに村の人達も目玉が飛び出そうなくらいに目を見開いて見学中だ。
 時々チャンリーも手伝って仕上げていくと、昼を過ぎた頃には外側が出来上がり、室内も細かい作業を残すだけになった。

 チャンリーの両親が家の中に入り、娘が生活魔法を使って家具を作る様を見る。
 魔法を知っただけでも驚きの連続だったのに、娘が家具まで制作し始めて喜んでいいのか、驚いたらいいのか、心配したらいいのか感情が忙しいようだ。

 日が暮れる頃には元の荷物を配置しなおしたり、新しい家具を設置して完成した。
 仕上げに竹の形の結界魔道具を蓮が作って家に埋め込む。
「やっと親孝行ができたわ!ありがとう!」
 チャンリーが笑顔で私達にお礼を言い、報酬についてはチャンリー個人が所有していた魔石各種を受け取った。
 若い頃から魔獣退治を率先していたらしいよ?どれだけ活発なのこの人。

 
 その後、鉱山の村に戻ったチャンリーは建築魔法を覚えるほど建築にのめり込み、夫と共に村や近隣の建築に勤しんだという。


 そして、この大陸での教会の活動が本格化すると、纏足の習慣を解放する運動が高まった。
 千年も続いた習慣だったが、若い世代に強要する事が無くなっていった。



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