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12. 三人揃って
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言葉を切って黙ってしまわれたエリアス殿下。項垂れる俺。
沈黙を破ったのは年長のテオドール殿下だった。
「黙らないかエリアス。お前にランベルトのなにが分かる」
「…適任でない人間に、そう伝えてなにが悪いのです」
「お前の思い込みだけでランベルトの将来を縛るのか?束縛する男は嫌われるぞエリアス」
「兄上はご自分の話をされているのですか?」
「そうだ縛るといえば。護衛任命の件、取り消してくれないか?ランが間違えてお前の前に出て行ってしまったようでなぁ」
「…間違えて?あり得ません。兄上が嫌になって逃げ込んできたとも考えられます。…犯人の元へみすみす被害者を返すような真似は、夢見が悪いです」
「エリアス。なかなか口が回るようになったじゃないか。聞いたかラン!心にやましさを抱えた者は口数が多くなるからなぁ」
「…ですから兄上はご自分の話をされているので?」
息もつけない口論に二人の間に入ることも出来なかった。
え?なんだ?どうしてお二人がこんな口喧嘩を!?こんな喧嘩は見た事がない。兄王子のどんな軽口も、弟王子は右から左に受け流していた。
――俺が過ごした三年間と、既に何かが違ってきているのか…?
「ほら、かわいそうに。ランが怯えているだろう。こんな冷たい男すぐに見限ってしまえ」
「兄上、王子としての品位を疑います」
エリアス殿下が、もう我慢出来ないというように口を開いた。
「ランベルトを、愛妾扱いするのは止めてください」
「え…?」俺が、なんだって?
「……」俺の反応に、不思議そうな顔をするエリアス殿下。
「エリアス、お前は早く嫁でも見付けろ。私にはランがいる」
ぐっと強くテオドール殿下に腰を引かれる。…が反対にいたエリアス殿下に腕を引かれる。お陰でまたテオ殿下の膝に座るような事態は回避した。
「――今は私の、護衛騎士です」
ぐっぐっぐっと双方から力が加わり、地味に痛い。
そんな小競り合いをしていると、頭上から声が掛けられた。
「テオドール殿下。エリアス殿下。ランベルト…いい加減にしてください」
サイロ様が困り果てた顔の周囲の人々を代表し、腕を組み仁王立ちしていた。
弟王子の部屋に押し入ったテオドール殿下、兄王子の挑発に乗り熱くなったエリアス殿下、両殿下の仲裁も出来なかった俺…。三人揃ってサイロ様に怒られた。
幼い頃はこうしてよく怒られたものだ…。
まだ夕方前だが、反省するようにと寮へ帰された。
テオドール殿下とエリアス殿下の仲があんなに悪化していたなんて…驚いた。
――それに思っていた以上に、エリアス殿下から俺は信頼を得ていない事も。
…よく分かった。
例の追手とは関係はないと思うが、殿下達のわだかまりの原因も知る必要がある。
窓の外からは、鍛錬の掛け声が聞こえていた。
沈黙を破ったのは年長のテオドール殿下だった。
「黙らないかエリアス。お前にランベルトのなにが分かる」
「…適任でない人間に、そう伝えてなにが悪いのです」
「お前の思い込みだけでランベルトの将来を縛るのか?束縛する男は嫌われるぞエリアス」
「兄上はご自分の話をされているのですか?」
「そうだ縛るといえば。護衛任命の件、取り消してくれないか?ランが間違えてお前の前に出て行ってしまったようでなぁ」
「…間違えて?あり得ません。兄上が嫌になって逃げ込んできたとも考えられます。…犯人の元へみすみす被害者を返すような真似は、夢見が悪いです」
「エリアス。なかなか口が回るようになったじゃないか。聞いたかラン!心にやましさを抱えた者は口数が多くなるからなぁ」
「…ですから兄上はご自分の話をされているので?」
息もつけない口論に二人の間に入ることも出来なかった。
え?なんだ?どうしてお二人がこんな口喧嘩を!?こんな喧嘩は見た事がない。兄王子のどんな軽口も、弟王子は右から左に受け流していた。
――俺が過ごした三年間と、既に何かが違ってきているのか…?
「ほら、かわいそうに。ランが怯えているだろう。こんな冷たい男すぐに見限ってしまえ」
「兄上、王子としての品位を疑います」
エリアス殿下が、もう我慢出来ないというように口を開いた。
「ランベルトを、愛妾扱いするのは止めてください」
「え…?」俺が、なんだって?
「……」俺の反応に、不思議そうな顔をするエリアス殿下。
「エリアス、お前は早く嫁でも見付けろ。私にはランがいる」
ぐっと強くテオドール殿下に腰を引かれる。…が反対にいたエリアス殿下に腕を引かれる。お陰でまたテオ殿下の膝に座るような事態は回避した。
「――今は私の、護衛騎士です」
ぐっぐっぐっと双方から力が加わり、地味に痛い。
そんな小競り合いをしていると、頭上から声が掛けられた。
「テオドール殿下。エリアス殿下。ランベルト…いい加減にしてください」
サイロ様が困り果てた顔の周囲の人々を代表し、腕を組み仁王立ちしていた。
弟王子の部屋に押し入ったテオドール殿下、兄王子の挑発に乗り熱くなったエリアス殿下、両殿下の仲裁も出来なかった俺…。三人揃ってサイロ様に怒られた。
幼い頃はこうしてよく怒られたものだ…。
まだ夕方前だが、反省するようにと寮へ帰された。
テオドール殿下とエリアス殿下の仲があんなに悪化していたなんて…驚いた。
――それに思っていた以上に、エリアス殿下から俺は信頼を得ていない事も。
…よく分かった。
例の追手とは関係はないと思うが、殿下達のわだかまりの原因も知る必要がある。
窓の外からは、鍛錬の掛け声が聞こえていた。
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