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第三話
しおりを挟む流石のアンシェラも恥ずかしさを感じているのか、顔を真っ赤にして唇を噛んでいる。
「だって!カスペル様におねだりしたら“確かに、君の方が似合うね”ってくれたんだもの!私の物でしょ!」
「まぁ!貴女、ご自分のお姉様の婚約者がお姉様に贈ると分かっていたドレスを強請ったんですの?」
エフェリーネ様が大袈裟に驚いてみせると、周りの令嬢達も口々に声を上げ始める。
「あり得ませんわ」
「なんて恥知らずな」
「クリスティナ様の前でよく着られますわね」
カスペル様との婚約は家同士で決められたものとはいえ、愛情は無くともお互いに尊重しあえる関係を築けると思っていたのに……。
「お姉さまぁ!私悪くないのにどうしてみんなから責められるのぉ⁉︎」
「……悪いからでしょう」
「え?」
これまでアンシェラを否定する事はあまり言ってこなかった。
幼い頃、少し注意しただけで癇癪を起こし手がつけられなくなったからだ。
それからは両親も褒めて伸ばす方針になったけれど、結果としてその判断は間違いだったようね。
姉の婚約者に手を出すほど貞淑さの欠片も無く、中身の無い見た目だけのわがまま放題に育ってしまったのだから。
でも、エフェリーネ様のおかげで決心がつきました。
もうアンシェラを腫れ物の様に扱う事はやめます。
「招かれてもいない上位貴族のお茶会に勝手に現れ、主催者のドレスの色を纏い、そのドレスは姉から横取りした物。あまつさえ、姉の婚約者まで奪っておいて自分は悪くない?悪くない所を見つける方が難しいわね」
「お姉さまもいじわるな事言うの?私悪くないもん‼︎」
真っ赤になった顔でぼろぼろと涙を流し、喚くアンシェラ。
「これ以上皆さんに迷惑をかけないでちょうだい。アンシェラを連れて帰って」
アンシェラをここまで連れて来た我が家の執事に、アンシェラを連れて帰るように指示する。
尚も抵抗するアンシェラの腕が顔に当たったりしていて少し気の毒ね。
「アンシェラ、カスペル様の婚約者の座は貴女にあげる。だから大人しく帰りなさい」
「え!ほんとう⁉︎カスペル様くれるの⁉︎ありがとうお姉さま!」
先程までの号泣が嘘の様に笑顔で帰って行くアンシェラ。
嵐が過ぎ去り静寂が訪れた。
「エフェリーネ様、皆様、妹が本当に申し訳ありませんでした。なんとお詫びすればいいか……」
せっかくのお茶会を台無しにしてしまった。
もうエフェリーネ様にはお声掛けいただけないかもしれない。
「クリスティナ様そんなに気を落とさないで。貴女が悪いわけでは無いのだから。皆様もわかってらっしゃるわ」
「エフェリーネ様、皆様……。ありがとうございます」
「ところで、カスペル様の婚約者の座を降りるというのは本気かしら?」
真剣な表情でエフェリーネ様が尋ねる。
「はい。家同士の繋がりの為でしたし、私ではなく妹でも問題は無いのです。それならば想い合っている二人が結ばれる方が良いと思います。ここだけの話ですが、私も好きでもない方に嫁ぐのは気が進まなかったので」
出来る事なら、想い合った方と結ばれたい。
「もしかして、どなたか想いを寄せる方がいるのかしら?」
「いえ、その様な方はおりません」
「そうなのね!クリスティナ様、貴女に紹介したい人がいるの」
エフェリーネ様の表情が明るくなり、どこか楽しげに笑ってらっしゃる。
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