うり坊、浄化で少女になった

秋の叶

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寄宿舎住まいの伝道師

享楽の魔女と夏休み

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 短い冬休みが終わり、春になると木箱に草花を植えて観察する植物学や学院長の国の歴史の授業も加わり、勉強はますます難しくなっていく。
 異国語で全ての教科を行うだけではなく、殆どの時間が異国語を使うのは相変わらずで、言葉が覚束ない人にとっては寄宿舎の談話室や自分達の部屋が心の潤いの場所になっていたりする。

 寄宿舎での料理を時々交代でするのだけれど、私が作る品が変わっていて面白いと話題になる。
 ハンバーグ、ポテトコロッケ、マヨネーズを使ったポテトサラダ、唐揚げ。
 事前に蓮に作ってもらった鉄板の上で鮭のちゃんちゃん焼きを作った時はお祭りのような盛り上がりを見せた。個人的にもやしを入れたかったけれど、無かったんだよ。また工場から作る事になるのかなぁ?
 キャベツは観賞用から食用に転換した品の生産が辛うじて始まっていたので使う事が出来た。
 しめじも入れたかったけれど、秋に収穫するしかなかったので、人工栽培をする場所を作らなくては日常的に食べられない。
 鮭は冬休みに結界漁に行って確保していたものを、面会で貰ったかのように出した。
 シナ国から持ち帰った種で栽培を開始した白菜と、同じく結界漁で確保していたタラで鍋を作った。
 フレンチトーストも大人気だったよ。
 
 マヨネーズは栞が監修して工場が出来上がっている。
 ちなみに特徴的なあの容器ではなく、瓶詰販売だ。
 工場に浄化の魔道具も設置されているので、安全面も大丈夫なはず。

 ハマのアパートで食事会をする際、食材の『あれが無い、これが無い。』を繰り返し、その度に魔進化させたり、種を確保して栽培農家さんを斡旋したりで少しずつ増やしちゃったんだよね。
 カレーを美味しく食べるためにエゾチに玉ねぎを広げたのは颯だ。
 トマトもまた観賞用として存在していたので食用に転換し、もうすぐケチャップの生産が出来るはず。
 瓶入りケチャップが完成したらピーマンの肉詰めを作ろうと目論んでます。

 唐辛子のように辛くないピーマンはあまり普及していない気配なので、この機会に定着しないかな?と考えている。

 ひき肉を作るためのミンサーは、ホテル建築の頃に各種スライサーと共に開発済みです。
 ハム用のスライサーや肉用のスライサーと共にミンサーは食肉界の三種の神器として業界に君臨しつつある。
 この三つの機械も歴史を早めたものだけれど、後悔はしていない。
 料理人の負担が軽減されるし、美味しいは正義だ。
 

 再びの夏休みがやってきた。
 この頃になると、この世界に来てすぐに作った衣類がほぼ着られなくなった。
 成長したんだなぁと思うと共に、制服以外で何を着るか迷う。
 以前の世界でも職場の制服以外は実用重視だったので、今回も動きやすさを目指した。
 カンガで購入し、授業で着物として縫っていた牛首紬を解体してワンピースにリメイクする。
 
 ズボンやシャツは服飾のお店で注文して作ってもらい、カーディガンは自力で編んだ。
 寄宿舎にいると時間が有るから裁縫が進むね。
 靴も新しく作り直すために注文して受け取り、履き心地が丁度いい。

 他の三人も好みのデザインを型紙付きで注文して着用しているので、ハマやジェドでは服飾の新しいデザインの数が増えている。


 そしてまたもや教会の都合と魔女からの依頼で海外へ行く事になる。
 今回は初めましての享楽の魔女からの指名だった。なんで?
 よく分からないけれど、仕事なので素直に出かける。
 昨年の出張では月に金貨15枚受け取っているので、ボランティア扱いになっていないところがありがたい。

 ジョーカイの教会で顔合わせしたのは、四十代から五十代くらいで薄茶色の髪の毛にグレーの瞳のロシア系美女だった。
 「初めまして、ジアーナよ。貴女がしのね?リュシーから話を聞いているわ。よろしくね。」
 とても元気なお姉さんという感じのジアーナに圧倒されつつ自己紹介し、リュシーの知り合いなんだなと納得する。
 彼女も浮動車で空を飛ぶ魔女だった。

 今回は以前の世界でいう所のペルシャ湾や黒海、紅海周辺の国々を巡って衛生環境を整えるらしい。
 この辺りは数年前に一部の地域が緑化して、農業が出来るようになった地域が増えたそう。
 ・・・魔女の願いで緑化したアレか?
 折角増えた緑地を維持して利用しつつ、トイレ事情を再確認するのだそう。

 前の世界では、世界の人口の三分の一が安全なトイレを利用できず、十一億人以上の女性や女の子がそのことによって健康被害や暴行の危機にさらされていたという。
 それを聞いた時は日本のありがたさをしみじみと感じつつ、世界の課題を目の当たりにしたわけだけれど、この世界では生活魔法さえ使えれば、この手の課題が一気に片付くから凄い。

 ジアーナの浮動車に乗り込んで、話をしながら移動する。
 前回はリュシーに『魔女は聖女の末裔』と聞いていたけれど、ジアーナから詳しく聞けば、そもそも血の繋がりはないのだそうだ。
 回復や治療、浄化や結界の魔法が使える人が教会に所属するか、魔女や魔法使いと縁があって弟子になるかの違いだという。
 え?そうなの?
「貴女が私の近くにいたら、弟子にして魔女になったかもね?」
 にっこりと笑いながら言うけれど、魔女・・・魔女かぁ。
 聖女も魔女もどちらも似合わないから、そのままだな。うん。
 首を傾げている私を見て笑う。

「そうそう、私はどこに行ってもこのスタイル(ローブ)で通すけれど、貴女はどうする?これから行く国って女性は頭からくるぶしまで布ですっぽりと覆われていたりするけれど。」
 郷に入っては郷に従えだけれど、誰が誰やら分からないと迷子騒動にもなりそうだ。
 ズボンを履いていた事もあり、頭を覆って目元を出す事にした。
 布の端にシュシュを付けて目印にすれば、ジアーナも頷く。


 現地に到着すると、空を飛んできた鉄の塊に驚かれ、降り立った美魔女に驚かれる。
 私は陰でそっと佇み気配を消していたけれど、通訳者としての役割もあるので結局前に出て会話の橋渡しをする。

 首を傾げる行為が疑問を表すのではなく、了承を示すと言われると、脳内が軽く混乱したし、素顔を晒しているジアーナが笑顔で話をすれば結婚相手として誘拐されかけたり、私の年齢でも結婚対象として見られたり。

 文化や習慣の違いがあったけれど、女性同士での話し合いは実にスムーズだった。
 拍子抜けするくらいに歓迎されて、積極的に実践するほど。
 圧倒的に家事が楽になるものね?
 女性達にしっかりと魔法と対策を覚えてもらい、男性には家族から伝えるというのがしっくりくるお国柄だった。
 特にお母さん世代の情報網が緻密で、周辺の家の色んな事情を聞いたけれど、あまりにも多くて右から左に流れたよ。
 言葉が通じていないジアーナは自由に女性達の仕事を見て、魔法で楽になるものをどんどん教えていた。

 別の国へ行くと、女性が浮動車に乗っている時点で物凄く反発された。
 男性の許可が無いと外出も教育も受けられない地域だったため、個別に回るのが手間だったけれど、小さなコミュニティごとに地道に回って女性達に魔法を伝えていった。

 男性が魔法を使えたとしても、女性には教えないという認識の所も多かった。
 今回多くの女性達に魔法を伝えたことによって、少しだけ学びの機会が増えたし、衛生環境も整って女性達の日常が改善するだろう。

 河川では汚染対策と共に氾濫防止のための魔法の使い方、遺体の扱い方についても代表達に伝える。
 信仰と病気のどちらを取るかは本人次第だけれど、ジアーナが事前に病気に関する悪夢を魔女の魔法で見せたため、意外に素直に話を聞いていたように思う。
「ふふふっ。」
 と笑いながら魔法を行使する姿は正にイメージ通りの魔女だった。

 各地を回っている間、シナの国で昨年大きな地震があったとジアーナは話す。
 ひゅっと喉が鳴ったけれど、教会が対策していると知ってほっとした。
「魔女の魔法せいで多くの人が亡くなる事もあるけれど、自然の災害の方が規模が大きい上に人数も膨大になるわね。そんな時は神の意志なのか試練なのか調整なのか問いたくなるわ。」
 なんですと?
「リュシーもようやく魔女の魔法に慣れてきたから、酷い事にはならないでしょうけれどね。」
 そういえば数年前に会った時に『贖罪中だ。』と話していた。
 何かあったんだろうなぁ。
 ・・・ジアーナさんの見解も気になるけれど、それこそ神のみぞ知る。なのかな?

 今回も夏休みいっぱい海外を巡って無事に帰国した。


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