4 / 5
第四話
しおりを挟むあのお茶会から半年。
「あれから、もう半年も経つのね」
あの日、帰宅してお父様にカスペル様との婚約をアンシェラと交代させて欲しいと話した。
先に戻っていたアンシェラからも話を聞いていたようで、なんとか許してもらえた。
ところがその数日後、侯爵家が爵位を取り上げられ、婚約が白紙になった。
財務大臣を務めていた侯爵は、かなり前から国庫の財産を横領しており、我が家との婚約話以前から内密に調査されていたらしい。
カスペル様自身は何も知らなかったようで、貴族籍を失って平民となるだけで済んだものの、貴族の暮らししか知らない彼が生きていけるかはわからない。
貴族籍を失った後、一度我が家にカスペル様が訪ねて来た。敷地の外から柵越しに、だけれど。
あまりに外から叫ぶものだから、嫌々アンシェラも対面したようだった。
「アンシェラ‼︎僕と一緒に来てくれるだろ⁉︎」
今や侯爵家の嫡男であった見る影も無く、柵にしがみ付きすがる様な表情で呼びかける。
「っふざけないで!行くわけないじゃない‼︎」
「アンシェラ……そんな事言わないでくれ。お腹の子と三人で暮らそうよ!」
「……そうよ、私のお腹の中に貴方の子供がいるのよ⁉︎どうしてくれるのっ⁉︎私に平民の子を産めって言うの⁉︎」
そして驚いた事に、アンシェラがカスペル様の子を身籠っていた事がわかった。
思えば、お茶会で着ていたドレスの腰回りが窮屈そうだったのは、妊娠していてコルセットを巻けなかったからだったのね。
「アンシェラ、どうしたんだ?あんなに僕の事を愛してるって言ってたじゃないか⁉︎」
「“侯爵家のカスペル様”をね!平民のカスペルなんて何の価値も無いわ‼︎」
「……そんな。……そうだ、クリスティナ……っクリスティナー‼︎やっと気づいたよ!やっぱり君が僕の運命の人だーっ‼︎」
「――⁉︎はぁ⁉︎私がダメならお姉さま⁉︎ちょっと‼︎この平民を家に近付けないでちょうだい‼︎」
婚前のアンシェラが妊娠していた事を知った両親は大激怒し絶縁を告げた。
「お父様!なんでそんな事を言うの⁉︎」
「お前の我が儘にはかなり目を瞑ってきたが、もう限界だ。外であのバカ息子と大声で言い争ったそうだな?まさか身篭っていたとは。この事はすぐに広まる。姉の婚約者を奪い、婚前にも関わらず妊娠。結婚するはずだった男は平民になり、腹の子は堕すには育ち過ぎている。醜聞まみれになったお前は、もうまともな結婚相手は望めない!」
「そんな事無い!私はこんなに可愛いんだから、私と結婚したい人はいくらでもいるもん‼︎」
「貴女をこんな事になるまで甘やかしてしまった私達にも非があるわ、ごめんなさいねアンシェラ。癇癪を起こすからと、叱る事をやめてしまった……。だからね、これから学んでいけばいいのよ?」
「お母様――」
「貴女には修道院に入ってもらうわ」
「えっ?」
「大丈夫よ。厳しい所だと聞くけど、素晴らしい所とも聞くわ。お腹の子は産まれたら里子に出してくれるそうだから安心してね」
「嫌よ修道院なんて行きたくない!」
「もう決まった事だ」
「やだやだやだっ‼︎」
「体に気をつけてね、アンシェラ」
「いやあぁぁぁぁあっ‼︎」
そうしてアンシェラは遠く離れた修道院へ送られて行った。
アンシェラの様子は、たまに送られてくる修道院からの手紙で知る事が出来る。
厳しい院長の指導の元、大人しく過ごしているそうだ。
1,641
あなたにおすすめの小説
だってお義姉様が
砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。
ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると……
他サイトでも掲載中。
かわりに王妃になってくれる優しい妹を育てた戦略家の姉
菜っぱ
恋愛
貴族学校卒業の日に第一王子から婚約破棄を言い渡されたエンブレンは、何も言わずに会場を去った。
気品高い貴族の娘であるエンブレンが、なんの文句も言わずに去っていく姿はあまりにも清々しく、その姿に違和感を覚える第一王子だが、早く愛する人と婚姻を結ぼうと急いで王が婚姻時に使う契約の間へ向かう。
姉から婚約者の座を奪った妹のアンジュッテは、嫌な予感を覚えるが……。
全てが計画通り。賢い姉による、生贄仕立て上げ逃亡劇。
隣国へ留学中だった婚約者が真実の愛の君を連れて帰ってきました
れもん・檸檬・レモン?
恋愛
隣国へ留学中だった王太子殿下が帰ってきた
留学中に出会った『真実の愛』で結ばれた恋人を連れて
なんでも隣国の王太子に婚約破棄された可哀想な公爵令嬢なんだそうだ
お父様、ざまあの時間です
佐崎咲
恋愛
義母と義姉に虐げられてきた私、ユミリア=ミストーク。
父は義母と義姉の所業を知っていながら放置。
ねえ。どう考えても不貞を働いたお父様が一番悪くない?
義母と義姉は置いといて、とにかくお父様、おまえだ!
私が幼い頃からあたためてきた『ざまあ』、今こそ発動してやんよ!
※無断転載・複写はお断りいたします。
【短編】婚約破棄?「喜んで!」食い気味に答えたら陛下に泣きつかれたけど、知らんがな
みねバイヤーン
恋愛
「タリーシャ・オーデリンド、そなたとの婚約を破棄す」「喜んで!」
タリーシャが食い気味で答えると、あと一歩で間に合わなかった陛下が、会場の入口で「ああー」と言いながら膝から崩れ落ちた。田舎領地で育ったタリーシャ子爵令嬢が、ヴィシャール第一王子殿下の婚約者に決まったとき、王国は揺れた。王子は荒ぶった。あんな少年のように色気のない体の女はいやだと。タリーシャは密かに陛下と約束を交わした。卒業式までに王子が婚約破棄を望めば、婚約は白紙に戻すと。田舎でのびのび暮らしたいタリーシャと、タリーシャをどうしても王妃にしたい陛下との熾烈を極めた攻防が始まる。
婚約破棄?から大公様に見初められて~誤解だと今更いっても知りません!~
琴葉悠
恋愛
ストーリャ国の王子エピカ・ストーリャの婚約者ペルラ・ジェンマは彼が大嫌いだった。
自由が欲しい、妃教育はもううんざり、笑顔を取り繕うのも嫌!
しかし周囲が婚約破棄を許してくれない中、ペルラは、エピカが見知らぬ女性と一緒に夜会の別室に入るのを見かけた。
「婚約破棄」の文字が浮かび、別室に飛び込み、エピカをただせば言葉を濁す。
ペルラは思いの丈をぶちまけ、夜会から飛び出すとそこで運命の出会いをする──
【短編】捨てられた公爵令嬢ですが今さら謝られても「もう遅い」
みねバイヤーン
恋愛
「すまなかった、ヤシュナ。この通りだ、どうか王都に戻って助けてくれないか」
ザイード第一王子が、婚約破棄して捨てた公爵家令嬢ヤシュナに深々と頭を垂れた。
「お断りします。あなた方が私に対して行った数々の仕打ち、決して許すことはありません。今さら謝ったところで、もう遅い。ばーーーーーか」
王家と四大公爵の子女は、王国を守る御神体を毎日清める義務がある。ところが聖女ベルが現れたときから、朝の清めはヤシュナと弟のカルルクのみが行なっている。務めを果たさず、自分を使い潰す気の王家にヤシュナは切れた。王家に対するざまぁの準備は着々と進んでいる。
妹の方が良かった?ええどうぞ、熨斗付けて差し上げます。お幸せに!!
古森真朝
恋愛
結婚式が終わって早々、新郎ゲオルクから『お前なんぞいるだけで迷惑だ』と言い放たれたアイリ。
相手に言い放たれるまでもなく、こんなところに一秒たりとも居たくない。男に二言はありませんね? さあ、責任取ってもらいましょうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる