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ミラ編 IF
さようなら恋 IF
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今日は戴冠式。朝から祝砲が打ち上がり賑やかな雑踏の音がする。
約束通り農園のご夫婦がエミリアを迎えに来た。綿のこざっぱりしたエプロンドレスを着せてもらい、麦わら帽子をかぶせてもらったエミリアはすでに村の子供だ。
別れの挨拶の時エミリアは約束を守ってと言って、ご夫妻に手を繋がれて去って言った。
できるなら二度と会わない方がいい。エミリア、マリアンヌもエレナも私も手に入れられなかった幸せを手に入れてね。小さな後ろ姿が消えるまで見続けていた。
「お嬢様 戴冠式は観に行かれますか」
「人波に押しやられそうだけど、一生の思い出に行ってみましょうか」
王太子殿下…いえ国王陛下のお姿を近くに見たら私はどう思うのだろう。
エミール様は妃殿下…いえ王妃様のお姿を見たらどうされるのだろう。
ばたばた執事が来て、エミール様がパレードの席を取ってあるので一緒にいかがですかとお誘いにいらしていると言う。最後かもしれないが、未練にも一緒にいたい。
パレードを見るために街道沿いの店では座席を設え売っている。結構な金額になるが、エミール様は見やすいよい席を買われていた。二階建ての店の窓側の椅子が並べてある。そこにエミール様に導かれて座った。
花びらと紙のテープが舞う。新国王ご夫妻が乗ったオープンの馬車が近づいて来た。周りは近衛が何重にも警護をしている。凄い歓声で大きな声を出さないと声が聞こえない。
馬車が近づいて来た。私が恋焦がれた王太子殿下…いえ国王陛下が見えてきた。変わらず麗しく美しく輝いている。でももうなんの感慨もない。今の私は既に違う恋に気持ちがある。エミール様にも違う恋をして欲しい。妃殿下…いえ王妃様を見つめているエミール様に願いを込める。
その時、上を見つめた王妃様の視線とエミール様の視線があった。薔薇の蕾がほころぶように艶やかに笑いかけられた。間違いなく王妃様はエミール様に笑い掛けられた。小さく手も振られた。王妃様にとってエミール様は過去の恋の人なのだろうか。
エミール様はどう思われた…やはりあの方だけしかいないと思われたのだろうか。エミール様の顔を見るのが怖い。
喧騒はだんだん遠くへ行った。みんな王宮のバルコニー前の国王ご夫妻のご挨拶を見に行くのだろう。周りから人の姿が消えて行った。エミール様はどうされるのだろう。
「ミラ嬢 付き合っていただいてありがとうございました。帰りましょう」
スッと左肘あげエスコートして、家まで送ってくださった。玄関ポーチでお別れする。
「今日はありがとうございました」
「いいえ 未練がましい男に付き合っていただきありがとうございました。やはり私は初恋から逃れられないようです」
寂しげに笑ってエミール様は来た道を戻って行かれた。呼び止めたかった。でも呼び止めても私の声は届かない。あの方の胸に飛び込んでもあの方を苦しめるだけ。
さよなら 私の二番目の恋
本当に好きだった。さよなら エミール
約束通り農園のご夫婦がエミリアを迎えに来た。綿のこざっぱりしたエプロンドレスを着せてもらい、麦わら帽子をかぶせてもらったエミリアはすでに村の子供だ。
別れの挨拶の時エミリアは約束を守ってと言って、ご夫妻に手を繋がれて去って言った。
できるなら二度と会わない方がいい。エミリア、マリアンヌもエレナも私も手に入れられなかった幸せを手に入れてね。小さな後ろ姿が消えるまで見続けていた。
「お嬢様 戴冠式は観に行かれますか」
「人波に押しやられそうだけど、一生の思い出に行ってみましょうか」
王太子殿下…いえ国王陛下のお姿を近くに見たら私はどう思うのだろう。
エミール様は妃殿下…いえ王妃様のお姿を見たらどうされるのだろう。
ばたばた執事が来て、エミール様がパレードの席を取ってあるので一緒にいかがですかとお誘いにいらしていると言う。最後かもしれないが、未練にも一緒にいたい。
パレードを見るために街道沿いの店では座席を設え売っている。結構な金額になるが、エミール様は見やすいよい席を買われていた。二階建ての店の窓側の椅子が並べてある。そこにエミール様に導かれて座った。
花びらと紙のテープが舞う。新国王ご夫妻が乗ったオープンの馬車が近づいて来た。周りは近衛が何重にも警護をしている。凄い歓声で大きな声を出さないと声が聞こえない。
馬車が近づいて来た。私が恋焦がれた王太子殿下…いえ国王陛下が見えてきた。変わらず麗しく美しく輝いている。でももうなんの感慨もない。今の私は既に違う恋に気持ちがある。エミール様にも違う恋をして欲しい。妃殿下…いえ王妃様を見つめているエミール様に願いを込める。
その時、上を見つめた王妃様の視線とエミール様の視線があった。薔薇の蕾がほころぶように艶やかに笑いかけられた。間違いなく王妃様はエミール様に笑い掛けられた。小さく手も振られた。王妃様にとってエミール様は過去の恋の人なのだろうか。
エミール様はどう思われた…やはりあの方だけしかいないと思われたのだろうか。エミール様の顔を見るのが怖い。
喧騒はだんだん遠くへ行った。みんな王宮のバルコニー前の国王ご夫妻のご挨拶を見に行くのだろう。周りから人の姿が消えて行った。エミール様はどうされるのだろう。
「ミラ嬢 付き合っていただいてありがとうございました。帰りましょう」
スッと左肘あげエスコートして、家まで送ってくださった。玄関ポーチでお別れする。
「今日はありがとうございました」
「いいえ 未練がましい男に付き合っていただきありがとうございました。やはり私は初恋から逃れられないようです」
寂しげに笑ってエミール様は来た道を戻って行かれた。呼び止めたかった。でも呼び止めても私の声は届かない。あの方の胸に飛び込んでもあの方を苦しめるだけ。
さよなら 私の二番目の恋
本当に好きだった。さよなら エミール
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