死に戻り騎士は、今こそ駆け落ち王子を護ります!

時雨

文字の大きさ
12 / 60

12. 三人揃って

しおりを挟む
 言葉を切って黙ってしまわれたエリアス殿下。項垂れる俺。
 沈黙を破ったのは年長のテオドール殿下だった。
「黙らないかエリアス。お前にランベルトのなにが分かる」
「…適任でない人間に、そう伝えてなにが悪いのです」
「お前の思い込みだけでランベルトの将来を縛るのか?束縛する男は嫌われるぞエリアス」
「兄上はご自分の話をされているのですか?」

「そうだ縛るといえば。護衛任命の件、取り消してくれないか?ランが間違えてお前の前に出て行ってしまったようでなぁ」
「…間違えて?あり得ません。兄上が嫌になって逃げ込んできたとも考えられます。…犯人の元へみすみす被害者を返すような真似は、夢見が悪いです」
「エリアス。なかなか口が回るようになったじゃないか。聞いたかラン!心にやましさを抱えた者は口数が多くなるからなぁ」
「…ですから兄上はご自分の話をされているので?」

 息もつけない口論に二人の間に入ることも出来なかった。
 え?なんだ?どうしてお二人がこんな口喧嘩を!?こんな喧嘩は見た事がない。兄王子のどんな軽口も、弟王子は右から左に受け流していた。
 ――俺が過ごした三年間と、既に何かが違ってきているのか…?

「ほら、かわいそうに。ランが怯えているだろう。こんな冷たい男すぐに見限ってしまえ」
「兄上、王子としての品位を疑います」
 エリアス殿下が、もう我慢出来ないというように口を開いた。
「ランベルトを、愛妾扱いするのは止めてください」
「え…?」俺が、なんだって?
「……」俺の反応に、不思議そうな顔をするエリアス殿下。

「エリアス、お前は早く嫁でも見付けろ。私にはランがいる」
 ぐっと強くテオドール殿下に腰を引かれる。…が反対にいたエリアス殿下に腕を引かれる。お陰でまたテオ殿下の膝に座るような事態は回避した。
「――今は私の、護衛騎士です」
 ぐっぐっぐっと双方から力が加わり、地味に痛い。

 そんな小競り合いをしていると、頭上から声が掛けられた。
「テオドール殿下。エリアス殿下。ランベルト…いい加減にしてください」
 サイロ様が困り果てた顔の周囲の人々を代表し、腕を組み仁王立ちしていた。

 弟王子の部屋に押し入ったテオドール殿下、兄王子の挑発に乗り熱くなったエリアス殿下、両殿下の仲裁も出来なかった俺…。三人揃ってサイロ様に怒られた。
 幼い頃はこうしてよく怒られたものだ…。

 まだ夕方前だが、反省するようにと寮へ帰された。
 テオドール殿下とエリアス殿下の仲があんなに悪化していたなんて…驚いた。
 ――それに思っていた以上に、エリアス殿下から俺は信頼を得ていない事も。
 …よく分かった。
 例の追手とは関係はないと思うが、殿下達のわだかまりの原因も知る必要がある。

 窓の外からは、鍛錬の掛け声が聞こえていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

何故か正妻になった男の僕。

selen
BL
『側妻になった男の僕。』の続きです(⌒▽⌒) blさいこう✩.*˚主従らぶさいこう✩.*˚✩.*˚

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

婚約破棄を望みます

みけねこ
BL
幼い頃出会った彼の『婚約者』には姉上がなるはずだったのに。もう諸々と隠せません。

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

ちっちゃな婚約者に婚約破棄されたので気が触れた振りをして近衛騎士に告白してみた

BL
第3王子の俺(5歳)を振ったのは同じく5歳の隣国のお姫様。 「だって、お義兄様の方がずっと素敵なんですもの!」 俺は彼女を応援しつつ、ここぞとばかりに片思いの相手、近衛騎士のナハトに告白するのだった……。

異世界召喚チート騎士は竜姫に一生の愛を誓う

はやしかわともえ
BL
11月BL大賞用小説です。 主人公がチート。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 励みになります。 ※完結次第一挙公開。

転生DKは、オーガさんのお気に入り~姉の婚約者に嫁ぐことになったんだが、こんなに溺愛されるとは聞いてない!~

トモモト ヨシユキ
BL
魔物の国との和議の証に結ばれた公爵家同士の婚約。だが、婚約することになった姉が拒んだため6男のシャル(俺)が代わりに婚約することになった。 突然、オーガ(鬼)の嫁になることがきまった俺は、ショックで前世を思い出す。 有名進学校に通うDKだった俺は、前世の知識と根性で自分の身を守るための剣と魔法の鍛練を始める。 約束の10年後。 俺は、人類最強の魔法剣士になっていた。 どこからでもかかってこいや! と思っていたら、婚約者のオーガ公爵は、全くの塩対応で。 そんなある日、魔王国のバーティーで絡んできた魔物を俺は、こてんぱんにのしてやったんだが、それ以来、旦那様の様子が変? 急に花とか贈ってきたり、デートに誘われたり。 慣れない溺愛にこっちまで調子が狂うし! このまま、俺は、絆されてしまうのか!? カイタ、エブリスタにも掲載しています。

秘匿された第十王子は悪態をつく

なこ
BL
ユーリアス帝国には十人の王子が存在する。 第一、第二、第三と王子が産まれるたびに国は湧いたが、第五、六と続くにつれ存在感は薄れ、第十までくるとその興味関心を得られることはほとんどなくなっていた。 第十王子の姿を知る者はほとんどいない。 後宮の奥深く、ひっそりと囲われていることを知る者はほんの一握り。 秘匿された第十王子のノア。黒髪、薄紫色の瞳、いわゆる綺麗可愛(きれかわ)。 ノアの護衛ユリウス。黒みかがった茶色の短髪、寡黙で堅物。塩顔。 少しずつユリウスへ想いを募らせるノアと、頑なにそれを否定するユリウス。 ノアが秘匿される理由。 十人の妃。 ユリウスを知る渡り人のマホ。 二人が想いを通じ合わせるまでの、長い話しです。

処理中です...